2024春季要求で書記長クラスが内閣人事局と交渉-3/13
公務員連絡会書記長クラス交渉委員は、3月13日14時から、内閣人事局人事政策統括官との交渉を実施し、2024春季要求に対する現段階における回答を引き出した。
冒頭、森永事務局長が現段階の回答を求めたのに対し、窪田人事政策統括官は次のとおり答えた。
○ 2024年度賃金について
国家公務員の給与改定に当たっては、国家公務員の適正な処遇の確保や、国民の理解を得る観点からも、また、労働基本権制約の代償措置といった観点からも、第三者機関としての人事院が専門的見地から行った官民比較に基づく人事院勧告を尊重することが政府としての基本姿勢である。
今後も、経済社会情勢などを踏まえて対応していく。
○ 非常勤職員等の雇用、労働条件の改善について
非常勤職員制度については、人事院において、各府省の実態等を把握しつつ、非常勤職員制度の適切な運用の在り方等について検討を行っているものと承知している。内閣人事局としては、人事院における検討を踏まえ、適切に対応してまいりたい。
国の非常勤職員の給与の遡及改定については、人事院の指針や人事管理運営協議会幹事会申合せに沿って、各府省において非常勤職員の基本給の4月からの遡及改定がなされていると考えているが、昨年11月に、人事院と内閣人事局から改めて周知を図ったところ。なお、非常勤職員の給与改定等については、各府省等からその対応状況を聞いているところ。
引き続き、人事院とも連携し、各府省に対して、非常勤職員に関する給与や休暇等の制度の適切な運用を促してまいりたい。
○ 労働時間、休暇及び休業等について
超過勤務の縮減のため、各府省等は、「国家公務員の女性活躍とワークライフバランス推進のための取組指針」等に基づき、ルーティン業務の廃止・効率化・デジタル化、マネジメント改革推進のための取組等を進めている。今後とも、勤務時間などの基準を定めている人事院と連携して超過勤務の縮減に取り組んでまいりたい。
定員管理については、国民のニーズを踏まえて、新たな行政需要に的確に対応していくためには、既存の業務を不断に見直し、定員の再配置を推進していくことが重要である。
その上で、新たな行政課題や既存業務の増大に対応するため、各府省官房等から現場の実情を聴取しつつ必要な行政分野に必要な増員を行っているところ。
引き続き、既存業務の見直しに積極的に取り組みながら、内閣の重要政策に適切に対応できる体制の構築を図ることとしている。
○ 女性参画の推進及び多様性の確保について
女性参画推進については、女性活躍推進法及び「第5次男女共同参画基本計画」を踏まえ、「国家公務員の女性活躍とワークライフバランス推進のための取組指針」に基づき、女性の採用・登用の拡大の取組を進めているところ。
内閣人事局としても、取組指針に基づき、各府省の取組を毎年度フォローアップするとともに、女性の国家公務員志望者拡大に資する戦略的広報の実施、若手からのキャリア形成支援、管理職の意識改革など、各府省の取組を促進させるようなサポートを行うことで、女性活躍の動きを更に加速してまいりたい。
○ 定年の段階的引上げに伴う各種施策について
定年引上げ期間中においては、令和6年度から2年に1度、定年退職者が発生しないことによる新規採用への影響を緩和するための措置を行うこととしており、この取組を進めてまいりたい。
○ 公務員制度改革について
自律的労使関係制度については、多岐にわたる課題があることから、皆様と誠実に意見交換しつつ、慎重に検討してまいりたいと考えている。
回答を受けて、森永事務局長は次のとおり、人事政策統括官の見解を質した。
(1) 能登半島地震への対応について
まず初めに触れておかなければいけないのは、今年の1月1日、石川県能登地方を中心に発生した地震の関係である。政府から公表されている被災状況をみると241人の方がお亡くなりになり、現地では、いまだに1万人近くの方々が避難所での生活を余儀なくされている状況にある。引き続き被災者の救援とライフラインの復旧に向けて全力を挙げるとともに、雇用の維持確保など住民の不安解消に向けて国を挙げた取り組みが求められるところ。各省各庁では、様々な対応を行っていると承知しているが、現地の自治体職員や被災地に救援に入っている消防職員、警察、自衛隊、国家公務員、地方公務員、多くの公共サービスに関わる労働者など、災害対応にあたっている人たちをしっかり支えていくことも大切である。能登半島地震に対する内閣人事局としての取組状況如何。
(2) 2024年度給与改定について
①今年の賃上げに向けては、政労使において、「昨年以上の賃上げ」に向けた方向性が一致しており、既に、昨年を上回る水準で妥結されたとの報道にも多く接しているところだが、このような2024春季生活闘争を巡る情勢に関する政府の認識如何。②防衛費増額、異次元の少子化対策のための財源として、増税や社会保険料への上乗せが検討されているほか、財政再建に向けた取組も今後進められる。このような情勢も踏まえた上で、2024年度の給与改定に関わって、これまでの政府の基本的な姿勢に変わりはないことを確認するが見解如何。
(3) 長時間労働の是正について
①超過勤務時間の上限等に関する人事院規則が改正されて以降、この間の内閣人事局による様々な取組は一定評価するが、各府省において、人事院規則に基づく検証作業が行われているにも関わらず超過勤務時間は一向に減っていない。このような現状に対して何が課題で、どこを見直していけばいいのか政府の認識如何。
②勤務時間の「見える化」に向けては、勤務時間管理のシステム化が重要だと認識しているが、内閣人事局としての取組状況如何。
③3月末には、「令和6年度の人事管理運営方針」の総理大臣決定が行われる。より実効性のある取組が求められるところだが、令和6年度の重点項目など新たに盛り込むものを含めて方針に盛り込むポイント如何。
④能登半島地震を始めとする頻発する大規模自然災害や感染症への対応をはじめ、国民のニーズに基づく良質な公共サービスを確実に提供することが求められていること、また、本来、臨時、緊急的な場合に限られる超過勤務が常態化するなかで心身に不調を訴える職員も少なくなく、長期病休者の数も高止まりしている実態にあり、職員に適正な労働条件を確保する必要があることなどの現状を踏まえれば、現在の定員合理化の方針から大きく転換をはかるなど、定員問題が極めて重要かつ喫緊の課題であると認識している。内閣人事局として、定員確保に向けては、時々の取り巻く情勢などを踏まえて、具体的な措置をはかっていることは評価するが、今の抑制基調を転換すべきであり、今後の検討にあたっては、然るべき時期にわれわれと十分に協議を行うことを求めておくが、政府の認識如何。
(4) 非常勤職員等の雇用、労働条件の改善について
「国家公務員の非常勤職員の給与に係る当面の取扱いについて」は、人事院の指針の改正や最近の物価賃金情勢を踏まえ、非常勤職員の適切な処遇を確保するため、「当面は、遅くとも改正法の施行月の翌月の給与から改定する」こととされていた部分を削除し、「常勤職員の給与改定に係る取扱いに準じて改定することを基本とする」旨に2023年3月22日に改正されている。冒頭の統括官の回答では、昨年の人事院勧告を踏まえた給与法改正に対する各府省の対応状況を確認しているとのことだったが、現状で明らかにできることはあるか。
(5) 定年の引上げに係る課題について
2023年度(令和5年度)から段階的に定年年齢の引上げ始まっているが、「国家公務員の定年引上げに向けた取組指針」を踏まえた各府省の取組状況で、とくに課題となっているものはあるか。内閣人事局として、府省横断的の情報共有、必要な連絡調整等、この間の取組状況如何。
(6) 人事行政諮問会議における議論について
人事院は、昨年9月から「公務員人事管理の在り方について聖域を設けることなく骨太かつ課題横断的な議論を行う」として、有識者5名による「人事行政諮問会議」が開催している。公務員連絡会としては、先月28日に開催された第6回会合のヒアリングに出席し、「多岐にわたる課題を取り上げているが、霞が関(本府省庁)に重点を置きすぎているのではないかと感じており、地方出先機関を含め国家公務員全体を意識して今後の検討を進めていただきたい」旨、対応してきた。引き続き、今後の諮問会議での議論を注視していくこととしている。
現時点における諮問会議での議論に対しての政府の見解如何。
これに対して、窪田人事政策統括官は「まず最初に、職員の皆様が令和6年能登半島地震の災害対応に献身的に職務に当たられていることに対し、感謝申し上げる」と述べた上で次のとおり回答した。
(1) 能登半島地震に対する内閣人事局としての取組として、令和6年能登半島地震に係る職務専念義務免除についての人事院指令の発出に関連して、非常勤職員の国家公務員退職手当法適用に係る勤務日数に職専免となった日も含むとする事務連絡を各府省等に発出した。
(2) 2024春季生活闘争を巡る情勢に関し、「民間企業において、労働組合からの賃上げ要求に対し満額回答が行われた」といった報道については、承知している。民間の賃金水準が改善されれば、それを受けて国家公務員の給与水準の改善も期待できると考えている。
国家公務員の給与改定に当たっては、国家公務員の給与を社会一般の情勢に適応 させるとの原則の下、人事院勧告制度を尊重することが基本姿勢であり、この点に変わりはない。
(3) 長時間労働の是正に関し、各府省においてテレワーク等の柔軟な働き方や業務見直し・効率化などの取組を進めており、国家公務員の働き方改革は着実に進んでいるものと認識。
政府としては、「業務効率化・デジタル化の推進」や、「マネジメント改革」などの働き方改革をより一層推進し、引き続き、長時間労働を是正するとともに、職員がやりがいをもって、その意欲と能力を最大限に発揮し活躍できるよう取り組んでまいりたい。
勤務時間管理のシステム化に関し、内閣人事局としては、デジタル庁や人事院と連携しながら、各府省の人事管理を効率化・高度化させるような人事管理システムの構築を目指した将来設計を描くこととしており、その中で中長期的な勤務時間管理のシステム化について、今後の整備の方向性を検討することとしている。
具体的には、府省共通の勤務時間管理システムの整備を目指し、そのために必要な機能など検討していく。
「令和6年度における人事管理運営方針」については、御指摘の長時間労働の是正を含め、国家公務員の人事管理に関する様々な状況等を踏まえつつ、年度内のとりまとめに向けて現在検討を進めているところである。
定員について、強い申し入れがあったことは担当に伝えておく。
(4) 非常勤職員の給与の遡及改定の各府省に対するフォローアップの結果については、現在集計中である。
(5) 定年の引上げに係る取組状況に関しては、「国家公務員の定年引上げに向けた取組指針」を踏まえ、昨年4月及び9月には各府省等連絡会議を開催し、各府省の新任人事担当者向けの制度説明等を行ったほか、各府省の人事担当者及び60歳を控えた職員を対象に、60歳以後も能力を充分に発揮し、意欲を持って活躍し続けることができるよう支援する研修も実施した。引き続き、当該取組指針を踏まえた取組を計画的かつ着実に進めてまいりたい。
(6) 人事行政諮問会議については、現時点では、様々な視点から議論を深めている段階と認識しているが、時代に即した人事管理に常に見直していく必要があるという点は、内閣人事局としても同様の認識である。来月には中間とりまとめがなされる予定と承知しており、議論の方向性を注視しながら、引き続き必要な協力をしてまいりたい。
交渉委員からは「定員関係について、デジタル化による業務改善を否定することはしないが、震災への対応などデジタル化だけでは賄えないマンパワーが必要な公務が多くなってきている。合理化目標ありきの定員合理化計画は、もはや時代に則さないのではないか。適切な公務サービスを国民に提供するためのマンパワーを確保する視点をもっていただきたい」との発言があった。
これに対し窪田人事政策統括官は「定員について、強い申入れがあったことは担当に伝えておく」と答えた。
最後に、森永事務局長は「自律的労使関係制度に関わって、2018年の第107回ILO総会・基準適用委員会における日本案件の個別審査において、政府に対し、勧告を実施するための期限付きの行動計画を社会的パートナーとともに策定することとされてから5年以上が経過するが、何ら進展をしておらず、今日の回答も従前と同様のものとなっていることは極めて問題であることを指摘しておく。その上で、公務労協としては、連合との連携のもと、本年のILO総会に向け必要な対応をはかっていく」と述べた上で、「能登半島地震の復旧をはじめ、厳しい環境のもとで懸命に業務に従事している組合員へ応える意味でも、22日の河野国家公務員制度担当大臣との交渉においては、要求に沿った前向きな回答がされるよう求めておく」と強く要請し、交渉を終えた。