2023年度基本要求に対する回答を引き出す-12/20~21
公務員連絡会・幹事クラス交渉委員は、12月20日に人事院、翌21日に内閣人事局との交渉を実施し、11月28日に提出した「2023年度の基本要求」に対する回答を引き出した。
それぞれの交渉経過は次のとおり。
<人事院との交渉経過>
人事院との交渉は大滝職員団体審議官、増尾職員団体審議官付参事官が対応した。
冒頭、高柳副事務局長が、基本要求に対する回答を求めたのに対し、大滝審議官は「11月28日に提出のあった『基本要求』については、今後引き続き検討すべき事項が多いが、主な要求事項について、現時点での検討状況等を申し上げる」として次のとおり人事院の現段階の見解を示した。
一、賃金に関する事項
(1) 給与水準について
公務員給与の改定については、情勢適応の原則に基づき、民間準拠により適正な給与水準を確保するという基本姿勢に立ったうえで、職員団体の皆さんの意見も聴きながら、適切に対処してまいりたい。
なお、本年の勧告時報告で述べたとおり、物価の動向やこれを受けた民間給与の状況等について引き続き注視してまいりたい。
また、期末・勤勉手当については、民間賞与における年間支給月数及び考課査定分の割合を考慮して改定を行ってきており、引き続き民間の支給状況を注視しつつ、適切に対処してまいりたい。
(2) 官民の給与の比較方法について
官民給与の比較方法については、公務と民間で同種・同等の業務を行っている者同士を比較するという民間準拠方式の下、民間企業従業員の給与をより広く把握し国家公務員の給与に反映させるため、必要な見直しを行ってきており、比較対象企業規模を含め、現行の取扱いが適当と考えている。
(3) 「社会と公務の変化に応じた給与制度の整備」について
給与制度の整備については、社会と公務の変化に応じたものとなるよう、公務における人員構成の変化や各府省の人事管理、民間における給与の状況等を踏まえつつ、給与制度の様々な側面から一体的に取組を進めることとしている。
取組に当たっては、本年の職員の給与に関する報告においても述べたとおり、関係者等の意見を聴取しつつ、令和5年夏に具体的な措置についての骨格案を示すことができるよう検討を進め、その後更に関係者と意見交換を行った上で、令和6年にその時点で必要な措置の成案を示すことを目指しているところであり、職員団体の皆さんの意見も伺ってまいりたい。
二、新型コロナウイルス感染症に関わる事項
新型コロナウイルス感染症への対応については、これまで、感染拡大防止に資するよう、柔軟な時差出勤のための勤務時間割振りの特例措置、出勤困難な場合の特別休暇の取扱いに関する通知の発出、職場における感染拡大防止対策の周知、予防接種を受ける場合における職務専念義務の免除などの対策を講じてきたところである。今後とも、感染状況等を注視しつつ、必要な対応を行ってまいりたい。
三、労働時間、休暇、休業に関する事項
(1) 超過勤務の縮減について
勤務時間調査・指導室において、勤務時間の管理等に関する調査を本年6月から実施しており、客観的な記録を基礎とした超過勤務時間の適正な管理について指導を行っている。また、同室の調査や、制度の運用状況の聴取の機会を通じて、各府省における超過勤務の上限に関する制度の運用状況を把握した上で、原則より高い上限が適用される他律的な業務の比重の高い部署の範囲について業務の実態に即して指定するよう指導を行っているほか、上限を超えて超過勤務を命ずることができる特例業務の範囲についても、必要最小限となるよう指導を行っている。
これらの中で、各府省のマネジメントに責任を有する者に対して、長時間の超過勤務を行う職員に対する医師による面接指導の徹底を求めるとともに、管理職員等のマネジメントに関する助言等を行い、業務の合理化・見直しの実例を含めた各府省の好事例を収集・整理した上で横展開していくこととしている。
このほか、定員管理を担当する部局に対して必要な働きかけを行っていくこととしているほか、国会対応業務の改善を通じた国家公務員の超過勤務の縮減について、国会を始めとする関係各方面の御理解と御協力をお願いしている。
人事院としては、以上のような取組を通じて国家公務員の長時間労働を是正することが重要と考えており、適切にその役割を果たしてまいりたい。
なお、超過勤務手当の割増率の引上げのご要望もあるが、平成29年4月の民間事業所の状況をみると、月45時間を超え60時間を超えない時間外労働の割増賃金率を30%以上としている事業所の従業員割合は、42.6%(平成28年43.6%、平成27年47.7%)という状況にあり、逓減傾向となっているところ。
このため、公務において月45時間を超え60時間を超えない超過勤務に係る超過勤務手当の支給割合を引き上げる状況にはないと判断しているところである。
(2) テレワークなど「柔軟な働き方」について
テレワークの実施に係る光熱・水道費等の職員の負担軽減等の観点から、テレワークを行う場合に支給する新たな手当について、具体的な枠組みの検討を進めていくこととしている。検討に当たっては、テレワークに関する民間企業及び公務の動向を引き続き注視しつつ、手当の支給に関する事務負担等にも留意し、職員団体の皆さんの意見も聴きながら、通勤手当の取扱いを含め、措置内容をまとめていくこととしたい。
「テレワーク等の柔軟な働き方に対応した勤務時間制度等の在り方に関する研究会」においては、テレワークや勤務間インターバル確保の方策、更なる柔軟な勤務時間制度等について、本年度内を目途に結論を得るべく、引き続き検討を進めていくこととされている。
勤務間インターバル確保の方策については、同研究会において、勤務間インターバルを導入している民間企業の事例、諸外国における公務のインターバル時間数や適用除外の状況等を資料に掲載しているほか、民間企業2社(本田技研工業株式会社、株式会社日立製作所)と国土交通省航空局からヒアリングを実施しており、国内外の事例・基準等も踏まえつつ議論を深めていくこととしている。
今後とも、これまで同様、引き続き、職員団体の皆さんの意見も聴きながら適切に検討を進めていくこととしたい。
(3) 休暇、休業制度について
職員の休暇、休業については、従来より情勢適応の原則の下、民間における普及状況に合わせることを基本に、適宜見直しを行ってきたところであり、引き続き民間の動向等を注視してまいりたい。
出生サポート休暇については、各府省に対し、制度担当者向けのQ&Aを配布し、プライバシーの配慮等について周知啓発や指導を行うとともに、各府省において周知啓発等に活用してもらうため、職員向けのリーフレット及びQ&Aを配布し、人事院HPにも掲載した。引き続き、制度の導入当初の周知啓発の重要性にも鑑み、休暇を取得しやすい職場環境の整備を図るため、不妊治療と仕事の両立のためのイベントの開催をはじめとした周知啓発等や各府省に対する支援・指導に取り組むこととしており、各府省の運用実態の把握については、今後必要に応じて検討してまいりたい。
令和5年4月から国家公務員の定年が段階的に65歳まで引き上げられることも踏まえると、今後は、介護など新たなニーズと仕事との両立支援が一層重要になることから、介護休暇等についても必要な調査研究を行うこととしている。
四、雇用と年金の確実な接続に関する事項
定年の段階的引上げに係る各種制度が各府省において円滑に運用されるよう、引き続き、制度の周知や理解促進を図るとともに、運用状況の把握に努め、必要に応じて適切に対応してまいりたい。
五、女性公務員の労働権確立に関する事項
人事院としては、女性の活躍推進を人事行政における重要な課題の一つと認識しており、女性の採用・登用の拡大や両立支援等の拡充など様々な施策を行ってきているところである。
今後とも、政府の取組と連携しつつ、女性の国家公務員志望者の拡大に向けた広報活動、女性職員の能力を伸長させ活躍を支援するための研修、柔軟な働き方に対応した勤務時間制度等の検討、仕事と生活の両立支援やハラスメント防止対策などを通じて、次世代育成支援対策推進法や女性活躍推進法等に基づく各府省の取組を支援してまいりたい。
さらに、令和2年12月に閣議決定された第5次男女共同参画基本計画の内容も踏まえつつ、今後も引き続き、職員が働きやすい勤務環境の整備や女性の採用・登用の拡大に向けた様々な施策について、所要の検討を進めてまいりたい。
六、福利厚生施策に関する事項
(1) 心の健康づくり対策について
心の健康づくり対策については、「職員の心の健康づくりのための指針」を基本として対処しているところであり、管理監督者をはじめとする職員に対する研修の充実・強化、職員の意識啓発のためのガイドブックの作成、心の不調への早期対応のための「こころの健康相談室」の運営、円滑な職場復帰の促進や再発防止のための「こころの健康にかかる職場復帰相談室」の運営や「試し出勤」の活用に取り組んでいる。
また、平成28年度より、各省各庁の長に対して、職員に医師等によるストレスチェックの受検機会を付与すること及び職員からの申出に応じて面接指導を実施することを義務付けることなどを内容とするストレスチェック制度が実施されているところである。なお、ストレスチェック制度について、制度導入から5年が経過したことから、同制度を活用した職場環境改善がより効果的に行われるよう、有識者から意見を聴取し、令和4年2月に報告書を取りまとめ、これを踏まえたストレスチェックを活用した職場環境改善の具体的な取組等について各府省へ通知し、一層の取組を促した。
さらに、令和4年度からは、「こころの健康相談室」について、より相談しやすい環境の整備に資するため、オンラインによる相談を本院及び一部地方事務局(関東、中部、近畿及び中国。)において実施しており、今後、全ての窓口でオンライン相談に対応できるよう体制を拡充する予定である。
(2) ハラスメント対策について
ハラスメントの防止について、人事院は、令和2年6月に施行された人事院規則等を受けて、研修教材の作成・提供や、各府省のハラスメント相談員を対象としたセミナーの開催など、各府省に対する支援を行ってきている。
今後は、幹部・管理職員ハラスメント防止研修について組織マネジメントの観点も反映したより実効性のあるものとなるよう研修内容を見直して令和5年度から実施するとともに、各府省のハラスメント相談員を対象としたセミナーを引き続き開催し、研修用教材の改訂等を行うなど、各府省においてハラスメント防止対策が適切に実施されるよう、必要な支援・指導を行ってまいりたい。
また、ハラスメント事案の迅速・適切な解決に向けて、ハラスメントに関する相談に対応する担当者の専門性の向上や担当者が適切に対応できる体制整備が必要であることから、それらの実現に向けて、各府省における事案の解決や相談体制に係る実情・課題を把握し、対応を検討することとしたい。
さらに、苦情相談を含めた公平審査制度において、パワー・ハラスメントに関する事案についても引き続き人事院の役割を果たしてまいりたい。
七、人事評価制度に関する事項
人事評価については、本年10月から職員の能力・実績をきめ細かく的確に把握するための評語区分の細分化等の制度の見直しが行われ、これを踏まえ、人事院では、見直し後の人事評価制度に基づく評価結果をより適切に任用、給与等に反映するための制度の見直しを行ったところである。
新たな評価制度の運用や評価結果の任免、給与、人材育成への活用が各府省において適正に行われるよう、内閣人事局とも連携の上、引き続き人事院としての役割を果たしてまいりたい。
八、非常勤職員制度に関する事項
非常勤職員の任用、勤務条件等については、その適切な処遇等を確保するため、法律、人事院規則等に規定しており、期間業務職員制度、育児休業など、これまで職員団体の皆さんの意見も聴きながら見直しを行ってきたところである。
非常勤職員の給与については、従来より、人事院が発出した非常勤職員の給与に関する指針に基づき、各府省において取組が進められている。
この指針については、昨年7月、期末手当及び勤勉手当に相当する給与の支給に関し改正を行ったところであり、現在、当該改正内容を含め、指針に基づく各府省の取組状況について、確認を進めているところである。
人事院としては、引き続き、各府省に対し必要な指導を行うことなどにより、各府省において適切な給与の支給がなされるよう対応してまいりたい。
非常勤職員の休暇については、業務の必要に応じてその都度任期や勤務時間が設定されて任用されるという非常勤職員の性格を考慮しつつ、民間の状況等を考慮し、必要な措置を行っている。
非常勤職員の妊娠・出産・育児等と仕事の両立を支援するため、本年1月に出生サポート休暇、配偶者出産休暇及び育児参加のための休暇をいずれも有給で新設するとともに、産前・産後休暇を有給化し、4月からは育児休業・介護休暇等の取得要件を緩和した。さらに、10月からは、育児休業の取得要件の緩和等を行ったところである。人事院としては、引き続き、全ての職場において両立支援制度を利用しやすい勤務環境の整備のため、不妊治療と仕事の両立に関するイベントの開催、職員向けのリーフレットや管理職員向けの研修教材の提供等、内容を充実させて周知啓発を行うとともに、各府省に対する支援・指導に取り組むこととしたい。
引き続き民間の状況等について注視し、必要に応じて検討を行ってまいりたい。
九、障害者雇用に関する事項
障害者雇用に関しては、障害を有する職員が自らの希望や障害等の特性に応じて、無理なく、かつ、安定的に働くことができるよう、平成30年12月にフレックスタイム制の柔軟化等を実現するための人事院規則等の改正を行い、平成31年1月から施行するとともに、公務の職場における障害者雇用に関する理解を促進し、障害を有する職員が必要な配慮を受けられるよう、「職員の募集及び採用時並びに採用後において障害者に対して各省各庁の長が講ずべき措置に関する指針」を平成30年12月に発出し、各府省に対して、当該指針に沿って適切に対応することを求めている。
このほか、厚生労働省と連携して、各府省における合理的配慮事例の情報共有などの支援を行っている。今後とも、必要に応じて各府省への支援を行ってまいりたい。
十、その他の事項
民間では労働基準法に定める賃金の通貨払いの原則に関する例外として、資金移動業者の口座への賃金の支払が可能となるよう、来年4月からの導入に向けて議論が進められていることは承知している。
人事院としては、引き続き、資金移動業者の口座への賃金の支払に関する議論・動向を注視するとともに、国家公務員における課題を精査しつつ、職員団体の皆さんの意見も聴きながら取扱いについて検討してまいりたい。
これに対して、高柳副事務局長は、次のとおり質すとともに重ねて要請をした。
(1) 給与水準について、ご案内の通り、厚生労働省が6日に発表した10月の毎勤統計によれば、実質賃金は、ついに7カ月連続の減少となった。前年同月比2.6%減という数値は、7年4カ月ぶりの大きな下落幅となっている。つまり引き続き、資源高や円安で上昇する物価に賃金の伸びが追いつかない状況が続いているということである。
また今年の9月に私どもが組合員に対して行った意識調査(国家公務員の回答者はおよそ5,000人)では、「食費」や「住宅関係費」などの負担感が強まり、「昨年同時期と比して生活が苦しくなった」と回答した組合員が37.4%に上った。2年前の調査から13ポイント以上の上昇である。この調査では、ここ10年以上なだらかに生活水準に関する認識が改善してきたのだが、急激に反転・悪化したことを示している。そのため生活に対する不満感が強まっているという結果も出ている。
人事院におかれては、このような実態を十分に認識し、来年夏の勧告に向けて、全世代の職員の賃金改善を図るという姿勢で作業にあたっていただきたい。
(2) 「社会と公務の変化に応じた給与制度の整備」について、指摘したような賃金実態や職員の生活意識も踏まえ、要求書提出の際にも申し上げた通り、若年層から高齢層に至る職員、中央のみならず地方で勤務する職員など、全体のモチベーションが維持・向上するような方向での検討をお願いしておきたい。また、検討の節目節目において、私どもに情報提供し、十分協議することを再再度求めておきたい。
(3) 超過勤務の縮減について、今挙げられた、「他律部署」の範囲指定に関する指導、「特例業務」の範囲を必要最小限とするための指導、さらに長時間勤務職員に対する医師の面接指導の徹底、管理職に対するマネジメントに関する助言等は、いずれも我々も求めていることであり、強力に推進していただきたい。
一方で、コロナ対応も、来年になればさらに落ち着いてくると想定され、そうなれば国公職場における通常期の超勤実態などが再度顕わになって来ると思われる。そのため、「非常時ではないにもかかわらず長時間労働が改善されていない」というような実態が明らかになってしまえば、霞が関、国公職場全体が問われるのはもちろんのこと、人事院の指導のあり方にも疑問が付くことになってしまう。その点ご認識の上で対応されたい。また、この課題に関わって、必要な情報やデータについては、随時我々にも明らかにしていただきたい。
(4) テレワークなど「柔軟な働き方」について、テレワークに関する新たな手当について、「措置内容をまとめる」とのご回答であったが、通勤手当との関係や事務負担の問題などを考慮しつつも、何らか新たな対応があるものとの認識で良いか?
(5) 休暇、休業制度について、定年の引き上げとの関係も踏まえ、「介護休暇等についても必要な調査研究を行う」との回答をいただいた。前進的な回答として受け止めたい。なお、同じく定年引上げとの関係で言えば、「子」のみならず、「孫」の育児に関する問題なども惹起してくると考えられ、既に「孫の育児休暇」導入を決めた自治体もある。この方面についても、調査・研究を行うことを求めておきたい。
(6) 雇用と年金の確実な接続について、12月8日に、定年引上げの影響を踏まえた令和6年の級別定数措置の考え方の概要をご説明いただいた。今後10年かけての、言わば未知の領域であり、どのように運用されていくのかは予測し難い面が大きいが、当事者たる「役降り」する職員の側にも、今後昇格していく予定の若手・中堅の職員の側にも、一定以上の不安感があることは間違いない。
そのため、不安が失望や意欲の低下に変わらないよう、級別定数の扱いについては、運用状況が落ち着くまで極力柔軟な運用を行うことを求めておきたい。
(7) 福利厚生施策等について、本年度から一部で開始したオンラインによる「こころの健康相談室」について、ご回答にあった通り、なるべく早く全窓口での実施を求めたい。その上で、これにより相談件数など有為な変化があったかどうか等をご教示いただきたい
(8) 非常勤職員制度について、これも我々が今年の9月に行った調査の結果、①総数が年々増加していること、②勤務時間について、1日当たり、週当たりのいずれにおいても長くなってきていること、③職務内容について、「常勤職員と同様の職務」の割合が増加していること、④時間給が上昇し、手当の被支給者も増加していること等が判明している。つまり、国家公務員職場においても、非常勤職員の存在なくしては成り立たない実態が改めて明確となったと考えている。よって安定雇用と処遇改善に向けたさらなる努力を求めておきたい。
また、改正給与指針に基づく、各府省の取組状況について、確認作業が終わり次第必要な情報を開示いただくよう改めて求めておきたい。
これらを受け、大滝審議官は、「幅広いご意見、ご要望をいただいたが、人事院として受け止める。その上で、いただいたご質問のうち、いくつかの事項に回答を申し上げる」と述べ、次のとおり答えた。
(1) テレワークに関する新たな手当については、通勤手当との関係や事務負担の問題などを考慮しつつ、具体的な枠組みを検討中である。制度の骨格となる案ができた段階で関係者にお示しし、職員団体の皆さんのご意見も伺いながら、措置内容をまとめていきたい。
(2) オンラインによる「こころの健康相談室」については、令和5年度から、専用機器の準備が整い次第、全ての地方事務局で実施予定である。
オンライン相談は地域を問わず、職員や人事担当者、家族など、幅広い利用実績がある。今年度の第二四半期までの全体の相談件数については、約3割程度増加している。令和3年の95件から、令和4年度は125件まで増えており、そのうち31件(約25%)がオンライン相談であった。
続いて、交渉委員から「社会と公務の変化に応じた給与制度の整備」に関わって、60歳以降の官民比較方式のあり方について質問があり、大滝審議官は「比較企業規模を含め、人事院の立場は先ほどお答えした通りである」と回答した。また、超過勤務に関わって、勤務時間調査・指導室において指導等をした好事例の公表の有無について質問があり、大滝審議官は「今後、事例が蓄積していけば皆さんにお示しすることはあるかもしれないが、今のところ聞いていない」と回答した。休暇・休業制度については、子の看護休暇について、未就学児までとされる対象年齢の引上げを求める声が職場に多いことが示され、大滝審議官は「要望があったことを担当に伝える」と回答した。
最後に、高柳副事務局長が「以上を持って本年度の基本要求書に関する交渉は終了したい。 来年2月には、春闘期の要求書を人事院総裁に提出させていただきたいと思うので、その点について、予めよろしくお願いしておきたい。」と述べ、回答交渉を終えた。
<内閣人事局との交渉経過>
内閣人事局との交渉は、松本内閣審議官、山村総括参事官が対応した。
冒頭、高柳副事務局長が、基本要求に対する回答を求めたのに対し、松本審議官は「11月28日に提出のあった『2023年賃金・労働条件に関わる基本要求』について、この時期における回答をさせていただく」と述べ、次のとおり答えた。
一.雇用と賃金・労働条件について
国家公務員の給与改定に当たっては、国家公務員の給与を社会一般の情勢に適応させるとの原則の下、人事院勧告制度を尊重することが基本姿勢と考えている。
給与改定については、人事院勧告も踏まえ、国政全般の観点に立って総合的に検討を行った上で方針を決定してまいりたいと考えている。その際には、皆様とも十分に意見交換を行ってまいりたい。
二.新型コロナウイルス感染症への対応について
「新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針」(新型コロナウイルス感染症対策本部決定)や都道府県知事の要請を踏まえ、人事院とも連携しながら、各府省に対しテレワークや時差通勤の活用により、感染拡大防止に向けた取組を依頼してきたところ。引き続き、関係機関と連携しながら、適切に対応してまいりたい。
また、国家公務員を対象とした職域でのワクチン接種を行っており、オミクロン株対応ワクチンの追加接種についても、本年10月下旬から実施したところである。
三.労働時間、休暇及び休業、人員確保等について
長時間労働の是正と職員のやりがい向上のため、各府省等は、「国家公務員の女性活躍とワークライフバランス推進のための取組指針」等に基づき、取組を行っている。
具体的には、ルーティン業務の廃止・効率化・デジタル化やテレワークで完結できる業務フローの構築、マネジメント改革のための取組のほか、適正な勤務時間管理の徹底のため、勤務時間管理のシステム化や本府省で開始している業務端末の使用時間の記録等を利用した勤務時間の状況の客観的把握を進めている。
勤務時間の状況の客観的把握については、地方支分部局等でも業務に応じた勤務形の多様性に配慮しつつ、最も効果的な客観把握を計画的に導入することとしており、11月より一部機関を対象に勤務時間の状況の客観的把握の実態調査を実施している。「勤務時間管理システム」の導入状況や、実態調査の結果を踏まえ、各府省に対する情報提供や助言等の支援を行うとともに、必要に応じて情報提供してまいりたい。今後とも、勤務時間などの基準を定めている人事院と連携して超過勤務の縮減に取り組んでまいりたい。
加えて、人事院主催の「テレワーク等の柔軟な働き方に対応した勤務時間制度等の在り方に関する研究会」において、中間報告としてフレックスタイム制の柔軟化が提言されたことを踏まえ、導入後のフレックスタイム制の利用を促進する。また、同研究会においては、引き続き、勤務間インターバル確保の方策や、テレワークを始めとする「柔軟な働き方」に対応した勤務時間制度等の在り方について検討されているところであり、当該研究会のオブザーバーである内閣人事局としても協力してまいりたい。
四.女性公務員の労働権確立について
女性活躍推進法及び「第5次男女共同参画基本計画」を踏まえ、「国家公務員の女性活躍とワークライフバランス推進のための取組指針」に基づき、女性の採用・登用の拡大、男性職員の育休取得促進等の取組を進めているところ。この結果、令和3年度に新たに育休を取得した男性職員の取得率が34%となり、第5次男女共同参画基本計画に定める成果目標(30%)を達成した。
引き続き、各府省の取組のフォローアップ等により、男性職員の育休取得を一層推進するとともに、男女問わず全ての職員のワークライフバランスを実現し、女性活躍の動きを更に加速してまいりたい。
五.福利厚生施策等について
「国家公務員健康増進等基本計画」等に基づき、職員の能率増進のため、ハラスメント防止対策に関する研修・啓発の確実な実施や相談体制の整備等の取組を進めているところ。引き続き、各府省における基本計画の実施状況を把握し、必要な措置が講じられるよう取り組んでまいりたい。
六.人事評価制度について
新たな人事評価制度が各府省等において円滑に運用されるよう、引き続き、制度の周知や研修の徹底に努めてまいりたい。
また、面談等、人事評価の実施状況を把握し、新制度の的確な施行を図ってまいりたい。
七.雇用と年金の接続について
各府省は、「国家公務員の定年引上げに向けた取組指針」を踏まえ、59歳の職員に対して60歳以後の勤務の意思を確認するとともに、役職定年による役降り後の職員を含むシニア職員の職務内容や他の年齢層の職員との職務分担について検討を行っているところ。
また、現在、こうした各府省における検討状況を踏まえながら、令和6年度における定員・級別定数措置の検討を進めているところ。定員・級別定数措置の考え方が示された後は、さらに各府省で的確な人事配置に向けた具体的な検討が進むよう促してまいりたい。
八.非常勤職員制度等について
非常勤職員の処遇改善については、平成29年5月に、基本給・特別給・給与改定に係る平成30年度以降の取扱いについて各府省間で申合せを行っている。この申合せに沿って各府省で取組みを行った結果、期末手当や勤勉手当に相当する給与について、確実に支給がなされているところ。また、本年11月の給与法改正の公布に際し、改めて同申合せの周知を図るとともに、基本となる給与の遡及改定を行うなど、改定時期についても引き続き改善に努めるよう、各府省に求めたところ。
皆様とも、引き続き意見交換を重ねつつ、各府省において申合せに沿った処遇改善が一層進むよう、人事院と連携しつつ、必要な取組を進めてまいりたい。
九.障害者雇用について
「公務部門における障害者雇用に関する基本方針」に基づき、障害者の多様な任用形態の確保、障害者雇用マニュアルの作成などにより、障害のある職員が意欲と能力を発揮し、活躍できる環境の整備に取り組んできたところ。
また、相談支援事業の実施や講習会の開催など、障害のある職員を受け入れる側も含めた支援等にも努めている。
今後とも、関係機関と連携しながら、各府省において障害者雇用が適切に進むよう、取り組んでまいりたい。
十.公務員制度改革について
自律的労使関係制度については、多岐にわたる課題があることから、皆様と誠実に意見交換しつつ、慎重に検討してまいりたいと考えている。
これに対して、高柳副事務局長は次のとおり質すとともに重ねて要請をした。
(1)まず、「人事院勧告制度を尊重する」ことが内閣人事局としての基本姿勢であることを確認させていただいた。引き続き、その立場でご対応願いたい。
その上で、ご案内の通り、厚生労働省が6日に発表した10月の毎勤統計によれば、実質賃金は、ついに7カ月連続の減少となった。前年同月比2.6%減という数値は、7年4カ月ぶりの大きな下落幅となっている。つまり引き続き、資源高や円安で上昇する物価に賃金の伸びが追いつかない状況が続いているということである。
また今年の9月に私どもが組合員に対して行った意識調査(国家公務員の回答者はおよそ5,000人)では、「食費」や「住宅関係費」などの負担感が強まり、「昨年同時期と比して生活が苦しくなった」と回答した組合員が37.4%に上った。2年前の調査から13ポイント以上の上昇である。この調査では、ここ10年以上なだらかに生活水準に関する認識が改善してきたのだが、急激に反転・悪化したことを示している。そのため生活に対する不満感が強まっているという結果も出ている。
給与改定について、いま「国政全般の観点に立って総合的に検討を行った上で方針を決定」するとの回答があったが、このような実態を十分に認識した上で、ご対応いただきたい。
(2)「勤務時間管理システム」の導入状況や、地方支分部局等における勤務時間の客観的把握に関する実態調査の結果について、必要に応じて情報提供するとのご回答であった。来年になるとは思うが、具体化をお願いしたい。
超過勤務について、いま申し上げた私どもの意識調査では、国家公務員の超勤時間は減少していないという実態が表れており、また「超勤手当が全額支給されていない」と回答した職員が13.5%存在している。様々な事情があるとは思うが、引き続き超勤の縮減と手当の全額支給の徹底をお願いしたい。
また、来年4月からの新たなフレックスタイム制について、「利用を促進する」とのご回答であるが、これも私どもの調査結果では、現在のフレックスタイム制について、「活用できるかどうか分からない」と回答した国家公務員が全体で20.7%、本府省の職員でも14.8%が「分からない」と答えている。人事院にも要望しているが、制度の柔軟化は制度の複雑化でもある、ということを踏まえ、「誰がどのように活用できるのか」を分かりやすく解説し、周知徹底するような資料の作成などをお願いしておきたい。
(3)定年引上げを踏まえた、令和6年度における定員・級別定数措置の考え方については、人事院とも連携し、予定通り本年中に各府省に示されるものと考えているが、その後、私どもにも来年度の機構・定員の状況とも併せてご説明を願いたい。
基本要求書の提出の際にも申し上げた通り、頻発するパンデミックや大規模自然災害にも対応できるために、余裕のある要員を平時から確保する必要があると思うが、来年4月からはここに定年引上げに伴う課題が重なって来る。当事者たる「役降り」する職員の側にも、今後昇格していく予定の若手・中堅の職員の側にも、一定以上の不安感があるという職場からの報告も上がってきており、不安が失望や意欲の低下に変わらないよう、定員についても、一定の間極力柔軟な運用を行うことを求めておきたい。
(4)本年11月の給与法改正の公布の際に、非常勤職員の基本給の遡及改定を各府省に求めたことについては承知している。ただし、平成29年5月の「人事管理運営協議会幹事会申合せ」では、当面は、遅くとも改正給与法の施行月の「翌月の給与から改定するものとする」とされており、解釈の明確化を図るために、今回の支給状況を見極めた上で、「申し合わせ」自体を見直す必要があると考えるが、そのような理解で良いか。
なお非常勤職員については、これも我々の調査の結果、①総数が年々増加していること、②勤務時間について、1日当たり、週当たりのいずれにおいても長くなってきていること、③職務内容について、「常勤職員と同様の職務」の割合が増加していること、④時間給が上昇し、手当の被支給者も増加していること等が判明している。つまり、国家公務員職場においても、非常勤職員の存在なくしては成り立たない実態が改めて明確となったと考えており、安定雇用と処遇改善に向けたさらなる努力を求めておきたい。
これに対し、松本審議官は次のとおり答えた。
(1)冒頭で回答したとおり、国家公務員の給与改定に当たっては、国家公務員の給与を社会一般の情勢に適応させるとの原則の下、人事院勧告制度を尊重することが基本姿勢。給与改定については、人事院勧告も踏まえ、国政全般の観点に立って総合的に検討を行った上で方針を決定してまいりたいと考えている。
民間の賃金水準の引上げや物価高騰対策については、経済対策の中でしっかりと取り組んでいくものであるが、各種施策を通じて民間の賃金水準が改善されれば、それを受けて今後また国家公務員の給与水準の改善も期待できると考えている。
(2)超過勤務手当の支給については、令和3年3月19日の閣僚懇談会等において、国家公務員制度担当大臣から各府省大臣に対し、超過勤務手当の確実な支払いをお願いしているところであり、引き続きその趣旨が徹底されるよう対応していく。
なお、令和4年度予算において、全府省の本府省の時間外手当の予算として「令和3年度当初予算」比で77億円増(+23.6%)の「403億円」が計上され、各府省の勤務実態に鑑みて必要十分な金額が措置されたものと考えており、予算がなお不足する場合には、各府省において、流用等の予算執行上の対応が検討されるものと承知している。
また、適正な勤務時間管理の徹底のため、勤務時間管理のシステム化や本府省で開始している業務端末の使用時間の記録等を利用した勤務時間の状況の客観的把握を進めている。
このように客観的な実績に応じた超過勤務の支払いを進める一方で、予算があるからといってどんどん残業させて良いということではない。
職員がやりがいをもって、時代に応じた、真に必要な業務に当たれるよう、今後とも、ルーティンワークなど必要性が低下した業務の見直しをはじめとした働き方改革をしっかりと進め、超勤の縮減に努めてまいりたい。
フレックスタイム制の周知については、制度の意義や活用方法の国家公務員全体への浸透を図るための啓発ポスターや活用事例を掲載したチラシを作成し内閣人事局ホームページに掲載するなど、活用の促進に取り組んでいるところであるが、今後は制度の活用方法等がより一層わかりやすくなるよう、周知に努めてまいりたい。
(3)定年引上げを踏まえた令和6年度における定員措置の考え方については、検討を進めているところであり、各府省等へ提示後、ご説明させていただく。また、来年度の機構・定員審査結果についても別途、ご説明させていただく。
厳しい財政状況の中、国民のニーズを踏まえて、新たな行政需要に的確に対応していくためには、既存の業務を不断に見直し、定員の再配置を推進していくことが重要。
その上で、新たな行政課題や既存業務の増大に対応するため、各府省官房等から現場の実情を聴取しつつ必要な行政分野に必要な増員を行っているところ。
引き続き、既存業務の見直しに積極的に取り組みながら、内閣の重要政策に適切に対応できる体制の構築を図ってまいりたい。
(4)ご指摘の通知は、改めて申合せの内容の周知を図るとともに、非常勤職員の適切な処遇を確保する観点から、基本となる給与の遡及改定を行うなど、改定時期についても引き続き改善に努めるよう、お願いしたもの。各府省の対応状況も踏まえつつ、申合せの改定も含め、今後の対応について検討してまいりたい。
なお、各府省の非常勤職員について適切な処遇が確保されるよう、内閣人事局としても、人事院と必要な連携をしてまいりたい。
また交渉参加者から、福利厚生施策に関わって、「レク経費について、各府省が申合せの上、長らく予算の要求を見合わせている現状がある。出口が必要であり、国民に理解される福利厚生とは何か、考えていただきたい」という意見があり、松本審議官は「ご意見は受けたまわった」と回答した。
最後に、高柳副事務局長が「以上を持って本年度の基本要求書に関する交渉は終了したい。来年2月には、春闘期の要求書を担当大臣に提出させていただきたいと思うので、その点について、予めよろしくお願いしておきたい」と述べ、回答交渉を終えた。
公務員連絡会は、今回の回答を踏まえて、今後、政府および人事院に対する2023春季生活闘争の取組を進めていく。