地公部会が、総務省から春の段階の回答引き出す-3/26
公務労協地方公務員部会は3月26日、書記長クラス交渉委員が、山越公務員部長ほかと2021春季段階の最終交渉を行った。冒頭、鬼木企画調整委員代表が「2月19日、武田総務大臣に要求書を提出し、これまで交渉・協議を積み重ねてきたが、本日はこうした交渉経過を踏まえながら、公務員部長から春の段階の最終回答をいただきたい」と、求めたのに対し、山越公務員部長は次のように回答した。
1.2021年度の賃金改善について
(1) 総務省においては、令和2年度の給与改定に当たっても、「人事委員会の給与に関する勧告及び報告を踏まえつつ、地域における民間給与等の状況を勘案して適切に対処すること。」との副大臣通知を発出した。
令和3年度の地方財政計画における給与関係経費については、保健師や児童福祉司の増を見込むことなどにより、その所要額を適切に計上したところ。
(2) 地方公務員の給与については、地方公務員法等の規定に基づき、各地方公共団体の議会において条例で定められるものである。
総務省としては、国民・住民の理解と納得が得られる適正な内容とすべきものとの考えに立ち、必要な助言を行ってまいる。
2.労働時間、休暇及び休業等について
(1) 地方公務員の働き方改革を進め、職員が心身の健康を維持し、ワークライフバランスを保ちながら職務に従事できる環境を整えることは、職員の勤務意欲の向上や、優秀な人材の確保につながり、ひいては地方公共団体における質の高い住民サービスの提供を可能とするものと考えている。
総務省としては、時間外勤務の上限規制制度の導入、上限時間を超えて命じた場合の要因検証、客観的な記録による勤務時間の適切な把握など、時間外勤務縮減に向けた取組を積極的に推進するよう要請してきた。
引き続き、地方公共団体に対し時間外勤務縮減の優良事例の紹介を行いながら、必要な働きかけを行い、各団体が自らの状況を客観的に把握しながら改善等が講じられるよう促してまいりたい。
特に、長時間の時間外勤務の職員が存在する地方公共団体においては、その要因についてしっかり検証し、時間外勤務の縮減に取り組むよう要請してまいりたい。
地方公務員における勤務時間、休暇等の勤務条件については、これまでも民間法制の適用や国家公務員制度との権衡について必要な対応を図るべく、助言してきたところである。引き続き、民間や国家公務員の動向に注視し、適正な勤務条件の確保を進めて参りたい。
地方公共団体の定員管理は、各団体において自主的にご判断いただくことが基本であり、行政の合理化、能率化を図りながら、地域の実情を踏まえつつ、適正な定員管理に努め、変化する行政需要に応えていくことが重要と考えている。
(2) 職員の健康管理体制や職場の安全衛生管理体制の確立については、任命権者が労働安全衛生法の趣旨にのっとり主体的に実施するものであり、各地方公共団体において着実に実施されてきているものと認識している。
総務省においては、従来から地方公共団体に対し、労働安全衛生法の遵守などメンタルヘルス対策の推進に係る情報提供や助言などを行ってきたほか、特に、ストレスチェックについては、事業場の規模に関わらず、全ての職員に対して実施するようお願いする旨重ねて通知を発出し、メンタルヘルス対策をより一層推進するよう助言しているところである。
(3) 令和2年6月1日に施行された改正労働施策総合推進法により、地方公共団体においても、パワーハラスメント防止のための雇用管理上の措置を講じる義務を負っている。
一方、同法が適用除外される国家公務員においては、人事院規則などにおいて、一部で民間法制に上乗せした事項を規定している。
総務省としては、地方公共団体に対し、公務職場に特有の要請に応える観点から、厚生労働大臣指針に定める措置に加え、国家公務員と同様の対応を行うよう要請してきた。
直近で発出した昨年10月2日付け通知では、施行時点におけるパワーハラスメント対策の取組状況の調査結果を踏まえ、未だ措置が適切に講じられていない地方公共団体に対して速やかな対応を要請するとともに、
・措置の内容を文書により定めた上で、職員に周知することが望ましいこと
・周知・啓発に係る措置については、厚生労働省作成のリーフレット等を活用し、早急に講じること
についても助言している。
今後ともパワーハラスメント防止の実効性が確保されるよう、積極的な助言等を行っていきたい。
3.会計年度任用職員をはじめとする臨時・非常勤等職員の待遇改善、雇用安定について
(1) 会計年度任用職員への勤勉手当の支給については、平成29年5月の法改正(制度創設)当時において、国家公務員の期間業務職員などへの支給実績が広がっていなかったことから、国家公務員との均衡の原則も踏まえ、支給しないこととしたところである。
その後、平成30年7月時点における国の期間業務職員に対する勤勉手当の支給割合は9割を超えているが、その一方で、期末手当の支給月数を含め、実際の運用は各省庁によって統一的ではない点もあると承知している。
いずれにせよ、勤勉手当制度については、今後、各地方公共団体における「期末手当」の定着状況なども踏まえた上で、検討すべき課題と受け止めている。
(2) 会計年度任用職員制度の導入に伴い新たに必要となる期末手当等の経費については、全国の地方公共団体に対して所要額の調査を行っており、その結果を踏まえ、令和2年度の地方財政計画において、1,738億円を計上しており、新制度に円滑に移行できるよう必要な財源を確保している。
また、令和3年度においては、制度の平年度化による期末手当の支給月数の増によって生じる経費について、664億円を増額し、期末手当等の経費として合計で2,402億円を計上することとしており、引き続き、必要な財源を確保している。
(3) 総務省では、地方公務員の臨時・非常勤職員について、学校の臨時休校や施設の一時閉鎖など、感染防止のための措置に講ずる場合であっても、各地方公共団体に職員の業務内容や勤務場所の変更といった柔軟な対応により、非常勤職員を含む職員全体の働く場の確保を図るよう繰り返し助言を行ってきた。
また、臨時・非常勤職員を含む職員をやむなく休業させる場合には、休業手当の取扱いについて、労働基準法の規定に従い、適切に運用するよう助言を行っている。
さらに緊急事態宣言の発出(令和3年1月7日)に合わせ、改めて、地方公共団体に対し、新型コロナウイルス感染症対策を踏まえた組織全体としての業務体制の確保に万全を期すようお願いするとともに、ワクチン接種に向けた庁内体制の拡充についても取組を進めていただくよう助言を行ったところである。
今後、ワクチン接種が本格的に開始されることとなるが、各団体においては、こういった行政需要も踏まえつつ、必要とされる業務提供の体制を整え、適切に対応いただきたい。
総務省としては、臨時・非常勤職員の雇用確保の観点からも、引き続き、職員全体の働く場の確保を図るよう地方公共団体に必要な助言を行ってまいりたい。
4.公共サービス基本法に基づく適正な労働条件確保等について
公共サービス基本法第11条において、地方公共団体は、安全かつ良質な公共サービスが適正かつ確実に実施されるよう、公共サービスに従事する者の適正な労働条件の確保や労働環境の整備に関して必要な施策を講ずるよう努めるものとされている。
これに関し、総務省としては、
・ 会計年度任用職員制度を創設し、新たに期末手当を支給可能とするなど、臨時・非常勤職員の適正な任用・勤務条件の確保や、
・ 時間外勤務の縮減と上限規制、年次有給休暇の取得推進、女性職員の活躍や各種ハラスメント対策など、地方公務員の働き方改革の推進に向けた助言
などを通じ、地方公共団体に対する支援に取り組んでいる。
また、これまでも、地方公共団体に対し、公共サービスの実施に関する業務の委託に当たり、受託事業者等において労働条件への適切な配慮がなされるよう留意すること等について助言を行っており、今後とも、公共サービス基本法の趣旨を踏まえ、必要に応じて、助言等を行ってまいりたい。
5.雇用と年金の確実な接続について
定年引き上げのスケジュールについては、提出している地方公務員法改正法案の施行期日は、廃案となった国家公務員法等改正法案にあわせ令和4年4月1日となっているところ。
定年引上げに伴う諸制度の導入は、国家公務員の定年引上げとタイミングを合わせる必要があることから、関係省庁において検討中の国家公務員法等改正法案における施行期日を踏まえつつ、適切に対応してまいりたい。
地方公務員の定年引き上げについて、これまで総務省としては、地方公共団体に対し、ブロック会議等を通じて、法案の内容を踏まえた必要な検討・準備を進めるよう促してきたところ。
地方公共団体においては、それぞれの実情等を踏まえ、必要な検討・準備を進めていただきたいと考える。
また、法案の成立後は、施行期日までに全地方公共団体が円滑に新制度へ移行できるよう、条例案を可能な限り速やかに提示する等、今後も引き続き丁寧に助言や支援を行っていきたい。
地方公務員の再任用については、国家公務員の取扱いに関する閣議決定を受け、平成25年3月に各地方公共団体に対し務副大臣通知により要請したとおり、「定年退職者が再任用を希望する場合、任命権者は、公的年金の支給開始まで、常時勤務を要する職に当該職員を再任用することを基本とすること」としつつ、再任用職員の職務内容や勤務時間に関しては、職員の個別の事情や、それぞれの地方公共団体の実情を踏まえて、適切に決定していただくものと考える。
直近の令和元年度における再任用職員数をみると、フルタイム勤務が 63,401 人、短時間勤務が 58,646 人となっており、再任用職員数は年々増加し、中でもフルタイム勤務が増加傾向にあり、本格的に導入されて以来はじめて短時間勤務の職員を上回った。
また、再任用職員の給与についても、職務給の原則や均衡の原則等を踏まえ、各地方公共団体の条例において適切に定められるべきものと考えている。
回答を受け、鬼木企画調整委員代表は次のように述べた。
1.賃金改善について
地方公務員の給与については、言うまでもなく、地方自治の本旨と地方分権の理念に基づいて、当該地方自治体の条例で定めるべきものであり、その自治体の自主的・主体的判断で決定されるべきものである。それを損なうような指導・助言は控えるよう、その点を改めて強調しておく。
2.労働時間、休暇及び休業等について
(1) 長時間労働の是正
長時間労働の是正については、時間外勤務命令の上限に係る制度が施行されて2年が経過しようとしているが、昨年12月の総務省調査結果を見る限り、時間外勤務の上限規制の未設置自治体があることや一向に縮減されない時間外勤務の時間数等、不十分であるといわざるを得ない。
時間外勤務の上限規制が全自治体で措置されるよう徹底するとともに、特に、2020年度は、新型コロナウイルス感染症防止対策ということで、相当な時間外勤務の時間数となることも踏まえ、実効性のある時間外勤務縮減策を講じるよう地方自治体を支援するよう求めておく。
また、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、「特例業務」となりうる新たな業務が発生していることからも、「特例業務」における上限を超えた場合の要因の整理・分析・検証への対応を、地方自治体へ周知・徹底するよう求めておく。
給特法が適用される教育職員については、改正給特法のもと、教職員の長時間労働是正の実効性を高めるための労使交渉を強化しているところだが、地方公務員を所管する総務省としても、引き続き、文科省と連携しながら長時間労働の是正を推進するよう求めておく。
(3) パワー・ハラスメント対策について
パワー・ハラスメント対策については、改正労働施策総合推進法の施行を踏まえ、地方公務員における措置について、地方公務員部会との十分な交渉・協議、合意に基づいた対応をはかるとともに、総務省「パワーハラスメント対策の取組状況調査」の結果を踏まえ、全地方自治体において、規定及び基本方針等の明確化、職員への周知・徹底をはかるよう求めておく。
3.会計年度任用職員をはじめとする臨時・非常勤職員の待遇改善、雇用安定について
昨年12月の総務省調査結果から、会計年度任用職員の期末手当を支給していない自治体、あるいは支給はするが支給月数が少ない自治体など、少なからずあることについて、制度の趣旨からも、適切に支給するようさらに徹底すべきである。あわせて国家公務員の非常勤職員や常勤職員との権衡の観点から、勤勉手当について早期に適用をはかるよう検討に取りかかるべきだと考える。
会計年度任用職員制度導入から1年が経過しようとしているが、引き続き、改正地公法等の趣旨に即した待遇改善、雇用安定がはかられるよう、全般的かつさらなる見直しに向け、情報交換しながら、ともに努力していきたいと考えている。
4.公共サービス基本法に基づく適正な労働条件の確保等について
各自治体職場においては、災害への対応をはじめ、それぞれの持ち場で日夜自らの職務に全力を尽くしているが、その労働環境は大変厳しいものとなっている。
近年大規模災害が頻発する中で、必要なときに必要な質の高い公務・公共サービスを確実に提供していくためには、公共サービス基本法第11条に基づく職員の適正な労働条件の確保や労働環境の整備が不可欠であることに留意いただきたい。特に、今年度は、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、自治体職場は感染防止対策への対応等、厳しい労働環境であることを申し上げておく。
5.雇用と年金の確実な接続について
定年引上げについては、国家公務員法等改正法案の再提出の動向を注視するとともに、国の実施に遅れないよう確実に実現するよう強く求めておきます。定年引上げまでの間の再任用制度について、全自治体での適切な制度確立と職員の希望通りの再任用の実現とともに、高齢期の生活を支える給与、適切な労働条件が確保されるよう求めておきます。
地方公務員部会は、本日の交渉を春の段階の一定の到達点として受け止め、公務労協、公務員連絡会に結集し、人勧期に向けた取組を検討していくとともに、引き続き、総務省との交渉・協議・意見交換等をすすめていく。