TOP 公務労協情報 委員長クラスが人事院総裁と交渉し回答を引き出す-8/6
~俸給表は、全ての職員について昨年を上回る改定を行うと回答~
公務公共サービス労働組合協議会 公務員連絡会
2024年度 公務労協情報 No. 31

委員長クラスが人事院総裁と交渉し回答を引き出す-8/6
~俸給表は、全ての職員について昨年を上回る改定を行うと回答~

公務員連絡会委員長クラス交渉委員は、8月6日、川本人事院総裁と交渉し、6月19日に提出した本年の人勧期要求に関する最終回答を引き出した。
交渉の冒頭、武藤議長が「6月19日に本年の人勧期の要求書を提出し、今日まで、交渉を積み上げてきた。本年の勧告に向けた最終回答を総裁からいただきたい」と求めたのに対し、川本総裁は、次のとおり回答を示した。

まず始めに、全国各地の各職場で勤務されている国家公務員の皆さんが、日夜を問わず日々職務に精励されていることに対し、心より感謝と敬意を表したいと思う。
社会経済や国際情勢など公務を取り巻く環境が激しく変化する時代において、国家公務員が直面する課題が高度に複雑化・多様化している。このような中、職員一人一人が自らを律し、高い志を持って職務に当たり、能力を十分発揮するため、人事院は、その土台となる人事管理について新時代の青写真を描き、改革を続けなければならないと考えている。
このような認識の下、人事院においては、「多様で有為な人材の確保」、「職員の成長支援と組織パフォーマンスの向上」、「Well-beingの実現に向けた環境整備」を三本柱として、そのために必要な取組を進めている。
それでは、6月19日に公務員連絡会から提出のあった要求のうち、主な事項について回答する。

1. 給与勧告について
〇 勧告日は、8月8日(木)となる予定である。
〇 月例給の民間給与との較差は、民間企業の賃上げの状況を反映して2.7%台後半となる見込みである。
〇 特別給は、一昨年、昨年に引き続き0.10月分の引上げとなる見込みである。引上げ分は、今年度については、12月期の期末手当及び勤勉手当に配分する。来年度以降は、6月期及び12月期が均等になるよう配分する。
〇 俸給表の改定については、行政職俸給表(一)について、民間における初任給の動向や、公務において人材確保が喫緊の課題であること等を踏まえ、また、社会と公務の変化に応じた給与制度の整備に係る措置も前倒しで講じることにより、総合職試験(大卒程度)に係る初任給を29,300円、一般職試験(大卒程度)に係る初任給を23,800円及び一般職試験(高卒者)に係る初任給を21,400円引き上げることとする。初任給以外の号俸は、若年層が在職する号俸に特に重点を置くとともに、おおむね30歳台後半までの職員が在職する号俸にも重点を置いた引上げ改定を行う。その他の職員が在職する号俸は、改定率を逓減させつつ、全ての職員について昨年を上回る水準の引上げ改定を行う。
〇 その他の俸給表は、行政職俸給表(一)との均衡を基本に所要の引上げ改定を行う。定年前再任用短時間勤務職員の基準俸給月額は、各級の改定額を踏まえ、所要の引上げ改定を行う。
〇 寒冷地手当の支給月額について、本年の職種別民間給与実態調査の調査結果を踏まえて引上げ改定を行う。また、支給地域は、気象庁が公表した「メッシュ平年値2020」の内容を反映した見直しを行う。さらに、官署指定における居住地要件を廃止する。支給地域の見直しにより寒冷地手当が非支給となる職員については、生活への影響等を考慮し段階的に手当額を減額する。

適切な処遇は優秀な人材確保に不可欠である。そのため、社会と公務の変化に応じた給与制度の整備として、次のとおり措置を行い、処遇面を包括的に見直す。

〇 係長級から本府省課長補佐級の俸給は、行(一)の3級から7級の初号近辺の号俸をカットすることにより、俸給の最低水準を引き上げる。また、本府省課室長級の俸給体系は、行(一)の8級から10級の俸給額の最低水準を引き上げ、隣接する級間での俸給額の重なりを解消するとともに、号俸を大くくり化する。なお、これらについては、行(一)以外の俸給表においても、行(一)と同様の対応を基本に見直しを行う。
〇 ボーナスは、一般職員と特定管理職員の勤勉手当に係る「特に優秀」区分の成績率の上限を、平均支給月数の3倍に引き上げる。また、特定任期付職員のボーナスは、特定任期付職員業績手当を廃止し、期末・勤勉手当に再編する。
〇 地域手当は、級地区分を都道府県単位で広域化し、級地区分を現在の7区分から5区分に再編成する。その際、中核的な市について、民間賃金の実態を踏まえ級地区分の補正を行う。また、激変緩和のため、支給割合の引下げ幅は最大でも4ポイントまでとする。異動3年目についても異動保障を支給することとし、その支給割合は、異動前の60%とする。
〇 扶養手当は、配偶者に係る手当を廃止し、子に係る手当額を3,000円引き上げ、13,000円とする。なお、地域手当及び扶養手当の見直しは、支給割合の引下げ又は手当が減額となる職員への影響を考慮し、支給割合の引上げ及び子に係る手当の増額とともに段階的に実施する。
〇 通勤手当は、支給限度額を1箇月当たり150,000円に引き上げる。新幹線等の特別料金についても、支給限度額の範囲内で全額を支給する。併せて、新幹線特例による通勤手当の支給要件の緩和も行う。また、採用に伴い新幹線通勤又は単身赴任となった者について、距離等の他の支給要件を満たす場合には、それぞれ新幹線特例による通勤手当又は単身赴任手当を支給する。
〇 管理職員特別勤務手当については、平日深夜に係る手当の支給対象時間帯を午後10時から午前5時までとして2時間拡大し、対象職員に指定職職員等を追加する。
〇 定年前再任用短時間勤務職員等に、異動の円滑化に資する手当として、地域手当の異動保障、住居手当、特地勤務手当、寒冷地手当等を支給する。

2. 勤務環境について
時代に合った働き方に変えていくため、勤務環境の整備も一層推進する。

〇 特に超過勤務の縮減に当たっては、まずは各府省のトップが強い取組姿勢を持ち、そのリーダーシップの下で業務の削減・合理化や職場の雰囲気・認識の変革を強力に進めることが必要である。人事院としては各府省に対してこのような考え方を伝え、また、勤務時間調査・指導室から指導・助言を行い、超過勤務の縮減に向けた一層の取組を強く求めていく。更に、国会対応業務など府省の枠を超えた取組が必要なものについては、引き続き関係各方面の御理解と御協力をお願いしていく。勤務間のインターバル確保についても、課題の把握を行うなどして取組を進める。
〇 両立支援も個性や能力を十分に発揮でき、魅力ある公務職場を実現するために重要である。本年5月に成立した民間育児・介護休業法等の一部改正法の内容も踏まえ、子の年齢に応じた柔軟な働き方を実現するための措置の拡充や、介護離職防止のための仕事と介護の両立支援制度の強化のための措置の実現を図る。
〇 ゼロ・ハラスメントの実現に向けては、全ての職員に正しい認識と自覚を徹底するため、意識啓発に更に取り組むとともに、カスタマー・ハラスメントについても更なる対応について研究するなど、各府省を支援していく。
〇 Well-being調査の結果も踏まえ、人事院の相談窓口や各府省の健康管理体制の充実について、実効的な改善策を講じていく。
〇 このほか、人事行政諮問会議中間報告を踏まえて進める取組については、施策の実現に向けて職員団体の御意見も伺いながら進めていく。

 これを受け、武藤議長は、以下のとおり公務員連絡会としての見解を述べ、交渉を締めくくった。

(1) 本年の月例給については、初任給を始め若手を中心とした引上げをした上で、そこから改定率を逓減させる形で改定を行い、全ての俸給表の改定を行うとの回答があった。
俸給表全体の改定、再任用職員も含めた全俸給表の引上げを実施することは、「昨年を上回る全職員の月例給の引上げ」という私どもの強い要求に人事院が一定応えたものと受け止めたい。一方で、大きな課題である人材確保という面から考えた場合、初任給の引上げを実施することの必要性は理解しているが、給与改定のあり方も含めて議論の余地があるものと考えている。今後は、高齢層も含めた国家公務員賃金のあり方、人事制度全般のあり方について、率直な協議を行うことを求めておきたい。

(2) 一時金について、0.10月引き上げるとの回答であった。
3年連続の支給月数増となること、さらに、その内訳について、期末・勤勉の双方に配分することについては、昨年に続き、組合員の期待に一定程度応えたものとして受け止めたい。

(3) 「社会と公務の変化に応じた給与制度の整備」について、この2年の検討を経て、今回措置内容が示されるとのことであった。この間事務レベルでの様々な協議の中で、私どもが懸念した点や要求した内容について一定踏まえたものと理解している。一方で、廃止・削減が示された項目もあり、来年以降民間も含めて賃金動向がどのようになっていくかにもよるが、関係する職員には痛手になることを改めて指摘しておきたい。

(4) 人事行政諮問会議について、本年5月に「中間報告」が示され、その提言内容に関する対応の方向性が、一部今回の勧告・報告の中で示されると理解している。「中間報告」が示す問題意識は理解できる部分もあるし、提言内容に首肯できる部分もあると考えているが、この間も指摘してきた通り、30万人近い国家公務員全体に対する目配りが必要だと考えている。いずれにしても、ご発言があった通り、秋に示される「最終答申」に向けて、引き続き私どもに対する情報提供と、率直な協議を求めておきたい。

(5) その他、長時間労働の是正、柔軟な働き方、女性が働きやすい職場づくり、ハラスメントの根絶、非常勤職員の処遇改善など、課題は山積しており、私どもと十分に協議しながら、改善を進めていくことを求めておきたい。私どもも、職場段階で、改善に向けてさらに努力していきたい。

(6) 終わりに、パンデミックは落ち着きを見せているものの、引き続き大規模自然災害が発生している状況のもと、職員は、国民の安心・安全のため、高い使命感と責任感をもって懸命の奮闘を続けていること、一方で、物価高騰のもと、2年を超える実質賃金の前年比マイナスの状況が職員の生活を圧迫していること、人事院におかれては、これらのことを深く認識していただき、職員の給与や勤務条件の改善に向けて、より一層の努力をお願いする。

(7) 今日の回答については、機関に持ち帰って報告し、私どもとしての最終的な態度を決定することとしたい。