地方公務員部会が公務員部長交渉を実施し、給与改定等に関わる最終回答を引き出す-11/28
公務労協地方公務員部会は、11月28日、地方公務員給与の改定等に関わり、8月8日に総務大臣に提出した申入書に対する最終回答を引き出すため、総務省交渉を実施した。地方公務員部会からは伊藤企画調整委員代表(自治労書記長)ら書記長クラス交渉委員が出席し、総務省からは小池公務員部長らが対応した。
冒頭、伊藤企画調整委員代表が、地方公務員部会の要求に対する最終回答を求めたのに対し、小池公務員部長は以下のように答えた。
1.2024年の地方公務員の給与改定について
○ 地方公務員の給与については、地方公務員法の趣旨に沿って、地域の実情を踏まえつつ、条例で定められるものである。
○ 各地方公共団体においては、国民・住民の理解と納得を得られるよう、適切に給与を決定することが肝要である。
○ このため、総務省としても、引き続き必要な助言を行ってまいる。
2.
○ 技能労務職員等の給与については、一般行政職と異なり、人事委員会勧告の対象とはならず、労使交渉を経て労働協約を締結することができるが、その決定に当たっては、同一又は類似の職種の国及び地方公共団体の職員並びに民間事業の従事者の給与等を考慮して定めることが法律上求められている。
○ また、過去には、技能労務職員等の給与については、同種の民間事業の従事者に比べ高額となっているのではないかとの国民等の厳しい批判があったところ、各地方公共団体においては、給与に関する情報の開示を進めながら、適切に給与を決定することが重要と考えている。
3.
○ 本年の人事院勧告・報告では、初任給・若年層近辺に特に重点を置いて、全職員を対象にベースアップが勧告された。
○ また、「給与制度のアップデート」として、俸給・諸手当の各種制度について、現下の公務員人事管理の重点課題に対応した措置も併せて勧告された。
○ 総務省では、昨年11月から検討会を開催し、関係団体の意見や地方独自の課題を踏まえながら、議論を行ってきたところであり、本年10月には、これまでの議論を踏まえた、報告書が取りまとめられた。
○ 総務省としては、本年の人事院勧告・報告及び検討会報告書の内容を十分踏まえつつ、検討を行ってきたところ。
○ 地域手当の見直しに関しては、
・ 人材確保が大変厳しくなってきている中で、市町村単位の支給地域については、「近隣市町村との人材確保の公平性の観点から問題がある」などの指摘も踏まえ、国における地域手当の指定基準等と同様、市町村を越える客観的な圏域である、都道府県単位を基本とする方向であること。
・ 特別交付税の減額措置に関しては、地域手当制度の見直しに合わせて廃止すること。
としている。
○ なお、地域手当補正後ラスパイレス指数については、地域手当を加味した、地域における国家公務員と地方公務員の給与水準を比較するため、地域手当の支給割合を用いて補正したラスパイレス指数を参考として算出したものであり、参考として情報提供しているものである。
○ その他の手当の見直しに関しては、
・ 通勤手当については、国において、支給限度額が引上げられるとともに支給要件が緩和された見直しの趣旨を踏まえ、地域の実情等に応じ、適切に対処すること、
・ 定年前再任用短時間勤務職員等については、国において、生活関連手当(住居手当、寒冷地手当)や特地勤務手当等を支給することとされた取扱いを踏まえ、適切に対処すること、
・ 扶養手当については、配偶者に係る手当を廃止し、子に係る手当額を引上げつつ、経過措置を講じている国の見直しを踏まえ、適切に対処すること、
が必要であると考えている。
4.
○ 地方公務員の労働環境の確保に関しては、平成30年の働き方改革関連法と、これに関連する人事院規則の改正を踏まえ、総務省として、時間外勤務の上限規制や、健康確保措置の強化に取り組んでいただくべく、地方公共団体に対して重ねて通知を発出してきた。
○ 昨年12月には、令和4年度の時間外勤務の状況を踏まえ、改めて制度の実効的な運用に向けた留意点を通知するとともに、時間外勤務縮減に向けた地方公共団体の好事例を取りまとめ、情報提供を実施したところである。
○ 現在、令和5年度の時間外勤務の状況について調査を行っているところであり、この結果を踏まえて、地方公共団体に対して助言を行っていく。
○ 休暇・休業制度については、これまで、国家公務員との権衡を踏まえ、適切な対応を行うよう助言してきたところ。
○ 昨年12月には、地方公務員独自の制度である「高齢者部分休業」についても、定年の段階的な引上げに合わせて、積極的に制度整備を検討いただくよう助言を行った。
○ 総務省としては、実態を把握しながら、各地方公共団体における取組がしっかりと行われるよう、これからも必要な支援を行っていく。
〇 地方公共団体の定員については、各団体において、行政の合理化、能率化を図るとともに、行政課題に的確に対応できるよう、地域の実情を踏まえ、適正な定員管理に取り組むことが重要と考えている。
○ 総務省としては、引き続き、地方公共団体に対して、必要な助言を行ってまいりたい。
5.(1)
○ 会計年度任用職員の期末・勤勉手当について、各地方公共団体において適切に支給されることが必要であると考えており、今後とも、ヒアリングの機会等を活用して適切な対応を促してまいる。
○ 会計年度任用職員に係る人件費については、所要額を地方財政計画に計上しており、制度改正等があった際には、必要な財源を確保してきたところ。
○ 今後も、各地方公共団体が会計年度任用職員制度を適正かつ円滑に運用できるよう、適切に対応してまいりたい。
5.(2)
○ 会計年度任用職員の休暇制度については、これまで、国家公務員の非常勤職員の休暇制度との権衡を踏まえ、適切な対応を行うよう助言してきたところ。
○ 国家公務員の非常勤職員の休暇制度については、業務の必要に応じその都度任期や勤務時間が設定され任用されるという非常勤職員の性格を踏まえ、民間の状況などを考慮し、必要な措置が行われていると承知している。
○ 引き続き、国家公務員の動向を注視しながら、適正な勤務条件の確保を進めてまいりたい。
6.
○ ハラスメントは、個人の尊厳や人格を不当に傷つける許されない行為であるとともに、職員の能力の発揮を阻害し、公務能率の低下を招くものでもあることから、地方公共団体におけるハラスメント対策は重要な取組であると考えている。
○ 総務省としては、関係法律及びこれらの法律に基づく厚生労働大臣指針並びに人事院規則を踏まえ、各種ハラスメントを防止するために必要な措置を講ずるよう、各種会議において要請するなど、これまでも機会を捉えて地方自治体に対して助言を行ってきたところである。
○ 昨年12月に公表した各種ハラスメント対策の取組状況調査の結果によれば、昨年6月1日現在で都道府県や指定都市については全て措置済みとなっているものの、市区町村については、12.1%(208団体)が一部又は全て未措置となっている。
○ この調査結果を受けて、必要な措置が講じられていない自治体に対し、各種ハラスメント対策は、団体の規模や職場の状況の如何を問わず、必ず講じなければならないものであることから、速やかに対応するよう要請してきたところである。
○ また、地方公務員におけるカスタマーハラスメント対策については、厚生労働省のパワーハラスメント防止指針において、「事業主が行うことが望ましい取組」とされている。
○ 一方、国家公務員は、人事院規則等において、カスタマーハラスメントに関する苦情相談があった場合に、組織として対応し、その内容に応じて、迅速かつ適切に職員の救済を図ることが各省各庁の責務とされており、地方自治体においても、公務職場に特有の要請に応える観点から、国家公務員と同様の対応を行っていただくよう要請してきたところである。
○ その上で、カスタマーハラスメント対策については、措置を講じている団体が年々着実に増加しており、都道府県や指定都市については全て措置済みとなっているものの、市区町村において必要な措置が講じられていない団体が4割程度(695団体)となっていることから、未措置の市区町村においては、速やかに必要な措置を講じていただくよう要請している。
○ 今後とも、地方自治体における取組状況を調査し、特に未措置団体の実施状況については随時フォローアップ調査を行うとともに、新たにカスタマーハラスメントの発生事案を含めたハラスメントの実態調査やその対策を実施する好事例の収集等を実施し、必要な情報提供を行うなど、各種ハラスメント対策の実効性が確保されるよう取り組んでまいる。
7.
○ 定年引上げに係る地方公務員の給与・勤務条件については、地方公務員法及び各地方公共団体の条例等に基づき、定められたものである。その運用にあたり、地方公共団体の当局と職員団体が交渉・協議を行う場合にあっては、地域の実情を踏まえ、真摯な交渉・協議が行われるものであると考えている。
○ 総務省としては、国民・住民の理解と納得が得られる適正な内容とすべきものとの考えに立ち、必要な助言を行ってまいりたい。
○ 定年の引上げにより、再任用制度が廃止されたが、定年の段階的な引上げ期間においては、年金受給開始年齢までの継続的な勤務を可能とするため、再任用制度と同様の暫定的な再任用制度を設けたところである。
○ 暫定再任用制度では、平成25年3月に発出した総務副大臣通知(「地方公務員の雇用と年金の接続について」)において示している再任用を希望する職員の取扱いと同様、定年退職する職員が再任用を希望する場合には、当該職員が年金支給開始年齢に達するまで、原則として常時勤務を要する職に再任用する旨、令和4年3月に通知している。
○ 暫定再任用職員の給与については、地方公務員法に定める均衡の原則等に基づき、国家公務員の取扱いを踏まえ、各団体の条例において適切に定められるべきものと考えている。
○ 定年延長せずに退職してしまう現状について、総務省においては、現在、今年度初めて実施している定年引上げに関する実態調査の中で、令和5年度において60歳に達した者に関する4月1日時点の異動・退職等に状況について調査を実施しているところであり、まずは、その結果の取りまとめを行い、状況を把握したいと考えている。
これに対し、伊藤企画調整委員代表は、特に重点とする2点について、意見・要望を述べた。
1.賃金改善について
○ 公共サービスに従事する地方公務員は、大規模自然災害への対応、社会保障の充実等を含め、住民への安定的な行政サービスを提供するために、日々懸命に努力している。しかしながら、日々奮闘する働きに対し、依然として物価高騰は続き、賃金水準が追いついていない現状にある。
地公部会としては、こうした中、総じて、同一労働・同一賃金の観点も含め、住民の信頼と期待に応え、より質の高い公務・公共サービスを確実に提供していくためにも、積極的な賃金引上げ、底上げが不可欠であると認識している。
○ 給与法改正の閣議決定や改正法の成立の動向を見据えつつ、9月以降の各県・政令市などの人事委員会勧告を受けて、月例給、一時金の引上げ実施にむけて、労使での交渉で既に決着を図った単組も出ている。
○ これらは、人事委員会勧告を踏まえたものであり、我々としては地方自治体の主体的判断で決定したものと考える。また、人事委員会のない市町村においても、当該都道府県庁の動向を参考にするという自治体も少なくないが、これについても、同様に地方自治体の判断で決定したと考える。
○ こうした状況を踏まえ、今、回答にもあったように、地方公務員の給与は、地方自治の本旨と地方分権の理念に基づいて、当該地方自治体の条例で定めるべきものであり、当該自治体の自主的・主体的判断で決定されるべきものである。国家公務員給与の取扱い決定後に発出される、「地方公務員の給与改定等に関する取扱いについての総務副大臣通知」も、そのことを損なうような指導・助言は控えるよう、強調しておく。
○ 勧告の内容については、特に月例給について、昨年度に引き続き全職員の引上げ勧告として、一定の評価はできつつも、若年層と中高齢層職員の改定率には大きな開きがあることについては問題意識を持つものである。
その上で、内容に不満はありながらも、生活を支える賃金の底上げは急務。労働基本権の代償措置として出された引上げ勧告の取り扱いについては、最低限の手立てとして、国の給与法並びに地方議会での早期決定ができうるよう総務省としてのご努力、働きかけを求めておく。
併せて、若年・中堅はもちろんのこと、高齢層職員・再任用職員の人材確保、60歳前後の給与水準の連続性の課題も重要であるとの観点を持ちながら、根本的な待遇改善、積極的な賃金改善に向けた総務省の努力も期待する。
○ 臨時国会における補正予算審議の日程から給与法案がどのように影響を受けるのか、見通しは不透明な中であるが、「総務副大臣通知」については、地方の自主性、主体性を尊重する内容となるよう求めつつ、少なくとも今日的な状況を十分踏まえた対応を強く要請しておく。
2.「社会と公務の変化に応じた給与制度の整備」について
○ 今回の人事院勧告は、寒冷地手当の支給地域の見直しや、人材確保への対応や組織パフォーマンスの向上などに対応すべき給与制度のアップデートとされながら、配偶者に係わる扶養手当は廃止、地域手当の支給割合が引き下げとなったり、支給対象外となってしまう地域もあり、あらゆる物価が高騰し続ける状況下で賃金改善とならない状況も懸念される。
○ 地域手当については、人口20万人未満の市については10か年平均賃金指数が算出されていないため、示すことはできないとしているが、自治体ごとの賃金指数が示されなければ、支給対象外となる20万人未満の市においては、納得いかないもの。賃金指数の算出と明示を求める。
○ 我々が要求し続けた地域手当の特別交付税の減額措置について廃止となることは評価するが、寒冷地手当、期末・勤勉手当等の削減措置についても廃止することも求めておく。
○ あらためて、地方公務員の給与制度のアップデートについては、地域の実情及び職員の職務や生活実態を踏まえた自治体の裁量を尊重するよう強く求める。
最後に、伊藤企画調整委員代表が、「地方公務員における課題は年々増え、積みあがっている。地方公共サービスに従事するすべての職員が安心して働き続けることができる環境整備に向け、適宜、我々地方公務員部会と情報交換などを行いながら、総務省として尽力いただくよう要請する」と述べ、本日の回答交渉を終えた。