委員長クラスが人事院総裁と交渉し回答を引き出す-8/5
公務員連絡会委員長クラス交渉委員は、8月5日、川本人事院総裁と交渉し、6月30日に提出した本年の人勧期要求に関する回答を引き出した。
交渉の冒頭、武藤議長が「6月30日に本年の人勧期の要求書を提出し、今日まで交渉を積み上げてきた。本年の勧告に向けた最終回答を総裁からいただきたい。」と求めたのに対し、川本総裁は次のとおり回答を示した。
1.給与改定について
〇 勧告日は、8月10日(火)となる予定である。
〇 民間給与との比較について、本年4月分の給与について、官民較差を算出したところ、国家公務員給与が民間給与をわずかに上回っていた。官民給与の較差が極めて小さく、俸給表及び諸手当の適切な改定を行うことが困難であることから、月例給の改定は行わない予定である。
〇 特別給は、0.15月分の引下げとなる見込みである。引下げ分は、今年度については、12月期の期末手当から差し引くこととする。
〇 来年度以降については、6月期と12月期の期末手当の支給月数が均等になるように定めることとする。
2.公務員人事管理に関する報告について
近年、就業意識の多様化や勤務環境への関心の高まりなどを背景に、公務の志望者が減少しており、若年層職員の離職も増加しているなど、人材の確保は喫緊の課題です。官民の垣根を越えて時代環境に適応できる能力を有する人材を誘致することが不可欠である。
公務職場全体の魅力を高め、個々の職員が能力や経験を十全に発揮し、意欲を持って全力で働くことのできる環境を実現するためには、幹部職員等の組織マネジメントが重要であることに加えて、長時間労働の是正が必要です。仕事と家庭の両立を図るため、勤務時間制度の柔軟な運用を通じたテレワークの活用等を含め、個々の職員の事情に応じた働き方が可能となる働きやすい勤務環境を整備することが求められている。
今回の報告においては、このような公務職場が置かれている課題を述べた上で、人事院が全力で推し進める取組として、次のことについて言及することとしている。
○ 長時間労働の是正について、人員配置や業務分担の見直しを通じて超過勤務を必要最小限のものとなるよう、各府省の人事管理責任者に対し指導するとともに、各府省の組織全体としての取組を促していく。
〇 超過勤務手当の適正な支給について、人事院が実施している調査や監査等のあらゆる機会を通じて各府省に対する指導を徹底していく。
〇 長時間労働を是正するためには、業務量に応じた要員が確保される必要があることを改めて指摘する。
〇 国会対応業務の改善を通じた超過勤務の縮減が喫緊の課題であることから、国会等の一層の御理解と御協力をお願いする。
〇 テレワークの推進は業務プロセスの変革やデジタルトランスフォーメーションの推進を通じた行動変容の観点やワーク・ライフ・バランスの観点等から重要であることから、テレワーク等の柔軟な働き方に対応した勤務時間制度等の在り方について、有識者による研究会を設けて検討を行う。
〇 勤務間インターバルの確保の方策についても検討する。
〇 このほか、公務員人事管理に関する報告においては、人材の確保及び育成、 ハラスメントの防止、心の健康づくりの推進、定年の引上げ及び能力・実績に基づく人事管理の推進についても言及する。
3.国家公務員の育児休業等に関する法律の改正についての意見の申出、及びこれを含めた妊娠、出産、育児等と仕事の両立支援策について
〇 男性職員による育児の促進や女性職員の活躍促進のため、育児休業の取得回数制限を緩和するよう、国家公務員の育児休業等に関する法律の改正についての意見の申出を人事院勧告と同日に国会及び内閣に対して行う予定としている。
〇 妊娠、出産、育児等と仕事の両立支援のため、人事院規則の改正等により、休暇の新設、休業等の取得要件緩和等を措置する。
〇 昨年5月に閣議決定された「少子化社会対策大綱」において不妊治療と仕事の両立のための職場環境整備の推進が掲げられる等の状況を踏まえ、公務においても、不妊治療のための休暇を有給で原則として年5日、頻繁な通院を要する場合は更に5日加えた範囲内として新設する。
〇 非常勤職員については、非常勤職員の出産・育児等に係る休暇を新設・改善する等、妊娠、出産、育児等と仕事の両立支援のための措置を一体的に講じていく。
回答に対し、武藤議長は、以下のとおり公務員連絡会としての見解を述べ、交渉を締めくくった。
(1) いま、本年の月例給について、改定を行わない予定であるとの回答であった。結果として、官民較差が小さくなったことは、民間実勢を反映し、公平・公正で客観的な官民比較に基づくものであるとともに、改定を行わない予定とのことは、「水準の維持を最低」とした公務員連絡会の要求に基づく、交渉・協議の結果として受け止める。
(2) 一時金について、0.15月引き下げるとの回答であった。2年連続での引き下げとなったことは、新型コロナウイルス感染症の感染拡大のもとでの民間賞与の客観的な支給実態に基づくものではあるが、現場で奮闘している職員の努力や公務員の生活確保という観点から不満な措置と言わざるを得ない。
(3) 不妊治療休暇の新設は、給与の取扱いについては評価するが、期間の問題など課題が残ることを指摘する。また、非常勤職員の休暇についても、配偶者出産休暇・育児参加のための休暇の新設や産前休暇・産後休暇の有給化など、この間、公務員連絡会と人事院との間で、無給休暇の有給化を含め休暇制度全般について検証・協議を行ってきた結果として評価するが、引き続き、改善が必要である。
なお、国家公務員の育児休業等に関する法律の改正についての意見の申出については、人事院として主体的な責任をもって法律改正まで努力することを求めておきたい。
(4) 長時間労働の是正について、総裁の回答は、中立・第三者機関としての人事院の主体的な役割を改めて提起したものと受け止める。
なお、超過勤務手当の適正な支給に関わっては、必要な予算を確実に確保することが重要であり、定員確保とともに人事院には積極的にその役割を果たしていただきたい。
この間、公務員連絡会として、与野党に対し、長時間労働の大きな要因の一つである国会審議について、超過勤務時間の縮減に向けた協力を要請するとともに、質問通告時間の徹底なども求めてきたが、総裁回答を受け、改めて対応をはかっていきたい。
(5) 終わりに、新型コロナウイルス感染症の感染拡大が続く中にあって、職員は国民の安心・安全のため、高い使命感と責任をもって懸命の奮闘を続けている。人事院におかれては、職員の給与や勤務条件の確保に向けて、より一層の努力をお願いする。
(6) 今日の回答については、機関に持ち帰って報告し、われわれとしての最終的な態度を決定することとしたい。