2022人勧の月例給、一時金の配分等で人事院交渉実施-8/2
公務員連絡会幹事クラス交渉委員は、2日13時30分から、本年人勧における配分等について、人事院の大滝職員団体審議官と交渉を実施した。
この交渉は、8月1日の書記長クラス交渉委員と給与局長の2回目の交渉で、①官民較差はプラスではある見通し、②特別給は支給月数が引上げとなる見通し、③勤勉手当の支給月数の引上げ分の一部を用いて、上位の成績区分に係る原資の確保を図る考えが示されたことから、公務員連絡会の要求を実現するため行ったもの。
冒頭、高柳副事務局長が「昨日の2回目の給与局長交渉を踏まえて、本年の給与改定について、月例給、一時金の配分の考え方を伺いたい」と求めたのに対し、大滝審議官は以下のとおり答えた。
1.改定の基本的な考え方について
民間給与との均衡を図るため、月例給の引上げ改定を行う。月例給の改定に当たっては、人材確保の観点等を踏まえ、若年層について、基本的な給与である俸給を引き上げる改定を行う。
2.行政職俸給表(一)の改定について
初任給については、人材確保の観点や民間企業における初任給の動向等を踏まえ、総合職試験及び一般職試験(大卒程度)及び一般職試験(高卒者)に係る初任給を、それぞれ一定額引き上げることとし、初任給以外の号俸については、初任給の改定を踏まえ、20歳台半ばまでの職員が在職する号俸に重点を置き、30歳台半ばまでの職員(初任の係長級の若手職員)が在職する号俸について改定を行う。
なお、再任用職員の俸給月額は、改定を行わない。
3.行政職俸給表(一)以外の俸給表の改定について
行政職俸給表(一)以外の俸給表についても、行政職俸給表(一)との均衡を基本に改定を行う。
なお、今回の改定の趣旨(若年層を対象)から、専門スタッフ職俸給表及び指定職俸給表の改定は行わない。
4.一時金の改定について
一時金の改定に当たっては、従来から、引き上げ改定・引き下げ改定ともに、民間の係員層の一定率分と考課査定分の比率を参考に改定してきており、民間の考課査定分に比べて公務における勤勉手当の比率がなお低いことから、本年も勤勉手当に配分する。
なお、勤務実績を勤勉手当の支給額により適切に反映し得るよう、勤勉手当の支給月数の引き上げ分の一部を用いて、上位の成績区分に係る原資の確保を図る。
回答に対し、高柳副事務局長は、「まず、月例給、一時金を通じた、私どもの基本的立場について、昨日の給与局局長交渉でも申し上げたが、①第7波と言われる新型コロナウイルス感染症における最大の感染拡大の波が訪れている中で、国・地方の公務員はさらなる懸命の努力を続けていること、②30年に及ぶ賃金低迷の中で、公務員もまた抜本的な賃金改善が必要であること、③急激な物価上昇が続き、今後更なる上昇が見込まれる中で、これの生活への打撃は、年齢や立場に関係なくもたらされるものであること、といった事実を重視すべきである、ということである。よって、官民較差が少なかったとしても、全世代への配分が必要である、という私どもの要求を改めて申し上げておきたい」とした上で、次のとおり審議官の見解を質した。
(1)今ほど、月例給の引き上げを行うことを明言されたが、具体的な率、額について、どの程度か。
(2)初任給を始めとする若年層の給与改善については、この間我々も強く求めていることであり、それ自体は評価したいと思う。その上で、「20歳台半ばまでの職員が在職する号俸に重点を置き、30歳台半ばまでの職員(初任の係長級の若手職員)が在職する号俸について改定を行う」とのことだが、具体的な号俸としてはどの程度までが対象となるのか。
(3)昨日給与局長は、「今回初任給の改善を行うことによっても、官民の格差はなお残る」ことを述べたが、高卒、大卒ともに、どの程度の格差が残る見込みか。
(4)今回の措置をもってしてもなお、民間との差が埋めきらないとした場合に、全体における配分の問題も含めて、今回人事院が打ち出されようとしている「給与制度のアップデート」の中で新たな方策を模索する、という理解で良いか。
(5)俸給月額の一定割合を基礎として支給額を定めている手当の改正は今回あるのか。
(6)再任用職員の給与改定を行わない理由を示されたい。
これに対し、大滝審議官は次のとおり回答した。
(1)具体的な率、額については、総裁会見の際にお答えさせていただく。
(2)俸給表の具体的な改定内容まではお答えしかねるが、現在、30歳代半ばの職員は、主に3級30号俸台くらいまで在職している。
(3)官民の較差について、昨年の状況を申し上げると、令和3年の民調の結果、民間では、大卒初任給が207,215円、高卒初任給168,943円であった。一方、行(一)の初任給が、地域手当非支給地であれば大卒18万円台、高卒で15万円台だった。このくらいの差があった。
(4)「給与制度のアップデート」は、今後の検討となるが、給与制度全般に関わるものであり、初任給も含まれるものと考える。
(5)いまのところ、ないと認識している。
(6)今回は若年層を対象に改定するため、再任用は入らないということである。
また、交渉委員からは、「国公高卒初任給が全国加重平均の最低賃金を割っている状況の中で、新たに最低賃金の引上げ目安が示された。初任給、若年層については、特に重点を置いて引上げを求める。一方で、物価も上がり、組合員の生活不安も大きい中で、全体の引上げも必要だ」「初任給の引上げは必要だが、職員全体のモチベーションも考える必要がある」「以前に、若年層に特に厚くしながらも、俸給全般も一定引上げる勧告を行ったこともある」という意見があった。
大滝審議官は、「皆さんのご要望は承った。確かに、初任給と俸給全般にあまねく配分したこともあったが、それでは民間の初任給に追いつかないのが実情だ。今回は、基本的に、若年層を対象に配分しようという方針であるということをご理解いただきたい」と回答した。
次に一時金について、高柳副事務局長は、「一時金については、2つの重要な論点が含まれているので、2回に分けて申し上げる」として、次のとおり審議官の見解を質した。
(1)一時金の引上げ月数について、直近の引き上げであった2019年の際には給与局長から「若干の引上げの見通し」との発言があり、結果として最小単位である0.05月の引き上げであった。一方、昨日給与局長は、単に「引上げの見通し」と述べられ、その後のやり取りの中で、この言葉遣いの相違について言及されている。よって、私どもとしては、当然に、0.1月以上の引き上げになると理解するが、それで良いか。
(2)引上げに当たって、「民間の考課査定分に比べて公務における勤勉手当の比率がなお低いことから、本年も勤勉手当に配分する」とのことであり、昨日給与局長は、民間の割合と同程度にすべき理由として、「公務員の賃金・一時金について、なお厳しい見方がある」旨述べられた。しかし、この間の震災を始めとする大規模災害や現在の感染症対応の中で、公務員が様々な現場で限界を超えるような奮闘を続けていることは広く国民の知るところである。よって、社会意識も大きく変化し、一時金を含めて公務員の処遇についてもかつてとは大きく見方が変わってきているのが実態であると認識している。その意味からも、期末手当を通して、あまねく職員に配分するということも必ずしも理解を得られないことではないと思うが、いかがか。
(3)昨日給与局長は、「民間の考課査定分の割合との差はだいぶ詰まってきた」との認識を示されたが、実態として、例えば直近の民間の考課査定分の割合と、今回の措置を行った場合の公務の勤勉手当の割合について示されたい。
(4)また給与局長は、「近い将来、ボーナスにおける期末と勤勉との配分のあり方について改めて考える必要が出てくるのではないか」との見通しを示された。その意味するところについて、来年以降について、仮にプラスの官民較差が出た場合、期末手当に振り向ける可能性を否定するものではない、という理解で良いか。
これに対し、大滝審議官は次のとおり回答した。
(1)具体的な引上げ月数については総裁会見の際に回答する。
(2)職員の皆さんが奮闘されていることについては十分理解している。一方で、国家公務員の給与は勤務実績に基づいてしっかりと措置されているということを、国民に理解してもらうことも大切であると考える。
(3)民間の考課査定分の割合について、昨年の状況を申し上げれば、令和3年の民調において、企業規模計で係員は47.4%であり、現行の国公一般職の勤勉手当の割合については44.2%であった。
(4)昨日給与局長が申し上げたとおりである。
更に高柳副事務局長は次のとおり審議官の見解を質した。
(5)2005年、2007年同様に、「引き上げ分の一部を用いて上位の成績区分に係る原資の確保を図る」とのことだが、この一部とはどの程度のことか。
(6)昨日給与局長は、一時金の支給方法について、「令和4年度については、6月期の勤勉手当は既に支給済みであるため、12月期に配分することとし、令和5年度以降については、6月期と12月期が均等になるよう配分することを考えている」と述べられたが、この場合、上位の成績者に回す分については、どのように措置されるのか。
(7)この場合の「上位の成績区分」とは、「優秀」「特に優秀」の2つを示していると理解して良いか。
(8)昨日給与局長は、「新たな人事評価制度に対応する必要性」を、今回措置する理由として挙げていたが、新人事評価制度は、この10月に本格運用するものであり、その運用状況をまず検証するのが先ではないのか。
(9)再任用職員の一時金の支給について、どのようにお考えか。仮に引上がるとした場合の、上位の成績区分への振り向けについては、どのように考えているのか。
これに対し、大滝審議官は次のとおり回答した。
(5)一時金の改定内容に含まれるので、総裁会見の際にお答えする。
(6)過去に原資の確保があった時と同じように、6月期と12月期それぞれで措置するということになるので、例えば12月期にまとめて原資分を配分するというようなことは考えていない。
(7)ご認識のとおりである。
(8)人事評価制度は現在すでに運用されており、評価制度の改定内容に伴って、より適切な勤務実態を反映させるために今回措置するものである。
(9)基本的な考え方として、全体の支給月数を含めて定年前職員の支給月数の比率を基準に措置するという考え方は変わらない。
その後、交渉委員から「職員は、今なおコロナ禍においてサービス提供体制の維持のため、心身が休まらない中で仕事に取り組んでいる。標準成績者の上げ幅を抑えて成績上位者の原資とする措置を、今回行うのは反対である」「勤勉手当の比率を民間の考課査定分の比率に極力一致させる必要があるのか。公務は競争の原理で動いているわけではない。昨日給与局長が言った通り、『近い将来、ボーナスにおける期末と勤勉との配分のあり方について改めて考える必要が出てくる』中で、公務におけるあるべき比率を検討すべき」「今回の措置は理解できる部分もあるが、物価上昇局面において行うのはどうか」と発言があった。
これに対して、大滝審議官は「現場の職員の奮闘、苦労については十分理解をし、要望、意見として受け止める。また、将来に亘る話についてのご要望は承った。一方で公務員給与の仕組みが社会全体に理解をされる必要があるというのが人事院としての立場であり、これまでも同様の措置を行ってきたことを理解していただきたい。今回引き上げ分の一部を用いて上位の成績区分に係る原資の確保を措置する理由について、昨日給与局長が申し上げた通り、一時金のプラス改定の時期にしか行えないということである。また、成績上位者の分布率を変えるものではないことも昨日説明した通りである」と回答した。
最後に高柳副事務局長が、「本日の回答においても、一部明確になった部分もあるが、数字を含めて不明瞭な部分が多かった。来週前半に勧告を迎えるというギリギリの時点で、そのような回答にとどまっていること自体が、まず遺憾であると申し上げる。その上で、月例給、一時金ともにプラスの勧告が出るということは、春闘結果や、現下の社会情勢からは当然であるとは言え、率直に評価したい。しかしながら、この間の現場公務員の奮闘という点からすれば、人事院が示す一時金の配分のあり方は、その論拠、手法ともに大いに疑問であり、問題があると考える。特に、私どもとしては、成績優秀者にのみ手厚く配分することは、昨日から申し上げている通り、急な提案であることも含めて、了解できるものではないことを指摘しておきたい。勧告まで、あと総裁との最終交渉を残すのみとなったが、以上の点について再考されることを再度要求しておきたい。その上で、昨日も申し上げた通り、具体的な数字を示すこと、そして職員の気持ちに届くようなメッセージが示されることを要望しておきたい」と発言し、交渉を終えた。