月例給の較差はプラス、一時金についても引上げの見通し
一時金引上げ分の一部を上位成績区分へ配分することが示される-人事院給与局長と2度目の交渉-
公務員連絡会書記長クラス交渉委員は、1日13時30分から、2022年人勧期要求に関わり佐々木人事院給与局長と2度目の交渉を行った。
冒頭、森永事務局長が「7月26日の交渉を踏まえた現段階の検討状況を回答されたい」と求めたのに対し、佐々木給与局長は以下のとおり答えた。
1 勧告について
勧告日は、来週前半で調整中である。具体的な日程は、総裁会見の際にお伝えすることができると思われる。
2 官民較差等について
(1) 官民較差と月例給について
官民較差については、現在、最終的な詰めを行っているところであるが、今年の民間企業の春季賃金改定状況を反映して、プラスとなる見通しである。
(2) 特別給について
特別給についても、現在、最終的な集計を行っているところであるが、支給月数が引上げとなる見通しである。
支給月数の引上げがある場合には、勤勉手当に配分することを考えている。
令和4年度については、6月期の勤勉手当は既に支給済みであるため、12月期に配分することとし、令和5年度以降については、6月期と12月期が均等になるよう配分することを考えている。
なお、勤務実績をより適切に反映し得るよう、この勤勉手当の支給月数の引上げ分の一部を用いて、上位の成績区分に係る原資の確保を図ることを考えている。このような措置は、平成17年及び平成19年においても講じているところ。
3 本年の改定の考え方について
仮に、官民較差を埋めるため、引上げ改定が必要となった場合には、基本的な給与である俸給の引上げを行うことを考えているが、その場合、俸給表全体の改定は難しいが、人材確保の観点等を踏まえ、若年層について改定を行いたいと考えている。
4 その他の取組みについて
博士課程修了者の処遇を改善するため、本年中に初任給基準の改正を行い、令和5年4月から実施することとしたい。
テレワークに関する給与面での対応としては、テレワークの実施に係る光熱・水道費等の職員の負担軽減等の観点から、テレワークを行う場合に支給する新たな手当について、今後、職員団体の皆さんの意見も聴きながら、具体的な枠組みを検討していくこととしたい。
また、能率的で活力ある公務組織の実現に向けて、令和5年に骨格案、令和6年にその時点で必要な措置の成案を示し、施策を講ずることを念頭に、職員団体の皆さんの意見も聴きながら、給与制度のアップデートに向けて一体的に取り組むこととしたい。
回答に対し、森永事務局長は、「勧告日の具体的な日程については、総裁との回答交渉に委ねる」とした上で、「給与制度のアップデートに向けた取組について、定年引上げに係る国公法附則で検討事項とされた給与等の課題も含め、公務員連絡会との交渉・協議、合意に基づく対応を求める」としたのに対し、佐々木給与局長は「要求は承った。先ほど申し上げたようなスケジュール感を持っているが、各段階において、十分な意見交換を行っていく」と回答した。
その後、月例給について次のとおり局長の見解を質した。
(1) 今回、官民較差は、本年の民間企業の賃金改定状況を反映して、プラスとなる見通しとのことだが、改めて、民間実態について認識如何。
(2) 国公実態について、平均年齢が0.3歳若返っているが、諸手当の変動も含めた平均給与額はどうなっているか。
(3) 配分については、別途議論させてもらうこととするが、最近の物価上昇等の影響は世代を問わず、また新型コロナウイルス感染症の感染拡大の中で、懸命に職務に従事している職員の労苦に報いるためにも全世代へ配慮すべきだ。なお、改定の考え方で「若年層について改定を行いたいと考えている」とのことだが、改定後の初任給における官民格差は解消されるのか状況如何。
これに対し、佐々木給与局長は次のとおり回答した。
(1) 民間の賃金改定状況は、各種調査結果や民調結果を見ると、初任給引上げ、ベア実施の割合とも昨年に比べて増加している。業績や、人材確保の必要性から、相応の賃金水準を確保しようとする動きが見られる。
(2) 昨年は、行(一)の平均年齢は△0.2歳であったが、今年はそれを上回る形で若返っている。昨年の傾向としては、平均年齢の低下に伴って俸給月額と扶養手当がマイナスになり、住居手当はプラスになった。今年もその傾向は変わっていないが、今年は△0.3歳なので、昨年以上に俸給月額が下がっている。
(3) 配分については、あくまでも原資の範囲内で行う必要があるが、国家公務員の初任給、若年層については、残念ながらここ2年、改定に至っていない状況である。他方、民間の初任給は上がっているので、今回初任給に重点を置いたとしても、全て解消できる訳ではなく、なお、格差が残ると認識している。
森永事務局長は、「初任給の課題は、昨年の人勧期以降、人事院との間で問題意識を共有している。なお格差が残るとのことだが、今後の給与制度のアップデートの検討とあわせて全体的な議論が必要である。引き続きの対応をお願いしたい。」と指摘した上で、続いて一時金について、次のとおり局長の見解を質した。
(1) 勤勉手当の支給月数の引上げ分の一部を用いて、上位の成績区分に係る原資の確保を図ることを考えているとのことだが、唐突な提案であり、標準者の支給割合の一部を使って優秀者に回すことは認められない。再考を求める。
(2) 支給月数について、民間の考課査定割合に応じて期末・勤勉に配分してきた経過ではあるが、支給月数の引上げ分の一部を用いて上位の成績区分に係る原資に配分することは、最近の物価上昇等の影響は世代を問わず、また新型コロナウイルス感染症の感染拡大の中で、懸命に職務に従事している職員の労苦に報いる観点からも月例給で指摘したことと同様に問題である。
(3) 少なくとも引き上げられる支給月数がどの程度のものになるのか分からないと議論にならない。支給月数を、明らかにされたい。
これに対し、佐々木給与局長は次のとおり回答した。
(1) 今回の措置については、日程的には平成17年(2005年)、平成19年(2007年)に措置させていただいた経過がある。このような措置は改定がプラスの時にしかできないものであり、この機会をとらえてぜひお願いをしたい。
(2) 最近の経済状況、新型コロナウイルス感染症対応といった中で各現場で国家公務員の皆さんが各職務に従事しておられるということについては十分認識をしている。一時金については期末手当、勤勉手当どちらに配分するのか、ということはあるが、基本的にプラスの効果は広く職員に及ぶという性格のものである。このような中で、今回の措置ができるのは限られたタイミングなので、今回ぜひ措置をさせていただきたい。
(3) 支給月数については最終回答の中で総裁から直接申し上げることになるので、現時点ではっきりと申し上げることは難しい。支給月数が「引上げ」となる中でのお願いになる。
森永事務局長は、更に一時金について局長の見解を質した。
(1) 支給月数を引き上げるタイミングで措置するということだが、なぜ、今年、措置する必要があるのか。
(2) 勤務実績をより適切に反映し得るように措置するとのことだが、現状は適切に行えていないということか。何をもって適切と考えているのか。
(3) 民間における、良好(標準)、優秀の考課査定における配分はどのようになっているのか。
(4) 例えば現状で、良好(標準)が92/100に対し、平均的(支給月数)には95/100と措置されているが、客観的な根拠如何。
これに対し、佐々木給与局長は次のとおり回答した。
(1) 今回措置する一番の理由は、昨年人事評価制度の見直しが行われたことへの対応である。具体的には、評語区分が5から6にきめ細かくなるため、勤務実績をより適切に反映し得るよう、勤勉手当について、新人事評価制度に対応する必要があるということである。その他には、先ほど申し上げた通り、このような措置はプラス改定の時にしかできないということである。また、この間民間の考課査定分の占める割合を踏まえて、引上げの時には勤勉手当、引下げの時には期末手当からという形で対応してきたが、民間の考課査定分の割合との差はだいぶ詰まってきたと認識している。近い将来、ボーナスにおける期末と勤勉との配分のあり方について改めて考える必要が出てくると考える。今回、そのタイミングで提案させていただく、ということである。
(2) 現状が適切でないという趣旨ではなく、より適切にという趣旨で申し上げている。
(3) 勤勉手当の一部を原資に成績上位者に配分をするといった措置は、平成17年、平成19年に、0.05月分の月数引き上げの内0.03月分を査定原資とする措置をさせていただいた。当時の公務における勤勉手当の状況は「良好」が8割であり、一方民間の係員で「標準」が6割弱であった。また、公務については下位が絶対評価であり、下位がつかない限りは「良好」の評価であったが、民間の場合は下位も一定割合存在していた。そのような中で「優秀」の割合の拡大を図るという観点で、当時は「特に優秀」を5%、「優秀」を25%という率で分布率を設けるという形で改定をしてきた。その後、民間の状況自体はほとんど変わりない。今回の措置について、この5%、25%の割合を変えるという趣旨ではない。
(4) 民間における査定の幅、公務における実際の査定の結果の中で、分布率5%、25%を考えたときに必要な原資で考えるとこのような状況になっている。
その後、交渉委員からは、「説明は納得できない。コロナ禍のなか、物価の急上昇している局面にあっても職員は奮闘している。国家公務員に対して、期末手当に一律に割り振ることも理解されるのではないか」「すべての職員の働くモチベーションを保つためにも再考を」「民間へ人材が流れており、民間と比べ給与に差が無いことをアピールするためにも、幅広く措置をすべき」と、一時金が勤勉手当に配分され、その一部が上位の成績区分の原資とされる措置について再考を訴えた。
これに対し、佐々木給与局長は、「公務員の賃金、一時金について、厳しい見方はなお存在している。やはり公務と民間とで勤勉手当と考課査定分については同程度としておく必要がある。また、人事評価制度の改正を踏まえて、見直し後の制度に基づき、勤務実績をより適切に反映するために必要な原資の確保を図る必要がある」との考えを繰り返したことから、森永事務局長は、「われわれが納得できる理由も根拠も示されたとは言えない。改めて、撤回を求めておく。なお、月例給、一時金の配分については別途議論を求める」と強く指摘した上で、「今、この時も、新型コロナウイルス感染症への対応も含め職場では長時間労働を余儀なくされ、従事する職員も疲弊している実態にある。極めて厳しい現場で奮闘する職員の期待に応える意味でも、最終回答のギリギリまで、要求に応えるよう求めておく」と強く要請し、この日の交渉を締めくくった。