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公務公共サービス労働組合協議会 公務員連絡会
2023年度 公務労協情報 No. 20

人事院に2023人勧期要求書を提出-6/21

 

 公務員連絡会委員長クラス交渉委員は、6月21日14時00分から、川本人事院総裁との交渉を実施し、「2023年人事院勧告に関わる要求書」(別紙)を提出した。
本年の給与改定勧告に当たっては、公務員連絡会との交渉・協議、合意に基づき行うことを求めるとともに、適切な労働条件等の改善などを求めて交渉を強化していく。

 交渉の冒頭、武藤議長は、
(1)2023年人事院勧告に関わる要求書の提出に当たって、公務員連絡会を代表して一言述べさせていただく。
(2)まずは、本年の職種別民間給与実態調査に尽力いただいた、人事院及び人事委員会の職員のみなさんに心から敬意を表したい。
(3)さて、本年の連合の春季生活闘争においては、定期昇給とベースアップ分を合わせて3.66%アップと、比較可能な 2013闘争以降で最も高い水準を達成している。また、経団連その他の調査結果や、国立印刷局や造幣局における調停結果などを見ても、本年の春季生活闘争は、概ね2%を超えるベアを達成したと総括できる。
 一方で、消費者物価指数は高止まりを続けており、6月6日の厚労省の発表によれば、勤労者の実質賃金は13か月連続でマイナスを記録したところである。このように、引き続き、広範囲に及ぶ物価高は国民生活を直撃しており、私ども公務員にとっても重大な懸念事項になっていることを申し上げておきたい。
 そのため、このような総合的な情勢認識のもと、本年の勧告では、高齢層を含めた全職員に対する月例給および一時金の引上げ勧告を強く求めておく。
(4)職場では、人事院の調査結果などに表れている通り、他律部署を中心に「上限を超えて超過勤務を命ぜられた職員」の割合が減少していないことや、「在庁時間」と「超過勤務時間」との間に大きな乖離が見られた職場があったことなど、引き続き長時間労働が大きな問題となっている。職員が安心・安全に働くことのできる職場環境の整備や、適切な要員と賃金労働条件の確保が必要である。
 さらに本年の勧告では、「社会と公務の変化に応じた給与制度の整備(アップデート)」に関して骨格案が示される予定であると承知している。ここでは、中央で働く職員のみならず地方で働く職員にも十分配慮することを求めておきたい。また、人材確保の観点から若年層職員の処遇改善を行うことはもちろんのこと、中高齢層職員のモチベーションの維持・向上という点も意識していただきたい。
と述べ、その後、森永事務局長が要求事項について説明した。

 これを受けて川本人事院総裁は、「ご要求は確かに受け取りました。最近の公務を巡る情勢は依然として厳しい状況です。人事院としては、国会と内閣に対して必要な勧告・報告を行うという国家公務員法に定められた責務を着実に果たしていく所存です。今後、本年の勧告に向けて、要求された課題について皆さんの意見も聞きながら、検討を進めてまいりたいと考えています。特に公務員の働き方や処遇について、過去には批判的な意見も少なからずあったかと思いますが、近年は少しずつ変化をしているのではないかと感じています。今後職員一人一人がより一層のやりがいを持って働くことができるよう、皆さんと将来に向かった建設的な意見交換を行っていきたいと考えています」と応えた。

(別紙)

2023年6月21日

人事院総裁
 川 本 裕 子 様

公務員労働組合連絡会
議 長 武 藤 公 明
(公 印 省 略)

2023年人事院勧告に関わる要求書

 貴職におかれましては、公務員人事行政にご尽力されていることに敬意を表します。
さて、コロナ禍のもと低迷・抑制を強いられてきた経済・社会生活が徐々に回復しているところですが、円安とウクライナ侵攻による資源価格の高騰等により物価は高止まりし、勤労者の実質賃金は1年以上に亘り減少をし続けています。そのため、低迷する日本の勤労者の賃金を改善することは、現在の日本において最重要とも言える課題となっているところです。
 このような中、連合と各加盟組合は、2023春季生活闘争を粘り強く闘い、その結果、30年ぶりの高水準となる賃上げを勝ち取りました。日本経団連を始めとするその他の調査結果においても、いずれも昨年の数字を大きく上回り、賃金の引上げ傾向が鮮明となっています。民間労働者同様、物価高騰に悩まされる職員についても、賃金の改善が強く求められるところです。
 また、公務職場においては、多様化・複雑化する行政ニーズのもと増大する業務量に見合った要員が確保されておらず、長時間労働が蔓延するなど厳しい環境は改善されていません。良質な公務・公共サービスを確実に提供するためにも、職員が安心し安全に働くことのできる職場環境の整備や必要な要員の確保、賃金労働条件の改善が極めて重要です。
公務員連絡会は、このような認識に基づき「2023年人事院勧告に関わる要求書」を提出します。貴職におかれましては、下記事項の実現に向け、最大限努力されるよう要求します。

1.賃金要求について
(1) 月例給与について
  2023年の給与改定勧告にあたっては、全職員に対する月例給の引上げ勧告を行うこと。なお、較差の配分については、公務員連絡会と十分交渉・協議し、合意に基づいて行うこと。

(2) 一時金について
  一時金については、精確な民間実態の把握と官民比較を行い、支給月数を引き上げるとともに、期末・勤勉の適正な配分を行うこと。

2.「社会と公務の変化に応じた給与制度の整備」について
(1) 見直しの方向性について、引き続き、公務員連絡会に対する早い段階での情報提供と連絡会との協議を行うこと。

(2) 見直しにあたっては、中央で働く職員のみならず地方で働く職員にも十分配慮すること。

(3) 月例給について
 ① 公務における人材確保の観点から、引き続き初任給を中心とする若年層における民間賃金との格差解消を図ること。
 ② 定年の段階的引上げが実施段階に入ったことを踏まえ、60歳超職員の精確なラスパイレス比較を行うこと。
 ③ 2021年改正国公法附則第16条第2項に基づく、「60歳前後の給与の連続性確保」については、「令和13年(2031年)3月31日までに所要の措置を順次講ずる」とされていることを踏まえ、拙速に進めることなく、官民の状況を見極めた上で実施すること。また、中高齢層職員の職務に対するモチベーションの維持・向上を図る観点を重視すること。

(4) 各種手当について
① 通勤手当や単身赴任手当の改善を行うこと。
 ② 地域手当については、これ以上の地域間格差を拡大しないこと。
 ③ 再任用職員については、生活関連手当の支給をはじめ、その経済的負担や定年前職員との均衡を考慮して改善すること。
   
3.新型コロナウイルス感染症への対応について
  今後再度の感染拡大が明らかとなった場合など、公務員連絡会との交渉・協議を踏まえて、速やかに対応すること。

4.長時間労働の是正と休暇・休業制度の拡充等について
(1) 長時間労働の是正について
  公務職場におけるワーク・ライフ・バランスを実現するため、「働き方改革」等を次の通り進めること。
 ① 各府省に対して、超過勤務の抑制や職員の心身の健康確保、超勤手当の適正な支給など指導を強化すること。
 ② 他律部署の範囲について業務の実態に即して課室よりも細かく指定することや、特例業務の範囲を必要最小限とすることについて、各府省への指導を強化すること。
③ 1か月当たり45時間を超え60時間以内の超過勤務に対する手当の割増率を引き上げること。

(2) 「柔軟な働き方」について
① さらなる「柔軟な働き方」の推進に当たっては、地方で働く職員や対面業務が多い職員、特殊な勤務形態のもとにある職員など、公務職場における多様な働き方の実態を踏まえ、一方的な数値目標や画一的な指導などを行わないこと。
② 「テレワーク等研究会」最終報告で示された通り、公務における「勤務間インターバル」導入に向けた環境整備を行うこと。
③ 「テレワーク等研究会」最終報告で示された通り、夏季休暇の使用期間の拡大や年次休暇の15分単位での使用等について措置すること。
④ 「在宅勤務等手当」の制度設計に当たっては、通勤手当との関係も含めて、過度な事務負担を回避する一方で、より多くの職員が納得できる内容とすること。その際、公務員連絡会と十分な交渉・協議を行うこと。

(3) 休暇・休業制度の拡充について
① ライフステージに応じ、社会的要請に応える休暇・休業制度に向け、公務における各種制度の利用実態や民間における普及状況を精査・検証し、制度の改善や環境整備に努めること。とくに、家族介護を理由とした離職を防止するため、介護休業制度を整備すること。
② 両立支援制度が円滑に活用できるよう、その周知をはかるとともに、育児短時間勤務、育児時間等について、子の年齢要件等取得要件を緩和し、その在り方を改善すること。
③ 妊娠・出産・育児に関わる休暇制度について、休暇を取得しやすい職場環境の整備を行うとともに、民間の動向等を踏まえ、更なる制度の改善を図ること。また、出生サポート休暇については各府省の実態を把握し、必要な対応を図ること。

5.労働諸条件の改善について
(1) 障害者雇用について
国及び地方自治体の法定雇用率が2024年以降さらに段階的に引き上げられること等を踏まえ、関係する府省とも連携し、勤務時間や勤務場所の柔軟化など障害を持つ職員がより働きやすい環境の整備を図ること。

(2) 女性公務員の採用等の推進について
 女性職員の採用拡大や、積極的な登用等に向け、勤務時間制度の柔軟な対応や両立支援策の確保、またハラスメント対策の強化など、人事院として積極的な役割を果たすこと。

(3) 福利厚生施策の充実について
 ① 心の健康づくりについては、勤務条件や職場環境の改善など総合的に取り組むこととし、ストレスチェックや「職員の心の健康づくりのための指針」等に基づく施策の着実な推進に向けて、オンラインも含めたより充実した対応を図ること。
 ② ハラスメントの防止については、一層有効な対策を着実に推進すること。
   とくに、パワー・ハラスメント対策については、人事院規則10-16等に基づいた各府省の取組状況を、引き続き把握するとともに、とくに相談員の専門性の向上や相談員が適切に対応できる体制整備に向けて、必要な指導を行うこと。また、苦情相談、紛争解決における人事院の役割を着実に果たすこと。

6.定年の段階的引上げに伴う各種施策について
(1) 各府省において、高齢職員の増加に伴う中堅・若手職員の昇格の抑制等を回避できるよう、今年度以降、級別定数の柔軟な措置を図ること。

(2) 定年の段階的引上げが完成するまでの間、その円滑かつ安定的な実現のための環境整備に向けて、人事院としての役割を果たすこと。

7.非常勤職員等の制度及び待遇改善について
(1) 均等待遇原則に基づき、全ての非常勤職員等の給与を引き上げること。

(2) 「非常勤職員の給与に関する指針」が改正され、本年4月から適用になったこと等を踏まえ、各府省における月例給および一時金の支給状況を把握し、常勤職員との権衡が図られるよう、必要な指導等を行うこと。

(3) 期間業務職員のみならず、非常勤職員全体の実態を把握し、当該職員の雇用の安定と待遇改善に向け、各府省に対して、適切な運用と必要な改善措置を講じるよう指導すること。

(4) 「テレワーク等研究会」最終報告で示された通り、期間業務職員について勤務時間の柔軟化を図ること。

(5) 非常勤職員の休暇制度等について、常勤職員との均等待遇をはかるため、無給休暇の有給化等の改善を図ること。

(6) 非常勤職員制度の改善に関するこれまでの取組を踏まえ、制度の抜本的改善に向けた検討を継続することとし、公務員連絡会と十分交渉・協議し、作業を進めること。

以上