政府、人事院から春の段階の回答引き出す
-公務員連絡会は回答を確認し、人勧期闘争への決意固める「声明」を発出-
公務員連絡会は3月22日に委員長クラス交渉委員が川本人事院総裁と、23日に河野国家公務員制度担当大臣と2023年春季要求に関わる交渉を行い、春の段階における最終的な回答を引き出した。(資料1、2)
公務員連絡会は、代表者会議を開催し、「これらの回答は、春季における課題認識を共有するとともに公務員連絡会の意見を聞きながら検討を進めていく姿勢を確認したものの、要求に対して明確には応えておらず、決して十分とは言えない内容である。しかし、人事院勧告を基本とする賃金・労働条件決定制度のもとで、交渉過程において、各課題の現段階における関係当局の考え方や進捗状況を明らかにさせることができたことを踏まえ、春の段階における交渉の到達点と受け止め、今後、人事院勧告期に向け闘争態勢を堅持・強化していく」との声明(資料3)を確認した。
また、24日を基本に全国統一行動を実施し、今後の取組に対する決意を固める観点から、各構成組織は、その実情に応じた行動を実施することを決定した。
人事院総裁、国家公務員制度担当大臣との交渉経過は次のとおり。
<人事院総裁交渉の経過>
川本総裁との交渉は、3月22日16時30分から行われた。
冒頭、武藤議長は、「2月22日に、2023年の春季要求書を提出して以降、交渉・協議を積み重ねてきた。本日は、この間の交渉経過を踏まえ、総裁から春の段階の最終回答をいただきたい」として、2023春季段階の最終回答を求めたのに対して、川本総裁は、冒頭「国家公務員の皆さまの毎日の働きぶりに感謝を申し上げる。本年の民間の春闘は、今月15日の大手企業の集中回答日以降、順次明らかになっている。ここまでの状況をみると、昨年を上回る要求に対して満額回答がなされるなど、昨年を上回る賃上げがなされている状況にある。また、年間の一時金についても、昨年の実績を上回る回答が見られる。人事院は、今後、大手企業の妥結・回答状況に加えて、中小企業を含めた民間の動向を注視していきたいと考えている。本日は、皆さんからの要求等に対する現段階における人事院の考え方や取組みについて、回答させていただく」と述べたうえで、資料1のとおり回答した。
この回答に対し、武藤議長は、勧告期を視野に入れて次のとおり見解を示した。
(1) 連合の2023春季生活闘争は、国民各層からの期待が高まり、近年にないほど結果が問われる中での労使交渉となったが、3月17日時点で回答を引き出した805組合の加重平均は3.80%と、比較可能な2013年以降で最も高い水準となった。月例賃金にこだわった組合の要求と粘り強い交渉の結果であると評価できる。
このような情勢を踏まえ、本年の勧告に向けては、職種別民間給与実態調査、官民比較などを適切に行い、予期せぬパンデミックや激甚・頻発化する自然災害への対応などに現場で奮闘する全ての職員の労苦に報いるべく、適切な賃金・労働条件を確保するという人事院の責務を果たすことを強く求めておく。
(2) 「社会と公務の変化に応じた給与制度の整備(アップデート)」について、さまざま難しい問題があることは十分に承知しているが、本府省のみならず地方で働く職員にも十分に配慮し、全職員の意欲を引き出すものとなるよう、公務員連絡会との十分な交渉・協議に基づき検討を進めることを求めておく。
(3) 非常勤職員について、「非常勤職員の給与に関する指針」を改正し、常勤職員同様、月例給の給与改定時期を遡及するよう各府省に求める方向であることは評価する。引き続き、均等待遇の観点から、内閣人事局とも連携し、さらなる処遇改善を図るよう求めておきたい。
(4) 「柔軟な働き方」について、人事院の研究会で勤務間インターバルの導入などが提言される方向であることは評価したい。その上で、「柔軟な働き方」を実現する前提として、超過勤務の縮減や長時間労働の是正が極めて重要であり、その点、人事院として、各府省に対する指導も含めて、必要な対応を図っていただきたい。
最後に武藤議長は、「本日の回答は、人事院の春の段階の最終回答として受け止め、組織に持ち帰って確認したい」と述べ、春季要求をめぐる交渉を締めくくった。
<国家公務員制度担当大臣交渉の経過>
河野国家公務員制度担当大臣との交渉は、3月23日17時20分から行われた。
冒頭、武藤議長は、「2月20日に要求書を提出し、事務当局と交渉・協議を積み重ねてきた。本日は、この間の交渉経過を踏まえ、大臣から春の段階の最終回答をいただきたい」と、2023春季段階の最終回答を求めたのに対して、河野国家公務員制度担当大臣は、資料2のとおり回答した。
この回答を踏まえ、武藤議長は次の3点について要請した。
(1) 連合の2023春季生活闘争は、国民各層からの期待が高まり、近年にないほど結果が問われる中での労使交渉となったが、3月17日時点で回答を引き出した805組合の加重平均は3.80%と、比較可能な2013年以降で最も高い水準となった。月例賃金にこだわった組合の要求と粘り強い交渉の結果であると評価できる。
予期せぬパンデミックや激甚・頻発化する自然災害への対応などに現場で奮闘するすべての職員の労苦に報いるべく、人事院勧告制度の尊重を基本に、適切な賃金・労働条件を確保することを強く求めておく。
(2) 非常勤職員の処遇改善について、この間、河野大臣のリーダーシップのもと、期間業務職員の給与改定時期などにおいて前進が図られている。この点感謝申し上げるととともに、均等待遇の観点から、非常勤職員全体のさらなる処遇改善を図っていただくようお願いする。
(3) 超過勤務の縮減を含む働き方改革の推進について、この間、超過勤務手当の支給状況の改善などが図られてきたが、ご承知の通り、いわゆる「特例業務」や「他律的部署」など、職員の長時間労働についてはまだまだ問題が多い状況である。若手職員の離職や公務員志望者の減少などが明らかになる中、魅力ある公務職場を創り上げる観点からも、長時間労働の是正の取組を一層強化していただきたい。引き続き、われわれも現場から取組を強化していく。
なお、長時間労働の大きな要因の一つでもある国会対応業務について、この間、立憲民主党と国民民主党への申し入れなどを実施してきた。概ね私どもの訴えは理解されたが、国会運営のあり方など課題も多いものと認識している。引き続き、私どもとしても取組を強化していくので、河野大臣におかれては、改めて強いリーダーシップを発揮していただくようお願いする。
そのうえで武藤議長は、「最後に、春季の最終回答において、大臣からは、引き続き、労使関係に基づいて、公務員連絡会と誠意をもって話し合っていくとの決意が示されたことを確認し、本日の回答は、春の段階の政府からの最終回答として受け止め、組織に持ち帰って確認したい」と述べ、交渉を終えた。
資料1-人事院の2023春季要求に対する回答
人事院総裁回答
2023年3月22日
1.賃金の改善について
○ 人事院は、労働基本権制約の代償措置としての勧告制度の意義や役割を踏まえ、情勢適応の原則に基づき、必要な勧告を行うことを基本に臨むこととしています。
○ 俸給や一時金は、国家公務員の給与と民間企業の給与の実態を精緻に調査した上で、その精確な比較を行い、適切に対処します。
○ 諸手当は、民間の状況、官民較差の状況等を踏まえ、必要となる検討を行っていきます。
○ 再任用職員の給与は、定年前再任用短時間勤務職員等をめぐる状況を踏まえた再任用職員の給与について取組が必要と考えています。各府省における人事管理の状況を踏まえつつ、引き続きその給与の在り方について必要な検討を行っていきます。
○ 社会と公務の変化に応じた給与制度の整備については、公務における人員構成の変化や各府省の人事管理、民間における給与の状況等を踏まえつつ、制度の様々な側面から一体的に取組を進めていきます。
○ テレワークに関する給与面での対応については、光熱費・水道費等の職員の負担軽減の観点から、テレワークを行う場合に支給する新たな手当について、具体的な枠組みの検討を行っていきます。
2.労働時間の短縮、休暇等について
○ 長時間労働の是正については、先日、令和3年度の超過勤務の上限を超えた要因の整理、分析、検証の結果を公表しました。制度の適切な運用が図られるよう、引き続き、勤務時間調査・指導室の調査や各府省人事担当課長等へのヒアリングの機会を通じて、他律的な業務の比重が高い部署の指定の考え方など、必要な指導等を行っていきます。
○ 勤務時間制度の在り方については、昨年1月から学識経験者により構成する研究会を開催しています。職員団体の皆さんからの御意見も踏まえて最終報告について議論して頂き、本年度内に報告書を取りまとめて頂きたいと考えています。
また、両立支援、職員の休暇、休業等については、これまで民間の普及状況等を見ながら改善を行ってきました。
引き続き、職員団体の皆さんの御意見もお聴きしながら必要な検討を行っていきます。
3.非常勤職員の処遇改善について
○ 給与については、非常勤職員の給与に関する指針に基づく各府省の取組が進んでいます。今般、この指針を改正し、非常勤職員の給与の改定について、常勤職員の取扱いに準じて改定するよう努めることを定めました。各府省に必要な指導を行うなど、引き続き、常勤職員の給与とのバランスをより確保しうるよう取り組んでいきます。
非常勤職員の休暇については、民間の状況等を見ながら、引き続き適切に対応していきます。
4.高齢者雇用施策について
○ 定年の引上げについては、定年の段階的引上げに係る各種制度が各府省において円滑に運用されるよう、引き続き、制度の周知や理解促進を図るとともに、運用状況の把握に努め、適切に対応します。
5.障害者雇用について
○ 障害者雇用に関しては、人事院として、フレックスタイム制の柔軟化等を実現するための人事院規則等の改正や各府省が採用時や採用後に適正な運用をすることができるよう指針を発出しました。
このほか、厚生労働省と連携して、各府省における合理的配慮の事例共有などの支援を行っており、今後とも、必要に応じて適切に対応していきます。
6.女性の活躍推進について
○ 人事院としては、公務における女性の活躍推進を人事行政における重要な課題の一つと認識しています。国家公務員法に定める平等取扱の原則、成績主義の原則の枠組みを前提とした女性の採用・登用の拡大、両立支援、ハラスメント防止対策など様々な施策を行ってきています。
今後とも、各府省の具体的な取組が進むよう支援していきます。
7.健康・安全確保等について
○ 人事院は、ハラスメント防止等の措置を講じるための人事院規則等に基づき、これまで、研修教材の作成・提供や、ハラスメント相談員を対象としたセミナーの開催など、各府省に対する支援を行ってきています。
人事院としては、今後も、ハラスメント防止対策が適切に実施されるよう、各府省の相談体制や研修内容について検討を行い、必要な支援・指導を行っていきます。
また、苦情相談を含めた公平審査制度において、パワー・ハラスメント事案に取り組み、人事院の役割を果たしていきます。
○ 新型コロナウイルス感染症への対応については、先日、政府において進められている感染症法上の位置付けの変更を踏まえて、マスクの取扱いについて通知を発出しました。マスク以外の対応についても必要な検討を行っていきます。
資料2-政府の2023春季要求に対する回答
国家公務員制度担当大臣回答
2023年3月23日
○ 長時間労働の是正に関して、皆様から関係各方面に対して、国会質問通告の早期化を働きかけていただいたとのことで、大変ありがたく思います。国会に対しては、質問通告の早期化に引き続きご協力をお願いするとともに、政府側として、国会対応業務の効率化を進めてまいります。
今後とも、優秀な人材の確保のために長時間労働を是正し、国家公務員の働き方改革を実現するため、様々な取組を進めてまいりますので、皆様方のご協力をお願いします。
○ 令和5年度の給与については、人事院勧告を踏まえ、国政全般の観点から検討を行い、方針を決定したいと考えています。その際には、皆様とも十分に意見交換を行いたいと考えます。
○ 非常勤職員の処遇改善については、常勤職員の給与改定に準じて改定することを基本とするよう、各府省申合せの改正を行いました。引き続き、適正な処遇が確保されるよう、関係機関とも連携して、必要な取組を進めてまいりたいと考えています。
○ 自律的労使関係制度については、多岐にわたる課題があることから、皆様と誠実に意見交換しつつ、慎重に検討してまいりたいと考えています。
○ 最後になりますが、今後とも職員団体とは誠意を持った話合いによる一層の意思疎通に努めてまいります。
資料3-2023春季生活闘争に関わる公務員連絡会の声明
声 明
.公務員連絡会は、22日に人事院総裁と、そして本日国家公務員制度担当大臣とそれぞれ交渉を持ち、2023年春季要求に対する回答を引き出した。
2.連合の2023春季生活闘争は、「賃上げ分を3%程度、定昇相当分を含む賃上げを5%程度」を目安とする方針のもと、各構成組織・各組合は、昨年を上回る要求をもって労使交渉に臨んだ。3月17日時点の連合の集計(805組合)では、定昇相当分込みの賃上げ(加重平均)で11,844円、3.80%(昨年同時期比5,263円増、1.66ポイント増)となり、比較可能な2013闘争以降で額・率とも最も高い結果となった。
3.このような中、公務員連絡会は連合に結集し、「全職員に対する賃金の積極的引上げ」を始め、公務・公共部門で働くすべての労働者の待遇改善をめざし、2023春季生活闘争を闘ってきた。2月20、22日の要求書提出以降、3月7、8日の幹事クラス、14、15日の書記長クラス交渉を精力的に積み上げてきたところである。交渉過程において、公務員連絡会は、「社会と公務の変化に応じた給与制度の整備」の検討状況、非常勤職員の処遇改善、定年の段階的引き上げに伴う各種施策への対応、超過勤務の縮減と要員の確保等の課題を中心に、現段階の考え方を質してきた。
4.委員長クラス交渉委員による最終交渉で、国家公務員制度担当大臣からは、①長時間労働の是正に関して、今後とも、優秀な人材の確保のために長時間労働を是正し、国家公務員の働き方改革を実現するため様々な取組を進める、②給与については、人事院勧告を踏まえ、国政全般の観点から検討を行い、方針を決定し、その際には、皆様とも十分に意見交換を行う、③非常勤職員の処遇改善について、常勤職員の給与改定に準じて改定することを基本とするよう各府省申合せの改正を行った。引き続き、適正な処遇が確保されるよう関係機関とも連携して必要な取組を進める、④今後とも職員団体とは誠意を持った話合いによる一層の意思疎通に努める、との回答があった。
また、人事院総裁からは、①賃金の改善について、俸給や一時金は、国家公務員の給与と民間企業の給与の実態を精緻に調査した上で、その精確な比較を行い、適切に対処する。諸手当は、民間の状況、官民較差の状況等を踏まえ、必要となる検討を行う。再任用職員の給与の在り方について必要な検討を行う、②「社会と公務の変化に応じた給与制度の整備」については、公務における人員構成の変化や各府省の人事管理、民間における給与の状況等を踏まえつつ、制度の様々な側面から一体的に取組を進める、③テレワークに関する給与面での対応については、光熱費・水道費等の職員の負担軽減の観点から、テレワークを行う場合に支給する新たな手当について、具体的な枠組みの検討を行う、④長時間労働の是正については、制度の適切な運用が図られるよう、勤務時間調査・指導室の調査や各府省人事担当課長等へのヒアリングの機会を通じて、他律的な業務の比重が高い部署の指定の考え方など、必要な指導等を行う、⑤勤務時間制度の在り方については、職員団体の皆さんからの御意見も踏まえ、研究会で最終報告について議論して頂き、本年度内に報告書を取りまとめる、⑥非常勤職員の給与に関する指針を改正し、非常勤職員の給与の改定について、常勤職員の取扱いに準じて改定するよう努めることを定めた。各府省に必要な指導を行うなど、常勤職員の給与とのバランスをより確保しうるよう取り組む、⑦定年の段階的引上げに係る各種制度が各府省において円滑に運用されるよう、制度の周知や理解促進を図るとともに、運用状況の把握に努め、適切に対応する、⑧障害者雇用については、今後とも、厚生労働省と連携し、必要に応じて適切に対応する、⑨女性の活躍推進について、今後とも、各府省の具体的な取組が進むよう支援する、⑩ハラスメント防止対策が適切に実施されるよう、各府省の相談体制や研修内容について検討を行い、必要な支援・指導を行う。苦情相談を含めた公平審査制度において、パワー・ハラスメント事案に取り組み、人事院の役割を果たす、⑪新型コロナウイルス感染症への対応について、感染症法上の位置づけの変更を踏まえて必要な検討を行う、との回答があった。
5.これらの回答は、春季における課題認識を共有するとともに公務員連絡会の意見を聞きながら検討を進めていく姿勢を確認したものの、要求に対して明確には応えておらず、決して十分とは言えない内容である。しかし、人事院勧告を基本とする賃金・労働条件決定制度のもとで、交渉過程において、各課題の現段階における関係当局の考え方や進捗状況を明らかにさせることができたことを踏まえ、春の段階における交渉の到達点と受け止め、今後、人事院勧告期に向け闘争態勢を堅持・強化していく。
6.物価高騰により、組合員の生活が圧迫され不満感が大きくなっている中、2023年度賃金については、好調な民間春闘の妥結状況を踏まえつつ、全職員の生活改善に向けた給与勧告の実現をめざす。とりわけ、「社会と公務の変化に応じた給与制度の整備」に対しては、人事院の検討動向を注視しつつ、適時・的確に交渉・協議を配置する。
臨時・非常勤職員については、この間の要求により、各種休暇制度や両立支援、給与改定のあり方等の改善が図られてきているが、さらなる処遇改善を求め取組を強化する。
目前に迫った定年の段階的引き上げについては、再任用を含む高齢層職員の処遇改善のみならず、中堅・若手層のモチベーションの維持・向上や公務における安定的な人材確保の課題であると捉え、人事院・内閣人事局に対して、級別定数や定員のあり方など柔軟な対応を求めていく。
長時間労働の是正については、改めて、政府、人事院の果たすべき役割を追求するとともに、労使間での協議を強化し、実質的な改善を図る。
7.公務員連絡会は、国民の安心・安全の確保に向け、公務・公共サービス従事者として十分な役割と責任を果たしていく。また今後の、中小及び地域民間構成組織、独立行政法人等関係組合の交渉強化に連帯し、すべての労働者の賃金引上げを実現するため、連合、公務労協に結集し、全力をあげる。
2023年3月23日
公務員労働組合連絡会