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公務公共サービス労働組合協議会 地方公務員部会
2025年度 公務労協情報 No. 23

地公部会が、総務省から春の段階の回答引き出す-3/25

 公務労協地方公務員部会は、3月25日、書記長クラス交渉委員による2025春季段階の最終交渉を行った。総務省からは、小池公務員部長他が出席した。
 冒頭、伊藤企画調整委員代表が「2月21日、村上総務大臣に要求書を提出し、これまで交渉・協議を積み重ねてきたが、本日はこうした交渉経過を踏まえながら、公務員部長から春の段階の最終回答をいただきたい」と、求めたのに対し、小池公務員部長は次のように回答した。

1.2025年度の賃金改善について
 地方公務員の給与については、地方公務員法の趣旨に沿って、地域の実情を踏まえつつ、条例で定められるもの。
各地方公共団体においては、国民・住民の理解と納得を得られるよう、適切に給与を決定することが肝要である。
このため、総務省としても、引き続き必要な助言を行ってまいる。
 また、令和6年人事委員会勧告を踏まえた給与の増額改定等により、令和7年度の地方財政計画において、給与改定所要額7,651億円を計上するとともに、年度途中の給与改定に対応できるよう、給与改善費として2,000億円を計上している。

2.労働時間、休暇及び休業等について
(1)について
 時間外勤務の縮減については、職員の心身の健康の維持、ワーク・ライフ・バランスの確保等の観点から重要な取組であると認識しており、これまでも積極的に取組を進めるよう、自治体に対し助言を行ってきた。
 昨年12月には、令和5年度の時間外勤務の状況を踏まえ、改めて制度の実効的な運用に向けた留意点を通知するとともに、勤務間のインターバル確保に資する自治体の好事例も併せて情報提供している。
 休暇・休業制度については、国家公務員の動向を注視しながら、適正な勤務条件の確保を進めることが重要であると認識しており、これまでも適正に制度を整備するよう、自治体に対し助言を行ってきた。
 昨年12月には、国家公務員の見直しを踏まえ、子の看護休暇や非常勤職員の休暇に関する見直しについて、所要の措置を講ずるよう助言を行ったところ。
 さらに、地方公務員育児休業法の改正により、本年10月からは部分休業制度が拡充されるなど、職員が仕事と生活を両立できる職場環境づくりに取り組んでいる。
 総務省としては、引き続き、実態を把握しながら、各自治体における取組がしっかりと行われるよう、必要な支援を行ってまいりたい。
 地方公共団体の定員については、各団体において、行政の合理化、能率化を図るとともに、行政課題に的確に対応できるよう、地域の実情を踏まえつつ、適正な定員管理に努めていただくことが重要と考えている。
 一般行政部門の常勤職員数は、近年、増加傾向にあり、総務省としても、地方公共団体の職員数の実態などを勘案して地方財政計画に必要な職員数を計上している。
 今後とも、地方公共団体の実態などを十分に踏まえ、必要な対応を行ってまいる。

(2)について
 職員の健康管理及び職場の安全衛生管理の体制の確立については、任命権者が労働安全衛生法の趣旨にのっとり、主体的に実施するものであり、各地方自治体において、体制の整備が進められているものと認識している。
 総務省においては、従来から地方自治体に対し、労働安全衛生法の遵守など、メンタルヘルス対策の推進に係る情報提供や助言を行ってきたところである。
 特に、ストレスチェックについては、
・事業場の規模に関わらず、全ての職員を対象に実施すること、
・高ストレス者に対する医師による面接指導を勧奨すること
・ストレスチェックの結果を集団分析し、これを踏まえて職場環境の改善に積極的に取り組むこと、
等について、重ねて通知を発出するなど、助言を行っているところである。
 また、地方自治体におけるメンタルヘルス対策を推進するため、総務省では、産業医や臨床心理士などを委員とする研究会を開催し、検討内容を踏まえ、各自治体に対し、メンタルヘルス対策に関する計画の自主的な策定を要請するなどの取組を進めてきており、今後も地方自治体における実態を把握し、メンタルヘルス対策が着実に行われるよう、必要な対応を行ってまいりたい。

(3)について
 昨年12月に公表した各種ハラスメント対策の取組状況調査等の結果によれば、昨年12月1日現在で、都道府県及び指定都市では既に全団体で措置が講じられている一方、市区町村においては、前回調査から措置を講じた団体数が大きく増加したものの、全体の1.6%に当たる28団体で必要な措置が講じられていない状況となっている。
 このため、本調査結果の公表に合わせて、未措置の団体には、速やかに必要な措置を講ずるよう要請するとともに、措置を講じている団体には、体制を整備して終わりではなく、日頃から職員の意識啓発等を行うとともに職場環境に対するチェックを行い、特に未然の防止対策を十分に講ずることなどについて助言を行ったところである。
 また、カスタマーハラスメント対策については、措置を講じている団体が年々着実に増加しており、都道府県や指定都市については全て措置済みとなっているものの、市区町村において必要な措置が講じられていない団体が3割程度(568団体)となっていることから、未措置の市区町村においては、速やかに必要な措置を講じていただくよう要請している。
 これらの取組に加え、カスタマーハラスメント対策を含むハラスメント対策に資するよう、今年度の新たな取組として、自治体職員を対象としたハラスメントの実態調査や、ハラスメント対策を実施する好事例の収集のほか、有識者検討会での議論を行っているところである。
 これらの結果なども踏まえて、必要な助言や情報提供を行うなど、自治体におけるカスタマーハラスメント対策を含むハラスメント対策の取組を一層推進してまいりたい。

3.能登半島地震の復旧・復興への対応等
(1)について
 令和6年能登半島地震においては、被災市町の職員数が少ない一方で、被害が甚大であり、被災自治体の職員の勤務状況については、御自身も被災される中、大変過酷なものであったと認識している。
 総務省では、被災自治体の職員のメンタルヘルス対策は、重要な課題であると認識しており、まず、被災自治体に対し、災害時における地方公務員のメンタルヘルス対策マニュアルを送付するとともに、メンタルヘルス対策の専門員派遣事業や職員に対する研修、地方公務員共済組合による相談窓口などを積極的に活用いただくよう周知した。
 その上で、被災自治体の要望に応じ、昨年3月から順次、臨床心理士に現地を訪問いただき、個別面接により職員の心のケアを行っている。
また、個々の職員が自席で視聴できるような研修素材の提供を行ってきたところ。
 今後も、被災自治体職員の健康確保が図られるよう、現地の状況に留意しながら、必要な対応を行ってまいる。

(2)(3)について
 令和6年能登半島地震の復旧・復興に従事する職員の継続的な人的支援及び要員の確保は重要な課題と認識している。
 令和6年度については、被災自治体の地方公共団体間の職員派遣の要望をお伺いし、関係省庁や関係団体と連携して対応してきたところである。
 また、令和7年度の中長期の職員派遣の要望についても、関係省庁や関係団体と連携して現在調整を行っている。
 今後も、被災市町や県における職員採用や民間委託等を行ってなお不足する人材について、地方公共団体間の職員派遣の要望をお伺いし、関係省庁や関係団体と連携して対応していく。
 なお、地方自治法に基づく職員派遣の受け入れに要した費用や、被災自治体が災害復旧に従事するために採用した場合の当該職員に要する経費については、特別交付税措置を講じているところである。

(4)について
 職員の勤務条件については、各自治体において条例等で規定されているところであり、自然災害の発生の有無に関わらず、各団体において適切に運用されることが重要である。
 その上で、自然災害が激甚化・頻発化する中、職員が、速やかに、かつ、安心して災害対応に従事できるよう、各自治体において適正な勤務条件が確保されることは重要であり、その趣旨を踏まえた助言等について検討してまいりたい。

4.会計年度任用職員をはじめとする臨時・非常勤職員の待遇改善、雇用の安定について
(1)について
 総務省としては、期末・勤勉手当について、各地方公共団体において適切に支給されることが必要であると考えており、これまでも、通知を発出するなど、助言を行っているところ。
今後とも、適切な対応を促してまいる。
 必要な財源については、期末手当等の経費について、令和2年度の地方財政計画において、1,738億円を計上、令和3年度以降、制度の平年度化による経費の増を踏まえ、664億円を計上、また、勤勉手当等の経費について、令和6年度に、1,810億円を計上するなど、制度を円滑に運用できるようしっかり確保している。

(2)について
 会計年度任用職員の休暇制度については、これまで、国家公務員の非常勤職員の休暇制度との権衡を踏まえ、適切な対応を行うよう助言してきたところ。
 国家公務員の非常勤職員の休暇制度については、業務の必要に応じ、その都度任期や勤務時間が設定され任用されるという非常勤職員の性格を踏まえ、民間の状況などを考慮し、必要な措置が行われていると承知している。
 昨年12月には、国家公務員の見直しを踏まえ、非常勤職員の私傷病による病気休暇の有給化について、所要の措置を講ずるよう、自治体に対し助言を行ったところ。
 引き続き、国家公務員の動向を注視しながら、適正な勤務条件の確保を進めてまいりたい。

5.段階的な定年引上げについて
(1)について
 総務省としては、地方公共団体において必要な行政サービスを将来にわたり安定的に提供するためには、定年引上げ期間中も一定の新規採用職員を継続的に確保することが必要と考えており、各地方公共団体に対して、定年引上げに伴う定員管理に関する基本的な考え方及び留意事項について助言を行ってきたところ。
 また、令和6年度地方財政計画においては、定年引上げに伴う一時的な職員数の増を反映し、地方公共団体が新規採用を行う財源を確保したところであり、令和6年4月1日時点の地方公共団体の職員数は、対前年比で約1万人増加しているところ。
 今後とも、地方公共団体の実態などを十分に踏まえて、必要な対応を行ってまいる。

(2)について
 定年の引上げにより、再任用制度が廃止されたが、定年の段階的な引上げ期間においては、年金支給開始年齢までの継続的な勤務を可能とするため、再任用制度と同様の暫定的な再任用制度を設けたところである。
 暫定再任用制度では、平成25年3月に発出した「地方公務員の雇用と年金の接続について」の総務副大臣通知で示している再任用を希望する職員の取扱いと同様、定年退職する職員が再任用を希望する場合には、当該職員が年金支給開始年齢に達するまで、原則として常時勤務を要する職に再任用する旨、令和4年3月に通知している。
 再任用職員の給与については、地方公務員法の均衡の原則等に基づき、国家公務員の取扱いを踏まえ、各地方公共団体の条例において適切に定められるべきものと考えている。

6.公共サービス基本法に基づく適正な労働条件の確保等について
 公共サービス基本法第11条において、地方公共団体は、安全かつ良質な公共サービスが適正かつ確実に実施されるよう、公共サービスに従事する者の適正な労働条件の確保や労働環境の整備に関して必要な施策を講ずるよう努めるものとされている。
 これに関し、総務省としては、
・ 会計年度任用職員制度を創設し、期末手当を支給可能とするとともに、令和6年度から勤勉手当の支給を可能とする法改正を行うなど、臨時・非常勤職員の適正な任用・勤務条件の確保や、
・ 働き方改革の取組として早出遅出勤務やフレックスタイム制、テレワークといった柔軟な働き方の促進、時間外勤務の縮減、
・ 共働き・共育ての取組として男性職員の育児休業の取得促進、
・ 女性職員の活躍推進として女性職員の積極的な採用・登用
 などの取組について、各種会議等の機会を捉えて助言を行うなどの支援を行ってきたところである。
 さらに、地方公務員育児休業法の改正により、本年10月からは部分休業制度が拡充されるなど、職員が仕事と生活を両立できる職場環境づくりに取り組んでいる。
 また、これまでも、地方公共団体に対し、公共サービスの実施に関する業務の委託に当たり、受託事業者等において労働条件への適切な配慮がなされるよう留意すること等について助言を行っており、今後とも、公共サービス基本法の趣旨を踏まえ、必要に応じて、助言等を行ってまいりたい。


 回答を受け、伊藤企画調整委員代表は以下3点の重点課題について、次のように述べた。

1.賃金改善について
 改めて、今ご回答があったように、地方公務員の給与については、言うまでもなく、地方自治の本旨と地方分権の理念に基づいて、労使交渉を経て、当該地方自治体の条例で定めるべきものである。したがって、その自治体の自主的・主体的判断を損なうような指導・助言は控えるよう、その点を強調しておく。

2.再任用職員を含む中高齢層職員の賃金水準について
 既に報道されているように、2025春季生活闘争は、連合の3月21日時点の第2回集計によると、平均賃金方式の組合の加重平均ベア分はいずれも、高い数値での回答となっている。
 その一方で、物価高騰は今なお続き、賃上げが物価上昇に追いつかず、公務員を含む勤労者の実質賃金はマイナスのままと、今後の推移が気になるところである。
 このような中、公務職場においては、特に再任用職員を含む中高齢層職員から不満の声が上がっている。最近の賃上げにおいて、中高齢層職員からは自分たちの引上げ額をみれば完全に置き去りにされていると感じているといった声。あるいは、大幅な引上げとなっている若年層からも、今はいいが、今後の賃金カーブ・制度がどうなっていくのか将来展望が持てないといった不安の声などが出されている。とくに、この2年にわたる賃金配分の課題は公務と民間共通の課題であって、各世代間のバランスをきちんと取ることが重要と認識するところである。
 また、再任用職員からは、これまでと業務がほとんど変わらないにも関わらず、処遇だけが下がることへの不満も大きく、とくに、一時金については、会計年度任用職員よりも低く、少なくとも常勤職員と同等の支給月数を求める声が圧倒的に多く出されている。
 四国のある町では、早期退職を防止するために勧奨制度を廃止したが、結果、「退職金の割増がないなら昇給もほとんどないし、勤労意欲、モチベーションが維持できない」として、50代職員の大半がこの3月に退職してしまう事態も発生している。それほどまでに高齢層職員の士気は下がっている。
 加えて、会計年度任用職員の方が、年収が高いとの理由で再任用を辞退するといった報告も受けている。
そこで、私たち地公部会の求めることとして、より質の高い行政サービスの提供には、中高齢層職員及び再任用職員の能力や実績、経験や技術などは欠かせないものであり、こうした職員の力を遺憾なく発揮できるよう、モチベーションを向上させることは必須であることは共通理解できるものと確信している。
 国家公務員もさることながら、統一試験のみならず、独自の試験を都度実施しても集まらないなど、地方公務員全体の応募者が激減していることに相当危機感を感じている。
公共サービスの充実とそのために必要な人材の維持確保の観点からも、公務員全体の中高齢層職員及び再任用職員の給与水準を引き上げるべく根本からの底上げの検討について、人事院に対する意見反映を要請しておく。
 同時に、総務省におかれては、1.の内容と関連するが、今申し上げた観点からも現行制度を改善する姿勢での継続した検討と、現状少なくとも制度をフルに活用した処遇改善について、地域の実情を踏まえた各団体それぞれの裁量、決定内容を尊重するよう求めておく。

3.特別交付税の減額措置について
 既に聞き及んでいることと思うが、過日、私ども地方公務員部会として、自治財政局財政課に対し、「特別交付税の配分にあたっては、寒冷地手当をはじめとする諸手当等の支給水準が国の基準を超えている自治体に対して、その取扱いを理由とした特別交付税の減額措置を行わないよう」申し入れを行ってきたところである。
 その時点での財政課の回答としては、「まずは公務員部が検討するものである」というものであった。先ほど来触れてきたように、自治体をはじめ地方公共団体では、人材確保が大変難しくなっている地域があることや、寒冷地手当にあっては、市町村合併による広域化、観測地点の変更なども踏まえた様々な要素を考慮する必要がある。 改めて、特別交付税の減額措置の廃止を検討すべきと強く要求しておく。

 これに対し総務省は「特に人材確保の問題等の非常に難しい課題があることを認識している。公務労協と引き続き議論させていただきたい」と答えた。

 最後に伊藤企画調整委員代表は、「国会において、税制の見直しなどについて協議がなされているが、そのことに伴う地方財政への影響については、国の責任において、確実な財源の確保を行うよう要請しておく。
 また、地方公務員における課題は山積している。賃金改善はもとより、働き方改革などの労働条件の改善等、一筋縄ではいかない課題も多く出されている。ぜひ、総務省としてもご尽力いただきたい」と要請し、回答交渉を終えた。