TOP 公務労協情報 2024人事院勧告へ向け職員福祉局長、給与局長と交渉
-月例給・一時金等の具体的な回答は示されず、給与局長と再交渉へ-
公務公共サービス労働組合協議会 公務員連絡会
2024年度 公務労協情報 No. 28

2024人事院勧告へ向け職員福祉局長、給与局長と交渉
-月例給・一時金等の具体的な回答は示されず、給与局長と再交渉へ-

公務員連絡会書記長クラス交渉委員は、2024年人勧期要求に関わり7月24日14時30分から荻野人事院職員福祉局長と、15時から佐々木給与局長と交渉を行った。
 
<人事院職員福祉局長との交渉経過>
荻野職員福祉局長との交渉は、14時30分から行われた。森永事務局長が現時点での検討状況について回答を求めたのに対し、荻野局長は以下のとおり答えた。

〇労働諸条件の改善について
1 勤務間のインターバル確保
勤務間のインターバルを確保することにより、睡眠時間を含む生活時間を十分に確保することは、健康の維持のために不可欠であるとともに、仕事と生活の調和がとれた働き方を追求するためにも重要である。
このため、人事院は、各省各庁の長の責務を法令上明確にすることとし、勤務間のインターバル確保に係る努力義務規定を導入した。また、各府省の取組を支援する観点から、勤務間のインターバルの目安となる時間として11時間を示すとともに、具体的な取組の例も示した。このほか、日々確保することが困難である場合であっても、職員が睡眠時間を含む生活時間を少しでも長く確保できるよう努めること等を求めている。
現在、国家公務員の勤務間のインターバル確保状況の実態や課題を把握するための調査・研究事業を実施している。この結果も踏まえつつ、各職場で勤務間のインターバル確保が図られるよう引き続き取り組んでまいりたい。

2 長時間労働の是正等
超過勤務の縮減に向けた指導を徹底するため、勤務時間調査・指導室において、各府省を直接訪問して勤務時間の管理等に関する調査を実施し、超過勤務の縮減に向け、その基礎となる超過勤務時間の適正な管理やその他の指導・助言等を行っている。本年度は調査対象となる人数を増加させるなど、調査・指導を更に充実させることとしており、引き続き、適切に各府省に対する指導を行ってまいりたい。
また、超過勤務に関し適正な制度運用や手当支給のために同室に寄せられた個別通報についても、引き続き、厳正に対処してまいりたい。

3 仕事と生活の両立支援の拡充
本年5月、民間労働者を対象として、子の年齢に応じた柔軟な働き方を実現するための措置の拡充や介護離職防止のための仕事と介護の両立支援制度の強化等の内容を含む「民間育児・介護休業法等の一部を改正する法律」が成立した。人事院としては、同法の内容も踏まえて、国家公務員の制度の見直しについても、検討を行ってまいりたい。

4 ハラスメント防止対策
人事院は、ゼロ・ハラスメントの実現に向け、幹部・管理職員等を対象とする研修を実施し、ハラスメント防止に関する自身の役割の重要性の理解を促進するなど、様々な機会を通じた取組を行っている。ハラスメントが起こらず、仮に起きた場合には迅速に解決できる職場づくりに向け、全ての職員がハラスメント等に対する正しい認識を持てるよう更に取り組んでまいりたい。
また、ハラスメント相談に関しては、各職場に置かれている相談員に相談しやくする工夫を行うほか、相談員のための相談窓口を充実させていくことについても取り組んでまいりたい。
更に、近年、社会全体で、顧客等からの著しい迷惑行為(いわゆるカスタマー・ハラスメント)への対応についても関心が高まっている。今後、研修等を通じて、カスタマー・ハラスメントに関する認識を広げていくとともに、更なる対応について研究し、提供するなどして、各府省を支援してまいりたい。

5 職員の健康づくり対策等
職員の健康管理施策を一層推進していくためには、これを担う健康管理体制の充実が不可欠である。人事院が、昨年、各府省の健康管理体制の実態及び民間における健康増進に向けた取組状況等を把握するための調査を実施したところ、公務の各官署における健康管理体制の充実、健康管理担当者の能力向上、相談窓口や職場復帰支援等の充実などに関する課題が認められた。人事院としては、この調査結果も踏まえ、実効的な改善策を検討してまいりたい。
また、近年、心の健康に起因した長期病休者数は増加傾向にある。心の健康の問題については、未然防止や早期発見・早期対処に加え、長期病休者の円滑な職場復帰及び再発防止も大切な取組であるため、職場復帰等への支援に向けて更なる検討を進めてまいりたい。

〇非常勤職員制度等について
1 非常勤職員の休暇制度
 非常勤職員の休暇制度等については、業務の必要に応じて、その都度任期や勤務時間が設定されて任用されるという非常勤職員の性格を考慮しつつ、民間の状況等を考慮し、必要な措置を行っているところである。近年の措置を挙げれば、結婚休暇の新設及び忌引休暇の対象職員の要件の削除(平成31年1月施行)、夏季休暇の新設(令和2年1月施行)、出生サポート休暇、配偶者出産休暇及び育児参加のための休暇の新設並びに産前休暇・産後休暇の有給化(令和4年1月施行)などがある。
今後も、引き続き民間の状況等について注視し、必要に応じて検討を行ってまいりたい。

2 非常勤職員制度の運用の在り方の検討
令和5年の勧告時報告において記載した「非常勤職員制度の運用の在り方の検討」については、各府省の実態等を把握しつつ検討を行い、今回、期間業務職員の公募要件に関する見直しを行ったところである。今後とも、職員団体の意見も聴きながら、適切に対応してまいりたい。

局長からの回答を受け、森永事務局長は、6点の課題について見解を質した。

(1)人事院の勤務時間調査・指導室におけるこの間の取組については、一定評価しており、今後の各府省に対する指導についても期待するところ。今年の人事院の年次報告でも「負のイメージの払拭に向けて」としてこの1年間の人事院の取組が明記されている。一方で、超過勤務時間数は一向に減っていないのが実態である。
 その上で、どこに課題があり、縮減に向けて改めて何に力を入れていくべきと考えているのか、この先の展望も含めて明らかにされたい。

(2)「民間育児・介護休業法等の一部を改正する法律」の成立に伴い、国家公務員の制度の見直しについても検討を行うとの回答であったが、具体的な検討内容如何。
 また、本年の勧告時にあわせて意見の申出等を行うということか。

(3)人事院の「精神及び行動の障害による長期病休者数調査」によれば、直近令和4年度で、1月以上の期間の長期病休者は、5,389人、全職員に占める割合が1.92%となり、ここ数年の増加傾向に歯止めがかかっていない実態が明らかとなった。
 人事院としての要因分析如何。また、昨年の勧告時報告で「公務版の健康経営の推進等」の取組が明記されているが、この1年間の具体的な成果があれば明らかにされたい。
 
(4)人事院が受け付けた苦情相談件数の内訳を見ると、「パワー・ハラスメント、いじめ、嫌がらせ」が最も多く全体の38.1%となり、令和5年度で695件(前年度比78件増、12.6%増)となっているが、人事院の問題意識如何。また、「ゼロ・ハラ」実現に向けた具体の取組如何。
 
(5)非常勤職員の休暇等について、この間、公務員連絡会の要求も踏まえて、多くの点で改善が図られてきていることは評価するが、無給休暇の有給化などの残された課題もある。先般、期間業務職員の公募要件の見直しも行われたところだが、安心して職場生活を送ることができるように休暇制度の整備を図ることは人事院の責務であると考えるが、人事院の認識如何、また具体の検討状況如何。

(6)6月19日の令和5年度年次報告書に関する川本総裁の記者会見で、人事行政諮問会議中間報告について、「スピード感をもって、先んじて着手できる施策に関しては、この夏の人事院勧告時に表明できるよう、精力的に検討を進めている」と発言されている。
本年勧告時の「公務員人事管理に関する報告」において明記し、具体的に検討を開始する課題があれば明らかにされたい。

 これに対し、局長は次のとおり回答した。

(1)超過勤務縮減についてはトップが強いリーダーシップを発揮して業務の見直しを行うことが1番重要である。また、上限規制の枠組みをしっかりと守ってもらうことも重要と考える。息の長い取り組みにはなるが、超過勤務をしないという文化・風土を作っていくことが必要である。

(2)成立した改正育介法には、子どもの年齢に応じた選択可能な措置の提供、残業免除の対象範囲の拡大、子の看護休暇の対象範囲の見直し、両立支援制度利用に関する職員の意向確認などが含まれている。これらの点を踏まえて検討を進める。仮に法改正が必要であれば公務においても遅れることなく意見の申出を行うことになり、その場合は本年の勧告時になる。

(3)長期病休者の増加について、要因分析は難しく、国家公務員だけでなく社会全体として増加傾向にある。コロナの影響も指摘されているが、原因は不明である。昨年の調査で各府省の健康管理体制などに課題があることが分かった。健康管理体制を充実させ、問題に対応する必要がある。また、長期病休者については再発する者が多いため、復帰支援策が重要と考える。

(4)職員3000人を対象にハラスメント相談に関するアンケートを行い、その結果として暴言等のパワー・ハラスメントが一番多かった。相談相手としては上司や同僚が多かった。この結果を踏まえ、対策を検討し、職員一人一人に正しい認識を持たせることでハラスメントを防ぎ、発生時には適切に対処したい。

(5)非常勤職員の休暇に関しては、民間の状況を見て対応する。長年のご要望も承知しており、引き続き対応していく。

(6)諮問会議の中間報告について、勤務環境の改善には引き続き取り組む必要がある。例えば、民間労働者の実情を踏まえ、勤務時間の短縮や役職に応じた勤務時間帯の調整が考えられる。これらの点については広く検討・研究を進める必要がある。

また、委員からは「まず、事務の効率化を図ったうえで、超勤縮減には定員事情も大きく関係する。人事院単独では難しい部分もあるため、内閣人事局に対しても働きかけをお願いしたい」との発言があり、これに対し局長は「どこに問題があって人員が措置できないのか把握する必要がある。原因の所在を明らかにした上で対応したい」と答えた。

 最後に森永事務局長から「この間も、超過勤務の縮減をはじめとする働き方改革は最重要の課題として、人事院とも認識を共有してきたところ。引き続き、われわれも各職場段階で努力していくが、人事院としての役割を積極的に果たすことを求めるとともに、引き続き、この間議論してきた課題をはじめ、新たに検討を開始する課題等について、前広な情報共有と時機を捉えた協議を行うことを求め、今年の勧告期における局長との交渉を終える」と要請し、職員福祉局長交渉を締めくくった。

<人事院給与局長との交渉経過>
佐々木給与局長との交渉は15時から行われた。森永事務局長が、現時点での検討状況について回答を求めたのに対し、佐々木局長は以下のとおり答えた。

1 勧告について
人事院は、公務員の給与等の適正な水準を確保するため国会と内閣に必要な勧告を行うという国家公務員法に定められた責務を着実に果たすこととしている。
本年の勧告については、例年とおおむね同様の日程を念頭に置いて、鋭意作業を進めているところである。

2 官民較差について
行(一)職員の平均年齢は、本年の国公実態調査によると昨年と比べて若干低下している。(42.1歳。昨年比△0.3歳)
本年の民間企業における春季賃金の改定状況を見ると、労使双方が賃上げに前向きな姿勢を示しており、特に大企業においては、高水準の賃上げが行われた昨年を更に上回る賃上げが行われている事例も見られた。中小企業においても相応の賃上げが行われているが、状況は業種や個別企業の業績によって様々という状況である。
また、民間の一時金の状況を見ると、昨年冬の一時金は、総じて見れば一昨年冬と比較して増加しているが、伸び率は一昨年冬と比較して鈍化している傾向にある。本年夏は、個々の産業や企業により状況はまちまちであるが、総じて見れば昨年の夏と比較して増加している。
このような状況にある中、官民較差及び一時金については、現在集計を行っているところであり、最終的にどのような結果となるか注目しているところである。

3 「社会と公務の変化に応じた給与制度の整備」について
社会と公務の変化に応じた給与制度の整備については、昨年の勧告時報告においてお示しした「令和6年に向けて措置を検討する事項の骨格」に沿い、職員団体の皆さんをはじめ関係者のご意見等をお伺いしながらその具体化に向け検討を進めてきているところ。現時点における検討内容はこれから申し上げるとおりであり、本年の人事院勧告に向けて成案を得るべく、引き続き職員団体の皆さんのご意見等をお伺いしながら、更に検討を進めてまいりたい。

(俸給関係)
新卒初任給の引上げについては、行(一)の一般職大卒及び高卒の初任給を、本年の職種別民間給与実態調査の結果を踏まえ、地域手当非支給地における民間初任給の令和7年の平均水準を念頭に引き上げることとする。総合職大卒の初任給については、現在俸給表の備考で額を定めているが、この措置を廃止して俸給表上の2級1号俸の額を適用することとし、その水準は、現行の採用試験制度導入時の一般職の初任給との差を参考に引き上げることとする。
行(一)以外についても、行(一)と同様の対応を基本に引上げを行うこととする。
係長級から本府省課長補佐級の俸給は、行(一)の3級から7級の初号近辺の号俸をカットすることにより、各級の俸給の最低水準を引き上げることとする。これにより、早期に昇格する者の昇格メリットを拡大するほか、民間人材等の採用時給与を改善する。なお、号俸のカットに伴う在職者調整については、実施しない。
行(一)以外については、行(一)と同様の対応を基本に見直しを行うこととする。
本府省課室長級の俸給体系は、行(一)の8級から10級の俸給額の最低水準を引き上げ、隣接する級間での俸給額の重なりを解消するとともに、号俸を大くくり化する。これにより、役割の上昇に見合った昇格メリットを確保するとともに、勤務成績が優秀な場合にのみ昇給する仕組みとする。これに伴い、昇給に係る職員層について7級を中間層に繰り入れるとともに、各府省の実情に応じ、中間層を細分化して昇給区分を決定することができるよう措置することとする。
行(一)以外については、行(一)の8級から10級と同様に位置付けられる管理職員の級において、行(一)における対応と同様の対応を基本に見直しを行う。

(ボーナス関係)
ボーナスは、一般職員と特定管理職員の勤勉手当に係る「特に優秀」区分の成績率の上限を、平均支給月数の3倍に引き上げることとする。なお、上位の成績区分に充てる原資については、現行の取扱いを維持し、新規の原資の充当措置は講じない。
特定任期付職員のボーナスは、特定任期付職員業績手当を廃止し、期末・勤勉手当に再編する。これにより、勤務成績優秀者については、期末・勤勉手当の合計で、現行の期末手当及び特定任期付職員業績手当の合計を上回る水準を設定することを可能とする。なお、勤勉手当の成績率は、特定任期付職員の中で決定する。

(手当関係)
地域手当については、級地区分を都道府県単位で広域化することを基本としつつ、中核的な市(都道府県庁所在地及び人口20万人以上の都市)については、当該地域における民間賃金の実態を踏まえて必要な補正を行うこととする。また、級地区分を現在の7区分から5区分に再編成するとともに、支給割合についても4%から20%の等間隔に設定することとする。なお、東京都特別区の支給割合は現状維持とすることを想定しているほか、支給割合が大幅に変動する地域の取扱い等については現在検討を行っているところ。地域手当の異動保障については、異動3年目についても支給することとし、その支給割合は、異動前の60%とする。
扶養手当については、配偶者に係る手当は廃止した上で、子に係る手当を増額する。見直し後の手当額などの詳細は、本年の職種別民間給与実態調査において把握した民間企業における家族手当の支給状況や、国家公務員給与等実態調査の結果も踏まえて現在検討している。
新幹線通勤に係る手当額については、通勤手当の非課税限度額(1か月当たり15万円)も踏まえ、新幹線・在来線に係る通勤手当の支給上限額を見直すこととする。具体的な支給額については、本年の職種別民間給与実態調査において把握した民間企業における通勤手当の支給状況等を踏まえて現在検討している。
また、採用に伴い新幹線通勤又は単身赴任となった者について、距離等の他の支給要件を満たす場合には、それぞれ新幹線特例による通勤手当又は単身赴任手当を支給することとし、「採用」の範囲を、専門人材の採用から拡大する。
管理職員特別勤務手当については、平日深夜に係る手当の支給対象時間について、現行の午前0時から午前5時よりも早い時間帯から対象となるよう拡大するとともに、支給対象となる業務の具体例を列挙するなど、支給要件を明確化する。
定年前再任用短時間勤務職員及び暫定再任用職員に支給する手当については、異動の円滑化に資する手当を支給することとし、支給する手当を拡大する。

(60歳前後の給与カーブに関する課題の検討)
65歳定年の完成を視野に入れた60歳前・60歳超の各職員層の給与水準(給与カーブ)の在り方については、今後とも定年引上げ完成を見据えて更なる給与制度の整備を図る中で、公務における人事管理の在り方の変化や、民間における高齢期雇用や高齢層従業員の給与水準の状況を注視しつつ、職員団体の意見も聴きながら、人事管理に係る他の制度と一体で引き続き検討を行ってまいりたい。
なお、定年が段階的に引き上げられることに伴い、給与法附則第8項により俸給月額が決定される職員は、当分の間の措置として、民間企業における再雇用を含む60歳台前半の従業員の給与水準等を踏まえて給与水準が7割に設定されていること等から、当面は官民比較の対象としないことが適当と考えているが、当該職員の比較上の取扱いについては、給与カーブの在り方の検討と一体的に研究してまいりたい。

4 諸手当について
寒冷地手当については、令和4年4月に気象庁が公表した「メッシュ平年値2020」の内容等について分析を進めるとともに、本年の職種別民間給与実態調査において、民間における同種の手当の支給状況を調査しているところであり、これらの結果を踏まえ、本年、見直しの勧告を行うことを予定している。

5 定年の段階的引上げに伴う各種施策への対応について
定年引上げに伴う級別定数措置については、今後とも、役降り後の職務や異動先、ポスト数のほか、定年引上げ後の昇格ペースを含む人事運用などに関する各府省・人事グループの検討を踏まえた上で、必要な措置を講ずることとしている。
原則定年年齢を60歳から65歳に段階的に引き上げる改正国家公務員法が令和5年4月1日から施行されており、令和13年度以降の定年年齢は原則65歳となるが、定年の段階的な引上げ期間中の暫定再任用制度においても、できるだけ職員の希望が叶い活躍していただけるよう、人事院としても、引き続き状況の把握に努め、必要な取組を進めてまいりたい。

6 非常勤職員等の制度及び待遇改善について
非常勤職員の給与については、非常勤職員の給与に関する指針において、基本となる給与については、非常勤職員の職務と類似する職務に従事する常勤職員の属する職務の級の初号俸の俸給月額を基礎として、職務内容及び職務経験等を考慮して決定することとしている。
また、指針においては、給与法等の改正により常勤職員の給与が改定された場合には、非常勤職員の給与についても、常勤職員に準じて改定するよう努めることとしている。
指針に基づく各府省の取組状況等については、定期的にフォローアップを行っているほか、機会を捉えて各府省から状況を聴取し、必要な指導を行ってきている。今後とも、各府省において指針の内容に沿った適切な処遇が図られるよう取り組んでまいりたい。

 以上の回答を受け、各項目について、次のとおりのやり取りを行った。

1.給与改定勧告について
まず、森永事務局長が次のとおり見解を質した。

(1)勧告日については、8月5日の週に行われると想定しているが、状況如何。

(2)昨年(2023年)の給与改定では、初任給を大幅に引き上げるとともに若年層が在職する号俸に重点を置き、そこから改定率を逓減させる形で全職員について引上げ改定を実施している。本年の月例給の給与改定勧告にあたって、民調の結果なども踏まえた、現時点における人事院のスタンス如何。
①国公実態として、平均年齢が昨年と比べて若干低下しているとのことだが、国公の比較給与の変動状況如何。
②継続する物価高騰は、全世代に影響をしている。各種春闘妥結結果、印刷造幣の中労委調停結果などを踏まえれば、昨年を上回る官民較差が期待されるところ、公務員連絡会の要求である「昨年を上回る全職員(全級・全号俸)の賃上げ」の実現に向けて、ある一定の水準(率・額)をもって全職員(全級・全号俸)の賃金改善を行った上で、課題である初任給の官民格差の解消を中心に若年層の引き上げを行うべきことを強く主張するが、人事院の認識如何。

(3)一時金の状況は、公表されている様々な調査結果を見れば、個々の調査結果には幅があるが、対前年比較で、昨年冬は微増、本年夏は昨年度の高水準を維持しつつ、やや増加しているという傾向にあり、この点については、給与局長との認識と齟齬はない。緊張感をもって臨んでいくが、要求どおり引上げ勧告を強く求めたい。人事院の認識如何。

(4)寒冷地手当の見直しの勧告を予定しているとのことだが、民調の結果如何。
今年の民調結果を正確に反映するとともに、前回見直し時の経緯等も踏まえること。
また、7月11日のブロック別行動の際に、積雪寒冷地の切実な実情等を現場の代表から申入れしているが、灯油価格の高騰等取り巻く厳しい情勢に十分に寄り添った見直しの勧告となるよう強く求める。現時点における人事院の認識如何。
支給地域区分の見直しは、「メッシュ平年値2020」に基づき機械的に行われると思うが、仮に支給地域区分の引下げとなる地域が出てくる場合には、この間の見直し時と同様に、経過措置を設けることを強く求める。人事院の認識如何。
特地勤務手当についても必要な検討を行っているとのことだが、寒冷地同様に地域事情に十分配慮することを求める。現在の検討状況如何。

これらに対し、給与局長は次のとおり答えた。

(1)勧告日については現在、人事院で作業中のため、確定的なことを言える状況ではない。

(2)本年の行(一)の平均給与は較差に関係するため現時点では明言できない。その上で、
①昨年のデータでは平均年齢は0.3歳若返り42.7歳、平均給与は40万4,015円で前年より1,013円減少した。俸給が1,224円減、扶養が250円減、単身基礎額が110円減、住居が318円増、地域手当が180円増であった。本年も平均年齢は0.3歳若返っているが、昨年の3,869円の引き上げ勧告の影響もあり、今年の給与は必ずしも昨年のように減るとは限らない。
②昨年、初任給の改定を行ったが、一方で民間での初任給は昨年以上に引き上げが進んでいる。人材確保が重要な課題であるため、改定には初任給に重点を置く必要がある。また、若年層に続く30歳代の中堅層への処遇も必要だと考えている。

(3)一時金については、申し上げたとおり、楽観はできないという認識を持ちながら、最終的にどういう結果になるか注視しているところである。

(4)寒冷地手当について、民調で北海道における同種の手当の支給状況について調査を行っており、その結果を踏まえて必要な対応を進めていく。また、本手当は比較対象給与になっているので、配分の問題になる。つまり原資が必要だという中で検討していく考えである。
支給地域の見直しについては現行基準に基づいて対応していく。前回平成26年の見直し時には、北海道について経過措置は設けず、本州については経過措置を設けたと承知している。経過措置については、皆さんのご要望も踏まえながら検討していく。
 特地勤務手当については国勢調査等の結果を踏まえ、必要な検討を行う。

また、参加した委員からは次のとおり発言があった。

「昨年の給与改定については不満の声があり、特に30代から60代の職員の年齢別の給与配分に関する声が上がっている。中堅や高齢層に焦点を当て、全職員のモチベーション向上を図るため、引き上げ率や配分の対応を強く要請する」
「昨年の高齢層への配分に対する落胆の声が多く、定年引き上げ初年であるにも関わらず多くの職員が辞めている。処遇への不満が原因で、働き続ける意欲を失った方も多い。高齢層への配慮を強化し、検討を進めていただきたい」
「現場では昨年の1,000円の引き上げでは低いとの声が多く、全国の組合員も同様の実感を持っている。切実な要求であり、今日も2000人が集まる中で訴えている。今年は昨年と異なり、労働基本権の代償措置として、しっかりと意見を聞き、それに見合った回答を求める。また、人材確保の観点で言えば、今いる人が辞めないことも大切なことである。そのためにも初任給だけでなく、今働いている人が士気を持って働けるものにしてほしい」
「学校現場では30代、40代の転職が増加している。公務の世界は人材流出防止に対する危機感が薄く、民間企業に比べて対策が少ないと感じている。賃金の上がり幅が狭く、子育て世代にとっては特に厳しい状況で、優秀な人材を維持するためには、処遇面での取り組みが必要ではないか」

これらの意見に対し局長は次のとおり回答した。

「人材確保の重要性は認識しているし、人材の流出防止も重要であると認識している。しかし、給与だけでは解決できない部分もあるため、人事院は給与だけでなく、トータルな取り組みを進めている。昨年の1,000円の引き上げについても、皆さんの意見を反映した結果だが、受け止めとして少ないとおっしゃること自体は否定しない。今年の対応についても、今伺った話も含めてどこまで対応できるのか。これから検討させていただく。ただし、制約がある中での話であるということは申し上げざるを得ない」

2.「社会と公務の変化に応じた給与制度の整備」について
 森永事務局長は次のとおり質した。

「冒頭の局長回答で、人事院が検討している措置事項の基本的な方向性は理解したが、今日段階で経過措置等含めて更に具体の措置内容について明らかにしてもらいたい。また、措置事項の実施時期を明らかにしてもらいたい。官民問わず、継続した賃上げが求められる時期にあって、具体の実施時期等についても検討するべきではないか。人事院の認識如何」

これに対して給与局長は次のとおり答えた。

「地域手当や扶養手当の見直しで一部の職員にマイナスの影響が出る可能性があるが、その他処遇改善につながる措置もあり、給与制度の整備全体の中で考える必要がある。実施時期は、今年勧告し、来年4月からの実施を予定しているが、例えば引き下げとなる部分について経過措置を導入して段階的に実施するということになると、処遇改善となる部分についても必要な財源が段階的にしか出てこないことになるため、それに応じて処遇改善となる部分も段階的な実施や、実施時期を遅らせる可能性もある。基本的には来年の4月から実施をしたいと考えている」

この回答に対し森永事務局長は、さらに次のとおり質した。

「昨年勧告時報告の『給与制度のアップデートの骨格案』以降、この間、前広な情報共有と丁寧な説明、対応をいただいていることについては、改めて人事院の姿勢を多とする。
一方で、昨年から申し上げているとおり、勤務地や年代、家族構成などを踏まえれば、皆にとって全て良しとはならないことを公務員連絡会としても念頭に置きつつ、この間、人事院との協議を進めてきたが、改めて、4点について局長の見解を求めたい」

(1)新卒初任給の引上げについて、地域手当非支給地域における官民格差の解消は、私どもも重要な課題と認識している。
ここ数年、人材確保のために、初任給を大幅に引き上げる民間企業が増加しており、その傾向は、報道等を見る限り、本年もより顕著になっていると認識しているが、本年の民調結果如何。
今年の月例給の官民較差がどの程度になるかが見通せないなかで、私たちの賃金要求である「全職員(全級・全号俸)の引き上げ勧告」にも大きな影響を与えることから、配分に関わって十分な交渉協議を求めるが、改めて人事院の基本姿勢如何。

(2)地域手当の見直しについて、この間2度にわたって俸給表水準引下げにより行われた過去の見直しとは背景が異なることに留意して交渉協議を行っている。見直し如何によって生ずる様々な課題について、勧告の最終段階まで、とくに経過措置に関わって、誠意を持って対応するよう強く求めるが、人事院の認識如何。

(3)扶養手当の見直しについて、2016年の見直しの経過等も踏まえれば、その背景については一定理解するが、とくに、働きたくとも働けないケースも(配偶者等が障がいを持っていること、親の介護、子の看護の必要等)あることへの配慮を求める声も根強くある。
配偶者等に係る扶養手当額は8級職員で3,500円、以外の職員で6,500円と決して少なくない額であり、継続的な賃上げ基調のもとで、結果として、実質的な賃下げとなる職員に与える影響は極めて大きい。
この点について今日の段階では、必要な経過措置を強く求めるが、人事院の認識如何。

(4)官民比較の対象外となる、新幹線通勤手当額の見直し、再任用職員の手当の範囲の拡大に関わって、本年の勧告において措置するということでよいか。

これに対し、局長は次のように回答した。

(1)民間の初任給水準について、昨年の民調では初任給は高卒で2.7%、大卒で1.8%
という伸びであった。今年の状況は勧告時に示すことになるが、それを大幅に上回るという状況である。

(2)地域手当について今回は大くくり化を実施するが、大くくり化以前の元々のベースとなっている民間の賃金指数をまず見る必要がある。今回、最新のデータに更新してそれを当てはめるということになるが、その結果として地域手当の支給割合が下がる地域がある。それによる職員への影響にどう対応するのかというのが大きな課題であるというふうに思っている。

(3)必ずしも扶養手当の見直しによる影響を受ける職員への措置ではないが、通勤手当や他の手当の見直しなどで様々な状況にある職員の処遇改善に取り組む予定である。一方、扶養手当の見直しについては、影響を受ける職員への直接の配慮という意味で経過措置を導入することが議論になり得ると認識している。

(4)通勤手当や再任用関連の手当を措置する時期については認識の通りである。

 局長からの回答を受けて、森永事務局長は「今日の議論も踏まえて、次回の交渉で、措置事項に関する更なる詳細を明らかにするとともに、少なくとも、実質的にマイナスの影響を受ける職員へ最大限の配慮措置(経過措置)を講ずることを、人事院の責任として強く求めておく」と述べた。

3.人事行政諮問会議について
森永事務局長は次のとおり質した。

「この間の諮問会議での議論を見ると、現在の給与制度を根本から見直すような内容が散見されると認識している。諮問会議での議論を通じて具体的な措置に向けて今後検討していく課題として、今年の勧告時報告における対応如何」

これに対し、局長は次のように回答した。

「人事行政諮問会議では幅広な議論が行われている。公務員人事管理に関する報告の中で、現下の課題に対する人事院としての取組みに言及しており、本年については諮問会議の中間報告を踏まえることになると考える。なお中間報告においては、給与の関係では、昇格時の在級期間の制度運用の見直しや、民調における比較企業規模の検討の必要性が言及されている」

以上の通り、交渉は、再三にわたって、全職員(全級・全号俸)を引き上げるとのスタンスを明確にすること、社会と公務の変化に応じた給与制度の整備について、具体的な経過措置等を含む内容について明らかにするよう求めたものの、給与局長は、「検討中」との回答に終始したことから、森永事務局長から「今年の勧告に対する組合員の期待と不安に対し、人事院として真正面から向き合うという姿勢が欠けていると指摘せざるを得ない。想定される勧告日等を踏まえれば、あまり時間がない中で、せめて『昨年を上回る、全級・全号俸の引き上げ勧告に向けて検討を進めている』程度の前向きな回答を行うべきではないか。今日、これ以上交渉を継続しても、ただ時間が経過していくだけで何らかの前進が図られることは考えられないことから、改めて、然るべき時期に給与局長との再度の交渉を求めるとともに、次回には、われわれが納得できる回答を行うことを強く求める。なお、回答の内容如何によっては、最終の配分交渉を書記長クラスに格上げして行うことも考えているので、最大限の誠意をもって対応されたい」と強く要請し、給与局長も了としたことから、この日の交渉を締めくくった。