TOP 公務労協情報 2023春季生活闘争中央行動を実施-3/14
公務公共サービス労働組合協議会 公務員連絡会
2023年度 公務労協情報 No. 12

2023春季生活闘争中央行動を実施-3/14

 公務員連絡会は14日、2023春季要求の実現をめざして中央行動を実施した。引き続く新型コロナウイルス感染症の影響も踏まえ、人事院前での支援行動、また全国からの組合員の参加は見送られたが、全電通会館で開かれた中央集会には、各構成組織の専従役職員を中心とした約50人が集まった。賃金の積極的な引上げに向け連合の取組に結集するとともに、非常勤職員の待遇改善、超勤縮減施策の具体化などをめざし、回答指定日に向け闘う決意を固めた。

主催者を代表してあいさつをする武藤議長

 中央集会では、冒頭、主催者を代表して武藤議長が「コロナ禍における厳しい社会情勢のもと、職場や地域で国民生活に不可欠な公務・公共サービスの推進に果敢に取り組んで頂いていることに敬意を表したい。総務省が2月24日発表した1月の消費者物価指数では、前年同月比4.2%上昇の104.4%となり、日銀が物価上昇目標で掲げる2%の2倍以上であり、第二次オイルショックでインフレが続いた1981年9月以来、41年4ヶ月ぶりの高い伸びとなっている。また、厚生労働省が3月7日に発表した1月の毎月勤労統計調査では、物価上昇を加味した実質賃金は前年同月比4.1%減で10ヶ月連続で減少しており、消費税率8%への引上げの影響で物価上昇した2014年5月以来、8年8ヶ月ぶりの下落率となっており、大幅な賃金引き上げが極めて重要だ。このようななか、連合は2023春闘において定昇を含め5%程度の賃上げなどを掲げ、3月14日から16日を先行組合のヤマ場におき精力的な交渉が展開されている。一方、私ども公務員連絡会は、2月20日に河野公務員制度担当大臣、22日に川本人事院総裁とに要求書を提出して以降、それぞれの職場で昼夜職務に全力を尽くしている組合員の労苦に報いるため、賃金引き上げをはじめとする労働条件の改善に向け、各級段階での交渉・協議、人事院地方事務局への対応、各構成組織の取組などを積み上げている。本日は、この後、書記長クラスによる交渉が行われるが、3月22日の川本総裁と23日の河野大臣との委員長クラスによる最終回答交渉に向け、闘争態勢を堅持しつつ取組を強化しなければならない。私たちを取り巻く情勢は厳しいものがあるが、公務員連絡会は民間春闘を盛り上げ、全国の仲間の皆さんとともに本日の行動を貫徹することを確認しよう」と強く訴えた。

 このあと基調提起に立った森永事務局長は、佳境を迎える連合の民間春闘情勢を報告するとともに、公務における春闘課題に触れながら、この後行われる人事院、内閣人事局に対する書記長クラス交渉におけるポイントを中心に提起した。

 構成組織決意表明には、前田国公連合・税関労組横浜地区本部執行委員長、小桧山福島県高教組書記長、遠藤林野労組中央執行委員が、それぞれの取組課題を報告し、全力で闘い抜く決意を述べた。

 最後に、人事院前交渉支援行動の代わりとして、武藤議長の発声による「団結がんばろう」で、集会を締めくくった。

この日に行われた人事院給与局長、職員福祉局長との交渉経過は次のとおり。

<職員福祉局長交渉の経過>
 荻野職員福祉局長との交渉は、13時30分から行われた。
 森永事務局長が、現時点での回答を求めたのに対し、荻野局長は次のとおり答えた。

1.労働時間の短縮、休暇等について
○ 国家公務員の超過勤務については、勤務時間調査・指導室において、勤務時間の管理等に関する調査を昨年6月から実施しており、客観的な記録を基礎とした超過勤務時間の適正な管理について指導を行っている。
また、同室の調査や、各府省の令和3年度の整理、分析及び検証の状況の報告を踏まえて実施している各府省人事担当課長等へのヒアリングの機会を通じて、特例業務の考え方や、他律的な業務の比重が高い部署の指定の考え方、業務の状況を踏まえた指定の見直しについて、各府省における運用の統一がより図られるよう指導・助言を行ったところである。
さらに、令和3年度の整理、分析、検証の結果については、昨年と同様に全府省の状況を取りまとめたものと、今回からは各府省別の状況とを併せて、先日、職員団体の皆さんにお示ししたところである。
引き続き、制度の適切な運用が図られるよう、必要な指導等を行ってまいりたい。

○ フレックスタイム制及び休憩時間制度の柔軟化に当たっては、本年4月の制度改正の施行に向けて、各府省における円滑な実施を支援するため、内規や表計算アプリによる申告様式の例、職員向け周知用資料を作成して各府省に提供した。各府省において適切な運用がなされるよう、引き続き、助言・指導を行ってまいりたい。

○ 公務における勤務間インターバル確保の方策については、昨年1月から学識経験者により構成する研究会を開催し、各府省の運用状況や民間の動向等を踏まえつつ議論を行ってきており、本年度内に最終報告を得たいと考えている。最終報告を取りまとめる過程で職員団体の皆さんから聴取した意見も踏まえ、引き続き、検討を進めていくこととしたい。

○ 両立支援制度を含む職員の休暇、休業制度については、従来より情勢適応の原則の下、民間における普及状況に合わせることを基本に、適宜見直しを行ってきたところであり、引き続き民間の動向等を注視してまいりたい。
 また、国家公務員の定年が段階的に65歳まで引き上げられ、今後は、介護と仕事との両立支援が一層重要になることから、「令和4年度民間企業の勤務条件制度等調査」において、民間企業における介護のための短時間勤務制度について調査を実施したところであり、今後も社会情勢等を踏まえつつ、制度の改善や環境整備に努めていきたい。
さらに、両立支援制度の活用については、令和4年4月から各省各庁の長等に対して育児休業を取得しやすい勤務環境の整備に関する措置等を義務付ける改正人事院規則等を同年2月17日に公布・発出しており、これに伴い、平成30年3月に本院が発出した「仕事と育児・介護の両立支援制度の活用に関する指針」を改正した。
なお、「出生サポート休暇」については、各府省に対して、制度担当者向けのQ&Aを配布し、プライバシーの配慮等について周知啓発や指導を行うとともに、職員向けのリーフレット及びQ&Aを配布し、人事院HPにも掲載した。また、本年2月には、不妊治療と仕事の両立に関するシンポジウムを開催したところである。職員団体の皆さんにもご参加・ご視聴頂き感謝申し上げる。引き続き、両立支援制度を活用したい職員が取得できるよう、各府省への指導、周知啓発等を行ってまいりたい。

2.非常勤職員の休暇について
○ 非常勤職員の休暇制度等については、業務の必要に応じてその都度任期や勤務時間が設定されて任用されるという非常勤職員の性格を考慮しつつ、民間の状況等を考慮し、必要な措置を行っている。近年の措置を挙げれば、結婚休暇の新設及び忌引休暇の対象職員の要件の削除(平成31年1月施行)、夏季休暇の新設(令和2年1月施行)、出生サポート休暇、配偶者出産休暇及び育児参加のための休暇の新設並びに産前休暇・産後休暇の有給化(令和4年1月施行)などがある。
 今後も、引き続き民間の状況等について注視し、必要に応じて検討を行ってまいりたい。

3.障害者雇用について
○ 令和4年6月1日現在において、国の機関全体の実雇用率は2.85%で、全ての機関において法定雇用率(2.6%)を達成しているものの、今後、国の法定雇用率は令和6年4月から2.8%、同8年7月より3.0%に引き上げられる方向で検討されている。
障害を有する職員が自らの希望や障害等の特性に応じて、無理なく、かつ、安定的に働くことができるよう、平成30年12月にフレックスタイム制の柔軟化等を実現するための人事院規則等の改正(平成31年1月施行)を行うとともに、公務の職場における障害者雇用に関する理解を促進し、障害を有する職員が必要な配慮を受けられるよう、「職員の募集及び採用時並びに採用後において障害者に対して各省各庁の長が講ずべき措置に関する指針」を平成30年12月に発出し、各府省に対して、当該指針に沿って適切に対応することを求めている。
 このほか、厚生労働省と連携して、各府省における合理的配慮事例の情報共有などの支援を行っており、今後とも、必要に応じて各府省への支援を行ってまいりたい。

4.健康・安全の確保等について
○ ハラスメント防止対策について、人事院は、ハラスメント防止等の措置を講じるための人事院規則等に基づき、これまで、研修教材の作成・提供や、各府省のハラスメント相談員を対象としたセミナーの開催など、各府省に対する支援を行ってきている。
また、令和4年12月から同5年1月にかけて、各府省における相談体制等に係る実情・課題を把握するためのアンケート調査を実施したところである。今後、この結果も踏まえて必要な対応を検討していく。
さらに、「幹部・管理職員ハラスメント防止研修」について、組織マネジメントの観点も反映したより実効性のあるものとなるよう研修内容を見直して令和5年度から実施することとし、研修の具体的な内容の企画等を進めている。
今後も、各府省のハラスメント相談員を対象としたセミナーを引き続き開催し、研修用教材の改訂等を行うなど、各府省においてハラスメント防止対策が適切に実施されるよう、必要な支援・指導を行ってまいりたい。また、苦情相談を含めた公平審査制度において、パワー・ハラスメントに関する事案についても人事院の役割を果たしてまいりたい。

○ 心の健康づくり対策については、平成16年3月に発出した「職員の心の健康づくりのための指針」を基本として対処しており、これまでも「こころの健康相談室」の運営など様々な取組を進めてきている。引き続き、各府省と連携しつつ、適切に対応してまいりたい。
なお、「こころの健康相談室」については、令和4年度からは、より相談しやすい環境の整備に資するため、オンラインによる相談を本院及び一部地方事務局において実施している。令和5年度からは、全ての窓口でオンライン相談に対応できるよう、各地方事務局(所)において準備を進めているところである。

○ 新型コロナウイルス感染症への対応については、これまで、感染拡大防止に資するよう、職場における感染拡大防止対策の周知、柔軟な時差出勤のための勤務時間割振りの特例措置、出勤困難な場合の特別休暇の取扱いに関する通知の発出、予防接種を受ける場合等における職務専念義務の免除などの対策を講じてきたところである。政府において進められている同感染症の感染症法上の位置付けの変更に係る検討を踏まえて、先日、マスクの取扱いについて通知を発出したところである。マスク以外の対応については、 職員団体の皆さんの意見も聞きながら、必要な検討を行ってまいりたい。

 回答に対し、森永事務局長は以下の課題について、職員福祉局長の見解を質した。

(1)要求提出の際、総裁から「公務を巡る情勢は厳しい状況にある」との発言があった。2023年の春季段階における認識如何。

(2)昨日(13日)開催された「テレワーク等の柔軟な働き方に対応した勤務時間制度等の在り方に関する研究会」において最終報告に向けた議論が行われたと承知している。この間、公務員連絡会としては、研究会からのヒアリングへ対応し、最終報告に向けた意見も提出させていただいた。研究会における精力的な議論に敬意を表するとともに、取りまとめに向けた、これまでの職員福祉局の努力を多としたい。
 今後、研究会の最終報告をベースとして、各課題に関わって、具体の措置に向けてどのように検討を進めていくのか、スケジュール感含めて明らかにされたい。なお、検討に当たっては節目節目での情報共有と丁寧な協議を求めておく。

(3)子ども家庭庁が本年4月に発足するが、先頃、「こども家庭庁における働き方改革の基本方針及び目標について」が公表された。そのなかで、具体の達成目標と行動目標が定められ、勤務間インターバル11時間の確保なども明記されており、研究会での議論を先取りする形で実践されることとなるが、人事院としての受け止め如何。

(4)超過勤務時間の縮減について、「勤務時間調査・指導室」が設置されて約1年が経過することとなるが、この間の取組状況等について説明されたい。また、長時間労働を是正していくことについては、人事院と政府、われわれ組合としても同じ認識で取り組みを進めていくことが重要だと考えており、改めて、人事院としての決意を確認しておきたい。

(5)①ゴールデンウィーク明けの5月8日に新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが現在の「2類」から季節性インフルエンザと同じ「5類」に引き下げられることになっている。この間、私たちとの協議も踏まえて、職員福祉局関係では、勤務時間の割り振りの特例、妊娠中の女子職員の業務軽減、予防接種を受ける場合等の職務専念義務免除、職員又はその親族に発熱等の風邪症状が見られた場合の休暇関係等について、適切な措置を講じていただいた。
 今後、類型変更に伴って、これまで措置されてきた施策の見直しに向けた検討が進められることになると考えるが、その影響は国家公務員だけにとどまらず、地方公務員、独法、政府関係法人にも波及することとなるので、政府の類型移行に向けた検討状況等も十分に見極めて、見直しに当たっては、公務員連絡会との前広かつ丁寧な協議を求めるが認識如何。
 ②新型コロナウイルス感染症に関わって、非常勤職員も常勤職員と同様の措置が講じられてきた。この間も、非常勤職員の休暇制度については、公務員連絡会と人事院との協議の場において問題意識の共有をはかりつつ、改善につなげてきたが、引き続き、常勤職員との均等待遇をはかる観点から無給休暇の有給化に向けて検討を継続することを強く求めるが認識如何。

 これに対し、荻野職員福祉局長は次のとおり回答した。

(1)勤務時間や休暇等について、ことさら社会的な批判や厳しい意見を浴びることはないが、一方で、懲戒事案、不祥事等へ向けられる目は厳しい。国民の目を常に意識して、高い緊張感を持って公務に当たっていく必要があると考えている。

(2)研究会の最終報告については、年度内の取りまとめに向けて精力的に作業を行っているところ。
 公務員連絡会においては、研究会のヒアリングへの参加、また直接ご意見をいただき、改めて感謝を申し上げる。27日目処の研究会としての報告を受け、人事院としてどのようにしていくのかを検討していく。検討の過程では、職員団体の意見も聴きながら進めていく必要がある。
 最終報告に盛り込まれる内容は多岐に渡るため、一律には申し上げられないが、夏の人事院勧告時が節目となるため、できるものについては、一定の方向性が出せるように検討を進めていく。

(3)勤務間インターバルは研究会においても議論していただいている。インターバルをしっかり取ることは健康面でも重要であるが、研究会においては、公務の能率という観点からも有効であるという意見が多くあった。制度を作ることが目的ではなく、しっかりとインターバルをとることが重要である。
 インターバルをしっかり取ることで実感できる効果や、一方で生じてくる課題を積み上げることが非常に重要である。子ども家庭庁の取組は素晴らしいと感じている。期待と関心を持って注視し、成果や課題を共有していく。

(4)勤務時間調査・指導室は、現在35府省について調査を行っている。個別部署の超過勤務の状況を把握し、客観的な記録を基礎とした超過勤務の適正な管理ができているか、超過勤務を行った職員に対し、医師による面接指導が行われているか、また他律部署の範囲やマネジメントについても、指導や助言を行っている。
 取組状況の具体については現在、取りまとめを行っているところ。まとまった時点で、共有させていただく。
 長時間労働の是正について、みなさん方と向いている方向は同じである。職員の健康だけでなく、公務能率の是正、公務を志す人を増やすためにも重要であると感じている。

(5)①マスクの取扱いについては先行して通知を発出したが、今後、5月8日がひとつの区切りとなる。今まで発出した、様々な通知の多くは今の分類を前提としたものであるので、「5類」に移行することになると、政府の検討状況を十分に見極め、対応を検討していく必要がある。その際には職員団体の意見も伺っていく。
  ②非常勤職員の休暇については、非常勤職員の性格を踏まえつつ、民間の状況も考慮して、必要な改善を行ってきている。今後も、民間企業の状況等を注視して、検討を行っていく。

 また、書記長クラス交渉委員から、勤務時間調査・指導室の取組に関し、「各府省への調査は、今後も一定期間、反復的に行っていくのか」という質問があり、荻野職員福祉局長は「これで終了、もう行わない、ということではない。来年度以降の計画や、どれぐらいの頻度で行うか等、これから検討していく」と回答した。

 最後に、森永事務局長から「本日、要求事項すべてについて議論はできなかったが、春季段階において、主要な課題について、お互いの認識は共有できたと考える。とりわけ、職員福祉局マターの課題は、同じ方向で改善に向けて取り組んでいけるものばかりであると強く認識しており、改めて、22日の総裁回答では、われわれの要求内容に則したものとなるよう、積極的な回答を求めて本日の交渉を終えたい」と要請し、職員福祉局長交渉を締めくくった。

<給与局長交渉の経過>
 佐々木給与局長との交渉は、14時から行われた。
 森永事務局長が、現時点での回答を求めたのに対し、佐々木局長は以下のとおり答えた。
1.賃金要求について
最近の経済情勢についてみると、2月の月例経済報告は、景気は「このところ一部に弱さが見られるものの、緩やかに持ち直している。」と基調判断を維持しており、先行きについては、「持ち直していくことが期待される。ただし、世界的な金融引締め等が続く中、海外景気の下振れが我が国の景気を下押しするリスクとなっている。また、物価上昇、供給面での制約、金融資本市場の変動等の影響や中国における感染拡大の影響に十分注意する必要がある。」等としているところ。また、1月の景気動向指数の速報においては、「足踏みを示している」との基調判断を示しており、今後の景気の動向を注視している。
次に雇用情勢についてみると、本年1月の有効求人倍率は1.35倍と昨年同月比で0.15ポイント上昇し、また、完全失業率は2.4%と昨年同月比で0.3ポイント低下している。
今年の春闘について、連合は、賃上げ要求について「各産業の『底上げ』『底支え』『格差是正』の取り組み強化を促す観点とすべての働く人の生活を持続的に維持・向上させる転換点とするマクロの観点から、賃上げ分3%程度、定期昇給相当分(賃金カーブ維持相当分)を含む賃上げを5%程度とする。」との目標を掲げ、その実現に向けて取組を進めることとしているものと承知している。
経団連は、「約30年ぶりの物価上昇という特別な状況の下、物価を重要な要素と考え、『成長と分配の好循環』の形成に向けた正念場との認識を企業労使で深く共有しながら、『賃金決定の大原則』に則り、『人への投資』として『賃金引上げ』と『総合的な処遇改善・人材育成』を積極的に検討し、成長の果実を働き手に適切に分配していくことが望まれる。」とした上で、「近年に経験のない物価上昇を考慮した基本給の引上げにあたっては、制度昇給に加え、ベースアップの目的・役割を再確認しながら、前向きに検討することが望まれる。」とする一方、「収益状況がコロナ禍前の水準を十分回復していない企業においては、労使で真摯な議論を重ね、できる限りの対応を期待したい。」としているところである。 
経済情勢が不透明感を増す中で、順次行われる経営側からの回答の動向を注視していくこととしている。
いずれにしても国家公務員の給与について、人事院としては例年と同様、情勢適応の原則に基づき、国家公務員の給与と民間企業の給与の実態を精緻に調査した上で、その精確な比較を行い、必要な勧告を行うことを基本に臨むこととしている。
諸手当については、民間の状況、公務の実態等を踏まえ、職員団体の皆さんの意見も聴きながら、必要となる検討を行ってまいりたい。
再任用職員の給与については、公務における人事運用の実態や民間企業の再雇用者の手当の支給状況を踏まえ、これまでも見直しを行ってきているところである。
昨年の職員の給与に関する報告においても述べたとおり、人事院としては、定年前再任用短時間勤務職員等をめぐる状況を踏まえた再任用職員の給与について取組が必要と考えており、各府省における人事管理の状況等を踏まえつつ、職員団体の皆さんの意見も聴きながら、引き続き給与の在り方について必要な検討を行ってまいりたい。
社会と公務の変化に応じた給与制度の整備については、公務における人員構成の変化や各府省の人事管理、民間における給与の状況等を踏まえつつ、制度の様々な側面から一体的に取組を進めることとしている。
取組に当たっては、昨年の職員の給与に関する報告においても述べたとおり、関係者等の意見を聴取しつつ、本年夏に具体的な措置についての骨格案を示すことができるよう検討を進め、その後更に関係者と意見交換を行った上で、令和6年にその時点で必要な措置の成案を示すことを目指しているところであり、職員団体の皆さんの意見も伺ってまいりたい。
テレワークに関する給与面での対応については、昨年の勧告時報告で述べたとおり、テレワークの実施に係る光熱・水道費等の職員の負担軽減等の観点から、テレワークを行う場合に支給する新たな手当について、具体的な枠組みの検討を進めていくこととしている。検討に当たっては、テレワークに関する民間企業及び公務の動向を引き続き注視しつつ、手当の支給に関する事務負担等にも留意し、職員団体の皆さんの意見も聴きながら、措置内容をまとめていくこととしたい。
 
2.非常勤職員の給与について
非常勤職員の給与については、平成20年8月に非常勤職員の給与に関する指針を発出し、各府省において適正な給与の支給が行われるよう、必要な指導を行ってきている。この指針は、これまで2度改正し、期末手当及び勤勉手当に相当する給与の支給に関して取り組むべき事項を追加するなどの見直しを行い、これに基づく各府省の取組が進んでいるところである。
また、現在、給与法等が改正された場合の非常勤職員の給与改定の取扱いについて新たに定めることを検討しているところであり、引き続き、職員団体の皆さんの意見も聞きながら常勤職員の給与との権衡をより確保し得るよう取り組んでまいりたい。
 
3.高齢者雇用施策について
定年の段階的引上げに係る各種制度が各府省において円滑に運用されるよう、引き続き、制度の周知や理解促進を図るとともに、運用状況の把握に努め、必要に応じて適切に対応してまいりたい。
また、定年引上げに伴う級別定数措置については、昨年12月23日に人事院から各府省に提示した「令和6年度における級別定数措置に関する考え方」のとおり、役降り後の職務や異動先、ポスト数のほか、定年引上げ後の昇格ペースを含む人事運用などに関する各府省・人事グループの検討を踏まえた上で、必要な級別定数を措置することとしている。

 回答に対し、森永事務局長は以下の課題について、給与局長の見解を質した。

(1)要求提出の際、総裁から「公務を巡る情勢は厳しい状況にある」との発言があったが、2023年の春季段階における認識如何。

(2)第211回通常国会の施政方針演説において岸田総理は、(三)構造的な賃上げの項目において、「まずは、足下で、物価上昇を超える賃上げが必要です。」とした上で、「政府は、経済成長のための投資と改革に、全力を挙げます。公的セクターや、政府調達に参加する企業で働く方の賃金を引き上げます。」としている。勧告制度のもとでの対応となることが前提だが、賃上げの必要性について公務員が除外されるものではないと考えるが、人事院の認識如何。

(3)公務員連絡会としては、連合方針や民間労組の要求動向を踏まえつつ、職員の生活安定をはかり、国民に豊かな公共サービスを提供するためにも、春季要求段階では、「初任給をはじめ全世代にわたって職員の賃金を積極的に引き上げること」を求めておく。
 なお、昨年の人事院の勧告時報告において「最近の物価上昇は2%を超える大きなものとなっており、今後、物価の動向や、これを受けた民間給与の状況や生活面への影響がどうなっていくのか、注視していく必要がある」と言及されていた点に関わって、民間企業では、インフレ手当、ベアの前倒し、臨時の一時金の支給など様々な対応が図られているとの報道にも数多く接しているところであり、社会経済情勢に適応した適正な給与の実現の観点からも、人事院には適切な対応を求めるが、民間春闘の状況含めた人事院の認識如何。

(4)官民給与の比較方法・企業規模については、変更がないということでよいか。

(5)「社会と公務の変化に応じた給与制度の整備」については、各課題のゴールを見据え、公務員連絡会として責任をもって人事院と協議していく。その上で、全ての職員に大きな影響を及ぼす難しい課題ばかりであり、人事院に対しては、これまで以上に丁寧な対応を求めておく。また、できる限り速やかに検討事項の内容を明らかにすることを求めるが、現段階の検討状況如何。
 「今後の公務員給与の在り方に関する有識者意見交換」の実施を行う事を2月13日に発表し、1ヵ月余りが経過をしたが、開催状況等如何。
 また、意見交換される主なテーマも公表されているが、有識者との意見交換ありきで方向性、結論を出すことにはならないことをあえて指摘しておく。その上で、公務員給与の在り方について、とりわけ給与制度のアップデートについては、公務員連絡会との交渉・協議、合意に基づく対応を求めるが認識如何。

(6)昨年冬の一時金についてだが、厚労省、経団連、連合などが調査公表している妥結状況を見ると前年を6%~9%上回る結果となっている。民間における今夏の妥結状況も注視していかなければならないが、仮に一時金の引上げ勧告となった場合の期末、勤勉の配分のあり方等について、決して能力・実績主義の徹底を否定する訳ではないが、民間の考課査定の割合とほぼ均衡がはかられてきた昨年の状況も踏まえて、期末手当への配分も行うべきと考えるが人事院の認識如何。

(7)ゴールデンウィーク明けの5月8日に新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが現在の「2類」から季節性インフルエンザと同じ「5類」に引き下げられることになっている。この間、人事院では、私たちとの協議も踏まえて、給与局関係では、特例的な防疫等作業手当の支給について、適切な措置を講じていただいた。今後、類型変更に伴って、これまで措置されてきた手当についても見直しに向けた検討が進められることになると考えるが、その影響は国家公務員にとどまらず、地方公務員、独法、政府関係法人にも波及することとなるので、政府の類型移行に向けた検討状況等も十分に見極めて、見直しに当たっては、公務員連絡会との前広かつ丁寧な協議を求めるが認識如何。

(8)非常勤職員の待遇改善に関わって、「非常勤職員の給与に関する指針」に基づく各府省における取組状況について昨年末に調査を実施したと承知しているが、その結果如何。
 また、先週9日の参議院内閣委員会において、河野大臣が、非常勤職員の給与改定時期について、「4月遡及が徹底できるように、内閣人事局と人事院、しっかり連携をしてやってまいりたいと思います」と答弁しているが、今後の具体的な対応等について現在の検討状況如何。

 これに対し、佐々木給与局長は次のとおり回答した。

(1)先ほども言及したとおり、プラス面がある一方で、世界的な金融引締め等が続く中で海外景気の下振れが我が国の景気を下押しするリスクがあるといった分析がなされている。企業の業績を見ると総じてみれば改善しているが、他方で個々の業種や企業を見れば、原材料価格、燃料価格の上昇等を受けて業績が悪化している企業もあり注視していく必要がある。

(2)我々の基本的な立場は情勢適応の原則に基づき措置を講じていくということに尽きる。なお、参議院の内閣委員会において、公的セクターについて保育、介護、障害など公定価格で定めた部分の対応が主となると答弁があったものと承知している。

(3)民間企業における、物価の上昇を受けた様々な取組を踏まえて、月例給、一時金それぞれの支給形態に応じて民調でしっかりと把握をしていきたい。

(4)公務と民間で同種同等の業務を行っている業種で比較を行うという原則の下で、民間企業の給与を幅広く把握し、国家公務員の給与に反映させるという観点で、現在の比較対象企業、規模を含めて現行の取扱いが適当なものと考える。

(5)今夏の骨格案の提示に向けて作業を進めている。いずれかの段階でお示しして、皆さんのご意見をしっかりと聞くということが必要であることは認識している。
 有識者による意見交換については、1回目が2月17日、2回目が3月3日、3回目が3月6日にあり、年度内にあと2回予定している。「公務における人材の確保に向けた給与の在り方」「定年引上げを見据えたキャリアの多様化・長期化の中での能力・実績や職責の適切な反映の在り方」「働く環境が変化する中での職員の事情・公務の実情に応じた給与の在り方」と、大きく3つテーマがあり、それぞれのテーマについて有識者から意見をうかがっており、今後ホームページで概要等について随時公表をしていく。

(6)本年のことについてはまだ申し上げられないが、これまでの考え方は、改定がある場合の期末手当と勤勉手当の配分については、引上げの場合は勤勉手当に積み上げ、引下げの場合は期末手当からという対応によって民間の考課査定の割合に近づけていくといった取組をしてきたところ。昨年は民間の割合に追いついていなかったため引き続きそのような対応をした。

(7)新型コロナウィルス感染症については、特段の事情が生じない限り、本年の5月8日から感染症法上の5類に位置づけられ、これに先立ちマスクの着用についての見直しが示された。それ以外の施策については政府における議論を踏まえて必要な対応を行っていく。

(8)指針において各府省に取組を求めている点については、概ね適切に実施されている。給与改定の取扱いについては、指針上は常勤職員の給与改定がなされた際の非常勤職員の給与改定の時期に関する定めがなく、給与の改定時期について常勤職員と同様に取り扱われるべきであると考えている。人事院として指針を改正して、非常勤職員の給与の改定について、常勤職員の取扱いに準じて改定するよう努めることと明記する方向で関係者と調整を進めている。

 交渉委員からは「社会と公務の変化に応じた給与制度の整備」に関わって、人材確保の観点から、全ての職員の労働意欲を引き出すような給与制度の整備となるよう訴えるとともに、地域手当における隣接自治体での格差による影響について発言があった。また、有識者意見交換についてその設置経過と背景について見解を求め、佐々木給与局長は「様々なルートを通じた意見聴取の一環であり、制度について具体的な報告を求めているものでない。給与制度の方向性の大きなあり方について、民間企業の動向等について有識者の意見を聴取しているという位置付けであって、方向性をそこで決めようという意図があって開催をしているわけではないので理解を賜りたい」と答えた。

 最後に、森永事務局長から「春季段階において、主要な課題について、お互いの認識を共有できたと考える。22日の総裁回答では、われわれの要求内容に則したものとなるよう、積極的な回答を求める」と要請し、給与局長交渉を締めくくった。