人事院に2022人勧期要求書を提出-6/20
公務員連絡会委員長クラス交渉委員は、6月20日14時00分から、川本人事院総裁との交渉を実施し、「2022年人事院勧告に関わる要求書」(別紙)を提出した。
本年の給与改定勧告に当たっては、公務員連絡会との交渉・協議、合意に基づき行うことを求めるとともに、適切な労働条件等の改善などを求めて交渉を強化していく。
交渉の冒頭、武藤議長は、
(1)2022年人事院勧告に関わる要求書の提出に当たって、公務員連絡会を代表して一言述べさせていただく。
(2)まずは、新型コロナウイルス感染症が今なお収束していないなかで、今年の職種別民間給与実態調査に尽力いただいた、人事院及び人事委員会の職員のみなさんに心から敬意を表したい。
(3)さて、本年の連合の春季生活闘争においては、定期昇給とベースアップ分を合わせて2.09%アップと、近年にない水準を達成している。また経団連の大手企業調査でも2.27%のアップ、業績がコロナ前の水準まで回復した企業に限れば3%を超える水準を達成している。
一方で、終わりの見えないウクライナ情勢や急激な円安により、総務省が発表した4月の消費者物価指数は、前年同月比で+2.1%と、3月の+0.8%から一気に上昇している。また、厚生労働省が7日に発表した毎月勤労統計調査によれば、4月の実質賃金は前年同月比で1.2%減と、4カ月ぶりにマイナスとなっている。このように、広範囲に及ぶ物価高は国民生活を直撃しており、私ども公務員にとっても重大な懸念事項になっていることを申し上げておきたい。
そのため、このような総合的な情勢認識のもと、3年ぶりとなる月例給および一時金の引き上げ勧告を強く求めておく。
(4)さらに職場では、恒常的な要員の不足等により、人事院の調査でも明らかな通り、今なお上限規制を超える超過勤務など長時間労働が蔓延しており、厳しい状況は改善されていない。職員が安心し安全に働くことのできる職場環境の整備や適切な要員と賃金労働条件の確保が必要である。
また、来年度からの定年引上げを前に、職員の希望や適性に沿った適切な職務を確保することや、再任用を含む高齢層職員の処遇改善などの課題もある。一方で、この間官民の初任給水準の格差なども覆い切れない状態になっており、それをいかに改善するかといった問題もある。これらの重要課題について、私どもとしても正面から向き合う所存であるので、人事院としても解決に向けて前向きに取り組んでいただくことを要請しておきたい。
と述べ、その後、森永事務局長が要求事項について説明した。
これを受けて川本人事院総裁は、「ご要求は確かに受け取りました。最近の公務を巡る情勢は依然として厳しい状況です。人事院としては、国会と内閣に対して必要な勧告・報告を行うという国家公務員法に定められた責務を着実に果たしていく所存です。今後、本年の勧告に向けて、要求された課題について皆さんの意見も聞きながら、検討を進めてまいりたいと考えています。」と応えた。
(別紙)
2022年6月20日
人事院総裁
川 本 裕 子 様
公務員労働組合連絡会
議 長 武 藤 公 明
(公 印 省 略)
2022年人事院勧告に関わる要求書
貴職におかれましては、公務員人事行政にご尽力されていることに敬意を表します。
さて、新型コロナウイルス感染症が、決して収束したとは言えない状況において、引き続き公務には、感染症対策という国民の生活と安全を守るための対応が強く求められています。
そのような中、職場においては、増大する業務量に見合った要員が恒常的に不足し、長時間労働が蔓延するなど厳しい状況は改善されておらず、良質な公務・公共サービスを確実に提供するためにも、職員が安心し安全に働くことのできる職場環境の整備や必要な要員の確保、賃金労働条件の改善が極めて重要です。
また、2022春季生活闘争において、連合の集計では依然「賃上げの流れ」は継続しており、日本経団連の調査においても業績がコロナ前の水準に回復した企業の賃金の引上げ傾向が鮮明となっています。しかし、円安とウクライナ情勢による急激かつ広範囲な物価上昇が国民生活を直撃しているのも実態です。そのため、低迷する日本の勤労者の賃金を改善することは、「コロナ禍からの回復」という観点も含め、喫緊かつ最重要の課題であります。
公務員連絡会は、このような認識に基づき「2022年人事院勧告に関わる要求書」を提出します。貴職におかれましては、下記事項の実現に向け、最大限努力されるよう要求します。
記
1.賃金要求について
(1) 月例給与について
2022年の給与改定勧告にあたっては、職員の月例給与の引上げ勧告を行うこと。とくに、初任給を中心とする若年層における民間賃金との格差を踏まえること。なお、較差の配分については、公務員連絡会と十分交渉・協議し、合意に基づいて行うこと。
(2) 一時金について
一時金については、精確な民間実態の把握と官民比較を行い、支給月数を引き上げること。
(3) 諸手当について
社会経済情勢の変化、職員の職務や生活実態を踏まえて措置することとし、公務員連絡会と十分交渉・協議し、合意に基づいて勧告作業を進めること。
(4) 再任用職員の給与等について
再任用職員の給与制度について、生活関連手当の支給をはじめ、その経済的負担や定年前職員との均衡を考慮して改善すること。
2.新型コロナウイルス感染症への対応について
今後の感染状況等の推移を注視し、職員の感染防止、健康確保のため、公務員連絡会との交渉・協議を踏まえて、適宜、必要な措置を講じること。
3.労働諸条件の改善について
(1) 労働時間の短縮及び休業制度等について
公務職場におけるワーク・ライフ・バランスを実現するため、「働き方改革」等を次の通り進めること。
① 各府省に対して、勤務時間管理を適切に行うよう指導すること。また、本府省における在庁時間削減の取組についても、人事院として積極的に役割を果たすこと。
② 各府省の上限を超えた超過勤務の状況に関わる整理・分析・検証等の結果を踏まえ、公務員連絡会との交渉・協議に基づき、特例業務の扱いについて必要な見直しをはかること。
③ 「他律的業務の比重が高い部署」の指定にあたっては、各府省における統一性の確保を最低として、各府省への指導を強化すること。
④ 1か月当たり45時間を超え60時間以内の超過勤務に対する手当の割増率を引き上げること。
⑤ テレワークをはじめとする労働の柔軟化について、公務職場における働き方の実態を踏まえた制度とすることを基本に、制度・運用の改善や各種手当の検討などを行うこと。その際、公務員連絡会との十分な交渉・協議を行うこと。
⑥ 公務において、「勤務間インターバル」を確保すること。
⑦ 家族介護を理由とした離職を防止するため、介護休業制度を整備すること。
⑧ 国家公務員の育児休業等に関する法律等の改正を踏まえた人事院規則等の改正について、公務員連絡会との交渉・協議を踏まえて措置すること。
⑨ 妊娠・出産・育児に関わる休暇制度について、休暇を取得しやすい職場環境の整備を行うとともに、民間の動向等を踏まえ、更なる制度の改善を図ること。また、出生サポート休暇については各府省の実態を把握し、必要な対応を図ること。
(2) 障害者雇用について
障害者が、無理なく、かつ安定的に働くことができるよう、人事院としての役割を適切に果たすこと。
(3) 女性公務員の採用等の推進について
女性国家公務員の採用・登用・職域拡大の着実な推進に向け、積極的な役割を果たすこと。
(4) 福利厚生施策の充実について
① 心の健康づくりについては、勤務条件や職場環境の改善など総合的に取り組むこととし、ストレスチェックや「職員の心の健康づくりのための指針」等に基づく施策の着実な推進に向けて必要な対応を図ること。
② ハラスメントの防止については、一層有効な対策を着実に推進すること。
とくに、パワー・ハラスメント対策については、人事院規則10-16等に基づいた各府省の取組状況を引き続き、把握するとともに、とくに相談員の専門性の向上や相談員が適切に対応できる体制整備に向けて、必要な指導を行うこと。また、苦情相談、紛争解決における人事院の役割を着実に果たすこと。
4.高齢者雇用施策について
2023年4月1日の段階的定年引上げの施行にあたっては、その円滑かつ安定的な実現のための環境整備に向けて、人事院としての役割を果たすこと。
また、改正国家公務員法附則で検討事項とされた給与制度等の検討については、公務員連絡会との交渉・協議、合意に基づき行うこと。
5.非常勤職員等の制度及び待遇改善について
(1) 同一労働同一賃金をはじめとする均等待遇原則に基づき、非常勤職員等の給与を引き上げること。
(2)「非常勤職員の給与に関する指針」の改正を踏まえ、一時金の支給状況について各府省の状況を把握し、必要な指導等を行うこと。
(3) 期間業務職員制度について、当該職員の雇用の安定と待遇の改善となるよう、適切な運用に努め、必要な改善措置を講じること。
(4) 非常勤職員の休暇制度等については、常勤職員との均等待遇をはかるため、公務員連絡会との検証の場における議論も踏まえ、無給休暇の有給化等の改善をはかること。
(5) 非常勤職員制度の改善に関するこれまでの取組を踏まえ、制度の抜本的改善に向けた検討を継続することとし、公務員連絡会と十分交渉・協議し、作業を進めること。
以上