委員長クラスが人事院総裁と交渉し回答を引き出す-8/4
公務員連絡会委員長クラス交渉委員は、8月4日、川本人事院総裁と交渉し、6月20日に提出した本年の人勧期要求に関する回答を引き出した。
交渉の冒頭、武藤議長が「6月20日に本年の人勧期の要求書を提出し、今日まで、交渉を積み上げてきた。本年の勧告に向けた最終回答を総裁からいただきたい」と求めたのに対し、川本総裁は次のとおり回答を示した。
〇 まずは、新型コロナウイルス感染症の世界的な感染拡大や大規模な自然災害等への対応をはじめ、国民生活を守り安心を確保するために全国各地で日々職務に精励している公務員各位に対して心からの敬意と感謝の意を表したい。
1.給与改定について
〇 勧告日は、8月8日(月)となる予定である。
〇 民間給与との比較について、月例給の民間給与との較差は、0.2%台前半となる見込みである。
〇 特別給は、0.10月分の引上げとなる見込みである。引上げ分は、今年度については、12月期の勤勉手当に配分することとする。
〇 来年度以降については、6月期及び12月期が均等になるよう配分することとする。
〇 なお、勤務実績をより適切に反映し得るよう、勤勉手当の支給月数の引上げ分の一部(0.02月分)を用いて、上位の成績区分に係る原資の確保を図る。
〇 俸給表の改定については、行政職俸給表(一)について、民間企業における初任給の動向等を踏まえ、総合職試験及び一般職試験(大卒程度)に係る初任給を3,000円、一般職試験(高卒者)に係る初任給を4,000円引き上げることとする。これを踏まえ、20歳台半ばに重点を置き、初任の係長級の若手職員にも一定の改善が及ぶよう、30歳台半ばまでの職員が在職する号俸について改定を行う。
〇 その他の俸給表については、行政職俸給表(一)との均衡を基本に改定する。なお、専門スタッフ職俸給表及び指定職俸給表については改定しないこととする。
〇 博士課程修了者等については、その処遇を改善するため、本年中に初任給基準の改正を行い、令和5年4月から実施する。
〇 テレワークに関する給与面での対応については、テレワークの実施に係る光熱・水道費等の職員の負担軽減等の観点から、テレワークを行う場合に支給する新たな手当について、具体的な枠組みを検討する。
〇 能率的で活力ある公務組織の実現に向けて様々な取組を進める中で、給与面においても、社会と公務の変化に応じた給与制度のアップデートに向けて取り組んでいく。
2.公務員人事管理に関する報告について
社会情勢が急速に変化し、行政課題は複雑化・高度化している。その中にあって、世界最高水準の行政サービスを国民に提供していくためには、行政を支える公務組織が、国民本位の、能率的で活力のある組織であり続けなければならない。
そのためには、能力のある多様な人材を継続的に採用し、戦略的に育成すること、そして、組織の構成員である職員のWell-beingの実現を図り、一人一人が意欲とやりがいを持って生き生きと働き続けられる職場環境を整えることが不可欠である。
これにより、公務全体のパフォーマンスが向上するとともに公務職場の魅力が高まり、より多くの人材を惹きつける。そのような「好循環」を生み出していきたいと考える。
公務職場が魅力的であるためには、職員が働きやすい勤務環境を整備し、働き方改革を推進することが喫緊の課題だ。
今回の報告においては、このような公務職場が置かれている課題を述べた上で、人事院がスピード感を持って推し進める取組として次のことについて言及することとしている。
○ 長時間労働の是正に向けて、本年4月に新設した勤務時間調査・指導室において、各府省に対する超過勤務時間の適正管理等の指導を行っていく。
〇 業務量に応じた定員の確保について定員管理を担当する部局に対し必要な働きかけを行う。
〇 国会対応業務による超過勤務の縮減に向けて、国会等に一層の御理解と御協力をお願いする。
〇 働き方に関する価値観やライフスタイルが多様化する中、職員がその希望や置かれている事情に応じて能力を発揮できるようにすることも重要である。テレワークをはじめとする柔軟な働き方を一層促進するため、フレックスタイム制及び休憩時間制度の柔軟化について職員団体の皆さんの意見も聴きながら、本年度内に措置する。
〇 勤務間インターバルの確保等についても引き続き検討を行う。
〇 職員の健康増進は、職員のWell-being実現の土台となるものである。各府省における健康管理体制の充実に向けて、官民の実態等を調査し、取組を進めていく。
〇 このほか、公務員人事管理に関する報告においては、人材の確保及び育成、能力・実績に基づく人事管理の推進、仕事と家庭の両立支援、ハラスメントの防止についても言及する。
と回答し、最後に「繰り返しになるが、本当に皆さまの日頃からの努力に心からの感謝をお伝えする」と述べた。
これを受け、武藤議長は、以下のとおり公務員連絡会としての見解を述べ、交渉を締めくくった。
(1) 本年の月例給については、初任給の引上げと30歳台半ばまでの職員が在籍する号俸について引上げるとの回答があった。
このことは、公務における人材確保や非常勤職員の待遇改善にも寄与することから、一定の評価はできるものの、俸給表全体を改定するための較差に至らなかったとはいえ、われわれが求めた全世代への配慮の面からは決して満足のいくものではない。
(2) 一時金について、0.10月引き上げるとの回答であった。
3年ぶりに支給月数増となることは、コロナ禍前の水準の回復には至らないものの、組合員の期待に一定程度応えたものと受けとめたい。
しかし、引上げ分をすべて勤勉手当に充てること、また、勤勉手当の支給月数の引上げ分の一部を用いて上位の成績区分に係る原資を確保することは、交渉・協議を通じて各期0.01月分の最小単位に止まるとしても、最近の物価上昇等の世代を問わない影響、また新型コロナウイルス感染症の感染拡大のもと、懸命に職務に従事している職員の実情からして極めて遺憾である。
(3) テレワークに関する給与面での対応の検討のほか、能率的で活力ある公務組織の実現に向けて、給与制度のアップデートに向けて取り組みを進めるとのご発言があった。定年引上げに係る国公法附則で検討事項とされた給与等の課題も含め、引き続き、公務員連絡会との交渉・協議、合意に基づく対応を求めておく。
(4) 柔軟な働き方に関連して、フレックスタイム制及び休憩時間制度の柔軟化について本年度内に措置することをはじめ、人事院の「テレワーク等の研究会」を中心に、勤務間インターバルの確保等について検討を行った上で、必要な措置を行うとのことだが、引き続き、職場実態と組合員の生活実態を踏まえ、交渉・協議を通じて積極的に意見反映をしていく。
(5) 長時間労働の是正について、人事院の「勤務時間調査・指導室」による新たな取組を大いに期待するが、是非とも各省への指導等をはじめとして、人事院としての主体的な役割を積極的に発揮していただきたい。
公務員連絡会としても、新型コロナウイルス感染症への対応という平時ではない状況下の今だからこそ、特例業務や他律的業務の部署の指定の範囲等も含め、改めて各府省労使間で真摯に超過勤務縮減に向けた議論を行うなど必要な対応をはかっていきたい。
(6) 終わりに、先程総裁からも職員に対するねぎらいの言葉をいただいた。第7波と言われる新型コロナウイルス感染症における最大の感染拡大の波が訪れている中で、職員は国民の安心・安全のため、高い使命感と責任をもって懸命の奮闘を続けている。そのような中で、人事院におかれては、職員の給与や勤務条件の確保に向けて、より一層の努力をお願いする。
(7) 今日の回答については、機関に持ち帰って報告し、われわれとしての最終的な態度を決定することとしたい。