地公部会が、総務省から春の段階の回答引き出す-3/18
公務労協地方公務員部会は、3月18日、書記長クラス交渉委員による2024春季段階の最終交渉を行った。総務省からは、小池公務員部長他が出席した。
冒頭、伊藤企画調整委員代表が「2月19日、松本総務大臣に要求書を提出し、これまで交渉・協議を積み重ねてきたが、本日はこうした交渉経過を踏まえながら、公務員部長から春の段階の最終回答をいただきたい」と、求めたのに対し、小池公務員部長は次のように回答した。
1.2024年度の賃金改善について
地方公務員の給与については、地方公務員法の趣旨に沿って、地域の実情を踏まえつつ、条例で定められるもの。
各地方公共団体においては、国民・住民の理解と納得を得られるよう、適切に給与を決定することが肝要である。
このため、総務省としても、引き続き必要な助言を行ってまいる。
また、地方公務員の賃金水準を引き上げるための経費については、令和6年度の地方財政計画において、給与改定に要する経費約3,300億円を計上することとしている。
2.「社会と公務の変化に応じた給与制度の整備」への対応について
現在、総務省においては、社会情勢の変化等に対応した地方公務員の給与のあり方について検討するため、「給与分科会」を開催している。
総務省としては、国における、「給与制度のアップデート」への対応について、国の動向を注視しつつ、「検討会」及び「給与分科会」での議論を踏まえ、検討を行うとともに、地方公務員部会に対し、適宜、必要な情報提供や意見交換を行ってまいりたい。
地方における地域手当のあり方については、現在、総務省で開催している「検討会」及び「給与分科会」での議論を踏まえ、検討してまいりたい。
地域手当に関する特別交付税の減額措置については、地域の民間賃金水準などに基づいて定められている国家公務員の地域手当の指定基準を超え、独自に地域手当を支給している地方公共団体は、
・国家公務員の基準を超えた地域手当を支給できるほどの財政収入があると考えられること
・特別交付税の衡平な配分のためにはそうした財政収入を考慮する必要があることから、超過支給額に応じて特別交付税の減額を行っているものであり、ご理解いただきたい。
国の「給与制度のアップデート」の措置内容には、
・本府省課室長級について、各級の俸給額の最低水準を引き上げ、隣接する級間での俸給額の重なりを基本的に解消するとともに、各級の中の俸給額の刻みを大くくり化し、勤務成績が優秀な場合は、給与水準が大きく上がる仕組みとすること
・定年前再任用短時間勤務職員や暫定再任用職員に支給される手当について、人事運用の変化を踏まえて、手当の支給範囲を拡大すること
が検討されている。
総務省としては、国の動向を注視しつつ、検討会及び給与分科会での議論を踏まえ、検討してまいりたい。
3.能登半島地震の復旧・復興への対応
被災自治体では、一日も早く、被災者の生活再建や地域の復旧・復興を進めていく必要があり、その中心となって災害対応を行っている自治体職員の心身の健康管理には十分配慮しなければならないと考える。
そのため、総務省では、各共済組合が実施する健康相談事業や、地方公務員安全衛生推進協会が行うメンタルヘルス対策の支援専門員派遣事業などを積極的に活用し、健康確保に努めていただくよう先日改めて周知している。
この支援専門員派遣事業については、総務省から要望調査を行い、自治体からの要望を受けて、3月から順次臨床心理士による個別面接などを行う予定である。
今後も、職員の健康確保が図られるよう、必要な対応を行ってまいる。
大規模災害からの復旧・復興に対応するため、地方公共団体における職員の確保は重要な課題と認識している。
技術職員については、大規模災害時の中長期派遣要員を確保する「復旧・復興支援 技術職員派遣制度」において、登録された職員に係る人件費に対して、地方交付税措置を講じてきたところであるが、この取組を強化するため、今年度から定年引上げが始まることも踏まえ、地方交付税措置を拡充するとともに、技術職員の確保に計画的に取り組むよう、要請しているところ。
令和6年能登半島地震における復旧・復興に向けた中長期の技術職員の被災市町からの派遣要望については、「復旧・復興支援 技術職員派遣制度」を活用するとともに、多くの技術職員を有する指定都市等とも連携して調整を行い、2月28日付けで派遣決定した。
その他の職員の派遣要望についても、全国知事会・全国市長会・全国町村会と連携した派遣制度などにより調整しているところ。
なお、地方自治法に基づく職員派遣の受入れに要した費用については、特別交付税措置がされる。
今後も丁寧に被災自治体のニーズを把握し、対応してまいる。
4.労働時間、休暇及び休業等について
時間外勤務の縮減については、職員の心身の健康の維持、ワーク・ライフ・バランスの確保等の観点から重要な取組であると認識しており、これまでも積極的に取組を進めるよう、自治体に対し助言を行ってきた。
昨年12月には、令和4年度の時間外勤務の状況を踏まえ、改めて制度の実効的な運用に向けた留意点を通知するとともに、時間外勤務縮減に向けた自治体の好事例も併せて情報提供している。
休暇・休業制度については、国家公務員の動向を注視しながら、適正な勤務条件の確保を進めることが重要であると認識しており、これまでも適正に制度を整備するよう、自治体に対し助言を行ってきた。
昨年12月には、令和4年度の休暇・休業制度の状況を踏まえ、定年の段階的な引上げを踏まえた「高齢者部分休業」について積極的に制度整備を検討いただくようお願いしたところ。
総務省としては、引き続き、実態を把握しながら、各自治体における取組がしっかりと行われるよう、必要な支援を行ってまいりたい。
地方公共団体の定員については、各団体において、行政の合理化、能率化を図るとともに、行政課題に的確に対応できるよう、地域の実情を踏まえつつ、適正な定員管理に努めていただくことが重要と考えている。
総務省としても、地方公共団体の職員数の実態などを勘案して地方財政計画に必要な職員数を計上しており、令和6年度 地方財政計画においては、職員数全体で約1.4万人の増としている。
今後とも、地方公共団体の実態などを十分に踏まえ、必要な対応を行ってまいる。
職員の健康管理及び職場の安全衛生管理の体制の確立については、任命権者が労働安全衛生法の趣旨にのっとり、主体的に実施するものであり、各地方自治体において、体制の整備が進められているものと認識している。
総務省においては、従来から地方自治体に対し、労働安全衛生法の遵守など、メンタルヘルス対策の推進に係る情報提供や助言を行ってきたところである。
特に、ストレスチェックについては、
・事業場の規模に関わらず、全ての職員を対象に実施すること、
・高ストレス者に対する医師による面接指導を勧奨すること、
・ストレスチェックの結果を集団分析し、これを踏まえて職場環境の改善に積極的に取り組むこと、
等について、重ねて通知を発出するなど、助言を行っているところである。
また、地方自治体におけるメンタルヘルス対策を推進するため、総務省では、産業医や臨床心理士などを委員とする研究会を開催し、検討内容を踏まえ、各自治体に対し、メンタルヘルス対策に関する計画の自主的な策定を要請するなどの取組を進めてきており、今後も地方自治体における実態を把握し、メンタルヘルス対策が着実に行われるよう、必要な対応を行ってまいりたい。
ハラスメントは、個人の尊厳や人格を不当に傷つける許されない行為であるとともに、職員の能力の発揮を阻害し、公務能率の低下を招くものでもあることから、地方公共団体におけるハラスメント対策は重要な取組であると考えている。
総務省としては、関係法律及びこれらの法律に基づく各厚生労働省指針並びに各人事院規則を踏まえ、各種ハラスメントを防止するために必要な措置を講ずるよう、各種会議において要請するなど、これまでも機会を捉えて地方公共団体に対して助言を行ってきた。
昨年12月に公表した各種ハラスメント対策に関する調査結果においては、措置を講じている団体が年々着実に増加し、前回の1,274団体から1,580団体に増加したところである。
このような中、各種ハラスメントを防止するために必要な措置が講じられていない団体に対しては、
・法律上の義務が履行できていない状態であることから、速やかに必要な措置を講じなければならないこと
・特に、ハラスメントに係る言動を行った者に対して、厳正に対処する方針及び対処の内容については、文書に規定することが義務付けられていること
から、速やかな対応を要請したところ。
今後とも、地方公共団体における取組状況をフォローアップしつつ、各種ハラスメント対策の実効性が確保されるよう助言していく。
5.会計年度任用職員をはじめとする臨時・非常勤職員の待遇改善、雇用安定について
総務省としては、期末・勤勉手当について、各地方公共団体において適切に支給されることが必要であると考えており、これまでも、通知を発出するなど、助言を行っているところ。今後とも、適切な対応を促してまいりたい。
必要な財源については、期末手当等の経費について、令和2年度の地方財政計画において、1,738億円を計上、令和3年度以降、制度の平年度化による経費の増を踏まえ、2,402億円を計上、また、勤勉手当等の経費について、令和6年度に、4,812億円を計上する見込みとなっており、制度を円滑に運用できるようしっかり確保している。
会計年度任用職員の休暇制度については、これまで、国家公務員の非常勤職員の休暇制度との権衡を踏まえ、適切な対応を行うよう助言してきたところ。
国家公務員の非常勤職員の休暇制度については、業務の必要に応じその都度任期や勤務時間が設定され任用されるという非常勤職員の性格を踏まえ、民間の状況などを考慮し、必要な措置が行われていると承知している。
引き続き、国家公務員の動向を注視しながら、適正な勤務条件の確保を進めてまいりたい。
6.段階的な定年引上げについて
総務省としては、地方公共団体において必要な行政サービスを将来にわたり安定的に提供するためには、定年引上げ期間中も一定の新規採用職員を継続的に確保することが必要と考えており、一昨年、各地方公共団体に対して、定年引上げに伴う定員管理に関する基本的な考え方及び留意事項について助言を行ったところ。
また、定年引上げの影響が生じる令和6年度地方財政計画においては、定年引上げに伴う一時的な職員数の増を含め、職員数全体で約1.4万人の増としており、地方公共団体が新規採用を行う財源を確保しているところ。
定年の引上げにより、再任用制度が廃止されたが、定年の段階的な引上げ期間においては、年金受給開始年齢までの継続的な勤務を可能とするため、再任用制度と同様の暫定的な再任用制度を設けたところである。
暫定再任用制度では、平成25年3月に発出した総務副大臣通知において示している再任用を希望する職員の取扱いと同様、定年退職する職員が再任用を希望する場合には、当該職員が年金支給開始年齢に達するまで、原則として常時勤務を要する職に再任用する旨、令和4年3月に通知している。
暫定再任用職員の給与については、地方公務員法の均衡の原則等に基づき、現行の再任用職員の給与制度を基本として設計されている国家公務員の取扱いを踏まえ、各地方公共団体の条例において適切に定められるべきものと考えている。
7.公共サービス基本法に基づく適正な労働条件の確保等について
公共サービス基本法第11条において、地方公共団体は、安全かつ良質な公共サービスが適正かつ確実に実施されるよう、公共サービスに従事する者の適正な労働条件の確保や労働環境の整備に関して必要な施策を講ずるよう努めるものとされている。
これに関し、総務省としては、
・会計年度任用職員制度を創設し、新たに期末手当を支給可能とするなど、臨時・非常勤職員の適正な任用・勤務条件の確保や、
・時間外勤務の縮減と上限規制、年次有給休暇の取得推進、テレワークの導入、男性職員の育児休業等の取得促進、女性職員の活躍や各種ハラスメント対策など、地方公務員の働き方改革の推進に向けた助言など
を通じ、地方公共団体に対する支援に取り組んでいる。
また、これまでも、地方公共団体に対し、公共サービスの実施に関する業務の委託に当たり、受託事業者等において労働条件への適切な配慮がなされるよう留意すること等について助言を行っており、今後とも、公共サービス基本法の趣旨を踏まえ、必要に応じて、助言等を行ってまいりたい。
回答を受け、伊藤企画調整委員代表は以下4点の重点課題について、次のように述べた。
1.賃金改善について
改めて、今ご回答があったように、地方公務員の給与については、言うまでもなく、地方自治の本旨と地方分権の理念に基づいて、当該地方自治体の条例で定めるべきものであり、その自治体の自主的・主体的判断で決定されるべきものである。それを損なうような指導・助言は控えるよう、その点を強調しておく。
2.「社会と公務の変化に応じた給与制度の整備」への対応について
人事院は「社会と公務の変化に応じた給与制度の整備」の具体的な措置について検討している。一方、総務省においても人材確保の観点から地方公務員給与のあり方等について、「給与分科会」で議論され、3月末あるいは4月はじめには、中間論点整理案がまとめられると聞いている。まずは、あくまで「論点」として整理するとともに、その内容等については、地方公務員部会との十分な協議・意見交換を求めておく。
特に地域手当については、各委員から、地域の実情を踏まえた対応や自治体の裁量の必要性等を問う意見も多く、我々の要求にもある「国の制度を画一的に強制することなく、地域の実情を踏まえた措置をはかる」よう対応するのは当然のことだと考えているのでそのことを求めておく。あわせて、特別交付税の減額措置の廃止を検討すべきとして強く要求しておく。
また、今回、私たちの要求事項で、給与制度のアップデートの主な取組事項にはない「中高齢層職員及び再任用職員の給与水準引上げ」について触れている。この間、人事院では、とくに若手の給与水準引上げに注目し、そのことを中心にすすめている。しかし、同一の認識と思うが、より質の高い行政サービスの提供には、中高齢層職員及び再任用職員の能力や実績、経験や技術などは欠かせないものである。
ここ最近、公務労協には、仕事は増えているのに給料は上がらない、10年以上も昇給が止められ労働意欲は低くなっているなど、現場職員からの切実な訴えが増えている。モチベーションを向上させる観点からも、段階的な定年引上げがスタートしたこの時期に、中高齢層職員及び再任用職員の給与水準を引き上げるべく根本からの底上げを検討する必要があると考える。
つまるところ、この間、給料表の構造や手当は、国の制度を基本とすべきとしてきているが、そのことが結果として、人材確保の阻害要因、人材流出となっていないのか。さらに、手当についてもコロナ禍をはじめ、多様化するニーズと現場実態にあっていないのではないかと懸念されるところ。したがって、これまでのルールを大胆に見直し、地域の実情を踏まえたそれぞれの裁量、決定内容を尊重するよう求めておきたい。
3.能登半島地震の復旧・復興への対応について
能登半島地震発災後、早い段階から「被害に伴う職員の職務に専念する義務の免除に関する臨時措置」の事務連絡や、「災害復旧業務に従事する職員の健康管理・安全衛生」および「災害応急作業等手当の運用通知」の発出、また、特別交付税措置など、早期の対応に敬意を表するとともに、感謝申し上げる。
中間交渉でも述べたように、被災自治体の職員、公務・公共サービスに従事する職員は、自らも被災しているにもかかわらず、被災者の切実な声を受け止めつつ、復旧・復興業務や避難所の円滑な運営など懸命の努力を続けている。
また、応援職員を送り出す側の全国の自治体あるいは地方公務部門の各団体においても人員不足は深刻な問題となっている。こうした状況をみるにつけ、持続的で安定的な公務・公共サービスの提供のためにも、働き続けられるための環境整備と全体的な人員増が必要であると考える。
是非、総務省とは、今般明らかになった人的・財政的な課題をしっかりと共有し、引き続き、復旧・復興に従事する職員の安全衛生体制に配慮するための措置の構築や継続的な人的支援及び要員の確保、根本的には十分な人員体制の確立に向けた対応を求めておきたい。
4.会計年度任用職員をはじめとする臨時・非常勤職員の待遇改善、雇用安定について
昨年成立した改正地方自治法により、この2024年度から、会計年度任用職員に期末手当と勤勉手当のいずれも支給することが基本とされた。
総務省調査でも明らかなように、既にこのことを実行しない自治体も見受けられる。本筋として労働組合として追求していくが、改めて、期末手当の支給同様、全地方自治体で漏れることなく、きちんと支給されるよう、条例化に向けた総務省の適切な対応も求めておきたい。同時に、必要な経費の確保についても求めておく。
また、会計年度任用職員の給与改定について、制度・財政両面での後押しもあり、多くの自治体で実施されたが、未だ継続協議が続いているところもある。引き続き、4月遡及の課題も含め、会計年度任用職員制度に関連する諸課題については、少なくても改正地公法等の趣旨に即した待遇改善、雇用安定がはかられるよう、全般的かつさらなる見直しに向けた情報交換とともに努力戴くよう求めておく。
最後に伊藤企画調整委員代表は、「地方公務員における課題は山積しており、賃金改善はもとより、働き方改革などの労働条件の改善等、一筋縄ではいかない課題も多い。地方公共サービスに従事するすべての職員が安心して働き続けることができる環境整備に向け、適宜、我々地方公務員部会と情報交換などを行いながら、総務省として尽力いただきたい」と要請し、回答交渉を終えた。