【内閣人事局】2025年度基本要求に対する回答を引き出す-12/23
公務員連絡会・幹事クラス交渉委員は、12月23日に内閣人事局との交渉を実施し、 11月26日に提出した「2025年度の基本要求」に対する回答を引き出した。内閣人事局からは砂山内閣審議官が対応した。交渉経過については次のとおり。
冒頭、高柳副事務局長が、基本要求に対する回答を求めたのに対し、砂山審議官は次のとおり答えた。
給与法案については、12月12日に衆議院を通過し、12月17日に参議院で可決・成立した。この間、職員団体の皆様には多大なるご尽力を賜り、協力のもと成立に至ることができた。ここに厚く御礼を申し上げる。
一.賃金・労働条件の確保について
国家公務員の給与改定に当たっては、国家公務員の適正な処遇の確保や、国民の理解を得る観点からも、また、労働基本権制約の代償措置といった観点からも、第三者機関としての人事院が専門的見地から行った官民比較に基づく人事院勧告を尊重することが政府としての基本姿勢である。
今後も、諸情勢を踏まえつつ、対応していく。
二.労働時間、休暇及び休業、人員確保等について
超過勤務手当の支給については、各大臣の責任において適切に行われるべきものであるが、内閣人事局としては、国家公務員制度担当大臣から各府省大臣に対し、超過勤務手当の確実な支払いをお願いするなど、徹底を図っているところ。
加えて、各府省共通の勤務時間管理システムについて、令和8年度末までに必要な整備を行えるようデジタル庁及び人事院と連携して検討・作業を進めており、職員の勤務時間の見える化などを通じて、適切な勤務時間管理に取り組んでまいりたい。
公務における勤務間のインターバル確保については、本年3月に人事院から目安となる時間や確保に係る取組例等を示した通知が発出されたところ。
各職場の実情も踏まえ、人事院と連携し、引き続き内閣人事局としても、職員の心身の疲労回復や健康維持に必要な時間が確保されるよう取り組んでまいりたい。
定員管理に関するご要望については、しっかりと受け止めたい。
三.女性参画の推進及び多様性の確保について
女性の登用の推進については、各府省の取組を毎年度フォローアップするとともに、女性の国家公務員志望者拡大に資する戦略的広報の実施、若手からのキャリア形成支援、管理職の意識改革などに取り組んでいるところであり、引き続き、各府省の取組を促進させるようなサポートを行い、女性活躍の動きを更に加速してまいりたい。
四.福利厚生施策等について
内閣人事局としては、各府省の取組を補完するため、パワー・ハラスメントを含むハラスメント防止講習やメンタルヘルス講習を提供しているところ。なお、ハラスメント防止に関する研修及びメンタルヘルスに関する研修は管理職員、課長補佐、係長に加え、幹部職員、課長等への昇任時にも受講を必修としている。
「国家公務員健康増進等基本計画」では、各府省における相談窓口の実施状況や利便性等をフォローアップすることとしており、この結果を踏まえ、各府省の取組を支援してまいりたい。
五.人事評価制度について
人事評価は、あらゆる人事管理の基礎として、能力及び実績を的確に把握して、処遇や人材育成に活用していくことが重要。令和3年及び4年に行った制度見直しの定着も含め、人事評価の適切な運用を図ってまいるとともに、必要に応じて改善にも取り組んでまいりたい。
六.定年の段階的引上げに伴う各種施策について
国家公務員の雇用と年金の接続については、平成25年3月の閣議決定において、年金支給開始年齢の引上げが開始された平成25年度以降、定年退職者が年金支給開始年齢に達するまでの間、再任用を希望する職員については再任用することとし、雇用と年金の接続を図っているところ。
一昨年3月に策定した「国家公務員の定年引上げに向けた取組指針」において、定年の段階的な引上げ期間中に、定年退職者が再任用を希望する場合には、平成25年の閣議決定に準じて、当該職員を公的年金の支給開始年齢に達するまでの間、再任用するものとしており、平成25年3月の閣議決定及び取組指針に基づき、各任命権者を含め、政府全体で適切に対応してまいりたい。
七.非常勤職員制度等について
非常勤職員の「3年公募要件」については、人事院において、各府省や職員団体の意見等も踏まえながら、制度官庁と協議をした上、各府省における円滑な運用に資するよう「期間業務職員の採用等に関するQ&A」を本年11月に作成したと承知している。
内閣人事局としては、まずは各府省の運用を注視しつつ、必要に応じて対応を検討してまいりたい。
また、非常勤職員制度については、非常勤職員には様々な勤務形態や類型があることから、一律に検討することは困難と考えられるが、目下人事院において、各府省の実態等を把握しつつ、その適切な運用の在り方等について検討を行っているものと承知している。内閣人事局としては、人事院における検討を踏まえ、適切に対応してまいりたい。
八.障害者雇用について
人事院が策定した合理的配慮に関する指針等を踏まえ、「公務部門における障害者雇用マニュアル」を1月に改訂するなど、環境の整備に引き続き取り組むとともに、各府省における障害者雇用の取組を支援してまいりたい。
九.公務員制度改革について
本年6月のILO総会で採択された議長集約も踏まえ、12月19日に使用者団体、労働者団体及び政府の3者での意見交換会を開催させていただいたところ。
自律的労使関係制度については、多岐にわたる課題があることから、引き続き皆様と誠実に意見交換しつつ、慎重に検討してまいりたいと考えている。
これに対して、高柳副事務局長は次のとおり質すとともに重ねて要請をした。
<給与水準について>
まず、「人事院勧告制度を尊重する」ことが内閣人事局としての基本姿勢であることを確認させていただいた。引き続き、その立場でご対応願いたい。
その上で、ご案内の通り、我が国の実質賃金は、2年以上にわたり前年比マイナスあるいはそれに近い状態が続いており、一向に、物価高騰に賃金の伸びが追いついていないのが実態である。
勤労者の賃金の引上げと生活の改善は、引き続き目下の最重要課題と言っても良いと理解しているが、国家公務員を含めた勤労者の生活実態を十分に認識した上で、ご対応いただきたい。
<労働時間、休暇及び休業について>
超過勤務について、本年秋に私どもが組合員に対して行った最新の意識調査がちょうどまとまったところであるが、国公・一般行政職の回答者=5,000人強について、「超勤手当が全額支給されている」と回答した職員が、昨年よりさらに悪化し、8割を切っている状況である。平新大臣のもと、各府省への指導を強化していただきたい。
同じ調査において、勤務間インターバルの状況について、「今年4月以降に、退勤から翌日の出勤までの時間が11時間を下回ることがあったか」との問いに対して、「全くなかった」との回答はちょうど8割であった。人事院の調査結果より1割程度少ないものと承知しているが、いずれにしても、「国家公務員=長時間労働」のイメージが定着し、公務員志望者の確保にもマイナスの影響を与えていることは明らかだと考えるので、人事院とも連携し、各府省への指導をお願いしたい。
定員管理に関連して、毎年のことであるが、新年度予算案における機構・定員の査定結果について、新年になってからで良いので、行政組織担当の皆さんからご説明していただく機会を設けていただきたい。よろしくお伝え願いたい。
<福利厚生施策について>
パワハラについては、他の産業に比して公務職場が酷い実態にあるとは認識していないが、近年顕在化していることは間違いがないと考える。一方、メンタル疾患による長期病休者数については、国家公務員が他の産業よりも多いという指摘もある。ただ今のご回答も含め、内閣人事局として様々取り組んでいることは承知したが、これらもまた、求職者の公務職場に対する忌避感や職員の途中退職に直結する問題であることは明らかであるので、改めて対策の充実・強化を要請したい。
<人事評価制度について>
先ほど報告した調査では、現在の人事評価制度に関する評価として、「概ね公平・公正だ」と考える職員は8割を超えているが、一方で、「評価結果が、昇進・昇給を判断する材料として適切か否か」について聞いてみると、「適切と言い切れず反映は程々にすべき」と回答した職員も、6割を超えているのが実情である。引き続き、内閣人事局として、人事評価制度の実態の検証、その上での、必要な制度改善や、各府省に対する指導等の強化等を求めておきたい。
<非常勤職員制度について>
先般の給与法の成立に伴って、非常勤職員についても、月例給、一時金ともに改定されることになるものと承知している。昨年同様、内閣人事局・人事院として、月例給の遡及改定も含めて、各府省に対する調査を行っていただき、調査結果について、何らかの形で我々にも共有化願いたい。特に、今回の下位の級の大幅引上げや初号近辺の号俸カットといった措置は、結果として非常勤職員の給与改善にも大きく影響するものと考えているが、各府省において、適切な運用が行われるようチェックしていただきたい。
これに対し、砂山審議官は次のとおり答えた。
多くのご指摘・再度のご要望をいただいたので、先ほどの回答と重複する部分は省略し、それ以外の点についてポイントを絞って、何点か回答させていただく。
超過勤務手当の支給については、引き続きその趣旨が徹底されるよう対応していく。
長時間労働の是正に関し、超過勤務の縮減のため、各府省等は、「国家公務員の女性活躍とワークライフバランス推進のための取組指針」等に基づき、業務の廃止・効率化、デジタル化、マネジメント改革推進のための取組等を進めている。今後とも、勤務時間などの基準を定めている人事院と連携して超過勤務の縮減に取り組んでまいりたい。
定員に関して、来年度の機構・定員査定結果の説明会の開催については承った。
非常勤職員の給与改定等については、各府省等からその対応状況を後日聞く予定である。また、調査を実施した場合の調査結果の共有については、ご意見として承った。
また、交渉参加者からは
「当組合で行ったアンケート調査で、フルタイム再任用を希望しながらも、実際は短時間勤務となっているとの回答が1割弱見られた。希望どおりフルタイム再任用が可能となるよう、環境整備を求める」
「一般職では役降りがない中で定年延長前とほぼ同様の業務を行い、不満の声が寄せられている。同一労働・同一賃金の観点から看過できない問題であり、課題の把握と制度面での早急な対応を求める」
「我々の職場では、厳しい定員合理化政策の中、業務の見直しやDX化を進めているが、人員不足により現場が回らず、超勤削減が進まない悪循環に陥っている。超勤削減には、必要な場所に適切な人員を配置することが不可欠である。現場の声に耳を傾け、必要な手立てを講じるよう求める」
「勤務間インターバルについて、人事院の調査結果等も踏まえ、長時間労働是正のため内閣人事局からも各府省への指導を徹底していただきたい」
「人員不足が続く中、若手の指導・育成にも支障が出ているため、育成の観点からも定員の増加を求める」との意見が出された。
これらの意見に対し、砂山審議官は「いずれの課題も切実な声として重く受け止めさせていただく。定員については、それ自体よりも、人材確保や少子化、公務員志望者の減少、若手の離職といった総合的な課題と深く関わっていると考える。定員を増やしても埋められないという問題もあり、人材確保やリテンション=定着の支援など、多角的な対策が必要と考える。こうした課題解決に向け、職員団体の皆様にも、引き続きご協力をお願いしたい」と述べた。
最後に、高柳副事務局長が「以上を持って本年度の基本要求書に関する交渉は終了したい。来年2月には、春闘期の要求書を担当大臣に提出させていただきたいと思うので、その点について、予めよろしくお願いしておきたい」と述べ、回答交渉を終えた。