TOP 公務労協情報 2024年春季要求事項で幹事クラスが内閣人事局、人事院と交渉-3/4,5
公務公共サービス労働組合協議会 公務員連絡会
2024年度 公務労協情報 No. 14

2024年春季要求事項で幹事クラスが内閣人事局、人事院と交渉-3/4,5

公務員連絡会は3月4日に内閣人事局内閣審議官、3月5日に人事院職員団体審議官との交渉を実施し、中間的な回答を引き出した。公務員連絡会は、今後行う書記長クラスの交渉において、より具体的かつ前向きな回答を要求し、回答指定日に向けて交渉を積み上げていくこととした。

<内閣人事局内閣審議官交渉の経過>
 平池内閣審議官との交渉は、3月4日14時00分から行われた。
 冒頭、高柳副事務局長が中間的な回答を求めたのに対し、平池内閣審議官は「先月20日に提出された要求書について、現時点における回答をさせていただく」と述べ、次のとおり答えた。

1.2024年度賃金について
 国家公務員の給与改定に当たっては、国家公務員の適正な処遇の確保や、国民の理解を得る観点からも、また、労働基本権制約の代償措置といった観点からも、第三者機関としての人事院が専門的見地から行った官民比較に基づく人事院勧告を尊重することが政府としての基本姿勢である。
 今後も、国の財政状況、経済社会情勢などを踏まえて対応していく。

2.非常勤職員等の雇用、労働条件の改善について
 非常勤職員制度については、人事院において、各府省の実態等を把握しつつ、非常勤職員制度の適切な運用の在り方等について検討を行っているものと承知している。内閣人事局としては、人事院における検討を踏まえ、適切に対応してまいりたい。
 国の非常勤職員の給与の遡及改定については、人事院の指針や人事管理運営協議会幹事会申合せに沿って、各府省において非常勤職員の基本給の4月からの遡及改定がなされていると考えているが、昨年11月に、人事院と内閣人事局から改めて周知を図ったところ。
 なお、非常勤職員の給与改定等については、各府省等からその対応状況を聞いているところ。
 引き続き、人事院とも連携し、各府省に対して、非常勤職員に関する給与や休暇等の制度の適切な運用を促してまいりたい。
 また、非常勤の両立支援制度については、育児休業について、国家公務員の育児休業等に関する法律や人事院規則の改正により、一昨年10月から育児休業・育児参加のための休暇が取得しやすくなったことを踏まえ、内閣人事局としても、人事院と連携し、引き続き、各府省に対して休暇・休業制度及び育児時間・育児短時間勤務制度の活用を周知していくとともに、適切な運用を促してまいりたい。

3.労働時間、休暇及び休業等について
 超過勤務の縮減のため、各府省等は、「国家公務員の女性活躍とワークライフバランス推進のための取組指針」等に基づき、ルーティン業務の廃止・効率化・デジタル化、マネジメント改革推進のための取組等を進めている。今後とも、勤務時間などの基準を定めている人事院と連携して超過勤務の縮減に取り組んでまいりたい。
 勤務時間管理システムの各府省等における導入状況及び運用の実態、「デジタル社会の実現に向けた重点計画」に基づく人事管理システムの進捗状況の情報提供については、ご意見として承った。
 定員管理に関することについては、行政組織担当にしっかり伝えておくが、引き続き、既存業務の見直しに積極的に取り組みながら、内閣の重要政策に適切に対応できる体制の構築を図ることとしている。
 柔軟な働き方の推進については、職員の希望や事情に応じた時間や場所での勤務を可能にすることが重要であると考えている。そのため、先般の勤務時間法改正によるフレックスタイム制の更なる柔軟化を含め、テレワークやフレックスタイム制を推進するに当たり、これらの制度の周知や、各職場において個々の職員を尊重した働き方を実現する雰囲気の醸成に取り組んでまいりたい。
 勤務間インターバルについては、各職場の実情も踏まえ、人事院と連携し、引き続き政府としても、職員の心身の疲労回復や健康維持に必要な時間が確保されるよう取り組んでまいりたい。

4.障害者雇用について
 人事院が策定した合理的配慮に関する指針等を踏まえ、「公務部門における障害者雇用マニュアル」の改訂を1月に行った。引き続き、環境の整備に取り組むとともに、各府省における障害者雇用の取組を支援してまいりたい。

5.女性参画の推進及び多様性の確保について
 女性活躍推進法及び「第5次男女共同参画基本計画」を踏まえ、「国家公務員の女性活躍とワークライフバランス推進のための取組指針」に基づき、女性の採用・登用の拡大の取組を進めているところ。内閣人事局としても、取組指針に基づき、各府省の取組を毎年度フォローアップするとともに、女性の国家公務員志望者拡大に資する戦略的広報の実施、若手からのキャリア形成支援、管理職の意識改革など、各府省の取組を促進させるようなサポートを行うことで、女性活躍の動きを更に加速してまいりたい。
 多様性の確保については、平成28年以降、各府省等の人事担当者・ハラスメント担当者を含む全職員を対象とした勉強会等を開催し、国家公務員の性的指向・ジェンダーアイデンティティの多様性に関する理解の促進やハラスメントの防止を一層積極的に推進しているところ。今後も全ての職員が働きづらさや不安を感じることなく、安心して働き続けることができる職場にしていくよう取り組んでまいりたい。

6.定年の段階的引上げに伴う各種施策について
 定年引上げ期間中においては、令和6年度から2年に1度、定年退職者が発生しないことによる新規採用への影響を緩和するための措置を行うこととしており、令和6年度は、特例的な定員を1年間の期限付の定員として1,829人措置することとした。
 また、一昨年3月に策定した「国家公務員の定年引上げに向けた取組指針」において、定年の段階的な引上げ期間中に、定年退職者が再任用を希望する場合には、平成25年の閣議決定に準じて、当該職員を公的年金の支給開始年齢に達するまでの間、再任用するものとしており、各任命権者を含め、政府全体で適切に対応してまいりたい。

7.福利厚生施策の充実と働きやすい職場づくりについて
 内閣人事局としては、各府省の取組を補完するため、メンタルヘルス及びハラスメント防止講習を提供しているところ。
 また、「国家公務員健康増進等基本計画」では、各府省における相談窓口の実施状況や利便性等をフォローアップすることとしており、この結果を踏まえ、各府省の取組を支援してまいりたい。

8.公務員制度改革について
 自律的労使関係制度については、多岐にわたる課題があることから、皆様と誠実に意見交換しつつ、慎重に検討してまいりたいと考えている。

 回答に対し、高柳副事務局長は次のとおり内閣人事局の見解を質した。

 2024年度賃金について、ただ今、「第三者機関としての人事院が専門的見地から行った官民比較に基づく人事院勧告を尊重することが政府としての基本姿勢」との回答があった。政治的な思惑に左右されることなく、その姿勢を堅持していただくことを、改めてお願いしておきたい。
 その上で、本年の連合春闘であるが、新聞報道等で分かる通り、「過去最高水準の要求」「昨年を大幅に上回る要求」が並び、多くの組合が目下最終段階の交渉に入っているところである。既に満額回答を得ている組合も少なからずあるが、来週の先行組合の一斉回答以降、中小を含めた結果について、政府としても是非注視していただきたい。
 一方、昨年末の基本要求の際にも紹介した、最新の私どもの組合員意識調査であるが(国公・一般行政職の回答者=約4,500人)、「昨年の今頃と比べた生活」について、2022年から急速に悪化し、「苦しくなった」と回答した組合員が、2021年から10%近く増加している状況である。伸び悩む賃金と高止まりする物価の影響によるものだと考える。「経済社会情勢などを踏まえて」との回答であったが、政府におかれては、このような実情も十分に踏まえて対応いただきたい。
 非常勤職員の給与の遡及改定について、「各府省等からその対応状況を聞いているところ」とのことだが、各府省に対するフォローアップの結果は、どうであったか。各府省とも、常勤職員と同等の対応をすべき非常勤職員については、特に問題なく遡及改定を行ったと理解して良いか。
 また、ご回答にあった通り、期間業務職員制度について、人事院が、昨年の秋に行った調査に基づいて、運用の見直しを行おうとしているものと承知している。私どもとしては、いくつか課題や懸念される点もあると考えているところだが、ただ今、「人事院における検討を踏まえ、適切に対応」との回答があった。内閣人事局としては、当然に個別の協議も行っていると思うが、人事院の示す方向について、現段階で概ね「了」と判断している、と理解して良いか。
 労働時間、休暇及び休業等に関わって、一か月あたりの超過勤務の時間について、先ほどの我々の調査でも、一向に減っていない状態が続いている。内閣人事局としても、様々工夫されているとは思うが、なお一層の努力をお願いしておきたい。
 また、来年度の定員等審査結果について、ワークライフバランスの推進のための定員を406人措置することに加えて、超過勤務の縮減のための定員が、5年時限のもとで100人、新たに措置されることについては評価をしたい。
 しかしながら、指摘するまでもなく、全府省を総計して100人は、いかにも少ないと言わざるを得ない。国会対応を含む通常業務に加え、パンデミックが落ち着いたと思えば、今年もまた年初から大地震が発災し、復旧・復興に向け、多くの職員が困難な業務に従事している状況にある。国民の、公務や公務員に対する見方は、この間の様々な事態の中で大きく変わっているという認識のもと、「災害大国・日本」における公務・公共サービスの維持・強化という観点を基本においた定員管理を行うべきと考える。業務改善やデジタル化は当然として、実際の職員数が総定員法の示す数値を下回っている状態にあることも含めて、定員合理化目標の抜本的な見直しを求めておきたい。
 また、本年4月より始動する勤務間インターバルについて、恐らく少なくない職員が、制度導入自体を認識していない状態にあると考える。各職場においてスムーズに実施できるよう、内閣人事局としても各府省をサポートするようお願いしておきたい。
 定年の段階的引上げに伴う各種施策に関わって、再任用を含む高齢層職員について、定年の段階的引上げが開始された中で、想定よりも定年前再任用短時間を希望する職員が少ないとの報告なども受けている。その主な理由として、住居手当を始めとする各種手当が支給されないことや、常勤職員と比べて期末・勤勉の率が低いことなどが挙げられている。このことは内閣人事局としても十分ご認識だと思うが、ご承知の通り、人事院が取り掛かっている「給与制度のアップデート」の中で、再任用職員の課題も挙げられており、内閣人事局としても、人事院に対して意見反映していただくようお願いしたい。
 また、この間指摘している通り、定年の段階的引上げについては、「当該の高齢層職員に関する諸問題」に限らず、これに伴う、「中堅・若年層職員および公務員志望者に関する問題」でもあると捉える必要があると考える。
 今回、来年度の定員等審査結果によれば、新規採用を確保するための特例的な定員として1,829人が措置される方向となっている。各府省との協議・調整のもとの数値であると受け止めるが、世間は、かつてない「売り手市場」となっており、ただでさえ、人材確保は容易ではない状況にある。今回は「1年時限」の措置となっているが、定年の段階的引上げの完成までの間、着実な新規採用人材の獲得に向け、内閣人事局としても努力をお願いしたい。

 これに対し、平池内閣審議官は「非常勤職員の給与の遡及改定の各府省に対するフォローアップの結果については、現在集計中である。また、期間業務職員制度の運用の見直しについては、人事院とも連携をとりつつ、引き続き適切に対応してまいりたい」と答えた。

 また、交渉委員からは、「定員合理化目標が数字ありき、削減ありきにならないよう改めて求める」「期末・勤勉手当の支給月数については、再任用職員のみが低く抑えられていることに対し不満の声がある」「民間と比較し非常勤職員の時給が低く人材確保の観点からも課題である」等の意見があった。

 これに対し、平池内閣審議官は「定員合理化については、担当に伝えておく。再任用職員の期末・勤勉手当については、人事院に対して意見を言っていきたい。非常勤職員の賃金については、常勤職員との均衡のもと適切に対応すべきものと考える」と答えた。

 最後に、高柳副事務局長が「ご回答は承った。本日段階のご回答として受け止めたい。本日のやり取りを踏まえ、13日の政策統括官との交渉において、再度不明な点を質すとともに、私どもの意見を述べさせていただきたい」と述べ、交渉を締めくくった。

<人事院職員団体審議官交渉の経過>
人事院の大滝職員団体審議官との交渉は、3月5日10時30分から行われた。
冒頭、高柳副事務局長が中間的な回答を求めたのに対し、大滝審議官は「2月20日にいただいた公務員連絡会からの要求書については、現在最終回答に向け、検討を行っているところである。最終回答は、3月の19日以降にさせていただく予定であるが、本日、私の方からは、現段階における状況について、回答させていただく。」と述べ、次のとおり答えた。

1.賃金要求について
 今年の春闘では、連合は、賃上げ要求について「経済社会のステージ転換を着実に進めるべく、すべての働く人の生活を持続的に向上させるマクロの観点と各産業の『底上げ』『底支え』『格差是正』の取り組み強化を促す観点から、前年を上回る賃上げを目指す。賃上げ分3%以上、定昇相当分(賃金カーブ維持相当分)を含め5%以上の賃上げを目安とする。」との目標を掲げ、その実現に向けて取組を進めることとしている、と承知している。
一方、日本経団連は、「物価動向への対応はもとより、2023年より起動を始めた『構造的賃金引上げ』の実現に向けて、賃金引上げのモメンタムの維持・強化を継続できるか、極めて重要な年と位置付けられる。人材の確保・定着に向けた『人への投資』の重要性を踏まえながら、『分厚い中間層』の形成に向けた企業の社会的な取組みとの認識の下、各企業において、2023年以上の意気込みと決意をもって、賃金引上げの積極的な検討と実施を求めたい。」とした上で、「月例賃金の引上げにあたっては、物価上昇が続いていることに鑑みれば、制度昇給に加え、ベースアップ実施を有力な選択肢として検討することが望まれる」としている、と承知している。
こうした状況の中、3月中旬以降、経営側からの回答・妥結が行われるので、人事院としてもその動向を注視しているところである。

○ 国家公務員の給与について
 国家公務員の給与について、本年も情勢適応の原則に基づき、民間給与の実態を精緻に調査した上で精確な比較を行い、必要な勧告を行うという基本的スタンスに変わりはない。
官民給与の比較方法については、これまでも必要な見直しを行ってきており、比較対象企業規模を含め、現行の取扱いが適当と考えている。

○ 「社会と公務の変化に応じた給与制度の整備」について
 社会と公務の変化に応じた給与制度の整備については、現下の人事管理上の重点課題に対応するため、①人材の確保への対応、②組織パフォーマンスの向上、③働き方やライフスタイルの多様化への対応のために必要な制度整備に取り組むこととしている。
 要求書にもあるように、初任給をはじめ通勤手当や地域手当等を含めたくさんの要求をいただいている。また併せて、職員団体への情報提供と十分な協議についても要望をいただいている。人事院としては、取組に当たっては、関係者の意見を聴きながら検討作業を進めるという姿勢に変わりはなく、措置内容の具体化に向け、既に議論を始めさせていただいているところである。引き続き職員団体の意見も伺ってまいりたい。

2.非常勤職員等の雇用、労働条件の改善について
 非常勤職員の任用、勤務条件等については、その適切な処遇等を確保するため、法律や人事院規則等で規定しており、これまでも職員団体の意見も聴きながら民間の状況等も考慮しつつ見直しを行ってきているところである。なお、令和5年の勧告時報告において言及した「非常勤職員制度の運用等の在り方の検討」については、各府省の実態を踏まえて公募要件の在り方を含め適切な運用等の在り方について検討を進めている。

 非常勤職員の給与については、平成20年8月に非常勤職員の給与に関する指針を発出し、指針に基づく各府省の取組状況等について定期的にフォローアップを行っているほか、機会を捉えて各府省から状況を聴取し、必要な指導を行ってきているところである。
昨年4月に、給与法等の改正により常勤職員の給与が改定された場合には、非常勤職員の給与についても常勤職員に準じて改定するよう努める旨を追加したところであり、この改正に係る各府省の取組状況についても、フォローアップを含め、引き続き適切に対応してまいりたい。

 非常勤職員の休暇制度等については、業務の必要に応じてその都度任期や勤務時間が設定されて任用されるという非常勤職員の性格を考慮しつつ、民間の状況等を考慮し、必要な措置を行っている。近年の措置を挙げれば、結婚休暇の新設及び忌引休暇の対象職員の要件の削除(平成31年1月施行)、夏季休暇の新設(令和2年1月施行)、出生サポート休暇、配偶者出産休暇及び育児参加のための休暇の新設並びに産前休暇・産後休暇の有給化(令和4年1月施行)などがある。
今後も、引き続き民間の状況等について注視し、必要に応じて検討を行ってまいりたい。

3.労働時間の短縮及び休暇、休業等について
○ 超過勤務の縮減等について
 超過勤務の縮減等については、勤務時間調査・指導室において、各府省を直接訪問して勤務時間の管理等に関する調査を令和4年度から実施しており、他律部署・特例業務の範囲が必要最小限のものとなるよう指導等を行っている。令和6年度以降は、調査対象を増加させるなど、勤務時間の管理等に関する調査・指導を更に充実させていくこととしており、引き続き、適切に各府省に対する指導を行ってまいりたい。
なお、業務量に応じた要員の確保について、令和6年度から国家公務員の超過勤務の縮減のための定員が措置されると承知しているが、今後も、各府省における状況を踏まえ、必要に応じ定員管理を担当する部局に対して協力を依頼していくこととしている。

○ 休暇・休業制度について
 両立支援制度を含む職員の休暇、休業等については、これまでも情勢適応の原則の下、民間における状況等を踏まえて、必要な見直しを行ってきており、今後も社会情勢等も踏まえながら、必要な制度改善の検討を行ってまいりたい。

○ 柔軟な働き方に対応した勤務時間制度等について
 フレックスタイム制を始めとする柔軟な働き方に対応した勤務時間制度については、これまでも職員団体の意見も聴きながら見直しを行ってきており、今般の措置内容も含め、今後とも職員団体の意見も聴きながら、適切に対処してまいりたい。
なお、昨年の勧告時に報告したとおり、国家公務員についても、取組を早期に推進していく必要があることから、本年4月に、勤務間のインターバル確保に関する努力義務規定を人事院規則に設けることとしている。その上で、適切な行政サービスの提供も重要であることから、現状、制度上の厳格な基準として、人事院規則等で「確保すべき時間」を措置することはせず、各職場において、どの程度の時間を確保することを目指すのかの参考となるよう、「テレワーク等の柔軟な働き方に対応した勤務時間制度等の在り方に関する研究会」の最終報告(令和5年3月)で示された「11時間」を目安として示す方向で検討している。
4月から導入される在宅勤務等手当については、各府省において円滑に運用されるよう、引き続き、制度の周知や理解促進を図るとともに、必要に応じて運用状況の把握に努めるなど、適切に対応してまいりたい。

4.障害者雇用について
 令和5年6月1日現在において、国の機関全体の実雇用率は2.92%で、全ての機関において法定雇用率(2.6%)を達成しているものの、国の法定雇用率は令和6年4月から2.8%、同8年7月より3.0%と、段階的な引上げが予定されている。
人事院としては、公務の職場における障害者雇用に関する理解を促進し、障害を有する職員が必要な配慮を受けられるよう、「職員の募集及び採用時並びに採用後において障害者に対して各省各庁の長が講ずべき措置に関する指針」を平成30年12月に発出し、各府省に対して、当該指針に沿って適切に対応することを求めている。
このほか、厚生労働省と連携して、各府省における合理的配慮事例の情報共有などの支援を行っており、今後とも、必要に応じて各府省への支援を行ってまいりたい。

5.女性参画の推進及び多様性の確保等について
 女性参画の推進については、人事院としても、これまで柔軟な働き方に対応した勤務時間制度等の整備、超過勤務の縮減、仕事と生活の両立支援策の拡充やハラスメント防止対策など、男女ともに働きやすい勤務環境の整備を積極的に進めており、女性の採用・登用の拡大に向けた様々な施策を行ってきているところである。引き続き、各府省の具体的な取組が進むよう支援してまいりたい。
ジェンダーアイデンティティの多様性に関しては、人事院は、人事院規則10―10(セクシュアル・ハラスメントの防止等)により、職員はセクシュアル・ハラスメントをしてはならないとしているところであり、平成29年に同規則運用通知を改正し、偏見に基づく言動について、セクシュアル・ハラスメントに含まれることを制度上明確にするなどの施策を講じている。また、研修等により各府省への周知・啓発を行ってきている。
今後も、「性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律」(LGBT理解増進法)に基づく基本計画や指針等の策定に向けた政府全体での検討を踏まえながら、人事院としての役割を適切に果たしてまいりたい。

6.定年の段階的引上げに伴う各種施策について
 定年の段階的引上げに係る各種制度が各府省において円滑に運用されるよう、引き続き、制度の周知や理解促進を図るとともに、運用状況の把握に努め、必要に応じて適切に対応してまいりたい。
定年の段階的引上げに伴う級別定数措置については、今後とも、役降り後の職務や異動先、ポスト数のほか、定年引上げ後の昇格ペースを含む人事運用などに関する各府省・人事グループの検討を踏まえた上で、必要な級別定数を措置することとしている。
また、定年の段階的引上げ期間中の暫定再任用制度においても、できるだけ職員の希望が叶い活躍していただけるよう、人事院としても引き続き状況の把握に努め、必要な取組を進めてまいりたい。

 なお、「社会と公務の変化に応じた給与制度の整備」のメニューの一つとして位置づけている再任用職員の給与については、近年、高齢層職員の能力及び経験の活用が進められてきている中で、再任用職員が公務上の必要性により転居を伴う異動を余儀なくされるなど、人事運用の変化が生じてきている。こうした状況を踏まえ、人事院としては、社会と公務の変化に応じた給与制度の整備の一環として、定年前再任用短時間勤務職員や暫定再任用職員について多様な人事配置を可能とし、その活躍を支援するため、再任用職員に支給される手当の範囲について拡大することを検討しており、各府省における人事管理の状況等を踏まえつつ、職員団体の意見も聴きながら、引き続き必要な検討を行ってまいりたい。

7.福利厚生施策の充実について
○ 心の健康づくり対策について
 心の健康づくり対策については、「職員の心の健康づくりのための指針」を基本として、管理監督者をはじめとする職員に対する研修の充実・強化、職員の意識啓発のためのガイドブックの作成、心の不調を未然に防止するためのストレスチェックの導入、心の不調への早期対応のための「こころの健康相談室」の運営、円滑な職場復帰の促進、再発防止のための「こころの健康にかかる職場復帰相談室」の運営や「試し出勤」の活用に取り組んでいる。
なお、「こころの健康相談室」については、より相談しやすい環境の整備に資するため、オンラインによる相談を令和4年度から一部の窓口で開始し、令和5年7月には、全ての窓口でオンライン相談に対応できる体制としている。引き続き、オンライン相談の活用を周知するなど、取組を一層推進してまいりたい。

○ ハラスメント防止対策について
 ハラスメント防止対策については、ハラスメント防止等の措置を講じるための人事院規則等に基づき、これまで、研修教材の作成・提供や、各府省のハラスメント相談員を対象としたセミナーの開催など、各府省に対する支援を行ってきている。
また、令和5年度から「幹部・管理職員ハラスメント防止研修」について、組織マネジメントの観点も反映したより実効性のあるものとなるよう見直して実施する等の取組を行っている。
 今後も、各府省のハラスメント防止対策の実施状況を把握するほか、各府省のハラスメント相談員を対象としたセミナーの開催、研修用教材の改訂等を外部の専門家と連携しつつ行うなど、各府省においてハラスメント防止対策が適切に実施されるよう、必要な支援・指導を行ってまいりたい。また、苦情相談を含めた公平審査制度において、パワー・ハラスメントに関する事案についても人事院の役割を果たしてまいりたい。

 回答に対し、高柳副事務局長は次のとおり人事院の見解を質した。
1.賃金要求について
 昨年の勧告においては、若年層を重点に置きつつも、全職員の月例給の改善が行われ、また、26年ぶりの改定となった期末手当を含む一時金のプラス改定が行われた。 これらの点については、一定の評価をしているところではあるが、実質賃金が2年連続でマイナスとなる一方、物価はなおも高止まりを続けている。このような中、我々の最新の組合員の意識調査においても、「昨年より生活が苦しくなった」と回答した組合員が、2021年に比し10%近く増加するなど、生活に対する不満・不安感が強まっているという状況である。
 そのため、本年の民間春闘の妥結状況を踏まえた官民比較の結果に基づくものだとは言え、賃金の引上げが、現在、政労使共通した最大の政策課題となっていることも踏まえ、引き続きの給与改善を今の段階から求めておきたい。

2.「社会と公務の変化に応じた給与制度の整備」について
 この課題に関する、個別の要求事項については、要求書に記載の通りであるが、既に意見表明している通り、現時点での私どもの総合的な見解は、次の3点である。すなわち、
①人材確保が喫緊の課題であることについては、大いに同意するし、そのために、新規採用者・若手職員の処遇改善や、優秀な民間人材獲得に向けた方策を進めることについても反対するものではない。しかしながら、一方で在職者、特に、地方で勤務する、一般職採用の中堅層以上の非管理職職員には制度見直しによるメリットがほとんど感じられないものとなっていると指摘せざるを得ない。
さらに、各種手当等においてマイナスとなることが想定される職員層にとっては、職務への意欲を減退させる要因となることが懸念される。これらの職員は数も多く、その影響は公務全体に及ぶと理解すべきである。改めて、この点に配意するよう強く求める。
②成績優秀者や実績を上げた者を適正に評価すること、それ自体は理解の範疇にあるが、その前提となるのは、人事評価や成績判定の客観性・合理性・納得性が必要十分に担保されていることである。よって、この間指摘している通り、見直しを行うのであれば、併せて評価制度等の検証を行うべきものと考える。
③各種手当について、一部を除き今なお全体像が不明瞭である。これらは見直しの方向性によっては、個々の職員に多大な影響を与えるものであり、我々との十分な協議のもと、より早い段階での方向性の明示を求める。

3.非常勤職員等の雇用、労働条件の改善について
 今ご回答があった通り、昨年の「公務員人事管理に関する報告」における問題意識の表明以来、期間業務職員に関する全府省調査が行われ、その上で、それらの職員の任用に関するルールの見直しに向けた検討が人事院において行われているものと承知している。これに関しては、連絡会として、現場の実態や調査結果を報告しながら、問題点や懸念される点を含めて、意見表明をしてきたところである。それらをここで繰り返すことはしないが、いずれにしても、この課題は、決して安きに流れることなく、より多角的・総合的な視点からの検討が必要であると指摘しておきたい。
 昨年の給与法改正を踏まえた非常勤職員の給与の遡及改定に関する各府省に対するフォローアップであるが、その結果は、どうであったか。各府省とも、常勤職員と同等の対応をすべき非常勤職員については、特に問題なく遡及改定を行ったと理解して良いか。

4.労働時間の短縮及び休暇、休業等について
 超過勤務については、我々の調査でも決して減少していない。引き続き、「特例業務」や「他律部署」の課題など、各府省に対する指導を強化していただきたい。また要員不足の問題について、引き続き担当部局に対する働きかけを強めていただきたい。
その上で、「令和6年度以降は、調査対象を増加させるなど、勤務時間の管理等に関する調査・指導を更に充実させていく」とのことであるが、その前に、昨年3月10日付で、令和3年度の「上限を超えて超過勤務を命ぜられた職員の割合等」が公表され、また同じく3月29日付で、令和4年の「勤務時間の管理等に関する調査結果」が公表されているが、同種の調査等は、本年も実施されたと理解して良いか。何らか行われたのであれば、いずれ情報提供を願いたい。
 また、4月から導入される勤務間インターバルについて、確保すべき時間の目安としての「11時間」を職員福祉局長通知にて明記する予定であると理解して良いか。
同じく、この4月から導入される在宅勤務等手当について、「必要に応じて運用状況の把握に努める」とのことだが、その結果について、適当な範囲で情報提供をお願いしたい。

7.定年の段階的引上げに伴う各種施策について
 再任用を含む高齢層職員について、定年の段階的引上げが開始された中で、想定よりも定年前再任用短時間を希望する職員が少ないとの報告なども受けている。その主な理由として、住居手当を始めとする各種手当が支給されないことや、常勤職員と比べて期末・勤勉の率が低いことなどが挙げられている。今のご回答にもあった通り、「給与制度のアップデート」にも関連するが、手当はもちろんのこと、再任用職員の全般的な処遇の見直しを求めておきたい。
また、この間指摘している通り、定年の段階的引上げについては、「当該の高齢層職員に関する諸問題」に限らず、これに伴う、「中堅・若年層職員および公務員志望者に関する問題」でもあると捉える必要があると考える。
 その上で、基本要求書の提出の際にも申し上げたことだが、級別定数について、本年もまた、査定が厳しいというような報告も受けているところである。各府省における今年度の状況を踏まえた上で、少なくとも、定年の引上げが完成するまでの間、柔軟な対応を図るよう求めておきたい。

これに対し、大滝審議官は次のとおり答えた。
 特に関心の高い事項について、改めてご意見やご要望をいただいた。担当する部局ときちんと共有することとしたい。また、いくつかご質問もあったので、現段階でお答えできることを申し上げる。

 まず、非常勤給与の遡及改定についてご質問があったが、各府省における常勤職員に準じた非常勤職員の遡及改定状況については、人事院と内閣人事局で調査を行い、現在は、調査結果の集計等を行っているところ。

 次に、超勤関連の調査や結果の公表についてご質問があったが、上限を超えて超過勤務を命ぜられた職員については、現在、「令和4年度」における各府省の状況を取りまとめているところ。また、勤務時間の管理等に関する調査については、今年度も引き続き実施しており、今年度の調査終了後、結果の取りまとめを行うこととしている。
 いずれについても、今後、結果を公表する予定だが、その際には情報提供させていただきたいと考えている。

4月から導入される勤務間インターバルについて、確保すべき時間の目安として 「11時間」を職福局長通知で明記する予定であると理解して良いか、とのご質問もあった。先ほど回答したとおり、目安として示す方向で検討しているが、形式を含め、どのように示すかについては、現在検討中である。

 その他のご意見やご要望については、そのような話があったことを担当部局に伝える。

 また、交渉委員からは、「期末・勤勉手当の支給月数について再任用職員のみが抑制されていることに不満の声がある」「寒冷地手当や特地勤務手当の改善を求める」「不適正な超過勤務がある実態について、民間並みの厳しい指導が必要ではないか」「民間と比較し非常勤職員の時給が低く人材確保の観点からも課題である」「職員の離職防止の観点からも通勤手当の全額支給を求める」等の意見があった。

 これに対し、大滝審議官は「再任用職員の一時金のあり方については改めて強い要求だと認識した。また、手当についても要望として受け止める。超勤については、実態を把握することが難しい面があるが要求は理解した。非常勤職員の賃金や通勤手当の全額支給についても人材確保という面での重要性ということは理解した。それぞれ担当とも共有しておきたい」と回答した。

 最後に、高柳副事務局長が「ご回答は承った。本日段階のご回答として受け止めたい。本日のやり取りを踏まえ、12日の職員福祉局長、給与局長との交渉において、再度不明な点を質すとともに、私どもの意見を述べさせていただきたい。以上申し上げて、本日の交渉を終わりたい」と要請し、交渉を締めくくった。