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公務公共サービス労働組合協議会 公務員連絡会
2021年度 公務労協情報 No. 20

人事院と民調作業方針をめぐって交渉-4/16

 人事院は、本年の民間給与実態調査に関する方針が固まったとして、賃金・労働条件専門委員会にその骨格を示した。
 冒頭、増尾職員団体審議官付参事官は、以下の通り基本的な骨格を明らかにした。

1.調査期間
 4月26日(月)から開始し、6月22日(火)までの58日間
 在宅勤務やテレワークにより企業担当者の出勤日が限られるケースが相当数想定されることから、早期に調査を開始した上で調査期間を例年より長く設定した。
2.調査対象事業所
 昨年と同様に、国・地方の公務、外国政府、国際機関等を除く民間の全ての産業の中で、企業規模50人以上でかつ事業所規模50人以上の母集団事業所数約54,200所の内から層化無作為抽出法により抽出した約11,800所。なお、全国の母集団事業所数約54,200所についてみると、平成28年経済センサス活動調査における従業員数(正社員)の占める割合は6割を超えている。
 なお、新型コロナウイルス感染症を巡る医療現場の厳しい環境に鑑み、昨年に引き続き、病院は調査対象としないこととした。
 なお、調査対象事業所数が、昨年から約200減少しているが、これは母集団事業所が減少したことから調査対象事業所も減少となったところ。
3.調査の方法
 人事院と、47都道府県、20政令指定都市、特別区及び和歌山市の69人事委員会が分担して実施する。調査員による実地調査を基本としつつ、必要に応じて対面によらない方法も活用する。なお、調査員に対しては感染予防対策を徹底する。調査員は約1,100人。
4.調査の内容
 事業所単位で行う調査事項について、具体的には、①賞与及び臨時給与の支給総額と毎月きまって支給する給与の支給総額、②本年の給与改定等の状況(ベース改定の状況、定期昇給の状況、賞与の支給状況等)、③諸手当の支給状況(家族手当の支給状況、在宅勤務者に対する通勤手当等の状況)、④高齢者雇用施策の状況(一定年齢到達時に常勤従業員の給与を減額する仕組み等)、について調査する。
 調査内容は基本的には例年と同様であるが、昨年調査を行った通勤手当の支給状況については、調査しないこととし、在宅勤務者に対する通勤手当等の状況について調査することとした。
 新型コロナウイルス感染症対策として、在宅勤務、テレワークが推進されたことにより、在宅勤務が一般的・継続的なものになりつつあるなか、一部の民間企業において、通勤手当の支給方法を見直す動きがあることから、民間における在宅勤務時の通勤手当の取扱いの状況を把握するため調査することとした。その他の者に係る手当額の水準等については、令和元年10月からの消費税率の引き上げに伴い、各交通機関の運賃・料金が引き上げられたことを受け、昨年調査を行ったところであり、本年においては他に優先して調査を行うという判断には至らなかったものである。
 次に従業員別に行う調査について申し上げる。
 こちらは、例年と変わりなく、従業員別に行う調査事項は、4月分の初任給月額を調査するとともに、月例給の民間との比較の基礎として、役職、年齢、学歴等従業員の属性と、その4月分所定内給与月額、すなわち4月分のきまって支給する給与総額とそのうちの時間外手当額、通勤手当額を調査する。調査職種は54、そのうち初任給関係が12、これはいずれも昨年と同様である。これらの職種について、職種分類を行い、調査職種別に給与を調べることになる。
 調査の概要については以上のとおりである。

 これに対し、関賃金・労働条件専門委員長は次の通り質した。
(1)「調査員に対しては感染予防対策を徹底する」とのことだが、具体策如何。
(2)仮定の話ではあるが、今後、『まん延防止等重点措置』の地域拡大や『緊急事態宣言』が発令された場合の対処方針如何。例えば、調査完了率によっては、調査期間を延長するようなことも想定、シミュレーションしているのか。
(3)昨年秋の臨時国会(衆議院内閣委員会)の質疑の中で、一宮総裁は、「来年の勧告に向けましては、本年の経験も踏まえ、民間給与の実態調査におけるオンラインツールの一層の活用促進なども含めて工夫をいたしまして、例年のスケジュール感で勧告作業が進められるように努力してまいりたい」と答弁しているが、本年の民調において、どのような「工夫」をしたのか明らかにしていただきたい。
(4)調査の方法に関わって、「調査員による実地調査を基本としつつ、必要に応じて対面によらない方法も活用する」とのことだが、この間、職種別民間給与実態調査において、オンライン調査の運用を行っていたのか、その状況如何。

 これに対し、増尾参事官は、以下の通り答えた。
(1)各調査員に対しては、マスクの着用、検温の実施、体調不良時の訪問の見合わせ、手洗いの徹底、手指の消毒、身体的距離の確保、事業所の感染予防対策の遵守、訪問時における面会等の記録、について指示する。
(2)調査完了率については、一定の数値を目標として調査を行っているものではない。なお、昨年度については、新型コロナウイルス感染症の感染拡大による事業活動に大きな影響が生じている中での調査であったが、民間事業所の格段の理解と協力を得て、特別給に関する調査の完了率は80.3%と、非常に高いものであった。本年度も、民間事業所の理解と協力が得られるよう努める。また、非対面での対応や、感染予防の取組の徹底をはかるなどにより、調査対象事業所のご負担や不安を軽減することにも努めてまいりたいと考えている。
(3)本年の調査については、昨年の経験も踏まえて、Web会議システムや政府統計共同利用システムにおけるオンライン調査システムなどのオンラインツールを一層活用することとしている。また、在宅勤務やテレワークにより企業担当者の出勤日が限られるケースが相当数あると想定されることから、早期に調査を開始した上で、調査期間を例年よりも長く設定するといった工夫を行っている。
(4)郵送や電子メールなども活用するなどして非対面により調査を行うことも考えている。なお、オンライン調査については、昨年より準備を進めており、本年においては、初任給に関する調査とボーナスに関する調査において、同システムを活用することができるようにしている。

 回答に対し、関専門委員長は「新型コロナウイルス感染症の感染拡大は、引き続き、厳しい状況となっていることも踏まえて、より一層、各地域における人事委員会との連携・意思疎通を十二分にはかりながら、感染防止対策も万全にしつつ、調査を進めていただきたい。また、今日、説明を受けた内容について、仮に変更等が生じる場合には、公務員連絡会に対して、前広な情報提供を求めておく。」と述べた上で更に次の通り人事院の見解を質した。
(1)春季交渉においても確認しているが、官民給与の比較方法・企業規模については、変更がないということでよいか。
(2)諸手当に関わって、「在宅勤務者に対する通勤手当等の状況」を調査するとのことだが、昨年秋の「令和2年民間企業の勤務条件制度等調査」において、「在宅勤 務(テレワーク)に対する経費の負担」について調査していたこととの関連如何。また、秋の調査結果の状況如何。さらに、秋民調の結果分析を踏まえて、制度新設を視野にいれているのか。
(3)再任用職員の給与に関わって、春季交渉において人事院は、「引き続き、再任用の給与の在り方について必要な検討を行っていきたいと考えている。」と回答しているが、本年の民調において、「必要な検討」に向けた調査項目が設けられているのか。また、今後、具体的にどのように検討するのか現時点での考えを明らかにしていただきたい。

 これに対し、増尾参事官は、以下の通り答えた。
(1)変更はない。
(2)昨年の秋調査では、新型コロナウイルス感染症対策として、在宅勤務、テレワークが推進されたことにより、在宅勤務が一般的・継続的なものになりつつあるなか、一部の民間企業において、従業員が在宅勤務を行うにあたって必要となる通信費や光熱水道費等の経費を負担する動きがあることを踏まえ、在宅勤務に係る経費負担の状況について調査を行った。他方、今回の調査では、民間における在宅勤務時の通勤手当の取扱いの状況及び給与としての在宅勤務手当の支給状況について調査を行うこととしている。なお、昨年秋の調査結果については現在集計中である。現段階で制度措置について具体的に検討を行っているものではない。引き続き、官民におけるテレワーク勤務の普及状況や民間におけるテレワーク勤務時の給与の取扱い等を注視していきたいと考えている。
(3)再雇用者の個人別給与の調査は実施しているところ、民間におけるフルタイム再雇用者における生活関連手当の支給状況については、平成28年に調査を実施し、民間の状況は概ね把握できたものと考えている。本年においては、調査項目に制約がある中で他に優先して調査するという判断には至らなかったものである。いずれにしても、人事院としては、民間企業における定年制や高齢層従業員の給与の状況、各府省における再任用制度の運用状況を踏まえつつ、職員団体の意見も聞きながら、引き続き、再任用給与の在り方について必要な検討を行ってまいりたいと考えている。

 最後に、関専門委員長は「昨年に引き続き、新型コロナウイルス感染症の影響下での調査は、困難な状況にあることを共有しつつ、調査に従事する人事院及び人事委員会における感染防止に留意した尽力をお願いする。いうまでもなく、民間給与実態調査は官民比較の基礎であり、勧告制度の根幹である。人事院におかれては、昨年の経験も踏まえて、調査対象事業所に対して、丁寧かつ十分な説明をした上で調査を進めていただきたい。今後、公務員連絡会としては、民調の動向等も注視しつつ、しかるべき時期に人勧期要求書を提出して交渉・協議を進めていくが、調査の進展状況等について、途中段階も含めて前広に議論することを求めておく。」と述べた。
 これに対して増尾参事官が「ご要望は承った。先ずは精確な調査を行い、調査結果を踏まえ適切に対処することが重要だと考えているので、これから勧告に向けて皆さまのご意見も伺いながら検討してまいりたい。」と回答したことから、この日の交渉を終えた。