人事院に2024人勧期要求書を提出-6/19
公務員連絡会委員長クラス交渉委員は、6月19日10時30分から、川本人事院総裁との交渉を実施し、「2024年人事院勧告に関わる要求書」(別紙)を提出した。
本年の給与改定勧告に当たっては、公務員連絡会との交渉・協議、合意に基づき行うことを求めるとともに、適切な労働条件等の改善などを求めて交渉を強化していく。
交渉の冒頭、武藤議長は、
(1)2024年人事院勧告に関わる要求書の提出に当たって、公務員連絡会を代表して一言述べさせていただく。
(2)まずは、本年の職種別民間給与実態調査に尽力いただいた、人事院及び人事委員会の職員のみなさんに心から敬意を表したい。
(3)さて、本年の連合の春季生活闘争においては、定期昇給とベースアップ分を合わせて、5月末時点で5.08%アップと、比較可能な2013闘争以降で最も高い水準を達成している。また、経団連その他の調査結果などを見ても、本年の春季生活闘争は、概ね3%を超えるベアを達成したと総括できる。
一方で、円安が進行し、エネルギー関連品目や食料品等の輸入コスト上昇による物価高騰が続く中、厚生労働省の6月5日の発表によれば、勤労者の実質賃金は、ついに2年を超える25か月連続でマイナスを記録したところである。物価高に賃金上昇が追い付かず、依然として厳しい生活を強いられている点は、私ども公務員においても全く同様であることを申し上げておきたい。
そのため、このような総合的な情勢認識のもと、本年の勧告では、全職員に対する月例給および一時金の大幅な引上げ勧告を強く求めておく。
(4) また、本年の勧告では、「社会と公務の変化に応じた給与制度の整備(アップデート)」の措置内容が確定するものと考えている。これについては、職員・組合員の関心も極めて高いことから、公務員連絡会との交渉・協議・合意のもと進めることを求めておきたい。
(5)コロナ禍は一定の落ち着きを見せたが、本年も、年初から能登半島地震が起きるなど、国民の安心・安全に向け、地方・現場の職員は、限りある人員の中で全力を挙げて職務に従事している。本年勧告については、この点を認識し、全職員の期待に十分に応える内容となることを求めておきたい。
以上の点を強く要請した上で、要求の詳細については事務局長から説明させていただく。
と述べ、その後、森永事務局長が要求事項について説明した。
これを受けて川本人事院総裁は、「御要求は確かに受け取りました。最近の公務を巡る情勢は依然として厳しい状況です。人事院としては、国会と内閣に対して必要な勧告・報告を行うという国家公務員法に定められた責務を着実に果たしていく所存です。今後、本年の勧告に向けて、要求された課題について皆さんの御意見もお聴きしながら、検討を進めてまいりたいと考えています」と応えた。
(別紙)
2024年6月19日
人事院総裁
川 本 裕 子 様
公務員労働組合連絡会
議 長 武 藤 公 明
(公 印 省 略)
2024年人事院勧告に関わる要求書
貴職におかれましては、公務員人事行政にご尽力されていることに敬意を表します。
さて、能登半島地震からの早期の復旧・復興など公務・公共サービスに従事する職員は高い使命感と責任感を持って懸命の奮闘を続けています。
一方、円安と物価高騰により、実質賃金は2年以上に亘り減少をし続けています。そのため、低迷する日本の勤労者の賃金を改善することは、現在の日本において最重要とも言える課題となっているところです。
そのような中、連合と各加盟組合は、2024春季生活闘争を粘り強く闘い、その結果、比較可能な2013闘争以降で最も高い水準となる賃上げを実現しつつあります。日本経団連を始めとするその他の調査結果においても、いずれも昨年の数字を大きく上回り、賃金の引上げ傾向が鮮明となっています。民間労働者同様、物価高騰に悩まされる公務員についても、賃金の改善が強く求められるところです。
また、公務職場においては、多様化・複雑化する行政ニーズのもと増大する業務量に見合った要員が確保されておらず、長時間労働が蔓延するなど厳しい環境は改善されていません。良質な公務・公共サービスを確実に提供するためにも、職員が安心し安全に働くことのできる職場環境の整備や必要な要員の確保、賃金労働条件の改善が極めて重要です。
公務員連絡会は、このような認識に基づき「2024年人事院勧告に関わる要求書」を提出します。貴職におかれましては、下記事項の実現に向け、最大限努力されるよう要求します。
記
1.賃金要求について
(1) 月例給与について
2024年の給与改定勧告にあたっては、全職員に対する月例給の引上げ勧告を行うこと。
(2) 一時金について
一時金については、精確な民間実態の把握と官民比較を行い、支給月数を引き上げるとともに、期末・勤勉の適正な配分を行うこと。
2.「社会と公務の変化に応じた給与制度の整備」について
(1) 月例給・一時金・各種手当を取り扱う総合的な見直しであることを踏まえ、職員各層から理解を得られ、その意欲を引き出すものとすること。
(2) 地方公務員、独立行政法人職員、政府関係法人職員等にも広く影響を与える課題であることから、検討に当たっては、公務員連絡会に対して、適宜早い段階での情報提供を行うとともに、連絡会と十分な協議を行うこと。
(3) 地方における職員の処遇改善と人材の確保に向けて、地域手当の改善と併せて、初任給近辺の俸給月額引上げを確実に行うこと。
(4) 勤勉手当の「特に優秀」区分の成績率の上限引上げについては、それを実施すべき合理的な理由を明らかにすること。また、引上げに当たっては、2022年10月から施行されている改定された評価制度の検証を前提とすること。
(5) 新幹線通勤等に係る手当額見直しについては、精確な官民比較に基づき、確実に引き上げること。また、現在の通勤手当の問題点を踏まえ、普通交通機関も含めた総合的な見直しを行うこと。
(6) 採用時からの新幹線通勤・単身赴任に対する手当支給については、採用全般を対象とするとともに、現在既に新幹線通勤や単身赴任をしている者を対象とすること。
(7) 地域手当について、地域間格差を縮小するとともに、「大くくりの調整方法」により生ずる課題への具体的対策について、公務員連絡会と十分交渉・協議すること。
(8) 扶養手当の見直しについて、経過措置等を講ずるとともに、その具体的な内容について、公務員連絡会と十分交渉・協議すること。
(9) 現在再任用職員に支給されていない手当について、定年前職員や定年延長職員との均衡などを踏まえつつ、各種手当の支給範囲を極力拡大すること。
(10) のちの60歳前後の給与カーブに関する課題の検討に向けて、60歳以上の職員の給与に関しても精確な官民比較を行うことを基本に、中長期的な給与カーブ全体のあり方について、公務員連絡会と十分交渉・協議すること。
(11) 寒冷地手当や特地勤務手当など、関連して見直しが実施される手当について、地域事情等を十分に踏まえて検討すること。
3.長時間労働の是正と休暇・休業制度の拡充等について
(1)長時間労働の是正
① 人事院が3月26日に公表した調査結果において、2022年度(令和4年度)において、上限を超えて超過勤務を命ぜられた職員の割合が、本府省・地方、他律部署・自律部署のいずれにおいても、前年度を上回っていることから、各府省に対して、超過勤務の抑制や職員の心身の健康確保など指導を強化すること。
② 昨年4月21日に人事院が公表した調査において、業務の合理化等を行ってもなお長時間の超過勤務により対応せざるを得ない理由について、多くの府省が「恒常的な人員不足」を挙げていること等を踏まえ、引き続き、定員管理担当部局に対して、人員の確保に向けた対応を求めること。
③ 「テレワーク等研究会」最終報告(2023年3月)でも示されている通り、他律部署の範囲について業務の実態に即して課室よりも細かく指定することや、特例業務の範囲を必要最小限とすることについて、各府省への指導を強化すること。
(2) 「柔軟な働き方」について
① 本年4月から導入された「在宅勤務等手当」について、その運用の状況を検証するとともに、適宜情報提供すること。
② 本年4月から導入された「勤務間インターバル」について、3月29日付職員福祉局長通知を踏まえ、各府省が「11時間」を確保できるよう、関係部局とも連携し支援すること。
③ 来年4月から施行するとされている「ゼロ割振り日」「勤務時間の勤務開始後の割振り変更」「期間業務職員のフレックスタイム制」等について、適宜措置内容を明らかにすること。
④ 本年度に実施される「国家公務員の勤務時間の実態に関する調査・研究」について、適宜調査結果を明らかにすること。
(3) 休暇・休業制度の拡充
① ライフステージに応じ、社会的要請に応える休暇・休業制度に向け、公務における各種制度の利用実態や民間における普及状況を精査・検証し、制度の改善や環境整備に努めること。とくに、家族介護を理由とした離職を防止するため、介護休業制度を整備すること。
② 両立支援制度の更なる充実に向けて、昨年の勧告時報告で言及された「育児に係る両立支援制度の対象となる子の年齢の引上げ」「介護に係る制度を利用できる期間等の拡大」「残業免除や子の看護休暇の対象となるこどもの年齢の引上げ」「育児のための両立支援制度を利用できる期間の延長」等について、民間の整備状況や政府の動向を踏まえつつ、遅れることなく整備すること。
③ 妊娠・出産・育児に関わる休暇制度について、休暇を取得しやすい職場環境の整備を行うとともに、民間の動向等を踏まえ、更なる制度の改善を図ること。
4.労働諸条件の改善について
(1) 障害者雇用について
本年4月以降、法定雇用率が段階的に引き上げられること等を踏まえ、関係部局とも連携し、勤務時間や勤務場所の柔軟化、勤務環境の改善など、障害を持つ職員がより働きやすい環境の整備に向けた各府省の取組を支援すること。
(2) 女性参画の推進及び多様性の確保について
① 女性職員の採用拡大や、積極的な登用等に向け、勤務時間制度の柔軟な対応や両立支援策の確保、またハラスメント対策の強化など、各種制度の整備を進めるとともに、各府省の取組を支援すること。
② LGBT理解増進法等を踏まえ、職場における性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する理解の増進に取り組むこと。
(3) 福利厚生施策の充実について
① 人事院が行った、健康管理体制の充実のための官民調査(Well-being調査)の結果、健康管理部門と健康管理医との連携がある官署や、健康増進に関する研修・情報提供等の取組を実施している官署が約半数にとどまっていたこと等を踏まえ、各職場における健康管理体制の充実や効果的な健康管理施策の推進に向けた対策を具体化すること。
② メンタルヘルスに関連した長期病休者の数が長期病休者全体の7割を超えていることから、予防、相談、職場復帰支援策等を更に充実・具体化すること。
③ 2022年度に人事院が受けた苦情相談のうち1/3強をハラスメント関係が占める一方で、各府省のハラスメント相談担当者の8割が相談を受けていない等の実態を踏まえ、外部の専門家との連携等人事院における体制強化を図ること。また、幹部・管理職員に対する研修を充実させ、指導を強化すること。
5.定年の段階的引上げに伴う各種施策への対応について
(1)高齢職員の増加に伴う中堅・若手職員の昇格の抑制の回避等に向け、各府省における2023年度の状況を踏まえつつ、今年度以降についても、級別定数の柔軟な措置を図ること。
(2)再任用を希望する職員について、2013年の閣議決定を踏まえ、フルタイムを基本にその希望に応じた再任用を実現するよう、各府省に働きかけること。
6.非常勤職員等の制度及び待遇改善について
(1)全ての非常勤職員等の給与を引き上げること。
(2) 改正 「非常勤職員の給与に関する指針」等に基づき、非常勤職員に関する月例給・一時金の支給額や改定時期について、常勤職員との権衡が図られるよう、各府省に対する必要な指導等を行うこと。
(3) 期間業務職員のみならず、非常勤職員全体の実態を把握すること。その上で、昨年の勧告時報告に基づく「非常勤職員制度の運用等の在り方の検討」については、非常勤職員制度全体を射程に入れた抜本的な改善を図ること。
(4) 非常勤職員の休暇制度等について、常勤職員との均等待遇をはかるため、無給休暇の有給化等の改善を図ること。
(5) 非常勤職員制度の改善に関するこれまでの取組を踏まえ、公務員連絡会と十分交渉・協議し、作業を進めること。
以上