人事院勧告等を受け,地方公務員部会が総務大臣申入れ(8/8)を実施
公務労協地方公務員部会は、人事院勧告・報告後、各人事委員会が勧告作業に取りかかることを受け、8月8日に総務大臣に対して「2024年給与勧告等に関する申入れ」を行った。
【松本総務大臣への申入れの経過】
松本総務大臣への申入れは、8月8日に行われ、古矢地方公務員部会議長ほか委員長クラス交渉委員が出席した。
冒頭、古矢議長は、申入書(別紙1)について、以下のように申し入れた。
(1)人事院は、8月8日、国会及び内閣に対して2024年の官民較差に基づく国家公務員の給与等に関わる勧告を行った。月例給、一時金のいずれについても、引上げ勧告となり、特に月例給では、若年層に重点を置きつつ、すべての職員の改定を行うとしたことは、課題は残るものの、職員の期待に応えたものと一定評価できる。しかし、あらゆる物価が高騰し、職員の生活に大きな影響を与えている中、働き方改革をはじめ、地方公務員をとりまく課題は山積している。職員が国民・住民の期待に応え、より質の高い公務・公共サービスを確実に提供していくためには、職員の雇用の安定、積極的な賃金の引上げ及び労働条件の改善が不可欠だ。
(2)「社会と公務の変化に応じた給与制度の整備」については、当然地方公務員にも影響することから、地方公務員給与への対応措置について、地方公務員部会との十分な協議を強く求めておく。
(3)今後、都道府県、政令市等の各人事委員会では、2024年の月例給および一時金に関する勧告に向けた作業が本格的に進められていくが、地方公務員の労働基本権制約の代償措置である人事委員会勧告制度が機能するよう、総務省として適切な対応をはかるとともに、労使間の十分な交渉・協議を通した自主的な給与改定を尊重するよう要請する。
これに対して松本大臣は、「地方公務員の皆様には、日頃から、住民のために大変ご尽力いただいていること、行政サービスの根幹の対象が住民であり、人によるサービスが大切である中、これを効果的、効率的に行うためにDXなども皆様と相談しながら進めているところであるが、公務員の皆様の活動というのが最も大事であるということは認識をしており、敬意を表したい。
本年は、元旦の能登半島地震に加えて、東北地方でもつい先日、大きな災害が発生しており、それぞれの自治体での業務が大変な中で、応援にも行っていただいており、また、経済・社会が発展し、ニーズが多様化している中での対応にご尽力いただいていることに感謝を申し上げたい。いただいた内容につきましては、しっかり受け止めてまいりたい。人事院勧告におきましては、賃金水準の引上げが必要である旨の主旨であったと理解している。これを受け、人事委員会勧告、労使間の話合い等も踏まえてということになるかと思うが、総務省としても十分に賃金が引上げられるような財政的なバックアップが何より重要であると考えている。また、ご説明にあったように、物価水準の高騰や働き方に求められるものが、大きく変わった環境に対応すべく、総務省としてできる限り努めてまいりたい。それぞれの要請事項については、しっかりと検討し、事務方から回答させていただきたい。改めて、今日のご要請を総務省として受け止めさせていただく」と述べた。
(別紙1)
2024年8月8日
総 務 大 臣
松 本 剛 明 様
公務公共サービス労働組合協議会
地方公務員部会議長 古矢 武士
(公印省略)
地方公務員の給与改定等に関わる申入れ
貴職の地方公務員の賃金・労働条件の改善に向けたご努力に敬意を表します。
さて、エネルギー価格の上昇や食料品の値上げなど、あらゆる物価が高騰し続け、職員の生活に大きな影響を与えています。
一方、今年の春季生活闘争は、昨年を超える高い水準の回答が相次ぎ、賃金の引上げ傾向が鮮明となっています。
このような中、職員が国民・住民の期待に応え、より質の高い公務・公共サービスを確実に提供していくためには、職員の雇用の安定、積極的な賃金の引上げ及び労働条件の改善が不可欠です。
人事院は、8月8日、政府と国会に対して 2024年の官民較差に基づく国家公務員の給与等に関わる勧告を行いました。各人事委員会では、2024年の月例給および一時金に関する勧告に向けた作業が本格的に進められていますが、地方公務員の労働基本権制約の代償措置である人事委員会勧告制度が機能するよう、総務省として適切な対応をはかるとともに、労使間の十分な交渉・協議を通した自主的な給与改定を尊重するよう要請します。
貴職におかれましては、下記事項の実現に向け最大限のご努力をいただきますようお願いします。
記
1.2024年の地方公務員の給与改定については、地公法第24条2項の趣旨を踏まえた自治体の自主的な決定が尊重されるよう対応すること。
2.公営企業および技能労務職員の給与については、当該職員に労働協約締結権が保障されていることを踏まえ、労使交渉に基づく自主的・主体的決定を尊重すること。
3.「社会と公務の変化に応じた給与制度の整備」にあたっては、国の制度変更に準じた扱いを自治体に求めないこと。総務省が行う「社会の変革に対応した地方公務員制度のあり方に関する検討会 給与分科会」の最終報告、並びに給与改定等に関する取扱いについての副大臣通知の扱いなど、地方公務員給与への対応措置について、地方公務員部会との十分な協議を行うこと。なお、とくに以下の事項に関する措置について留意すること。
(1)人材確保に資する初任給水準を確保するとともに、今日の経済情勢を踏まえ、中高齢層職員及び再任用職員、会計年度任用職員を含めた全職員の給与水準の引き上げが必要であること。
(2)地域手当については、地域の実情を踏まえ、各地方自治体の判断を尊重すること。補正後ラス指数及び特別交付税における措置を廃止すること。
(3)通勤手当については、職員の自己負担を軽減・解消すること。
(4)再任用職員の給与については、生活関連手当とともに寒冷地手当や特地勤務手当・へき地手当の支給を可能とするよう対応すること。
(5)扶養手当の見直しについては、時代の変化や社会情勢を踏まえつつも、現に支給 されている職員への配慮を前提とすること。
4.公務における働き方改革を着実に推進するため、地方自治体における長時間労働の是正については、厳格な勤務時間管理や時間外勤務縮減目標等の設定など、実効性のある時間外勤務縮減策を講じられるよう地方自治体を支援するとともに、休暇・休業制度の拡充、労働時間短縮のための人員確保等の施策を構築すること。
5.臨時・非常勤職員制度について、民間労働法制や改正地方公務員法等の趣旨を踏まえ、雇用の安定、労働条件及び抜本的な待遇改善、休暇制度の改善等、関係法の改正を含むさらなる制度改善に向けた見直しを引き続き検討すること。
(1)会計年度任用職員について、全地方自治体で期末手当及び勤勉手当を適切に支給するよう対応をはかるとともに、必要な財政措置を行うよう求める。
(2)引き続き、常勤職員との権衡の観点から、有給を基本とした各種休暇制度の改善を検討すること。
6.地方自治体におけるいわゆる「カスタマーハラスメント」をはじめ、各種ハラスメントの防止については、総務省「各種ハラスメント対策の取組状況調査結果」を踏まえ、必要な措置を講ずること。
7.定年年齢の段階的引き上げの実施に伴い生じる諸課題について、関係組合との十分な交渉・協議、合意に基づき対応するよう地方自治体に対し促すこと。定年引き上げ期間中は、雇用と年金の確実な接続を図るため、職員の希望通りの再任用の実現と高齢期の生活を支える給与、適切な労働条件を確保すること。また、職員が定年延長せずに退職してしまう現状について対策を検討すること。
以上