2023春季要求で書記長クラスが内閣人事局と交渉-3/15
公務員連絡会書記長クラス交渉委員は、3月15日10時30分から、内閣人事局人事政策統括官との交渉を実施し、2023春季要求に対する現段階における回答を引き出した。
冒頭、森永事務局長が現段階の回答を求めたのに対し、窪田人事政策統括官は次のとおり答えた。
1.2023年度賃金について
国家公務員の給与を社会一般の情勢に適応させるとの原則の下、人事院勧告制度を尊重することが基本姿勢と考えている。
給与改定については、人事院勧告も踏まえ、国政全般の観点に立って総合的に検討を行った上で方針を決定してまいりたいと考えており、その際には、皆様とも十分に意見交換を行ってまいりたい。
2.非常勤職員等の雇用、労働条件の改善について
職務内容等が常勤職員に類似する非常勤職員については、平成29年5月に各府省間での申合せに沿って期末手当や勤勉手当に相当する給与について、確実な支給を進めてまいりたい。また、昨年11月の給与法改正の公布に際し、改めて同申合せの周知を図るとともに、基本となる給与の遡及改定を行うなど、改定時期についても引き続き改善に努めるよう、各府省に求めたところであり、常勤職員の給与改定に係る取扱いに準じて改定することを基本とするよう、同申合せの改正を検討中である。
皆様とも、引き続き意見交換を重ねつつ、各府省において申合せに沿った処遇改善が一層進むよう、人事院と連携しつつ、必要な取組を進めてまいりたい。
3.新型コロナウイルス感染症への対応について
これまで人事院とも連携しながら、各府省に対しテレワークや時差通勤の活用により、感染拡大防止に向けた取組を依頼してきたところ。テレワークや時差通勤の活用などは「柔軟な働き方」の観点からも引き続き重要であり、関係機関と連携しながら、適切に対応してまいりたい。
4.労働時間、休暇及び休業等について
超過勤務縮減のため、各府省等は、「国家公務員の女性活躍とワークライフバランス推進のための取組指針」等に基づき、ルーティン業務の廃止・効率化・デジタル化やテレワークで完結できる業務フローの構築、マネジメント改革のための取組など、各種の取組を行っているところである。
また、勤務時間の状況の客観的把握については、令和4年度における人事管理運営方針等に基づき、地方支分部局等でも業務に応じた勤務形態の多様性に配慮しつつ、最も効果的な客観把握を計画的に導入することとしている。今後とも、勤務時間などの基準を定めている人事院と連携して超過勤務の縮減に取り組んでまいりたい。
フレックスタイム制および休憩時間制度については、人事院主催の「テレワーク等の柔軟な働き方に対応した勤務時間制度等の在り方に関する研究会」において柔軟化が提言され、本年1月に改正規則等が公布されたことを踏まえ、導入後の制度の利用を促進してまいりたい。加えて、当該研究会において、勤務間インターバル確保の方策等についても検討されているところであり、報告書が取りまとめられた後、当該報告書を受けた人事院の検討を踏まえ、内閣人事局としても必要な対応を講じてまいりたい。
5.障害者雇用について
「公務部門における障害者雇用に関する基本方針」に基づき、障害のある職員が意欲と能力を発揮し、活躍できる環境の整備に取り組んできたところ。
引き続き、関係機関と連携しながら、各府省において障害者雇用が適切に進むよう、取り組んでまいりたい。
6.女性公務員の労働権確立について
男女双方のワークライフバランス及び女性職員の活躍推進については、女性活躍推進法及び「第5次男女共同参画基本計画」を踏まえ、「国家公務員の女性活躍とワークライフバランス推進のための取組指針」に基づき、引き続き、各府省の取組のフォローアップ等により、男性職員の育休取得を一層推進するとともに、男女問わず全ての職員のワークライフバランスを実現し、女性活躍の動きを更に加速してまいりたい。
7.定年の段階的引上げに伴う各種施策について
定年の段階的な引上げ期間中に、定年退職者が再任用を希望する場合には、当該職員を公的年金の支給開始年齢に達するまでの間、再任用するものとしている。
また、定年引上げ期間中においては、令和6年度から2年に1度、定年退職者が発生しないことによる新規採用への影響を緩和するための措置を行うこととする。
8.福利厚生施策の充実について
「国家公務員健康増進等基本計画」等に基づき、取組を着実に進めているところ。引き続き、各府省における基本計画の実施状況を把握し、必要な措置が講じられるよう取り組んでまいりたい。
9.公務員制度改革について
自律的労使関係制度については、多岐にわたる課題があることから、皆様と誠実に意見交換しつつ、慎重に検討してまいりたいと考えている。
回答を受けて、森永事務局長は次のとおり、人事政策統括官の見解を質した。
(1) 第211回通常国会の施政方針演説において岸田総理は、構造的な賃上げの項目において、「まずは、足下で、物価上昇を超える賃上げが必要です」とした上で、「政府は、経済成長のための投資と改革に、全力を挙げます。公的セクターや、政府調達に参加する企業で働く方の賃金を引き上げます」としている。勧告制度のもとでの対応となることが前提だが、賃上げの必要性について公務員が除外されるものではないと考える。政府として、2023春季生活闘争の情勢に関する認識如何。また2023年度賃金、給与改定について、これまでの政府の基本的な姿勢は何ら変わりないことを改めて確認するが、見解如何。
(2) 非常勤職員の待遇改善について、平成29年5月の申し合わせの改正を検討中とのことだが、昨年の給与法改正法案の国会審議を踏まえた対応であり、政府の姿勢を評価したい。改正に向けたスケジュール感含めて、この間実施した調査の状況なども含めて詳細を明らかにされたい。
(3) 長時間労働の是正に向けては、河野大臣の強いリーダーシップにより、少しずつではあるが改善が図られつつあると感じている。一方、私たちが昨年10月に実施した「仕事と生活に関する調査」によれば、超過勤務手当の支払い状況について不払いがあるとの回答が国家公務員で13.5%あり、その理由として、職場で申請しにくい雰囲気があることや超過勤務の上限が決められていることなどがあげられており、潜在的な不払いが未だ存在している実態にある。
今月末までには、令和5年度における人事管理運営方針の決定が行われると承知している。組合としても、各職場において長時間労働の是正に向けた取組を強化していくが、真に実効性ある超過勤務縮減の取組に関わってどのような方針が示されるのか、現在の検討状況及び新たな取組などあれば明らかにされたい。
(4) 子ども家庭庁が本年4月に発足するが、先頃、霞が関における働き方改革のトップランナーになることを目指すとして、「こども家庭庁における働き方改革の基本方針及び目標について」が公表された。そのなかで、健康保持のための勤務時間管理や休暇取得に関しても、具体の達成目標と行動目標が定められている。このようなある意味で先駆的な取組に対する政府の見解、及び、今後、各府省庁でも同様の取組が行われることを期待しつつ、政府として積極的な働きかけなどを行うべきと考えるが認識如何。
(5) ここ数年、国家公務員の定員については、削減抑制傾向から若干の増加傾向にはあるものの、私たちの先ほど申し上げた調査では、職場の要員状況に関して不満であるとの回答が国家公務員で58.0%となっている。今後、令和13年度までに定年年齢が段階的に引き上げられ、職場の状況の変化も想定されるなかで、働き方を含めた職場全体のモチベーションが維持できるように、定員合理化目標数の見直しをはかるなど大きく転換すべきと考えるが見解如何。
これに対して、窪田人事政策統括官は次のとおり回答した。
(1) 物価が上昇している状況については、認識している。民間の賃金水準が改善されれば、それを受けて国家公務員の給与水準の改善も期待できると考えている。
いずれにせよ、政府としては、一貫して人事院勧告尊重という姿勢であり、政府の姿勢はこれまでと変わっていない。
(2) 各府省等の非常勤職員の給与改定時期に関する実態把握については、現在、各府省等からの回答内容を精査しているところであるが、期間業務職員について、概ね6割の府省等が、昨年4月に遡及して給与改定を行ったものと承知している。
平成29年5月24日人事管理運営協議会幹事会申合せには、「当面は、遅くとも一般職の職員の給与に関する法律等の改正に係る法律が施行された日の属する月の翌月の給与から改定する」との表現があるが、それを削除して令和5年度から実施する方向で現在調整を行っているところ。
(3) 令和5年度における人事管理運営方針については、年度末までに策定すべく調整を進めているところ。ご指摘の長時間労働の是正については、引き続き非常に重要な問題と認識。このような認識の下、改定に向けた作業を進めてまいりたい。
(4) 本年4月に発足するこども家庭庁の取組は非常に意欲的なものと考えている。取組状況を注視した上で、各府省等への展開など必要な措置について検討してまいりたい。
なお、勤務間インターバル確保の方策については、人事院主催の「テレワーク等の柔軟な働き方に対応した勤務時間制度等の在り方に関する研究会」において検討されているところであり、当該研究会の議論を踏まえ、内閣人事局としても対応してまいりたい。
さらに、休暇取得については、「国家公務員の女性活躍とワークライフバランス推進のための取組指針」に基づき、各府省において、職員による年間の取得目標の設定や計画表の活用に取り組むこととしている。
(5) 国民のニーズを踏まえて、新たな行政需要に的確に対応していくためには、既存の業務を不断に見直し、定員の再配置を推進していくことが重要である。
その上で、新たな行政課題や既存業務の増大に対応するため、各府省官房等から現場の実情を聴取しつつ必要な行政分野に必要な増員を行っているところ。
引き続き、既存業務の見直しに積極的に取り組みながら、内閣の重要政策に適切に対応できる体制の構築を図ってまいりたい。
最後に、森永事務局長は「今週月曜日からマスク着用は基本的に個人の判断になったほか、5月8日には、新型コロナウイルス感染症の類型見直しが行われることとなり、ウィズコロナのもとで、働き方改革をさらに進めていく必要があると認識している。職員の奮闘に応えるためにも、要求に沿った前向きな検討を重ねて、23日には河野大臣から直接回答をいただきたい」と強く要請し、交渉を終えた。