2024年度基本要求に対する回答を引き出す-12/20
公務員連絡会・幹事クラス交渉委員は、12月20日に内閣人事局との交渉を実施し、 11月30日に提出した「2024年度の基本要求」に対する回答を引き出した。内閣人事局からは平池内閣審議官が対応した。交渉経過は次のとおり。
冒頭、高柳副事務局長が、基本要求に対する回答を求めたのに対し、平池審議官は次のとおり答えた。
一.賃金・労働条件の確保について
国家公務員の給与改定に当たっては、国家公務員の適正な処遇の確保や、国民の
理解を得る観点からも、また、労働基本権制約の代償措置といった観点からも、第
三者機関としての人事院が専門的見地から行った官民比較に基づく人事院勧告を尊
重することが政府としての基本姿勢である。
今後も、国の財政状況、経済社会情勢などを踏まえて対応していく。
二.労働時間、休暇及び休業、人員確保等について
超過勤務手当の支給については、令和3年3月19日の閣僚懇談会等において、国家公務員制度担当大臣から各府省大臣に対し、超過勤務手当の確実な支払いをお願いしているところ。引き続き業務の見直し・効率化に取り組むとともに、職員の勤務時間の見える化などを通じて、適切な勤務時間管理に取り組んでまいりたい。
柔軟な働き方の推進については、職員の希望や事情に応じた時間や場所での勤務を可能にすることが重要であると考えている。そのため、先般の勤務時間法改正によるフレックスタイム制の更なる柔軟化を含め、テレワークやフレックスタイム制を推進するに当たり、これらの制度の周知や、各職場において個々の職員を尊重した働き方を実現する雰囲気の醸成に取り組んでまいりたい。
勤務間インターバルについては、人事院における検討を踏まえ、引き続き政府としても、職員の心身の疲労回復や健康維持に必要な時間が確保されるよう取り組んでまいりたい。
定員管理に関することについては、行政組織担当にしっかり伝えておく。
三.女性参画の推進及び多様性の確保について
女性参画推進については、女性活躍推進法及び「第5次男女共同参画基本計画」を踏まえ、「国家公務員の女性活躍とワークライフバランス推進のための取組指針」に基づき、女性の採用・登用の拡大の取組を進めているところ。
内閣人事局としても、取組指針に基づき、各府省の取組を毎年度フォローアップするとともに、女性の国家公務員志望者拡大に資する戦略的広報の実施、若手からのキャリア形成支援、管理職の意識改革など、各府省の取組を促進させるようなサポートを行うことで、女性活躍の動きを更に加速してまいりたい。
多様性の確保については、平成28年以降、各府省等の人事担当者・ハラスメント担当者を含む全職員を対象とした勉強会等を開催し、国家公務員の性的指向・ジェンダーアイデンティティの多様性に関する理解の促進やハラスメントの防止を一層積極的に推進しているところ。今後も全ての職員が働きづらさや不安を感じることなく、安心して働き続けることができる職場にしていくよう取り組んでまいりたい。
四.福利厚生施策等について
内閣人事局としては、各府省の取組を補完するため、メンタルヘルス及びハラスメント防止講習を提供しているところ。
また、「国家公務員健康増進等基本計画」では、各府省における相談窓口の実施状況や利便性等をフォローアップすることとしており、この結果を踏まえ、各府省の取組を支援してまいりたい。
五.人事評価制度について
人事評価は、あらゆる人事管理の基礎として、能力及び実績を的確に把握して、処遇や人材育成に活用していくことが重要であり、引き続き、適切な運用を図ってまいるとともに、必要に応じて改善にも取り組んでまいりたい。
六.定年の段階的引上げに伴う各種施策について
シニア職員がその知識・経験を存分に発揮し、働き方改革等にもつながるよう、昨年3月に策定した「国家公務員の定年引上げに向けた取組指針」を踏まえた取組を計画的かつ着実に進めてまいりたい。
このため、定年引上げ期間中においては、令和6年度から2年に1度、定年退職者が発生しないことによる新規採用への影響を緩和するための措置を行うこととしており、この取組を進めてまいりたい。
七.非常勤職員制度等について
国の非常勤職員の給与の遡及改定については、人事院の指針や人事管理運営協議会幹事会申合せに沿って、各府省において非常勤職員の基本給の4月からの遡及改定がなされると考えているが、給与法改正法が成立したことから、人事院と内閣人事局から改めて周知を図ったところ。
期間業務職員以外の非常勤職員については、既存の統計調査で職名別の人数規模などを把握しているほか、その処遇等についても、審議会等会議の委員や勤務日数がごく少ない非常勤職員などを除き、過去にボーナスの支給状況等の調査を実施しているところである。更なる調査の実施の是非については、各府省における負担等を考慮しつつ、必要に応じて検討してまいりたい。
八.障害者雇用について
引き続き、人事院が策定した合理的配慮に関する指針等を踏まえ、障害者雇用マニュアルを作成するなど環境の整備に取り組むとともに、各府省における障害者雇用の取組を支援してまいりたい。
これに対して、高柳副事務局長は次のとおり質すとともに重ねて要請をした。
<給与水準について>
まず、「人事院勧告制度を尊重する」ことが内閣人事局としての基本姿勢であることを確認させていただいた。引き続き、その立場でご対応願いたい。
その上で、ご案内の通り、厚労省が8日に公表した10月の毎勤統計によると、実質賃金は前年比2.3%減少し、ついに19カ月連続のマイナスとなった。引き続き、物価上昇に賃金の伸びが追いついていない状態である。
勤労者の賃金の引上げと生活の改善は、目下の最重要課題と言っても良いと理解しているが、国家公務員を含めた勤労者の生活実態を十分に認識した上で、ご対応いただきたい。
<労働時間、休暇及び休業について>
超過勤務について、今年の9月に私どもが組合員に対して行った最新の意識調査がちょうどまとまったところであるが、国公・一般行政職の回答者=約4,500人について、「超勤手当が全額支給されている」と回答した職員が、昨年よりも2.6%悪化し、83.2%にとどまってしまっている。今ほど令和3年3月19日の閣僚懇談会の話があったが、改めて河野大臣より各府省大臣に徹底していただくなど、ご対応をお願いしたい。
柔軟な働き方について、「各職場において個々の職員を尊重した働き方を実現する雰囲気の醸成」とのご回答があった。個々のライフスタイルに合った「働きやすい職場づくり」は、新規採用者を始め、人材確保の重要なファクターであると考えるので、引き続きご努力願いたい。
定員管理について、要求書提出の際にも、私ほか複数の要望を述べさせていただいた。私どもとしては、定員管理のあり方も含めて、別途行政組織担当の皆さんとも意見交換などさせていただきたいと思っているので、その点も含めてしっかりお伝え願いたい。
<人事評価制度について>
今申し上げた、本年の組合員意識調査では、現行の人事評価制度のあり方について、まとまった質問を行っている。詳細な分析は今後になるが、若手職員と中高齢層職員との間で受け止めに相違が見られること、あるいは評価制度が「仕事のモチベーションにつながるとは思えない」と回答した職員が1/3に上っている点などの課題が見られている。要求書提出の際にも申し上げた通り、内閣人事局として、適切な時期に人事評価制度の実態の検証、その上での、各府省に対する指導、改善措置等を講じていただきたい。
<非常勤職員制度について>
給与法の成立に伴って、内閣人事局・人事院として、非常勤職員の基本給の遡及改定を各府省に求めたことについては承知している。その上で、その結果がどうだったかについて、調査・フォローアップをする方向とも聞いているが、そのような理解でよろしいか?その場合、調査結果について、何らかの形で我々にも共有化願いたい。
ところで、本年の組合員意識調査では、初めての試みになるが、常勤の職員に対して、「自らの職場における非常勤職員の実態」について調査したところである。これも詳細な分析は後ほどになるが、同じく国公一般行政職の回答者から、90%を超える職場で、「1年以上働いている非常勤職員が最も多い」との回答があり、あるいは、「非常勤職員がいないと業務が回らない」と回答した職員も50%を超えている。事あるごとに指摘している通り、事程左様に、もはや非常勤職員の存在なくして国公職場は成り立たないという事実を正面から受け止め、法的位置づけの再整理も含めて、検討を行うべきであると考える。
なお、ご回答にあった「過去にボーナスの支給状況等の調査を実施している」点について、これは、平成28年9月の「国家公務員の非常勤職員に関する実態調査」あるいは平成30年10月の「国家公務員の非常勤職員の処遇の状況に関する調査」を指しているものと考える。これらの場合、具体的な給与の水準などが判然としないことや、あるいはデータがやや古く、その後制度の運用も変更になっていること等から考えて、やはり適切な時期に全体像を掴めるような調査があって然るべきと考える。
これに対し、平池審議官は次のとおり答えた。
多くのご指摘・再度のご要望をいただいたので、先ほど回答した点に加え、ポイントを絞って、何点か回答させていただく。
超過勤務手当の支給については、引き続きその趣旨が徹底されるよう対応していく。
定員については、意見交換の件も含め、行政組織担当にしっかり伝えておく。
非常勤職員の給与改定等については、各府省等からその対応状況を後日聞く予定である。調査結果の共有については、ご意見として承った。
非常勤職員制度については、人事院において、各府省の実態等を把握しつつ、非常勤職員制度の適切な運用の在り方等について検討を行っていくものと承知している。内閣人事局としては、人事院における検討を踏まえ、適切に対応してまいりたい。
非常勤職員についての更なる調査の実施の是非については、各府省における負担等を考慮しつつ、必要に応じて検討していく。
また交渉参加者から、「超勤手当の不支給について、中には超過勤務として認めてもらえずにサービス残業となってしまっている実態があることを認識してほしい」「人事評価について、シニア層から不満の声も出ている。65歳定年を迎えるに当たって、評価結果の活用の部分で改善の余地があるのではないか」という意見が出された。
最後に、高柳副事務局長が「以上を持って本年度の基本要求書に関する交渉は終了したい。来年2月には、春闘期の要求書を担当大臣に提出させていただきたいと思うので、その点について、予めよろしくお願いしておきたい」と述べ、回答交渉を終えた。