2021人勧期要求で給与局長と書記長クラスが2度目の交渉-8/3
月例給の較差は相当小さいと回答、一時金は支給月数引下げの圧縮を強く指摘
公務員連絡会書記長クラス交渉委員は、3日13時30分から、2021年人勧期要求に関わり佐々木人事院給与局長と2度目の交渉を行った。
冒頭、吉澤事務局長が「実質的に、今回が最終の交渉となることを踏まえた議論を」と述べた上で、「7月28日の交渉を踏まえた現段階の検討状況を回答されたい」と求めたのに対し、佐々木給与局長は以下のとおり答えた。
1 勧告について
勧告日は、来週前半で調整中である。具体的な日程は、総裁会見の際にお伝えすることができると思われる。
2 官民格差等について
(1)官民格差と月例給について
官民較差については、現在、最終的な詰めを行っているところである。具体的な状況を言える段階ではないが、較差は相当小さいものとなるのではないかと思われる。
(2)特別給について
特別給についても、現在、最終的な集計を行っているところであるが、各種調査結果をみると、昨年の冬、本年の夏ともにマイナスになっており、支給月数が昨年を上回る引下げとなる見通しである。
なお、支給月数の引下げがある場合には、期末手当から差し引くことを考えている。
3 本年の改定の考え方について
現在、月例給の官民較差については最終的な詰めを行っているところであるが、その結果を踏まえ、俸給表の改定等を行うか否か判断したいと考えている。
4 育児休業制度の改正に併せた期末手当・勤勉手当の取扱いについて
国家公務員の育児休業等に関する法律の改正についての意見の申出に向けて最終的な詰めを行っているところである。育児休業制度の改正に併せて、期末手当及び勤勉手当における在職期間等の算定に当たっては、子の出生後8週間以内における育児休業の期間と、それ以外の育児休業の期間は合算しないこととすることを考えている。
回答に対し、吉澤事務局長は、「勧告日の具体的な日程については、総裁との回答交渉に委ねる」と指摘した上で、次のとおり局長の見解を質した。
(1)月例給については満足できる回答ではない。プラスなのかマイナスなのか、改定 があるのかないのか、再回答を求める。
(2)国公実態について。平均年齢が0.2歳下がって43歳となったとのことだが、 諸手当の変動を含めた平均給与額はどうなっているか。
(3)民間動向について、連合・経団連の集計によると、少なくとも定期昇給は維持と いえる。一方、一般労働者の所定内給与が0.3%伸びているとした毎勤統計調査 を踏まえた民間給与の実態は如何に。
(4)初任給に関する民間との水準差について、前回交渉における局長の見解は較差に よる配分にとどまっていたが、本年も較差が小さいことを想定すると、較差で解消 しようとするのは限界であり、むしろ民間との差がますます拡大していくことにな る。このまま放置することにはならない問題だと考えるが認識はどうか。
これに対し、佐々木給与局長は次のとおり回答した。
(1)現在、最終的な詰めに入っているが、昨年は▲164円(0.04%)であった。過去、 較差が小さく改定なしだった年は、平成25年(76円)、平成24年(▲273円)、平成20年(136 円)、平成18年(18円)である。本年の較差は、以上の過去の状況に相当する 程度の相当小さいものになると思われる。
(2)国家公務員の平均給与額は昨年を下回っている。具体的には、俸給額の水準が下 がったとともに、扶養手当額も減少した一方、住居手当額は増加となっているが、 全体として一番大きな要因は、平均年齢が下がったことによる俸給額の減少である。
(3)民間の動向は、新型コロナウイルス感染症の影響により大きく落ち込んでいる企 業がある一方、輸出の回復等により伸びている企業もある。民調によると、初任給 の引き上げ、ベースアップを実施している企業は若干減ったが、8割超が定期昇給 を行っている。また初任給についても、20%を超える事業所が引上げを行い、賃金 水準を確保する動きが見られる。
(4)今の段階で確たる事を申し上げることはできないが、ご指摘のとおり、較差によ る水準差の解消は難しい状況である。今後、配分問題としてどう考えるのか、とい うことも議論していく必要がある。
吉澤事務局長は、「月例給については、国家公務員給与の変動、毎勤統計調査における民間状況、そして昨年の最終的な給与局長交渉と同じ「較差は相当小さい」という回答を踏まえ、適正な較差になるものと判断する」と指摘した上で、続いて一時金について、次のとおり局長の見解を質した。
(1)支給月数について、昨年を上回る引き下げになるという回答は問題である。とく に、育児、子育て、教育負担世代について、生活確保という観点から遺憾である。 厳しい民間状況のもとながら、業種によって増減を含め支給状況に相違があるなか で、少なくとも納得のいく説明が不可欠である。改めて一時金支給月数についての 認識如何。
(2)支給月数の引下げがある場合は期末手当から差し引くとの回答は、問題である。 非常勤職員の一時金については、先般の給与決定指針の改正により、少なくとも常 勤職員との権衡という観点からの問題は解消されるものと思うが、育児休業中の職 員については問題であり、とくに今回意見の申出により育児休業制度を改正しよう とするもとにおいて適切ではない。
(3)再任用職員の一時金の取扱いは、これまでの定年前職員とのバランスで措置する のか。前回交渉の議論経過を踏まえ、配慮すべきである。
これに対し、佐々木給与局長は次のとおり回答した。
(1)月例給と同じく、産業あるいは企業の状況にバラつきがある。各種調査の結果において、昨冬、今夏のボーナスともに対前年比で減少という点は昨年と異なる状況。ただし、調査結果によってもバラつきがあり、我々の調査が一番ベースが広いものとなっており、広く民間の状況を拾っている。過去の傾向から言えば、他の調査において大幅な引上げ、引き下げと言われる時においても我々の調査結果は小幅に出る傾向にある。
(2)期末手当、勤勉手当の配分については民間のボーナスに占める考課査定分の割合を参考にしている。民間の考課査定分に比べ、公務の場合は勤勉手当の占める割合が低いため、プラスの時は勤勉手当、マイナスの時は期末手当という方法で勤勉手当の割合を増やし、民間のボーナスに占める考課査定分の割合に近づけているところ。過去に下げ幅が大きかった場合は勤勉手当も含めて対応したという例もある。
(3)従来のとおり、定年前職員と再任用職員の支給月数の割合を踏まえて対応してい くという考えに変わりはない。
吉澤事務局長は、「一時金の支給月数については、民間状況を踏まえつつも、最終まで削減の圧縮を強く求める」と指摘した上で、次に、改正国家公務員法附則第16条について、「今後の給与制度の在り方について極めて大きな課題と認識しているが、本年の給与報告で言及があるのか。」と質し、これに対し佐々木局長は、「附則について一定の言及をする予定」と回答した。これを受け吉澤事務局長は「昨年の春季生活闘争期の給与局長交渉、参議院内閣委員会の附帯決議を踏まえて、今後の対応に関する再確認を」と求めたことに対し、佐々木給与局長は「まったく変更はない。そのつもりである。」と回答した。
最後に、吉澤事務局長は「民間の厳しい状況は踏まえつつも、職員の必死の奮闘に応え、士気を確保するという観点から、最終まで要求に応えることを求める。なお、実質的な交渉の最後に、少なくとも若年・中堅層をはじめとする出産・育児、子育て、教育負担世代において、定期昇給分を含めた年収ベースでマイナスになることのない勧告を最低として求める」と強く要請し、この日の交渉を締めくくった。