人事院・内閣人事局へ2023年度基本要求を提出-11/28
公務員連絡会は11月28日、人事院、内閣人事局に対して「2023年度賃金・労働条件に関わる基本要求」(資料1、2参照)を提出した。公務員連絡会からは幹事クラス交渉委員が交渉に臨み、誠意ある回答を示すよう求めた。
それぞれの交渉経過は次のとおり。
<人事院との交渉経過>
人事院への提出交渉では、人事院からは大滝職員団体審議官、増尾職員団体審議官付参事官が対応した。
2023年度基本要求書の提出にあたり、高柳副事務局長は次のとおり述べた。
○賃金に関わる事項
1.給与水準及び配分等について
①物価の高騰が続き実質賃金が低下している実態がもはや抜き差しならないところに来ているということ、このことは全世代にわたる職員に少なくない影響を及ぼしているということである。そのため、労働側だけでなく、政府や経営側も賃上げの必要性を強調しているが、このことは公務員についても同様であるということである。この点十分考慮することを予め求めておきたい。
②同様に、特別給についても、期末手当の引上げが必要だということは再度強調しておきたい。その上で、今後の一時金のあり方について、私どもと協議することを申し入れておく。
③民調における官民比較方法については、「現行の比較企業規模を堅持する」との立場を明確にしていただきたい。
2.「社会と公務の変化に応じた給与制度の整備」について
①基本的な方向性として、全職員に影響を及ぼし、また月例給のみならず各種手当も対象になるわけであるから、特定の立場の職員、例えば本府省の一部の階層の職員のみを遇するような見直しとなった場合、大多数の職員の意欲の低下を招きかねないことに留意が必要である。そのようなことのないよう予め申し入れておきたい。
②また、この見直しは、結果として地方や独法等にも大きな影響を与えることは必至であり、その意味からも、検討の節目節目において、私どもに情報提供し、十分協議することを求めておきたい。
○労働時間、休暇及び休業等に関わる事項
1.年間労働時間の着実な短縮について
①「勤務時間調査・指導室」の今後の活動には期待を寄せるところであるが、超勤の縮減やサービス残業の撲滅等について、各府省に指導的な役割を果たすようお願いしたい。なお、本年の勧告時報告でも指摘のあった国会対応業務の問題について、私どもとしても、各政党に申し入れを行う予定であることを申し添えておきたい。
②コロナの問題は引き続いているが、人事院の調査結果でも明らかな通り、上限超え超過勤務は看過できない問題であるため、特例業務の扱いの見直しや、また「他律部署」の指定の統一性確保など各府省への指導を強化していただきたい。
2.テレワークなど「柔軟な働き方」について
①在宅勤務関連手当について、本年の勧告時報告では「検討」「民間の動向を注視」に留まっているが、一方で政府は、「テレワークで完結可能な業務の最大化」を重点課題としており、平仄を取ることが必要だと考える。在宅勤務に伴う各種機器や光熱費の問題は物価高騰もあり、小さくない問題になっていることから、より積極的な検討と具体化を進めていただきたい。その際、当然、通勤手当との整合性が課題となるが、情報提供の上で、私どもと協議を行っていただきたい。なお、通勤手当それ自体にも様々な課題があるということをこの際指摘しておきたい。
②「研究会」については、最終報告に至る過程で、引き続き必要な情報提供と協議を求めておきたい。
③勤務間インターバルについては、民間の動向を見極める必要があると思うが、それにとどまらず、海外の事例や基準を十分に研究した上で措置するよう求めておきたい。
3.休暇・休業制度の拡充等について
①夏季休暇については、取得時期のあり方について課題となっている職種・職場もあるので、弾力的運用をはかるよう求めておきたい。
②産前・産後の休暇の拡充を引き続き求めるが、より負担が重い多胎妊娠や、不育症、妊娠障害などの問題も指摘されており、実態把握と研究を行うよう求めておきたい。
③出生サポート休暇について、まずは休暇を取得しやすい職場環境の整備を一層図っていただきたいが、さらなる拡充も必要であることを指摘しておきたい。
④育児に関わる短時間勤務、育児時間等について、子の年齢要件などを緩和することを求めておきたい。
○女性公務員の労働権確立に関わる事項
要求書には記載していないが、改正女性活躍推進法に基づき、各府省においても、特定事業主として、「男女の賃金差異」を公開することが求められている。その中で新たな課題が指摘される可能性もあるので、人事院としても注視し、実質的な男女共同参画に向けて引き続き努力されたい。
○福利厚生施策等に関わる事項
レクリエーションの復活・拡充や、メンタルヘルス対策において、人事院としても役割を果たすよう求めておきたい。一方ハラスメントについては、深刻な事例も報告されていることから、人事院としても、各府省の状況把握、相談体制の整備・拡充、紛争の解決等における役割を果たしていただきたい。
○人事評価制度に関わる事項
10月より新たな評価制度が本格運用されているが、人事院としても、内閣人事局と連携し、評価制度の実施状況や評価結果の活用状況を定期的に検証し、課題があれば、指導、改善措置等を講ずるよう求めておきたい。
○非常勤職員制度等に関わる事項
①非常勤職員について、さらなる常勤職員との均衡・権衡が必要だと考えるが、特に、現在無給となっている休暇の有給化の拡大を求める声が多いので、その制度改善などを求めておきたい。
②期間業務職員について、人事院が10月に実施した、給与に関する指針に基づく取組状況の調査結果に関する必要な情報提供を求めるとともに、課題があれば、当該府省に対して改善指導等を行っていただきたい。
○その他の事項
政府が、2023年4月1日より資金移動業者の口座への賃金支払が可能となるよう労働基準法施行規則の一部改正が行われたが、これに関わって、人事院規則9-7の改正関連など、私どもに必要な情報提供を行っていただき、適宜協議を行っていただきたい。
申入れに対し、大滝審議官は「基本要求については承った。十分検討の上、しかるべき時期に回答させていただく。本日は、いくつかの点について、現時点でのコメントを申し上げる」として、現時点での見解を次のように示した。
1 賃金に関わる要求について
民間の状況は、例えば、11月の月例経済報告や日銀の展望レポートでは、景気は緩やかに持ち直しているとされる一方で、海外の経済・物価の動向や、内外の感染症の動向など今後のリスクが懸念されている。また、物価上昇を背景として民間の労働組合や経済団体などが例年より高めの賃上げ目標に言及しているような報道もみられる。人事院としても、今後の景気や賃金の動向を注視していきたいと考えている。
いずれにせよ、月例給、一時金とともに、情勢適応の原則に基づき、民間準拠により適正な給与水準を確保するという基本姿勢に立った上で、職員団体の皆さんの意見も聞きながら適切に対処していくということが基本となる。
また、社会と公務の変化に応じた給与制度の整備については、今年の報告文でも言及されているように、関係者等の意見を聞きながら検討を進めるとしてスケジュールをお示ししているところである。
2 新型コロナウィルス感染症に関わる要求について
新型コロナウィルス感染症への対応については、これまでも人事制度の面から様々な措置を行ってきており、今後とも、感染状況等を注視しつつ、必要な対応を行って参りたい。
3 労働時間、休暇及び休業等に関わる要求について
国家公務員の長時間労働の是正については、今年の報告文で言及したように、新設の勤務時間調査・指導室において適正な管理を指導するほか、特例業務や他律部署の範囲や医師による面接指導に関する指導などを引き続き行っていく。
また、柔軟な働き方に関わる要求については、本年度内を目途に結論を得るべく研究会で引き続き検討を行っているところであり、これまでも節目節目で職員団体のご意見を聞いてきたと考えている。
4 雇用と年金の確実な接続に関わる要求について
定年の引き上げが円滑に行われるよう、規則等の内容を周知して環境整備を行うなど、必要な準備を行って参りたい。
5 女性公務員の労働権確立に関わる要求について
公務における女性の採用・登用の促進は重要な課題であり、人事院としても、政府の取り組みと連携しつつ、女性の国家公務員志望者の拡大に向けた広報活動や女性の活躍支援のための研修の充実、勤務環境の整備等により、各府省の取り組みを支援して参りたい。
6 福利厚生等に関わる要求について
ハラスメントの防止に関しては、今年の報告文で言及したように、幹部・管理職員向け研修の見直しを行うほか、各府省担当者の専門性向上や迅速・適切な事案解決のための相談体制の整備に向けて実情や課題を把握して対応を検討することとしているところ。
7 人事評価に関わる要求について
人事評価制度については、改正後の新たな人事評価に基づく人事院規則等の改正が本年10月に施行されており、各府省において、改正後の基準に基づいて昇任・昇格、昇給、勤勉手当が適切に運用されるよう、人事院の役割を果たして参りたい。
8 非常勤制度等に関わる要求について
非常勤職員の給与については、昨年7月に期末手当・勤勉手当に相当する給与について、非常勤職員の給与に関する指針を改正したところであり、引き続き各府省で適正な支給が行われるよう必要な指導などを行って参りたい。
非常勤職員の休暇については、妊娠、出産、育児等にかかわる休暇の新設や有給化などを行ってきたところであり、今後とも、民間における取り組みの動向を注視しつつ、必要に応じて検討を行って参りたい。
このほか、多岐にわたる要求をいただいたが、検討の上回答させていただく。
続けて、交渉委員から、通勤手当について、一部、職員の持ち出しとなっている実態があることから、完全支給が必要であるいう意見があった。また、ICTを活用した勤務管理について、打刻時間と超過勤務命令の相違について課題が出てきていること、夏季休暇取得の弾力化については、マンパワーの不足等により7月~9月に取得困難な職場があることから前向きに検討を求めること、定年延長にあたっては、60歳超職員の仕事のあり方や若年層職員との職務分担が明確でないという課題が生じているという意見があった。
これらを受け、大滝審議官は「それぞれ意見を承った。通勤手当については、以前から要求があった新幹線通勤の課題など、様々な実態を伺ってきている。超勤管理については、職員サイドの意見として承った。夏季休暇の取得については、秋民調の調査中であることから、結果を見ながら検討していきたい。定年延長については、実際に制度が始まっていない中で進めていかなければならないこと、また各府省個別の違いがあることの難しさがあるが、今後どういうものが必要か、検討していきたい」と回答した。
最後に高柳副事務局長が「いずれの課題もしっかりと検討するよう求める。基本要求書については、しかるべき時期に正式な回答をいただきたい」と要請し、交渉を終えた。
<内閣人事局との交渉経過>
内閣人事局への提出交渉では、内閣人事局から松本内閣審議官らが対応した。要求提出にあたり、高柳副事務局長は、具体的な要求項目のポイントについて次のとおり説明した。
○賃金・労働条件の確保について
1.給与については、国家公務員の使用者機関としての内閣人事局にお願いしておきたいのは、第一に、公務員の賃金・労働条件に関する世論・社会全体における理解が得られるよう努力いただきたい、ということである。
2.また、公務における人材確保は今日極めて重要な課題になっており、その点からも職務の責任や仕事の内容に相応しい給与水準が必要だということである。さらに、物価高騰が続き実質賃金が低下している実態がもはや抜き差しならないところに来ており、全世代にわたる職員に少なくない影響を及ぼしていることを重視していただき、全職員の賃金水準の引上げが必要だということである。これらの点について、内閣人事局としても是非認識していただき、努力いただくことを求めておきたい。
○労働時間、休暇及び休業、人員確保等について
1.内閣人事局が開発した「勤務時間管理システム」について、その導入を推奨されていると思うが、各府省における導入状況、あるいは11月より実施している地方支分部局における勤務時間の状況の客観的把握の実態調査の結果について情報提供していただきたい。その上で、適宜私どもと協議を行うことを求めておきたい。
2.このような中から改めて、各府省に対する指導等を強化し、真に実効性のある超過勤務縮減策を実施することを求めておきたい。なお、10月5日の河野大臣と私どもの武藤議長とのやり取りでも話題となった国会対応業務の問題について、私どもとしても、各政党に申し入れを行う予定であることを申し添えておきたい。
3.定員合理化目標のもと、例年各府省の人員要求が大幅に抑制される実態が続いていると認識しているが、この間の経験により、パンデミックや大規模自然災害にも即時に対応できるための公務の体制整備を行うことは国民的な理解を十分に得られるものと考える。また、私どもが行った意識調査でも、超過勤務の大きな要因として人員不足が一番に挙げられており、その点からも人員確保が必要だと考える。そのため、定員合理化目標を見直し、余裕のある要員を平時から確保するよう求めておきたい。
4.本年度の「人事管理運営方針」において、政府は、「テレワークで完結可能な業務の最大化」を重点課題としているが、地方支分部局や出先機関など、職員の職場環境や職務内容が極めて多岐に亘っていることを十分に踏まえることが必要であり、実態と乖離した一律的な対応などを行わないよう求めておきたい。
5.また、職員が在宅勤務を行うに当たっての各種機器や光熱費の問題は、物価高騰もあり、小さくない問題になっていることから、人事院とも連携して、「在宅勤務手当」の導入の検討を行っていただきたい。
6.勤務間インターバルについては、民間の動向を見極める必要があると思うが、それにとどまらず、EUなど海外の事例や基準を十分に研究した上で措置するよう求めておきたい。
○女性公務員の労働権確立について
要求書には記載していないが、先日ご説明いただいた通り、改正女性活躍推進法に基づき、各府省においても「男女の賃金差異」を公開することになると思うが、その中で新たな課題が指摘される可能性もあるので、内閣人事局として引き続き注視し、必要な対応を図っていただきたい。
○福利厚生施策等について
レクリエーションの復活・拡充や、メンタルヘルス対策において、内閣人事局として必要な役割を果たすよう求めておきたい。一方ハラスメントについては、深刻な事例も報告されていることから、使用者機関として厳しく取り組んでいただきたい。
○人事評価制度について
10月より新たな評価制度が本格運用されているが、人事院とも連携し、評価制度の実施状況や評価結果の活用状況を定期的に検証し、課題があれば、指導、改善措置等を講ずるよう求めておきたい。
○雇用と年金の接続について
来年4月からの定年の段階的引き上げに伴う、今年度の各府省における検討状況、さらに、それに伴う退職手当などの人件費に係る予算要求などを明らかにしていただきたい。また、本年末を目途に提示するとされている2024年度における定員及び級別定数措置に関する考え方についても明らかにしていただきたい。私どもとしても、必要に応じて各府省当局に申し入れを行うことなども考えていることを申し添えておきたい。
○非常勤職員制度等について
1.非常勤職員について、さらなる常勤職員との均衡・権衡が必要だと考える。本年については、先に成立した改正給与法のもと、非常勤職員の給与改定も行われるが、参議院内閣委員会における河野大臣の答弁の通り、各府省の実態を調査・把握した上で、平成29年の各府省申合せを見直し、本年4月に遡及して改定するよう徹底することを求めたい。
2.7月27日の内閣人事局参事官発言要旨は、重要な意味を持つと考えているが、これを踏まえ期間業務職員等の採用実態を検証し、課題があれば、必要な改善指導等を行うよう求めておきたい。
続けて、交渉委員から、勤務時間管理における、超過勤務命令と勤務時間管理システムによる超過勤務時間との差異について、また定年引上げに関わって60歳以降のシニア職員の職務内容や若年層職員との職務分担について等、現場の声を踏まえた課題について訴えた。
これらに対して、松本内閣審議官は「皆様方の要求の趣旨は、しっかりと承った。長時間労働の是正や勤務時間の状況の客観的把握など、働き方改革に引き続き取り組んでおり、また、来年4月からの定年の段階的な引上げの開始に向けた準備など、様々な課題に取り組んでいるところ。定年引上げに関して各府省の状況等も聞いたうえで課題等も見えてくるかと思うので、引き続き意見交換をさせていただければと考えている。いずれにせよ、本日いただいたご意見、要求事項については、検討させていただいた上で、しかるべき時期に回答させていただく」と回答した。
最後に、高柳副事務局長は「本日は要求書の提出であり、回答交渉に向けてしっかりと検討をお願いする」と要請し、この日の交渉を終えた。
資料1.人事院への基本要求書
2022年11月28日
人事院総裁
川 本 裕 子 様
公務員労働組合連絡会
議 長 武 藤 公 明
(公 印 省 略)
2023年度賃金・労働条件に関わる基本要求について
貴職におかれましては、公務員人事行政にご尽力されていることに敬意を表します。
さて、新型コロナウイルス感染症によるパンデミックから回復の途上にある世界経済は、ロシアによるウクライナ侵攻に端を発するエネルギー価格の高騰などを主たる要因として、再び景気減速の局面を迎えようとしています。これらに加えて、日本経済においては急速な円安により、輸入品を始めとする原材料価格の上昇等による日用品等の値上げが相次いでおり、家計への影響は極めて大きなものとなっています。
このように、急激に物価が上昇する中で賃上げが物価上昇に追いついておらず、実質賃金が低迷する状況が継続すれば、我が国においてGDPの6割を占める個人消費が落ち込み、深刻な不況をもたらす恐れがあり、積極的な賃金の引上げが求められています。
そのような中、国民生活の基盤を担う公務・公共サービスの現場では、新型コロナウイルス感染症対策や大規模な自然災害への対応など、職員の高い使命感と責任をもった懸命の奮闘が続いています。一方、職場では、テレワークの推進をはじめとする働き方改革にも積極的に取り組んでいるものの、長時間労働の蔓延など厳しい勤務環境は改善されておらず、必要な要員と適切な労働条件等の確保が不可欠です。その意味で、人事院が、労働基本権制約の代償機関であることを含め職員の利益保護に向けた役割を十全に果たすことが求められています。
貴職におかれましては、こうした点を十分に認識され、下記の基本要求事項の実現に向けて最大限努力されるよう強く申し入れます。
記
一、賃金に関わる事項
1.給与水準及び配分等について
(1) 給与水準の確保
① 公務における人材の確保を重視し、職務の責任や仕事の内容に相応しい社会的に公正な月例給与水準を確保すること。また、2023年度の給与勧告においては、物価の高騰が続き実質賃金が低下している実態を重視し、全世代にわたって職員の賃金水準を引き上げ、職員の豊かな生活を保障すること。
② 期末・勤勉手当については、それぞれの配分が民間と均衡してきたこと等を踏まえ、ともに支給月数を引き上げるとともに、そのあり方について、公務員連絡会と協議すること。
(2) 社会的に公正な官民給与比較方法の確立
当面、現行の比較企業規模を堅持することとし、社会的に公正な仕組みとなるよう改善すること。また、一時金についても、月例給と同様に、同種・同等比較を原則とするラスパイレス比較を行うこと。
2.「社会と公務の変化に応じた給与制度の整備」について
(1) この改革が、若年層から再任用を含む高齢層に至る職員を対象とし、また月例給及び各種手当を取り扱う総合的な見直しであることを踏まえ、職員各層から理解を得られ、その意欲を引き出すものとすること。
(2) 同様に、地方公務員、独立行政法人職員、政府関係法人職員等にも広く影響を与える課題であることから、検討に当たっては、公務員連絡会に対して、適宜早い段階での情報提供を行うとともに、連絡会と十分な協議を行うこと。
二、新型コロナウイルス感染症に関わる事項
今後の感染状況等の推移を注視し、職員の感染防止、健康確保のため、公務員連絡会との交渉・協議を踏まえて、適宜、必要な措置を講じること。
三、労働時間、休暇及び休業等に関わる事項
ワーク・ライフ・バランスを実現するため、公務職場における「働き方改革」等を次のとおり進めること。
1.年間労働時間の着実な短縮について
公務における年間総労働時間1,800時間体制を確立することとし、次の事項を実現すること。
(1) 4月に設置された「勤務時間調査・指導室」を中心に、実効性ある超過勤務縮減策を講じるよう主体的な役割を果たすこと。また、超過勤務手当の全額支給の徹底について必要な対応をはかるとともに、1か月当たり45時間を超え60時間以内の超過勤務に対する手当の割増率の引上げを行うこと。
(2) 人事院が5月に公表した通り、2021年の上限を超えて超過勤務を命ぜられた国家公務員の割合について、全ての項目において前年よりも増加したことを踏まえ、特例業務の扱いについて必要な見直しをはかること。
(3) 同様に、「他律的業務の比重が高い部署」の指定にあたっては、各府省における統一性の確保を最低として、各府省への指導を強化すること。
2.テレワークなど「柔軟な働き方」について
(1) 在宅勤務の拡大に伴う手当の支給について、政府が、「テレワークで完結可能な業務の最大化」を重点課題としていること(「令和4年度における人事管理運営方針」)から、秋民調の結果等も踏まえ、より積極的な検討と具体化を進めること。
(2) 「在宅勤務関連手当」の検討にあたっては、通勤手当との関係の整理も含めた制度のあり方について、公務員連絡会に対して必要な情報提供を行うとともに、適宜連絡会と協議を行うこと。
(3) テレワークや勤務間インターバル確保の方策、更なる柔軟な勤務時間制度等について、2023年3月を目途とされるテレワーク等に関する「研究会」の最終報告に至る過程で、引き続き公務員連絡会に対して必要な情報提供を行うとともに、適宜連絡会と協議を行うこと。
(4) 勤務間インターバルを導入するに当たっては、国内外の事例・基準等を十分に研究し措置すること。
3.休暇・休業制度の拡充等について
ライフステージに応じ、社会的要請に応える休暇・休業制度の拡充などについて、次の事項を実現すること。
(1) 夏季休暇について、日数増と取得時期の弾力的運用をはかること。
(2) リフレッシュ休暇を新設すること。
(3) 産前休暇を8週間、産後休暇を10週間に延長すること。また、妊娠障害休暇を新設すること。
(4) 新設された出生サポート休暇について、休暇を取得しやすい職場環境の整備をはかること。また、各府省における運用実態を把握し、プライバシーの配慮の徹底など、必要に応じて各府省を指導すること。
(5) 育児や介護に関わる両立支援制度の円滑な活用をはかるとともに、育児短時間勤務、育児時間等について、子の年齢要件等取得要件を緩和し、その在り方を改善すること。
(6) 必要な休暇・休業制度が、男女ともにより活用できるよう、制度の改善や環境整備に努めること。とくに、家族介護を理由とした離職を防止するため、介護休業制度を整備すること。
(7) 休暇の取得手続きについて、公務員の休暇権をより明確にする形で抜本的に改善すること。
四、雇用と年金の確実な接続
2023年4月1日の段階的定年引上げの施行にあたって、各府省の運用状況を把握するとともに、その円滑かつ安定的な実現のための環境整備に向けて、人事院としての役割を果たすこと。
五、女性公務員の労働権確立に関わる事項
(1) 公務における女性の労働権確立を人事行政の重要課題と位置づけ、人事院としての役割を果たすこと。
(2) 次世代育成支援対策推進法、女性活躍推進法及び「国家公務員の女性活躍とワークライフバランス推進のための指針」等に基づく各府省の「行動計画」「取組計画」等の着実な実行に向け、積極的な役割を果たすこと。
(3) 第5次男女共同参画基本計画のもと、女性が働き続けるための職場環境の整備に努め、女性の採用・登用・職域拡大をはかるとともに、メンター制度の実効性を確保すること。
六、福利厚生施策等に関わる事項
(1) 公務員の福利厚生を勤務条件の重要事項と位置付け、職員のニーズ及び民間の福利厚生の正確な実態把握を行い、その抜本的な改善・充実に向けた提言を行うこと。
(2) 福利厚生の重要施策であるレクリエーションについて、事業が休止されている実態を重く受け止め、その理念の再構築と予算確保や事業の復活に努めること。
(3) 「職員の心の健康づくりのための指針」等に基づいた心の健康づくり、カウンセリングや「試し出勤」など復職支援施策の着実な推進をはかること。
(4) ハラスメントの防止について、一層有効な対策を着実に実施すること。とくに、パワー・ハラスメントの防止対策については、人事院規則10-16等に基づいた各府省の取組状況を把握するとともに、相談員の専門性の向上や相談員が適切に対応できる体制整備に向けて、必要な指導を行うこと。また、苦情相談、紛争解決における人事院の役割を着実に果たすための体制整備等をはかること。
七、人事評価制度に関わる事項
10月より実施された新たな評価区分のもとでの人事評価制度について、中立・公正な人事行政や勤務条件を所管する立場から、内閣人事局とも連携し、評価制度の実施状況及び評価結果の活用状況を定期的に検証すること。その上で、課題があれば、必要に応じて指導、改善措置等を講じること。
八、非常勤職員制度等に関わる事項
非常勤職員制度等の抜本的改善をめざし、同一労働同一賃金をはじめとする均等待遇の原則を一層推進するとともに、国に採用される当該職員の給与水準等の統一性・公平性の確保をはかるため、次の事項を実現すること。
(1) 非常勤職員を法律上明確に位置付け、勤務条件等について常勤職員に適用している法令、規則等を適用すること。
(2) 期間業務職員制度について、当該職員の雇用の安定と待遇の改善に向け、10月に実施した、給与に関する指針に基づく取組状況の調査結果を踏まえ、必要な改善指導等を行うこと。
(3) 出生サポート休暇、育児休業、介護休暇など、非常勤職員の両立支援に関わる新たな制度について、引き続き各府省を通した当該職員への周知をはかるとともに、その運用状況を検証するなどして、必要な改善指導等を行うこと。
(4) 非常勤職員の休暇については、さらなる常勤職員との均衡・権衡等に向けて、無給休暇の有給化の拡大等、制度改善をはかること。
九、障害者雇用に関わる事項
公務職場における障害者雇用について、引き続き、法定雇用率の達成を遵守するとともに、雇用される障害者が、無理なく、かつ安定的に働くことができるよう、人事院としての役割を適切に果たすこと。
十、その他の事項
(1) 公務遂行中の事故等の事案に関わる分限については、欠格による失職等に対する特例規定を設けること。
(2) 政府が、2023年4月1日より資金移動業者の口座への賃金支払が可能となるよう労働基準法施行規則の一部を改正することについて、これに伴い派生する課題等もあることから、人事院規則9-7(俸給等の支給)等の改正関連など、公務員連絡会に対して必要な情報提供を行うとともに、適宜連絡会と協議を行うこと。
以上
資料2.内閣人事局への基本要求書
2022年11月28日
内閣総理大臣
岸 田 文 雄 様
公務員労働組合連絡会
議 長 武 藤 公 明
(公 印 省 略)
2023年度賃金・労働条件に関わる基本要求について
貴職におかれましては、公務員人事行政にご尽力されていることに敬意を表します。
さて、新型コロナウイルス感染症によるパンデミックから回復の途上にある世界経済は、ロシアによるウクライナ侵攻に端を発するエネルギー価格の高騰などを主たる要因として、再び景気減速の局面を迎えようとしています。これらに加えて、日本経済においては急速な円安により、輸入品を始めとする原材料価格の上昇等による日用品等の値上げが相次いでおり、家計への影響は極めて大きなものとなっています。
このように、急激に物価が上昇する中で賃上げが物価上昇に追いついておらず、実質賃金が低迷する状況が継続すれば、我が国においてGDPの6割を占める個人消費が落ち込み、深刻な不況をもたらす恐れがあり、積極的な賃金の引上げが求められています。
そのような中、国民生活の基盤を担う公務・公共サービスの現場では、新型コロナウイルス感染症対策や大規模な自然災害への対応など、職員の高い使命感と責任をもった懸命の奮闘が続いています。一方、職場では、テレワークの推進をはじめとする働き方改革にも積極的に取り組んでいるものの、長時間労働の蔓延など厳しい勤務環境は改善されておらず、必要な要員と適切な労働条件等の確保が不可欠です。
貴職におかれましては、国家公務員全体の使用者としてこうした点を十分に認識され、下記の基本要求事項の実現に向けて最大限努力されるよう強く申し入れます。
記
1.賃金・労働条件の確保について
公共サービス基本法を踏まえ、以下の通りとすること。
(1) 良質な公務・公共サービスの適正かつ確実な実施に向け、公務員の賃金・労働条件に関する社会的な理解を得られるよう環境整備をはかること。
(2) 公務における人材の確保を重視し、職務の責任や仕事の内容に相応しい社会的に公正な月例給与水準を確保すること。また、物価の高騰が続き実質賃金が低下している実態を重視し、全世代にわたって職員の賃金水準を引き上げ、職員の豊かな生活を保障するよう努力すること。
(3) 超過勤務手当の全額支給を前提に、独立行政法人等を含めた公務員給与の改定に必要な財源を確保すること。
2.新型コロナウイルス感染症への対応について
今後の感染状況等の推移を注視し、職員の感染防止、健康確保のため、公務員連絡会との交渉・協議を踏まえて、適宜、必要な措置を講じること。
3.労働時間、休暇及び休業、人員確保等について
職員ひとりひとりのワーク・ライフ・バランスを実現し、パンデミックや大規模災害にも対応できる公務・公共サービスを実現するため、以下を推進すること。
(1) 公務における年間総労働時間1,800時間体制の確立と、ライフステージに応じた柔軟な休暇・休業制度の改善・拡充などを実現すること。
(2) 内閣人事局が開発した「勤務時間管理システム」の各府省における導入状況や、11月より実施している地方支分部局における勤務時間の状況の客観的把握の実態調査の結果等について情報提供するとともに、適宜公務員連絡会と協議を行うこと。その上で、政府全体として超過勤務縮減のための体制を確立するとともに、各府省に対する指導等を強化し、真に実効性のある超過勤務縮減策を実施すること。
(3) 定員管理について、「国の行政機関の機構・定員管理に関する方針(2014年7月25日閣議決定)」に基づく定員合理化目標を見直し、パンデミックや大規模な自然災害にも即時に対応できるための人員を平時から確保すること。
(4) テレワークを始めとする「柔軟な働き方」の推進に当たっては、国家公務員の職場環境や職務内容が極めて多岐に亘っていることを踏まえ、柔軟な対応を図ること。
(5) 職員が在宅勤務を行うに当たって機器や光熱費等の経費に関する課題もあることから、人事院と連携して、「在宅勤務手当」の導入の検討を行うこと。
(6) 勤務間インターバルを導入するに当たっては、国内外の事例・基準等を十分に研究し措置すること。
(7) 全職員の仕事と生活の両立が図られるよう、フレックスタイム制、育児休業、育児短時間勤務、介護休暇、出生サポート休暇等、各種両立支援制度を利活用できる職場環境の整備を一層推進すること。
(8) 男性国家公務員の育児に伴う休暇・休業の取得状況に関する最新(令和3年度)のフォローアップ結果について、課題も含めて明らかにするとともに、その改善をはかること。
4.女性公務員の労働権確立について
(1) 公務における女性の労働権確立を人事行政の重要課題と位置づけ、政府全体として積極的に取り組むこと。
(2) 次世代育成支援対策推進法、女性活躍推進法及び「国家公務員の女性活躍とワークライフバランス推進のための取組指針」等に基づく各府省の「行動計画」「取組計画」等の着実な実施に向け、積極的な役割を果たすこと。
(3) 第5次男女共同参画基本計画のもと、女性の採用・登用・職域拡大、メンター制度の実効性確保に向け、使用者として必要な取組を着実に実施すること。
5.福利厚生施策等について
(1) 公務員の福利厚生を勤務条件の重要事項と位置付け、職員のニーズ及び民間の福利厚生の正確な実態把握に基づき、その抜本的な改善・充実をはかること。
(2) 「国家公務員健康増進等基本計画」の着実な実施をはかるため、政府全体としての実施体制を確立し、使用者としての責任を明確にして積極的に対応すること。
(3) 心の健康づくりについては、引き続きストレス原因の追究と管理職員の意識改革に努めることとし、カウンセリングや「試し出勤」など復職支援施策を着実に実施すること。
(4) 2023年度の予算編成に当たっては、健康診断の充実など、職員の福利厚生施策の改善に必要な予算を確保すること。
(5) 福利厚生の重要施策であるレクリエーションについて、事業が休止されている実態を重く受け止め、その理念の再構築と予算確保や事業の復活に努めること。
(6) ハラスメントの防止について、一層有効な対策を着実に推進すること。とくにパワー・ハラスメントの防止対策については、人事院規則10-16に基づき政府全体で厳格に取り組むこと。
6.人事評価制度について
10月より実施された新たな評価区分のもとでの人事評価制度について、人事院とも連携し、評価制度の実施状況及び評価結果の活用状況を定期的に検証すること。その上で、課題があれば、必要に応じて指導、改善措置等を講じること。
7.雇用と年金の接続について
(1) 2023年4月からの定年の段階的引き上げに伴う、今年度の各府省における検討状況(60歳以降において勤務する意思のある職員数等の規模、シニア職員の職務内容や他の年齢層の職員との職務分担等)について明らかにすること。また、それに伴う退職手当などの人件費に係る予算要求や、定年前再任用短時間勤務職員に関する要求等の状況を明らかにすること。
(2) 本年末を目途に提示するとされている2024年度における定員及び級別定数措置に関する考え方について明らかにすること。
(3) 定年の段階的引上げが完成するまでの間、2013年の閣議決定に基づき、フルタイムを基本に職員の希望に応じた再任用を実現すること。
8.非常勤職員制度等について
非常勤職員制度の抜本的改善をめざし、同一労働同一賃金をはじめとする均等待遇の原則を一層推進するとともに、国に採用される当該職員の給与水準等の統一性・公平性の確保をはかるため、次の事項を実現すること。
(1) 非常勤職員制度について、公務員連絡会が参加する検討の場を設置し、政府全体として解決に向けた取組を推進すること。
(2) 非常勤職員を法律上明確に位置付け、勤務条件等について常勤職員に適用している法令、規則等を適用すること。
(3) 人事院「非常勤職員給与決定指針」を踏まえ、期末手当及び勤勉手当に相当する給与の予算の確保など必要な措置を講じること。また、非常勤職員の給与改定について、政府全体として統一的に対応することとし、常勤職員と同様に措置すること。
(4) 期間業務職員制度について、当該職員の雇用の安定と待遇の改善となるよう、人事院が10月に実施した、給与に関する指針に基づく取組状況の調査結果等を踏まえ、必要な改善指導等を行うこと。
(5) 「非常勤職員の適切な任用について(2022年7月27日/人事管理官会議幹事会における内閣人事局参事官発言要旨)」を踏まえ、各府省における、期間業務職員及び非常勤職員として採用されている障害者の採用実態を検証するとともに、課題があれば、必要な改善指導等を行うこと。
9.障害者雇用について
公務職場における障害者雇用について、引き続き、法定雇用率の達成を遵守するとともに、雇用される障害者が、無理なく、かつ安定的に働くことができるよう、政府としての役割を適切に果たすこと。
10.公務員制度改革について
ILO勧告に則り、国家公務員制度改革基本法に基づく自律的労使関係制度を確立するため、国家公務員制度改革関連四法案(2011年6月3日国会提出)における措置について、国家公務員法等改正法案の附帯決議(2014年3月12日衆議院内閣委員会及び同年4月10日参議院内閣委員会)に基づき、公務員連絡会との合意により実現すること。
11.その他
国が民間事業者等に業務委託や入札等により事務事業の実施を委ねる場合においては、公正労働基準の遵守を必要条件とすること。
以上