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公務公共サービス労働組合協議会 公務員連絡会
2021年度 公務労協情報 No. 15

2021春季要求で書記長クラスが内閣人事局と交渉-3/16

 公務員連絡会書記長クラス交渉委員は、3月16日13時30分から、内閣人事局人事政策統括官との交渉を実施し、2021春季要求に対する現段階における回答を引き出した。
 冒頭、吉澤事務局長が現段階の回答を求めたのに対し、堀江人事政策統括官は次のとおり答えた。

1.2021年度賃金について
国家公務員の給与改定に当たっては、国家公務員の給与を社会一般の情勢に適応させるとの原則の下、人事院勧告制度を尊重することが基本姿勢と考えている。
給与改定については、人事院勧告も踏まえ、国政全般の観点に立って総合的に検討を行った上で方針を決定してまいりたいと考えている。その際には、皆様とも十分に意見交換を行ってまいりたい。
2.非常勤職員等の雇用、労働条件の改善について
非常勤職員の給与等の処遇改善については、重要な課題であり、これまでも、各府省に対し必要な予算が確保されるよう働きかけを実施してきたところ。
今後とも、非常勤職員の給与等に係る具体的な運用を定める人事院と連携し、各府省における非常勤職員の給与等の処遇改善に向けた必要な予算確保がしっかりと行われるよう、適切に働きかけを実施してまいりたい。
また、民間における「同一労働同一賃金」の原則については、国家公務員に直接適用されるものではないが、「同一労働同一賃金」の取組等について引き続き注視していきたい。
3.新型コロナウイルス感染症への対応について
「新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針」(令和2年3月28日新型コロナウイルス感染症対策本部決定)等を踏まえ、人事院とも連携しながら、各府省に対し感染拡大防止に向けた取組を依頼してきたところ。引き続き、関係機関と連携しながら、適切に対応してまいりたい。

4.労働時間、休暇及び休業等について
長時間労働の是正については、「国家公務員の女性活躍とワークライフバランス推進のための取組指針」等に基づき、これまでも、
・ 長時間労働を前提とした働き方を改める意識改革
・ 業務の見直し・効率化、部下職員の超過勤務時間見込みの事前把握、管理職のマネジメント改革による超過勤務の縮減
・ テレワークやフレックスタイム制等による働く時間と場所の柔軟化
等に取り組んできたところ。
また、長時間労働の是正には、職員の勤務時間を「見える化」した上で、適切な勤務時間管理を行うことが必須であり、各府省等は、
・ 業務端末の使用時間の記録等の客観的な方法による職員の勤務時間の把握
・ 管理職は部下の勤務時間並びに超過勤務の状況及び理由をリアルタイムで把握
を実施するとともに、これらを含む機能を備える勤務時間管理のシステム化を早期に実現し、職員の勤務時間を「見える化」した上で、必要な改善方策に取り組むこととなっている。
引き続き、地方の現場の実情を含め、皆様方のご意見も伺いつつ、各府省等とも連携し、テレワークのより一層の推進や超過勤務時間の縮減に向けて、着実に取組を進めてまいりたい。
5.障害者雇用について
「公務部門における障害者雇用に関する基本方針」に基づき、障害者の多様な任用形態を確保するとともに、障害者雇用マニュアルを作成するなど、障害のある職員が意欲と能力を発揮し、活躍できる環境の整備に取り組んできたところ。
また、職場実習の実施や講習会の開催など、各府省における障害者雇用の推進に係る支援等に努めており、今後とも、関係機関と連携しながら、各府省において障害者雇用が適切に進むよう、取り組んでまいりたい。
6.女性公務員の労働権確立について
男女双方のワークライフバランス及び女性職員の活躍については、「国家公務員の女性活躍とワークライフバランス推進のための取組指針」等に基づき、各府省の取組を引き続きフォローアップし、その取組を促進させるようなサポートを行うことにより、職員のワークライフバランスを実現し、女性活躍の動きを更に加速してまいりたい。
7.高齢者雇用施策について
国家公務員法改正案については、法案の提出について、検討を行っているところである。
8.福利厚生施策の充実について
「国家公務員健康増進等基本計画」等に基づき、職員の能率増進のため、ハラスメントに関する研修・啓発の確実な実施や相談体制の整備等の取組を進めているところ。引き続き、各府省における基本計画の実施状況を把握し、必要な措置が講じられるよう取り組んでまいりたい。
なお、「国家公務員健康増進等基本計画」については、皆様方のご意見も踏まえて改正し、特に若手職員を中心にメンタルヘルス対策の強化、心の健康づくりに関する研修やハラスメント防止研修の強化等を図り、各府省における健康管理対策に関する取組の向上を図ってまいりたい。
9.公務員制度改革について
これまで、勤務条件に関わる様々な課題について、ご意見を伺いつつ対応してきたところ、皆様とは、引き続き誠実に意見交換をさせていただきたいと考えているが、自律的労使関係制度については、多岐にわたる課題があり、慎重に検討する必要があると考えている。
 
回答を受けて、吉澤事務局長は、「春季要求事項に入る前に、社会的な関心も高いワクチン休暇の件と、要求項目以外の課題3点について政府の考え方を確認する」として次のとおり、人事政策統括官の見解を質した。

(1) 一昨日の河野大臣及び昨日午前中の官房長官の記者会見で「ワクチン休暇」の検討について発言があった。具体的には、これからの検討となるのだろうが、例えば、特別休暇あるいは職務専念義務の免除ということが考えられる。われわれも積極的に歓迎するが、この件に関わる検討主体は、政府なのか人事院なのか。
(2) 人事評価制度の見直しに関わっては、来週の有識者検討会において最終的な報告が取りまとめられると承知している。見直しの措置の具体化に当たっては、われわれとの交渉・協議、合意に基づいて進めることを改めて確認する。
(3) 退職給付の調査に基づく退職手当法の改正は、おおよそ5年毎に行われており、前回の調査が2016年だったことから、本年が調査のタイミングと考えられるが、現時点においてどのような対応を想定しているのか。
(4) 民間の育児休業法等の改正に関わって、公務員関係については、現時点においてどのような対応を考えているのか。

 これに対して、堀江人事政策統括官は次のとおり回答した。
(1) 基本的なスタンスとして、ワクチン接種は強制ではないので、強制にならないということに留意しながら、厚労省において民間に対してどのようなお願いをしていくのか等を踏まえながら、人事院と連携して検討したいと考えている。ご指摘の特別休暇、職務専念義務の免除ということになれば、仮定の話にはなるが、検討は人事院が主体だろうと考える。いずれにせよ、政府全体としてワクチン接種をどのように進めていくかということであり、私どもとしても、人事院、あるいは厚労省とよく連携を取っていきたいと考えている。
(2) 検討会は検討会として、その後、実際の制度化までの間に、皆さんの意見も聞きながら、ご説明させていただきたいと考えている。
(3) ご指摘のとおり、おおよそ5年毎に民間の水準と比較するということにしているので、時期的には本年が調査の年ということになるが、具体的な実施については、現在、検討中である。
(4) 今後、人事院から、考え方、法律上の整備、実際の運用イメージ、効果等についての検討状況を聞いた上で、具体の対応については考えてまいりたい。なお、今回の民間法制の改正事項の中には、人事院規則の改正でも対応できるものが含まれているだろうと理解している。なお、検討に当たっては、皆さま方とも意見交換をさせていただきたい。

 次に、春季要求項目について、吉澤事務局長は、人事政策統括官の見解を質した。
1.賃金要求、給与改定
(1) 2021年度の給与改定に関わって、現在の新型コロナウイルス感染症の状況が民間の雇用・賃金に与える影響も極めて大きいなかで、公務員に対する社会的な評価、あるいは総務省の接待問題など、決して順風ではない状況のもとでも、政府としての基本的な立場は何ら変更無いことを確認するが見解如何。
(2) 昨年の給与法改正までの経過も踏まえ、社会的、政治的に定着している一昨年以前のスケジュールでの対応を人事院に求めているが、政府としても人事院に対して強い意志を示すべきと考えるが認識如何。
(3) 非常勤職員の給与については、具体的により明確な基準の策定に関して、人事院に対応が委ねられていると承知しているが、認識如何。

これに対して、堀江人事政策統括官は次のとおり回答した。
(1) 変更はない。
(2) ご指摘のとおり、昨年は、極めてタイトなスケジュールとなった。当然ながら、調査のスケジュール、勧告のスケジュールなどは第三者機関である人事院において、検討されるものであるが、政府としては、政府における検討の期間、国会に提出して判断いただく期間が万全に確保されるよう、前広に検討を進めていただきたいと考えている。
(3) 非常勤職員の処遇改善については、これまでも努力をしてきたが、これ以上の改善については、人事院において明確な処遇についての考え方、基準を示すことが必要であろうとの第203臨時国会における河野大臣の見解であったと承知している。

2.定年引上げ
(1) 国家公務員法等の一部を改正する法律案の再提出に向けて検討中とのことだが、今国会もすでに中盤になろうとするところ、具体的にどのように、どんな検討中なのか。再提出に向けて、重ねて最大限の努力を求めるが認識如何。
(2) 仮に国公法の再提出を想定した場合、施行日について、廃案法案では、段階的な定年年齢の引上げを2022年4月1日施行、2030年に65歳にするとされていたが、現実の問題として、一年ずれざるを得ない。当然、それによって影響が生じる職員(昭和37年4月2日~昭和42年4月1日生まれ)がいるということに関しては問題提起をしておく。その上で、これ以外について、法案内容に変更があれば、当然、事前に交渉・協議、合意の上で対応することを求めるが見解如何。

これに対して、堀江人事政策統括官は次の通り回答した。
(1) 大変恐縮だが、現時点において、昨年の国会における様々な議論があったことを踏まえて、検討中であるという以上に申し上げられることはない。定年引上げは、社会にとっても、公務員制度にとっても重要な課題であると認識しており、最大限の努力をしていく。
(2) ご指摘の点以外に、何か変更するようなことがあれば、きちんと説明していく。

3.超過勤務の縮減
(1) 超過勤務手当の全額支給に関しては、一般的、社会的には当然のことであるが、そのことにより超過勤務の縮減をより一層強く求められると認識しているが、政府の見解如何。
(2) 超過勤務の縮減について、問題は人事院規則15-14の実効性であり、少なくとも令和元年度の検証をしっかりと行い、何が課題で、直すべき所はしっかり対応していくことが必然と考えるが、政府の見解如何。

これに対して、堀江人事政策統括官は次のとおり回答した。
(1) 超過勤務手当の適正支給は、当然のこと。政府としては、ワークライフバランス指針の中でも、長時間労働そのものを是正していくことを柱としている。
(2) 人事院には、検証、分析、指導に注力し、問題の解決に力を尽くしていただきたい。
 最後に、吉澤事務局長は「いずれの要求に関わっても、極めて厳しい状況の中で、必死に業務に従事をしている組合員の切実な要求であり、前向きな検討を重ねて、25日には、河野大臣から回答をいただきたい」と強く要請し、交渉を終えた。