TOP 公務労協情報 人事院・内閣人事局へ2022年度基本要求を提出-11/26
-2021人勧の取扱いに関する人事院の見解も問いただす-
公務公共サービス労働組合協議会 公務員連絡会
2022年度 公務労協情報 No. 6

人事院・内閣人事局へ2022年度基本要求を提出-11/26
-2021人勧の取扱いに関する人事院の見解も問いただす-

公務員連絡会は11月26日、人事院、内閣人事局に対して「2022年度賃金・労働条件に関わる基本要求」(資料1、2参照)を提出した。公務員連絡会からは幹事クラス交渉委員が交渉に臨み、誠意ある回答を示すよう求めた。
 それぞれの交渉経過は次のとおり。

<人事院との交渉経過>
 人事院への提出交渉では、人事院からは好岡職員団体審議官、増尾職員団体審議官付参事官が対応した。
 要求書提出に先立ち、高柳副事務局長は2021年人事院勧告の取扱いについて次のとおり述べ、人事院に見解を求めた。

 本日は、2022年度の基本要求書の提出に当たっての私どもの考え方を説明させていただく場であるが、その前に、本年の人事院勧告の取り扱いに関わって、若干問題提起をさせていただき、人事院のお考えをお聞かせいただければ、と考えている。
 ご案内のとおり、19日の閣議において決定された「新たな経済対策」を踏まえつつ、さる24日、本年の人勧において示された内容のうち、「本年度分の引下げ相当分については来年6月のボーナスから減額する」ということが閣議決定されている。一方、国家公務員に関する給与法改正案については、今なお国会への提出時期が未定であると認識している。
 政府は、コロナ禍からの回復のための経済対策を理由としているが、そのことが政府の独断により、労働基本権制約の代償措置とされる人事院勧告と異なる措置を講じることに、少なくとも制度的な問題があると考える。今回の極めて異例な措置は、解散・総選挙を始めとする政治日程の結果として、単に12月1日の一時金支給の基準日までに給与法改正案を審議するための暇(いとま)がなかったというのが真実であると認識している。
 なお、期末手当の0.15月分削減を勧告が求めたのに対して、本年12月期の一時金では実施せず、来年6月期の一時金において本年分を削減するという措置は、年度を超える異例な対応となることから、少なくとも今後の前例とはしないことが不可欠である。いずれにしても、「勧告と異なる」という点について、私どもとしては、「軽々に看過すべきものではない」と考えている。
 以上のような認識のもと、私どもは、この間内閣人事局あるいは国公大臣に対しても、問題指摘をしてきたところであるが、本日は、この場を借りて、人事行政に関する中立・第三者機関として政府と国会に勧告を行ってきた人事院の、今回の政府の「勧告内容と異なる」措置に対する対応をお聞かせいただきたい。

 指摘を受け、好岡審議官は以下のとおり回答した。

24日に政府が決定した一般職国家公務員の給与改定に関する取扱いについては、政府において、人事院勧告制度を尊重するとの基本姿勢の下、国政全般の観点から検討が行われた結果と承知している。
具体的には、人事院の勧告どおり0.15月分の期末手当の引下げを実施することとした上で、本年度の引下げに相当する額については来年6月期の期末手当で調整を行うこととするものであり、勧告の内容を実質的に変更するものではないと考えている。本取扱いの決定の時期等も踏まえると、今年度の引下げに相当する額を来年6月期の期末手当で調整を行うことは差し支えないものと考えている。

 回答を受け、高柳副事務局長が「勧告と異なる措置が行われることに対して、人事院として何か対応される予定はあるか」と更に見解を求めたところ、好岡審議官は「今回の措置は、職員の勤務条件に関わるほか、給与制度に関わる専門的事項でもあり、今般の閣議決定に当たり、人事院の見解を政府に求められたことから、こうした見地からみて、本年度の引下げに相当する額を来年6月期の期末手当で調整を行うことは差し支えない旨、見解を示している」と回答した。

 これらの回答を受け、高柳副事務局長は「見解を承った。私どもとしては、今回の措置は、特殊な状況下における極めて異例な措置であり、来年度以降の課題も含め、勧告制度の存立基盤を揺るがすようなことのないよう、人事院としても必要な対応を適宜取っていただくよう求めておきたい」と、改めて本年の人事院勧告が極めて異例な環境下での措置であることを念を押した。

 その後、2022年度基本要求書の提出にあたり、冒頭、高柳副事務局長は次のとおり述べた。

2022年度基本要求書の提出にあたって、私どもの基本的考え方を申し上げる。
コロナ禍は、日本においては収束に向けた兆しも見えているが、この2年弱に及ぶ非常時対応により、国民生活はあらゆる側面において傷んでおり、感染の再拡大に細心の注意を払いつつも、経済など、そこからの回復に向けた各種方策が採られる必要がある。
公務・公共職場では、まさしく感染症対策や多発する自然災害など、想定を超える、極めて厳しい環境のもと限られた人員での対応が求められている。一方で、従前より、働き方改革や男女共同参画を始めとする働きやすい職場づくりが求められてきたところであるが、これらも改革の途上である。
よって、本年の要求においては、「コロナ後」も見据えつつ、職員の奮闘に応えるためにも、特に、賃金や労働環境の抜本的な改善、あるいは「もしも」の時にも対応できる体制の整備と必要な人員の確保などを強く求める。また、両立支援やハラスメント防止など、引き続き働きやすい職場づくりを求める。

 その上で、具体的な要求項目のポイントについて次のとおり説明した。

〇賃金に関わる事項
 ・給与水準及び配分等について
コロナからの回復をめざした経済対策が必要であるということは政府も十分認識されていると思うし、連合も来年の春闘において、定期昇給とベア相当分として計4%程度の賃上げを求める方針を掲げているところ。
人事院としては、精確な官民比較を行った上での勧告を行うものであることは十分承知しているが、「職員の奮闘に応える」という意味においても、積極的な賃金の引上げが必要だと考える。
勧告期に別途要求書を提出させていただくが、連絡会との間で前広な情報提供と十分な協議を行うよう予め求めておく。
 ・諸手当について
退職手当については、11月末に人事院の調査が終了するものと認識しているが、今後のスケジュールを明らかにされたい。また、調査結果の公表および見解の表明の前に、私どもと十分に交渉・協議し、合意に基づいて進めるよう求めておく。
〇労働時間、休暇・休業制度に関わる事項
 ・年間労働時間の着実な短縮について
労働時間の短縮について、この間、超過勤務手当の全額支給を政府が表明したが、重要なことは実効性ある超過勤務の縮減策である。人事院として主体的な役割を果たしていただきたい。また、超過勤務の状況に関する検証の結果等も踏まえ、特例業務の扱いについて必要な見直しをはかることや、いわゆる「他律的業務の比重が高い部署」の指定にあたっては、各府省任せにせず、人事院として各府省への指導を強化していただきたい。
 ・休暇・休業制度の拡充等について
両立支援のための人事院規則の改正について、11月11日には、私どもの質問・意見に対する人事院としての見解もお示しいただき、それを各組合にも共有化したところである。今後の段取り等について、お示しいただきたい。
 ・勤務時間制度等の見直しについて
テレワークに関する「研究会」について、引き続きなお準備段階にあるとの認識でよいか。いずれにしても、そこでの議論について、段階に応じて、私どもに情報提供し、必要に応じて、協議を行うよう改めて求めておく。
〇雇用と年金の確実な接続
定年引上げに関する人事院規則の改正について、独法や地方自治体への様々な影響もあることから、引き続き極力早い段階での対応を求めておく。いずれにしても、措置にあたっては公務員連絡会との十分な協議を求めておく。
〇福利厚生施策等
職場におけるハラスメントは、メンタルヘルスの問題とともに、現代の労働問題の特徴的かつ深刻な課題として浮上しており、お互いに重大な問題であると認識していると考える。相談員など各府省における体制整備に向けた必要な指導を行うのはもちろんのこと、苦情相談や紛争解決などは、人事院の主要な役割であり、改めてその任を着実に果たすよう求めておく。
〇人事評価制度
人事評価について、現時点での作業の状況などをご教示いただきたい。いずれにしても、重要な内容であるので、公務員連絡会との交渉・協議を踏まえて措置することを求めておく。

 申入れに対し、好岡審議官は「基本要求については承った。十分検討の上、しかるべき時期に回答させていただく。本日は、いくつかの点について、現時点でのコメントを申し上げる」として、現時点での見解を次のように示した。

1.賃金に関わる要求について
民間企業においては、新型コロナウイルス感染症の影響により、業況判断の先行きが不透明となっており、人事院としても、今後の景気や賃金の動向を注視していきたいと考えている。いずれにしても、月例給、一時金ともに、情勢適応の原則に基づき、民間準拠により適正な給与水準を確保するという基本姿勢に立った上で、職員団体の皆さんの意見も聴きながら適切に対処していくということが基本となる。
民間の退職金及び企業年金の実態調査のスケジュールについては、10月1日から調査を開始し、調査期間の末日は、従来11月30日までを予定していたが、調査対象企業から、新型コロナウイルス感染症の拡大防止のための出勤回避をしており、対応する人手が不足していることなどから、同日までの回答は難しい旨の連絡が複数存すること等を踏まえ、調査期間の末日を12月28日へ変更することとした。
現時点において、その後の具体的なスケジュールは未定であるが、前回の調査では、平成28年10月1日から調査を開始し、平成29年4月19日に結果を公表したところである。
2.新型コロナウイルス感染症に関わる要求について
新型コロナウイルス感染症への対応については、これまでも人事制度の面から様々な措置を行ってきたところ、今後とも、感染状況等を注視しつつ、必要な対応を行ってまいりたい。
3.労働時間、休暇及び休業等に関わる要求について
国家公務員の長時間労働を是正することは重要であり、人事院は、引き続き、特例業務や他律部署の範囲、医師による面接指導の徹底、業務見直しを通じた超過勤務の縮減、手当の適正な支給について指導し、各府省の組織全体の取組も促進するなど、その役割を適切に果たしてまいりたい。
妊娠、出産、育児等と仕事の両立支援のための措置については、本年10月28日に、措置要綱(案)をお示しし、11月4日に措置要綱(案)に対する御質問・御意見を御提出いただき、11月11日に回答をお送りしたところ。措置要綱(案)のとおり、人事院規則等の改正を行い、12月1日に公布することとした。なお、施行は来年1月1日を予定している。
「テレワーク等の柔軟な働き方に対応した勤務時間制度等の在り方についての検討を行うための有識者による研究会」について、まさに準備段階である。
4.雇用と年金の確実な接続について
定年の引上げが円滑に行われるよう、人事院規則で定める事項等について検討・調整を行うなど、必要な準備を行っているところ。できる限り早く措置したいと思っている。令和4年2月頃までの公布を予定しており、その前には、人事院規則の内容をお示しできるものと考えている。
5.女性公務員の労働権確立に関わる要求について
公務における女性の採用・登用の促進は重要な課題であり、人事院としても、政府の取組と連携しつつ、女性の国家公務員志望者の拡大に向けた広報活動や女性の活躍支援のための研修の充実、勤務環境の整備等により、各府省の取組を支援してまいりたい。
6.福利厚生等に関わる要求について
ハラスメントの防止に関しては、各府省における防止対策の実施状況の把握・指導、ハラスメント相談員セミナーの開催等により、各府省の防止対策を支援するとともに、苦情相談等においても人事院の役割を適切に果たしていきたい。
7.人事評価制度に関わる要求について
人事評価制度の改正を踏まえた昇任・昇格、昇給等の基準の改正については、当該制度の改正後、速やかに人事院規則等の改正を行えるよう、検討を進めているところ。職員団体の皆さんの意見も聴きながら検討を行ってまいりたい。
8.非常勤職員制度等に関わる要求について
非常勤職員の給与については、本年7月、期末手当・勤勉手当に相当する給与について、非常勤職員の給与に関する指針を改正したところであり、各府省を指導していきたい。
非常勤職員の休暇については、妊娠、出産、育児等にかかわる休暇の新設、有給化を行うこととしたところであり、今後とも、民間における取組の動向を注視しつつ、必要に応じて検討を行ってまいりたい。

 回答を受け、高柳副事務局長は両立支援に関わって、「出生サポート休暇について、休暇を取得しやすい職場環境の整備、特に、プライバシーの配慮を徹底するよう各府省を指導していただきたい。一方、勧告期の職員福祉局長会見において、育児休業等に係る非常勤職員についての期間要件の緩和に関して、私どもより、『国会の状況によっては、その部分だけ抜き出し、人事院規則の改正によってのみ措置することも可能だと思うが、どう考えるか』と問うたところ、局長から、『法律改正が円滑に行われ成立した後に、法改正を受けた規則改正の中で措置していく。民間の改正育児休業法において、期間要件の緩和は来年4月に施行されることになっていることも含め、国会における審議状況等を踏まえて、その時点において適切に対応していきたい』との回答があった。回答いただいた対応方針に関して、現下の国会の状況を踏まえて、現時点で何か変更等はあるか」と見解を求めた。
 これに対して好岡審議官は「育児休業法については、改正法案がいまだ国会に提出されておらず、その審議スケジュールも見通せないため、現時点で、勧告期の回答以上にお答えできる状況にはない」と回答した。
 さらに、高柳副事務局長が「人事院は、意見の申出及びその説明において、育児休業法の改正が必要な事項と人事院規則で措置される事項を区別した上で、それぞれ実施時期を表明している。このうち、非常勤職員の育児休業・介護休暇等の期間要件の緩和については、育児休業法の改正を待つことなく実施可能と思われるので、勧告時に人事院が表明した通り、民間に遅れることなく令和4年4月1日に実施するということであれば、その旨措置すべきなのではないか」と問うたところ、好岡審議官は「ご意見は承った。そういったご意見があることは、担当部局と共有しておく」と回答した。

 続けて、交渉委員から、初任給の俸給表水準について抜本的な見直しを含めた対応を行うこと、福祉職、医療職の俸給表について民間の状況を踏まえた対応を行うこと、不妊治療休暇について地方自治体では条例改正が必要とされる場合もあり1月1日施行を見送らざるを得ない実態もあることから人事院規則の早急な改正を行うことについて要望があった。また、女性が多数を占める職場において短時間育児休暇を取得できない実態等があることから、定員のあり方について内閣人事局とも連携をして検討を進めること、非常勤職員の期末・勤勉手当の支給にあたって各府省の実態把握をすることを求めた。
 これらを受け、好岡審議官は「それぞれ意見を承った。担当に共有をさせていただきたい」と回答した。
 
 最後に高柳副事務局長が「人勧の取り扱いについて申し上げたとおり、人事院におかれては、人事行政に関する中立・第三者機関として、今後も政府にしっかりと意見を言っていただくこと、一方で、私どもの意見も十分踏まえながら、働きやすい公務職場づくりに向けて最大限の努力をはかっていただくことを求めておく」と要請し、交渉を終えた。


<内閣人事局との交渉経過>
 内閣人事局への提出交渉では、内閣人事局から松本内閣審議官らが対応した。要求提出にあたり、冒頭、高柳副事務局長は次のとおり述べた。

先般政府は、本年の人事院勧告について、勧告通りのボーナス引き下げを決定する一方で、コロナ禍による経済への影響を念頭に、本年分の削減額については、来年6月の一時金において調整することを決定した。このこと自体極めて異例の措置であり、いくつかの課題があると考えるが、そのことはともかく、あらゆる側面において傷んだ国民生活の改善・回復に向け、賃金を含む経済対策など各種方策が採られる必要がある。
よって、本年の要求においては、「コロナ後」も見据えつつ、積極的な賃金の引き上げを求めていきたい。公務・公共職場では、感染症対策や多発する自然災害など、想定を超える、極めて厳しい環境のもと限られた人員での対応が求められており、それらの奮闘に応えるためにも、特に、賃金や労働環境の抜本的な改善、あるいは「もしも」の時にも対応できる体制整備と人員の確保などが必要である。
また、従前より、働き方改革や男女共同参画を始めとする働きやすい職場づくりが求められてきたところであるが、これらは改革の途上であり、両立支援やハラスメント防止など、引き続き働きやすい職場づくりを求めていく。

 その上で、具体的な要求項目のポイントについて次のとおり説明した。

〇賃金に関わる事項
コロナからの回復をめざした経済対策が必要であるということは先般政府自らが打ち出され、連合も来年の春闘において、定期昇給とベア相当分として計4%程度の賃上げを求める方針を掲げているところ。よって、私どもとしては、今申し上げたとおり、積極的な賃金の引上げが必要だと考えている。いずれにしても、人事院勧告の取り扱い・給与法の改正等については、引き続き連絡会との間で前広な情報提供と十分な協議を行うよう予め求めておく。
〇労働時間、休暇及び休業、人員確保等について
労働時間の短縮について、この間、超過勤務手当の全額支給がはかられてきたが、重要なことは実効性ある超過勤務の縮減策である。各府省任せにせず、内閣人事局として各府省への指導を強化していただきたい。
職員は今、感染症対策や頻発する自然災害への対応など、ギリギリの体制の中で職務に従事しているところである。よって、危機管理の面からも、「もしも」の時にも対応できる体制の整備および必要な人員の確保などを強く求める。
人事院の意見の申出を踏まえた育休法の改正については、来年の通常国会での対応になるものと考えているが、いずれにしても、民間に遅れることなく、法改正の作業を進めていただきたい。その際、法案の提出時期や内容など、前広に私どもに情報提供していただき、適宜協議を行うことを求める。
〇人事評価制度について
人事評価制度について、内閣人事局の作業として、今月末目途で通知案に関する各省協議が行われるものと承知しているが、現在の作業状況等をご教示いただきたい。いずれにしても、来年10月の評語区分の見直しに向けた通知等の改正や、マニュアル等の整備については公務員連絡会と十分協議をするよう求めておく。
〇雇用と年金の接続について
人事院・内閣人事局による、本年の職員の再任用に関する調査において、行(一)適用職員の場合、昨年60歳で定年退職した職員の61.1%が短時間勤務となっているが、その13.7%は、本人の希望に反し定員の事情等によって短時間勤務とならざるを得なかったことが明らかになった。2023年度からの定年の段階的引き上げを前に、フルタイム再任用のさらなる拡大の取組が必要であり、内閣人事局として責任を持った環境整備を求めておく。
〇非常勤職員制度等について
非常勤職員の給与決定に関する指針が本年改正され、職務や勤務形態が常勤職員に類似する非常勤職員の一時金について、初めて常勤職員と同じ支給月数を基礎とすることが明文で規定されたものと承知している。このことを踏まえ、予算確保を始め、政府として責任をもって措置するよう求めておきたい。

 続けて、交渉委員からは定員管理について現場実態を踏まえた課題、勤務間インターバル制度について導入後の制度の具体化を訴え、改善を求めた。

 これらに対して、松本内閣審議官は「皆様方の要求の趣旨は、しっかりと承った。現在、人事評価制度の改善に関しては、通知の発出に向けて準備を進めているところ。通知案については、近日中に皆様方の御意見も伺いつつ、作業を進めてまいりたい。
また、定員について、定年引上げにあたって新規採用ができるよう措置を進めているところ。いずれにせよ、本日いただいたご意見、要求事項については、検討させていただいた上で、しかるべき時期に回答させていただく」と回答した。
 
 最後に、高柳副事務局長は「昨今、国家公務員の志願者が減少しているなどともされているが、内閣人事局におかれては、まさしく国家公務員全体の使用者機関として、公務職場を魅力あるものとし、職員が安んじて職務に従事することができるよう、最大限の努力をはかっていただきたい」と要請し、この日の交渉を終えた。


資料1.人事院への基本要求書

2021年11月26日

人事院総裁
 川 本 裕 子 様

公務員労働組合連絡会
議 長  武 藤 公 明
(公 印 省 略)

2022年度賃金・労働条件に関わる基本要求について

 新型コロナウイルス感染症は、ワクチン接種の進捗に応じた収束の兆しが見え始めつつも、第6波の到来による感染の再拡大が予測されるなど、予断を許さない状況が続いています。一方で、世界経済は、ばらつきはあるものの回復に向かいつつあり、日本経済も、内閣府の年央試算によれば、2021年中にGDPが感染拡大前の水準に回復、2022年度のGDPは過去最高となることが見込まれています。
 このようなウィズコロナ、アフターコロナにおける経済の回復局面において、「人への投資」を通じた積極的な賃金の底上、まさに分配構造の転換が求められています。
国民生活の基盤を担う公務・公共サービスの現場では、新型コロナウイルス感染症対策や近年多発する大規模な自然災害への対応など、職員の高い使命感と責任をもった懸命の奮闘が続いています。一方、職場では、テレワークの推進をはじめとする働き方改革にも積極的に取り組んでいるものの、長時間労働の蔓延など厳しい勤務環境は改善されておらず、必要な要員と適切な労働条件等の確保が不可欠です。その意味で、人事院が、労働基本権制約の代償機関であることを含め職員の利益保護に向けた役割を十全に果たすことが求められています。
 貴職におかれましては、こうした点を十分に認識され、下記の基本要求事項の実現に向けて最大限努力されるよう強く申し入れます。

一、賃金に関わる事項
1.給与水準及び配分等について
(1) 給与水準の確保
 ① 職務の責任や仕事の内容に相応しい社会的に公正な月例給与水準を確保することとし、職員のゆとり・豊かな生活を保障すること。
 2022年度の給与勧告においては、生活水準を改善するため、初任給をはじめ職員の賃金水準を引き上げること。
 ② 期末・勤勉手当については、民間実態を精確に把握し、支給月数を引き上げること。
(2) 公正・公平な配分
  配分については、別途人事院勧告期に提出する要求も含め、公務員連絡会と十分交渉し、合意に基づき行うこと。
(3) 社会的に公正な官民給与比較方法の確立
  当面、現行の比較企業規模を堅持することとし、社会的に公正な仕組みとなるよう改善すること。また、一時金についても、月例給と同様に、同種・同等比較を原則とするラスパイレス比較を行うこと。

2.諸手当について
(1) 諸手当について、社会経済情勢の変化、職員の職務や生活実態を踏まえて改善することとし、公務員連絡会と十分、交渉・協議し、合意に基づいて進めること。
(2) 1か月当たり45時間を超え60時間以内の超過勤務に対する手当の割増率の引上げを行うこと。なお、超過勤務手当の全額支給の徹底について必要な対応をはかること。
(3) 退職給付制度の調査結果の公表、人事院の見解の表明にあたっては、公務員連絡会と十分に交渉・協議し、合意に基づいて進めること。

3.再任用職員について
再任用職員の給与制度等については、2023年度からの定年の段階的引上げも踏まえ、その経済的負担、定年前職員との均衡を考慮して改善することとし、公務員連絡会との十分な交渉・協議、合意に基づいて進めること。

二、新型コロナウイルス感染症に関わる事項
 今後の感染状況等の推移を注視し、職員の感染防止、健康確保のため、公務員連絡会との交渉・協議を踏まえて、適宜、必要な措置を講じること。

三、労働時間、休暇及び休業等に関わる事項
 ワークライフバランスを実現するため、公務職場における「働き方改革」等を次のとおり進めること。
1.年間労働時間の着実な短縮について
 公務における年間総労働時間1,800時間体制を確立することとし、次の事項を実現すること。
(1) 超過勤務手当の全額支給を踏まえ、改めて、実効性ある超過勤務縮減策を講じるよう主体的な役割を果たすこと。
(2) 各府省の「上限を超えた超過勤務の状況」に関わる整理・分析・検証等の結果も踏まえ、特例業務の扱いについて必要な見直しをはかること。
(3) 「他律的業務の比重が高い部署」の指定にあたっては、各府省における統一性の確保を最低として、各府省への指導を強化すること。

2.休暇・休業制度の拡充等について
 ライフステージに応じ、社会的要請に応える休暇・休業制度の拡充などについて、次の事項を実現すること。
(1) 夏季休暇の日数を増やすこと。
(2) リフレッシュ休暇を新設すること。
(3) 産前休暇を8週間、多胎妊娠の場合の産後休暇を10週間に延長すること。また、妊娠障害休暇を新設すること。
(4) 妊娠、出産、育児等と仕事の両立支援のための人事院規則等の改正について、公務員連絡会との交渉・協議を踏まえて措置すること。
(5) 不妊治療に関する休暇については、休暇を取得しやすい職場環境の整備をはかること。とくに、プライバシーの配慮を徹底するよう各府省を指導すること。
(6) 育児や介護に関わる両立支援制度の円滑な活用をはかるとともに、育児短時間勤務、育児時間等について、子の年齢要件等取得要件を緩和し、その在り方を改善すること。
(7) 必要な休暇・休業制度が、非常勤職員を含め、男女ともにより活用できるよう、制度の改善や環境整備に努めること。とくに、家族介護を理由とした離職を防止するため、介護休業制度を整備すること。
(8) 休暇の取得手続きについて、公務員の休暇権をより明確にする形で抜本的に改善すること。

3.勤務時間制度等の見直しについて
(1) 公務における本格的な短時間勤務制度の導入に向けて、公務員連絡会と十分交渉・協議すること。
(2) 公務において、「勤務間インターバル」を確保すること。
(3) 「テレワーク等の柔軟な働き方に対応した勤務時間制度等の在り方についての研究会」の議論について、公務員連絡会と共有し、課題に応じて交渉・協議を行うこと。

四、雇用と年金の確実な接続
 定年の段階的引上げに関する人事院規則等について、公務員連絡会と十分に交渉・協議し措置すること。

五、女性公務員の労働権確立に関わる事項
(1) 公務における女性の労働権確立を人事行政の重要課題と位置づけ、人事院としての役割を果たすこと。
(2) 次世代育成支援対策推進法、女性活躍推進法及び「国家公務員の女性活躍とワークライフバランス推進のための指針」等に基づく各府省の「行動計画」「取組計画」等の着実な実行に向け、積極的な役割を果たすこと。
(3) 第5次男女共同参画基本計画のもと、女性が働き続けるための職場環境の整備に努め、女性の採用・登用・職域拡大をはかるとともに、メンター制度の実効性を確保すること。

六、福利厚生施策等に関わる事項
(1) 公務員の福利厚生を勤務条件の重要事項と位置付け、職員のニーズ及び民間の福利厚生の正確な実態把握を行い、その抜本的な改善・充実に向けた提言を行うこと。
(2) 福利厚生の重要施策であるレクリエーションについて、事業が休止されている実態を重く受け止め、その理念の再構築と予算確保や事業の復活に努めること。
(3) 「職員の心の健康づくりのための指針」等に基づいた心の健康づくり、カウンセリングや「試し出勤」など復職支援施策の着実な推進をはかること。
(4) ハラスメントの防止について、一層有効な対策を着実に実施すること。とくに、パワー・ハラスメントの防止対策については、人事院規則10-16等に基づいた各府省の取組状況を把握するとともに、相談員の専門性の向上や相談員が適切に対応できる体制整備に向けて、必要な指導を行うこと。また、苦情相談、紛争解決における人事院の役割を着実に果たすための体制整備等をはかること。

七、人事評価制度に関わる事項
(1) 中立・公正な人事行政や勤務条件を所管する立場から、人事評価制度の実施状況及び評価結果の活用状況を随時検証し、必要に応じて指導、改善措置等を講じること。
(2) 「人事評価の基準、方法等に関する政令」等の改正を踏まえた昇任等の要件の見直しについては、公務員連絡会との交渉・協議を踏まえて措置すること。

八、非常勤職員制度等に関わる事項
 非常勤職員制度等の抜本的改善をめざし、同一労働同一賃金をはじめとする均等待遇の原則を一層推進するとともに、国に採用される当該職員の給与水準等の統一性・公平性の確保をはかるため、次の事項を実現すること。
(1) 非常勤職員を法律上明確に位置付け、勤務条件等について常勤職員に適用している法令、規則等を適用すること。
(2) 期間業務職員制度について、当該職員の雇用の安定と待遇の改善となるよう、適切な運用に努め、必要な改善措置を講じること。
(3) 非常勤職員の妊娠、出産、育児等と仕事の両立支援に関わる休暇の新設、有給化について、公務員連絡会との交渉・協議を踏まえて措置すること。
(4) 非常勤職員の休暇については、引き続き公務員連絡会との検証の場における議論も踏まえ、働き方改革等の観点からの有給化の拡大等、休暇制度を改善すること。

九、障害者雇用に関わる事項
 公務職場における障害者雇用について、引き続き、法定雇用率の達成を遵守するとともに、雇用される障害者が、無理なく、かつ安定的に働くことができるよう、人事院としての役割を適切に果たすこと。

十、その他の事項
 公務遂行中の事故等の事案に関わる分限については、欠格による失職等に対する特例規定を設けること。

以上


資料2.内閣人事局への基本要求書

2021年11月26日

内閣総理大臣
 岸 田 文 雄 様

公務員労働組合連絡会
議 長  武 藤 公 明
(公 印 省 略)

2022年度賃金・労働条件に関わる基本要求について

 
 新型コロナウイルス感染症は、ワクチン接種の進捗に応じた収束の兆しが見え始めつつも、第6波の到来による感染の再拡大が予測されるなど、予断を許さない状況が続いています。一方で、世界経済は、ばらつきはあるものの回復に向かいつつあり、日本経済も、内閣府の年央試算によれば、2021年中にGDPが感染拡大前の水準に回復、2022年度のGDPは過去最高となることが見込まれています。
 このようなウィズコロナ、アフターコロナにおける経済の回復局面において、「人への投資」を通じた積極的な賃金の底上、まさに分配構造の転換が求められています。
国民生活の基盤を担う公務・公共サービスの現場では、新型コロナウイルス感染症対策や近年多発する大規模な自然災害への対応など、職員の高い使命感と責任をもった懸命の奮闘が続いています。一方、職場では、テレワークの推進をはじめとする働き方改革にも積極的に取り組んでいるものの、長時間労働の蔓延など厳しい勤務環境は改善されておらず、必要な要員と適切な労働条件等の確保が不可欠です。
 貴職におかれましては、こうした点を十分に認識され、下記の基本要求事項の実現に向けて最大限努力されるよう強く申し入れます。

1.雇用と賃金・労働条件について
(1) 公共サービス基本法に基づいて良質な公共サービスが適正かつ確実に実施されるよう、臨時・非常勤職員を含めたすべての公務員及び公共サービス従事者の社会的に公正な賃金・労働条件と人件費予算を確保すること。
(2) 職務の責任や仕事の内容に相応しい社会的に公正な給与水準を確保することとし、職員のゆとり・豊かな生活を保障すること。2022年度においては、生活水準を改善するため、人事院勧告の取扱いを含めて、公務員連絡会との交渉・協議に基づき職員の賃金水準を引き上げること。また、使用者の責任において、独立行政法人等を含めた公務員給与の改定に必要な財源を確保すること。
(3) 公務員給与のあり方に対する社会的合意を得るよう、使用者責任を果たすこと。

2.新型コロナウイルス感染症への対応について
 国民生活の安心と安全を支える基盤となる公務公共サービスに従事する職員の勤務条件等の確保と職場環境の整備をはかること。

3.労働時間、休暇及び休業、人員確保等について
 ワーク・ライフ・バランスを実現するため、公務職場における「働き方改革」等を次のとおり進めること。
(1) 公務における年間総労働時間1,800時間体制の確立と、ライフステージに応じ、社会的要請に応える休暇・休業制度の改善・拡充などを実現すること。
(2) 政府全体として超過勤務縮減のための体制を確立し、使用者の責務として各府省における取り組み状況を把握し必要な措置を講じるとともに、真に実効性のある超過勤務の縮減策を直ちに実施すること。
(3) 新型コロナウイルス感染症、大規模な自然災害への対応等も踏まえた適切な人員を確保すること
(4) 公務における本格的な短時間勤務制度の具体的検討に着手すること。
(5) 公務において、「勤務間インターバル」を確保すること。
(6) 「男性国家公務員の育休等取得推進」については、人事院が本年8月に行った「国家公務員の育児休業等に関する法律の改正についての意見の申出」を踏まえて、必要な法改正を行うこと。

4.女性公務員の労働権確立について
(1) 公務における女性の労働権確立を人事行政の重要課題と位置づけ、政府全体として積極的に取り組むこと。
(2) 次世代育成支援対策推進法、女性活躍推進法及び「国家公務員の女性活躍とワークライフバランス推進のための取組指針」等に基づく各府省の「行動計画」「取組計画」等の着実な実施に向け、積極的な役割を果たすこと。
(3) 第5次男女共同参画基本計画のもと、女性の採用・登用・職域拡大、メンター制度の実効性確保に向け、使用者として必要な取組を着実に実施すること。

5.福利厚生施策等について
(1) 公務員の福利厚生を勤務条件の重要事項と位置付け、職員のニーズ及び民間の福利厚生の正確な実態把握に基づき、その抜本的な改善・充実をはかること。
(2) 「国家公務員健康増進等基本計画」の着実な実施をはかるため、政府全体としての実施体制を確立し、使用者としての責任を明確にして積極的に対応すること。
(3) 心の健康づくりについては、引き続きストレス原因の追究と管理職員の意識改革に努めることとし、カウンセリングや「試し出勤」など復職支援施策を着実に実施すること。
(4) 2022年度の予算編成に当たっては、健康診断の充実など、職員の福利厚生施策の改善に必要な予算を確保すること。
(5) 福利厚生の重要施策であるレクリエーションについて、事業が休止されている実態を重く受け止め、その理念の再構築と予算確保や事業の復活に努めること。
(6) ハラスメントの防止について、一層有効な対策を着実に推進すること。とくにパワー・ハラスメントの防止対策については、人事院規則10-16に基づき政府全体で取り組むこと。

6.人事評価制度について
(1) 本年9月の「人事評価の基準、方法等に関する政令」等の改正を踏まえた人事評価制度が、円滑かつ公正に運用されるよう、引き続き制度の周知や評価者訓練の徹底等に努めること。
(2) 来年10月から実施される評語区分の見直しに向けた通知等の改正や、マニュアル等の整備については公務員連絡会と十分協議をすること。

7.雇用と年金の接続について
(1) 定年の段階的引上げが完成するまでの間、2013年の閣議決定に基づき、フルタイムを基本に職員の希望に応じた再任用を実現すること。
(2) 事務・事業の円滑な遂行とディーセントワークを保障するとともに、当面、職員の希望に応じた再任用を保障するため、必要な定員を確保すること。また、2023年度からの定年の段階的引上げに向けた環境整備をはかるため、定員の弾力的な取扱いなどについて公務員連絡会と協議すること。

8.非常勤職員制度等について
 非常勤職員制度の抜本的改善をめざし、同一労働同一賃金をはじめとする均等待遇の原則を一層推進するとともに、国に採用される当該職員の給与水準等の統一性・公平性の確保をはかるため、次の事項を実現すること。
(1) 非常勤職員制度について、公務員連絡会が参加する検討の場を設置し、政府全体として解決に向けた取組を推進すること。
(2) 非常勤職員を法律上明確に位置付け、勤務条件等について常勤職員に適用している法令、規則等を適用すること。
(3) 「非常勤職員給与決定指針」の改正を踏まえ、期末手当及び勤勉手当に相当する給与の予算の確保など必要な措置を講じること。また、非常勤職員の給与改定について、政府全体として統一的に対応することとし、常勤職員と同様に措置すること。
(4) 期間業務職員制度について、当該職員の雇用の安定と待遇の改善となるよう、適切な運用に努め、必要な改善措置を講じること。

9.障害者雇用について
 公務職場における障害者雇用について、引き続き、法定雇用率の達成を遵守するとともに、雇用される障害者が、無理なく、かつ安定的に働くことができるよう、政府としての役割を適切に果たすこと。

10.公務員制度改革について
 ILO勧告に則り、国家公務員制度改革基本法に基づく自律的労使関係制度を確立するため、国家公務員制度改革関連四法案(2011年6月3日国会提出)における措置について、国家公務員法等改正法案の附帯決議(2014年3月12日衆議院内閣委員会及び同年4月10日参議院内閣委員会)に基づく、公務員連絡会との合意により実現すること。

11.その他
 国が民間事業者等に業務委託や入札等により事務事業の実施を委ねる場合においては、公正労働基準の遵守を必要条件とすること。

以上