人事院勧告等を受け、地方公務員部会が全人連要請(8/10)、総務大臣申入れ(8/20)を実施
公務労協地方公務員部会は、人事院勧告・報告後、各人事委員会が勧告作業に取りかかることを受け、8月10日に全国人事委員会連合会に対して「2021年給与勧告等に関する要請」を、8月20日に総務大臣に対して「2021年地方公務員給与改定と定年の引上げ等に関わる申入れ」を行った。
【武田総務大臣への申入れの経過】
武田総務大臣への申入れは、8月20日にWebを用いて行われ、二階堂地方公務員部会議長ほか委員長クラス交渉委員が出席した。
冒頭、二階堂議長は、申入書(別紙1)について、以下のように申し入れた。
(1)人事院は8月10日、政府と国会に対して、2021年の官民較差に基づく国家公務員の給与等に関わる勧告を行った。今後、各人事委員会では、2021年の勧告に向けた作業が本格的に進められるが、地方公務員の労働基本権制約の代償措置である人事委員会勧告制度が機能するよう、総務省として適切な対応をはかるとともに、労使間の十分な交渉・協議を通した自主的な給与改定を尊重するよう要請する。
(2)第204通常国会において成立した「地方公務員法の一部を改正する法律案」では、定年の引上げをはかる関係条例の整備等が喫緊の課題である。すべての地方自治体において、法律の施行日に遅滞することなく、円滑で確実な実施が求められる。
(3)自治体の医療、保健、インフラ(水道、下水道)、教育現場では、感染症対策に加え、度重なる豪雨等の自然災害への対応など、住民の生命と暮らしを守るため、昼夜を問わず職務に全力を尽くしているが、その勤務環境は大変厳しいものとなっている。
(4)引き続くコロナ禍において、職員が国民・住民の期待に応え、より質の高い公務・公共サービスを確実に提供していくためには、職員の雇用の安定と賃金・労働条件の改善・確保が不可欠である。本日提出した申入れ事項の実現に向け、最大限のご努力をいただきたい。
これに対して武田大臣は、「地方自治の確立・発展のために、また、地方公共団体で働く地方公務員のために、その役割を果たしてこられたことに心から敬意を表したい。そして、新型コロナウイルス感染症対策、さらに、昨今の豪雨などによる災害への対応については、地方公共団体が果たす役割が極めて大きいところであり、現場で日々対応に当たられている職員の皆様に心より感謝を申し上げる。要請書については、確かに受け取った。ただいま、二階堂議長より要請内容について伺った件、この各要請事項については、検討の上、しかるべき時期に回答をさせていただく」と述べた。
【全国人事委員会連合会への要請の経過】
全人連への要請は、新型コロナウイルス感染症の拡大状況を鑑み、要請書の送付という形で行われた。8月10日に要請書(別紙2)を送付し、8月20日に全人連からの回答(別紙3)を受け取った。
(別紙1)
2021年8月20日
総 務 大 臣
武 田 良 太 様
公務公共サービス労働組合協議会
地方公務員部会議長 二階堂 健男
地方公務員の給与改定と定年の引上げ等に関わる申入れ
貴職の地方公務員の賃金・労働条件の改善に向けたご努力に敬意を表します。
人事院は、8月10日、政府と国会に対して 2021年の官民較差に基づく国家公務員の給与等に関わる勧告を行いました。各人事委員会では、2021年の月例給および一時金に関する勧告に向けた作業が本格的に進められていますが、地方公務員の労働基本権制約の代償措置である人事委員会勧告制度が機能するよう、総務省として適切な対応をはかるとともに、労使間の十分な交渉・協議を通した自主的な給与改定を尊重するよう要請します。
また、第204通常国会において成立した「地方公務員法の一部を改正する法律案」に基づき、定年の引上げをはかる関係条例の整備等が喫緊の課題となっています。とくに、すべての地方自治体において法律の施行日に遅滞することなく、円滑で確実な実施に向けた貴職の対応が強く求められています。
一方、働き方改革、定年引上げなど大きな課題が山積するなか、各自治体職場においては、新型コロナウイルス感染症への対応をはじめ、住民の期待に応えるべく、自らの職務に全力を尽くしておりますが、その勤務環境は大変厳しいものとなっています。引き続くコロナ禍において、職員が国民・住民の期待に応え、より質の高い公務・公共サービスを確実に提供していくためには、職員の雇用の安定と賃金・労働条件の改善・確保が不可欠です。
貴職におかれましては、下記事項の実現に向け最大限のご努力をいただきますようお願いします。
記
1.2021年の地方公務員の給与改定については、地公法第24条2項の趣旨を踏まえた自治体の自主的な決定が尊重されるよう対応すること。
2.公営企業および技能労務職員の給与については、当該職員に労働協約締結権が保障されていることを踏まえ、労使交渉に基づく自主的・主体的決定を尊重すること。
3.人事院が「意見の申出」及び「公務員人事管理に関する報告」において指摘した「育児休業制度等の改正」と「不妊治療休暇の新設」に関する地方公務員への措置については、国家公務員において措置される制度を最低として、関係法律の整備や条例例の策定・提供等の必要な対応を速やかに行うこと。とくに、育児休業制度等の改正における非常勤職員の休暇取得要件に関する在職期間の廃止については、民間における改正育児・介護休業法の施行日に遅れることのないようにすること。また、不妊治療休暇については、すでに関係する制度を有する地方自治体に対して、国家公務員に措置される制度を基準として休暇期間の短縮等を求める指導・助言等は厳に慎むこと。
4.地方自治体における長時間労働の是正については、厳格な勤務時間管理や時間外勤務縮減目標等の設定など、実効性のある時間外勤務縮減策を講じられるよう地方自治体を支援すること。また、地方公務員の時間外勤務に関する実態調査を実施すること。
5.会計年度任用職員をはじめとする臨時・非常勤職員の制度と待遇改善に向けた全般的かつさらなる見直しを行うこと。
(1)会計年度任用職員について、国家公務員非常勤職員給与決定指針の改正を踏まえ、勤勉手当を適用する法整備を次期国会に向けて行うこと。また、人事院の「公務員人事管理に関する報告」を踏まえて措置される国家公務員非常勤職員の休暇制度の改善を最低として必要な措置をはかること。さらに、引き続き、常勤職員との権衡の観点から、休暇制度の改善を検討すること。
(2)新型コロナウイルス感染症の感染拡大による業務の休止や財政の窮迫等により、雇止めや給与の引下げ等、不当な措置が生じないよう、臨時・非常勤職員の待遇や雇用を確保するための地方自治体への財政支援等を行うこと。
6.パワーハラスメント対策については、改正労働施策総合推進法及び人事院規則10-16(パワー・ハラスメントの防止等)を踏まえ、地方公務員における措置について、地方公務員部会との十分な交渉・協議、合意に基づいた対応をはかること。とりわけ、総務省「パワーハラスメント対策の取組状況調査」の結果に基づき、すべての地方自治体におけるパワーハラスメント対策に関する規定、方針等の明確化及び職員への周知・啓発がはかられるよう対応すること。
7.定年の引上げについては、「地方公務員法の一部を改正する法律案」の審議及び附帯決議に基づき、以下の具体的な措置を講じること。また、今後の総務省の対応スケジュール等を明確化するとともに、運用通知や条例例等の個々の対応について、地方公務員部会との十分な協議を踏まえて行うこと。
(1)定年引上げ期間中の新規採用の継続及びフルタイムを基本とする希望による暫定再任用職員に関する定員管理について、必要な増員を確保するよう地方自治体への助言等を行うこと。また、増員に必要となる地方財政措置を行うこと。
(2)段階的に引上げとなる定年年齢が、施行日の修正により繰下げとなる職員について、当該職員の希望に基づく雇用と年金の接続が図られるよう、地方自治体に対する助言等必要な措置を講じること。
(3)定年前再任用短時間勤務の選択は、あくまで職員の希望によるものであることから、任命権者による恣意的・一方的な適用とならないよう、必要な措置を講じること。なお、円滑な組織運営等を図るために、地方自治体における定年前再任用短時間勤務にふさわしい職務の創設等に関して適切な助言と情報提供等を行うこと。
(4)管理監督職勤務上限年齢制の例外の適用については、各々の地方自治体の実情に応じた自主的・主体的な判断に委ねること。また、管理監督職勤務上限年齢制により降任等をされた職員について、当該職員が定年まで安心して職務に従事できる職場環境等を地方自治体が整えられるよう、配慮すること。
(5)高齢者部分休業について、すべての地方自治体において職員の取得を可能とするため、関係条例の整備が早急かつ確実になされるよう、必要な対応を行うこと。
(6)定年の引上げの実施に伴い生じる諸課題について、円滑な実施に向け、関係組合との十分な交渉・協議、合意に基づき対応するよう地方自治体に促すこと。
(別紙2)
2021年8月10日
全国人事委員会連合会
会 長 青 山 佾 様
公務公共サービス労働組合協議会
地方公務員部会議長 二階堂 健男
(公印省略)
2021年給与勧告等に関する要請書
各人事委員会の地方公務員の給与・労働条件の改善に向けたご努力に敬意を表します。
さて、地方公務員をとりまく環境は年々厳しさを増し、働き方改革、定年引上げなど大きな課題が山積するなか、各自治体職場においては、新型コロナウイルス感染症への対応をはじめ、公務・公共サービスに従事する労働者として精力的に職務を遂行しています。引き続くコロナ禍において、職員が国民・住民の期待に応え、より質の高い公務・公共サービスを確実に提供していくためには、職員の雇用の安定と賃金・労働条件の改善・確保が不可欠です。
人事院は、8月10日、政府と国会に対して 2021年の官民較差に基づく国家公務員の給与等に関わる勧告を行いました。各人事委員会では、2021年の月例給および一時金に関する報告・勧告に向けた作業が本格的に進められているものと承知しています。
職員の士気を確保し、良質な公務・公共サービスを提供していくためにも、専門機関としての機能を発揮いただくとともに、地方公務員が置かれている現状を十分踏まえ、下記事項の実現に最大限の努力を払われますよう要請します。
記
1.民間賃金実態に基づく公民較差を精確に把握し、地方公務員の生活を守るための賃金水準を確保すること。
(1)月例給については、公平・公正で客観的な公民比較に基づき、給与の水準の維 持を最低とし、組合との十分な交渉・協議、合意のもと対応すること。
(2)一時金については、精確な民間実態の把握と公民比較を行い、職員の生活を守 る支給月数を確保すること。
2.諸手当の改定については、地域の実情及び職員の職務や生活実態を踏まえ、組合との十分な交渉・協議に基づき進めること。
3.各人事委員会の勧告に向けた調査や作業に当たっては、組合との交渉・協議、合意に基づき進めること。
4.会計年度任用職員をはじめとする臨時・非常勤職員の任用や待遇、休暇制度について、働き方改革の推進と常勤職員との権衡をはかる観点から、人事委員会として改善に向けて必要な措置をはかること。
5.公立学校教員の賃金に関わり、引き続き、各人事委員会が参考としうるモデル給料表を作成・提示すること。また、作成に当たっては、関係労働組合との交渉・協議、合意に基づき進めること。
6.公務における働き方改革を着実に推進するため、厳格な勤務時間管理をはじめ、長時間労働の是正、ワーク・ライフ・バランスの実現に資する施策の構築など、人事委員会として必要な対応をはかること。とくに、人事院における国家公務員への対応等を参考として、「他律的業務」や「特例業務」における上限時間を超えて時間外勤務を命じた場合の要因の整理・分析・検証を行うとともに、必要な改善措置等の指導を任命権者に対して行うこと。
7.実効性のあるハラスメント防止策を引き続き推進するため、積極的な対応を行うこと。とくに、パワー・ハラスメント対策について、人事院における国家公務員への対応等を参考として、人事委員会として主体的な対応を行うこと。
8.各種休暇制度を新設・拡充し、総合的な休暇・休業制度を確立すること。人事院が「意見の申出」及び「公務員人事管理に関する報告」において指摘した「育児休業制度等の改正」と「不妊治療休暇の新設」に関する職員への措置については、国家公務員において措置される制度を最低とした必要な対応を行うこと。とくに、育児休業制度等の改正における非常勤職員の休暇取得要件に関する在職期間の廃止については、民間における改正育児・介護休業法の施行日に遅れることのないよう地方自治体における対応を求めること。また、不妊治療休暇については、すでに関係する制度を有する地方自治体においては、国家公務員に措置される制度を基準として休暇期間の短縮等を行わないよう留意すること。
9.公務職場における男女平等の実現を人事行政の重要課題と位置づけ、必要な施策の確立をはかること。
10.定年引上げに係る人事委員会規則の改正については、組合との十分な交渉・協議、合意に基づき進めること。
以 上
(別紙3)
令和3年8月20日
要請に対する全人連会長回答
8月10日の要請につきましては、早速、全国の人事委員会にお伝えしたところです。
去る8月10日、 人事院勧告が行われました。
月例給については民間給与との較差が極めて小さく、俸給表及び諸手当の適切な改定が困難であることから、月例給の改定を行わないとしております。ボーナスについては公務が民間を上回ったことから民間の支給割合との均衡を図るため、支給月数を0.15月分引き下げることとし、引下げ分は期末手当の支給月数に反映するとされております。
このほか、公務員人事管理に関する報告では、人材の確保・育成、妊娠・出産・育児等と仕事の両立支援、良好な勤務環境の整備、定年の引上げ及び能力・実績に基づく人事管理の推進などについて意見が述べられております。
国家公務員と地方公務員の立場の違いはありつつも、人事院の勧告は、各人事委員会が勧告作業を行う上で、参考となるものであることから、その内容については、十分に吟味する必要があると考えております。
今後、各人事委員会は、皆様からの要請の趣旨も考慮しながら、それぞれの実情等を勘案し、主体性をもって対処していくことになるものと考えております。
改めて申すまでもありませんが、各人事委員会においては本年も、中立かつ公正な人事行政の専門機関として、その使命を果たしていくものと考えております。
全人連といたしましても、各人事委員会の主体的な取組を支援する委員会の主体的な取組を支援するとともに、人事院、各人事委員会との意見交換に十分努めていきたいとともに、人事院、各人事委員会との意見交換に十分努めていきたいと考えております。
全国人事委員会連合会
会長 青山 佾