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-人事院給与局長と2回目の交渉を実施-
公務公共サービス労働組合協議会 公務員連絡会
2024年度 公務労協情報 No. 29

月例給の較差はプラス、俸給表全体の改定へ 一時金についても引上げの見通し
-人事院給与局長と2回目の交渉を実施-

公務員連絡会書記長クラス交渉委員は、31日14時30分から、2024年人勧期要求に関わり佐々木人事院給与局長と2回目の交渉を行った。
 冒頭、森永事務局長が「前回7月24日の交渉では、連絡会として、『昨年を上回る、全級・全号俸の引上げ勧告』を行うべく、全職員に一定の水準を配分したうえで、課題である初任給の民間との格差の解消等をはかるよう強く求め、再三にわたり質したが、局長からは、『初任給に重点を置き若年層に続く30歳代の中堅層への処遇も必要』との認識が示されただけで、明確にわれわれの要求に応えていなかった。また、社会と公務の変化に応じた給与制度の整備に関しては、結果としてマイナスの影響を受ける職員へ最大限の配慮措置(経過措置)を講ずることを人事院の責任として行うことなど、次回の交渉で、われわれが納得できる回答を行うよう求めてきたが、前回の交渉経過も踏まえ、現段階の検討状況を回答されたい」と求めたのに対し、給与局長は以下のとおり答えた。

1 勧告について
勧告日は、来週後半で調整中である。具体的な日程は、総裁会見の際にお伝えすることができると思う。

2 官民較差等について
(1) 官民較差と月例給について
官民較差については、現在、最終的な詰めを行っているところであるが、今年の民
間企業の春季賃金改定状況を反映して、プラスとなる見通しである。

(2) 特別給について
特別給についても、現在、最終的な集計を行っているところであるが、支給月数が引上げとなる見通しである。
支給月数の引上げがある場合には、期末手当及び勤勉手当に配分することを考えている。
令和6年度については、6月期は既に支給済みであるため、12月期に配分することとし、令和7年度以降については、6月期と12月期が同じ月数となるよう配分することを考えている。

3 本年の改定の考え方について
仮に、官民較差を埋めるため、引上げ改定が必要となった場合には、基本的な給与である俸給の引上げを行うことを考えているが、その場合、人材確保の観点等を踏まえ、初任給について相応の額の引上げを行うとともに、若年層に重点を置きつつ俸給表全体の改定を行いたいと考えている。

4 社会と公務の変化に応じた給与制度の整備(給与制度のアップデート)について
先般の会見にて検討中と回答したものなどについて、職員団体の皆さんのご意見等をお伺いしながら更に検討を進めた結果、次のとおりとすることを考えている。

地域手当については、引き続き直近10年分の賃金構造基本統計調査のデータを基礎に賃金指数を算出し、賃金指数93.0以上の地域を支給地域とする。なお、級地区分の広域化を踏まえ、大都市への通勤者率によるパーソントリップ補正は廃止する。
支給割合が変動する地域については、激変を抑制するよう級地を指定する。具体的には、支給割合の引下げ幅は最大でも4ポイントまでとする。また、支給割合が現行より引き上がり、道府県を上回る級地区分となる中核的な市については、道府県よりも1段階上位の級地区分とする。
支給割合の引下げは、職員の生活への影響等を考慮して1年に1ポイントとし、4年間で段階的に実施する。支給割合の引上げは、引下げにより生ずる原資の範囲内で段階的に実施する。
また、現在10年ごととしている見直しの期間を短縮する。

扶養手当については、配偶者に係る扶養手当の廃止により生ずる原資を用いて、子に係る手当の月額を3千円引き上げ、1万3千円とする。なお、手当が減額となる職員への影響を考慮し、配偶者に係る手当の廃止・子に係る手当の増額とも2年間で段階的に実施する。
 
通勤手当の支給限度額を、在来線の運賃等、新幹線等の特別料金等を合わせて1箇月当たり15万円に引き上げる。新幹線等の特別料金についても、支給限度額の範囲内で全額を支給する。なお、これらにより不要となる、島等に通勤するための橋等への加算措置は廃止する。

新幹線等に係る通勤手当について、新幹線等をより通勤に利用しやすくなるよう支給要件を見直す。具体的には、新幹線等の利用により通勤時間が片道当たり30分以上短縮されることを求める要件を廃止する。また、異動直前の住居からの通勤を求める要件などを緩和し、育児、介護等のやむを得ない事情により転居し新幹線等による通勤を必要とする職員で、異動により新幹線等による通勤を行う職員と同様に取り扱う必要のあるものに対しても支給する。

管理職員特別勤務手当については、平日深夜に係る手当の支給対象時間帯を、午後10時から午前5時までとし2時間拡大する。また、対象職員に指定職職員、専門スタッフ職職員(2級以上)、特定任期付職員及び任期付研究員(招へい型)を追加する。新たに支給対象となる職員の勤務1回当たりの手当額は、既に措置されている週休日等に係る手当額を踏まえて設定する。

定年前再任用短時間勤務職員及び暫定再任用職員に、異動の円滑化に資する手当として、地域手当の異動保障等、研究員調整手当、住居手当、特地勤務手当及び特地勤務手当に準ずる手当並びに寒冷地手当を支給する。

最後に実施時期についてであるが、社会と公務の変化に応じた給与制度の整備については、令和7年4月から実施することを考えている。ただし、新卒初任給の引上げを含む若年層の給与水準の引上げについては、人材確保の困難性を踏まえ、本年の官民較差に基づく給与改定の中で先行して措置することも検討している。なお、地域手当及び扶養手当の見直しは段階実施となるほか、異動保障の延長、定年前再任用短時間勤務職員等に対する地域手当の異動保障及び特地勤務手当に準ずる手当の支給は令和7年4月以降に異動等した者を適用対象とする。

5 諸手当について
寒冷地手当の支給地域について、令和4年4月に気象庁が公表した「メッシュ平年値2020」の内容を反映した見直しを行う。
また、手当額について、本年の職種別民間給与実態調査の調査結果を踏まえて増額改定を行う。
このほか、官署指定における居住地要件を廃止する。
支給地域の見直しにより寒冷地手当が非支給となる職員については、生活への影響等を考慮し、3年間で段階的に手当額を減額する。
実施時期については、支給地域の見直し及び官署指定における居住地要件の廃止は令和7年4月からの実施を考えており、手当額の改定は本年4月に遡っての適用を考えている。

6 人事行政諮問会議の中間報告を踏まえた取組
人事行政諮問会議の中間報告を踏まえた取組として、勧告時報告において、在級期間に係る制度・運用の見直しの検討、官民給与の比較を行う際の企業規模の検討などについて言及することとしている。

回答を受け、森永事務局長は、「勧告日の具体的な日程については、総裁との回答交渉に委ねる」とした上で、次のとおり局長の見解を質した。

(1)官民較差についてはプラスになる見通しのことだが、改めて、本年の民間給与の実態について認識はどうか。また、国公実態について、平均年齢が0.3歳下がって42.1歳と前回回答されていたが、行(一)の平均給与月額はどのような状況か。
また、本年の民間春闘の妥結状況等を踏まえれば、昨年の官民較差0.96%、3,869円を一定程度上回ると想定しているが、今年の官民較差の状況は如何か。

(2)本年の改定について、「初任給について相応の額の引上げを行う」との回答だった。民間との地域手当非支給地域における初任給の格差解消は大きな課題の一つであることはわれわれも認識しているところである。昨年は、大卒で11,000円、高卒で12,000円の引上げを行っているが、相応の額とは、どの程度の水準か。また、引上げ後の官民格差の状況は如何か。

(3)連絡会としては、「昨年を上回る、全職員、全級・全号俸の改定」を行うよう、この間の交渉において再三にわたって、職場実態なども踏まえて求めてきたが、本日局長からは、「若年層に重点を置きつつ俸給表全体の改定を行いたい」との回答だった。全職員、全級・全号俸の引上げ勧告が行われるということで良いか。また、当然のこととして、再任用職員も含むと理解して良いか。

(4)問題は、どの程度の引上げになるかである。官民較差が明らかになっていないもとではあるが、今年の改定の規模感を明らかにしていただきたい。
 また、前回の交渉で局長は、「今年の対応について、連絡会の主張も含めてどこまで対応できるか検討する。ただし、制約がある中での話であるということは申し上げざるを得ない」と回答していたが、規模感含めて詳細は最終の総裁交渉まで明らかにできないのであれば、われわれの要求である「昨年を上回る」水準に達したのかどうか程度は答えるべきではないか。

これに対し、給与局長は次のとおり回答した。

(1)官民較差については、民調の結果と国家公務員給与のデータを突き合せた結果である。
行(一)の平均給与月額は、本年4月については405,378円、昨年比で0.3%、額にして1,363円増となっている。前回、平均年齢の0.3歳の若返りと改定による引上げの2つの要因がある点については申し上げた。その結果、俸給としては、プラス1,330円である。その他、地域手当がプラス420円、住居手当がプラス181円、一方、扶養手当がマイナス413円となっている。
その上で、官民較差の状況は今年の民間の春季賃金改定の状況を反映した数字ということになる。

(2)今年の初任給に関する民調結果では、初任給が増加した事業所の割合は大卒で67.5%(昨年55.7%)、高卒は71.6%(昨年62.5%)であった。現行改定前の国と民間の比較では、昨年は国の平均が民間と同水準に戻ったが、今年は再び国が下回っている状況になっている。
地域手当非支給地で比較すると、大卒初任給については 国が16,000円程度下回り、高卒初任給では 国が11,000円程度下回っている。民間の初任給が大きく増加しているため、国もそうした状況を踏まえた程度の改定が必要と考える。
その上で、今回の勧告による改定後は、地域手当非支給地においても、民間を上回る水準が確保されるよう検討している。

(3)俸給表全体の改定を行いたいと申し上げた。その中には再任用の職員も含まれる。

(4)規模感について現時点で申し上げることは難しい。初任給の引上げと若年層に重点を置く改定を行う中で、俸給表全体の姿について最終回答に向けて作業を行っており、総裁の最終回答をお待ちいただきたい。
 今の段階で申し上げることができるのは、全級・全号俸の引き上げについて、「昨年を上回る水準」ということが皆さんからの極めて強い要求であるということを認識しつつ改定を行いたいということである。

これらを受け、森永事務局長は、「今年の給与改定にあたっては、初任給の相応の引上げと若年層重点というもとで、俸給表全体を改定することは、明らかになった。局長からは、明確な回答ではなかったが、官民較差が明らかになっていないなかで、局長の回答は、本年の高水準での民間春闘の妥結状況などを総合勘案すれば、われわれが納得できる水準かは別として、昨年を上回る改定が行われるものと今日の段階では受け止めておく。最終回答まで、職場の現状を十分に意識して検討するよう強く求めておく。その上で、初任給の官民格差の解消は重要な課題だと認識はしているが、このまま、人材確保のために結果として官民で初任給の引上げ競争を行うことについては、問題意識を持っており、来年度以降の給与改定の考え方も含めて、議論の余地があると思うので、今後とも、十分な協議を求めておく」と述べた。
その上で、続いて寒冷地手当及び一時金について、次のとおり局長の見解を質した。
 
(5)寒冷地手当について、非支給となる職員については、3年間で段階的に手当額を減額するとのことだが、具体的にはどのような内容になるのか。

(6)一時金について、支給月数が引上げとなる見通しで、期末手当及び勤勉手当に配分するとの回答だったが、引き上げられる支給月数はどの程度のものか。また、本年の民間における考課査定割合の状況はどうか。

(7)再任用職員の支給月数の引上げはどのようになるのか。

これに対し、給与局長は次のとおり回答した。

(5)寒冷地手当について、非支給となるのは、本州の4級地の一部となる。その場合、現行の手当額で最も高いケースは扶養親族ありの世帯主で月額17,800円である。改定後の額を前提に経過措置を組むが、便宜上17,800円をもとに説明すると、令和7年度は令和6年度の3分の1相当額である6,000円程度を減じた額、令和8年度は同じく3分の2相当額の12,000円程度を減じた額、令和9年度に非支給になる。

(6)一時金の支給月数については、最終回答を待っていただきたい。民間における考課査定割合については、昨年と大きな変化はなかったので、昨年と同様、期末と勤勉それぞれに配分する方針である。

(7)再任用職員の特別給については、定年前職員の期末・勤勉手当の改定状況に応じて決定される。例えば、定年前職員がプラス0.05月や0.10月の場合、再任用職員はプラス0.05月、定年前職員がプラス0.15月の場合はプラス0.10月になる。配分は均等に期末・勤勉手当に反映させる考えである。

 続いて、森永事務局長は、「社会と公務の変化に応じた給与制度の整備」について、次のとおり見解を質した。

1 地域手当について
(1)賃金指数93.0以上の地域を支給地域にするかの判定は、広域化した都道府県単位の賃金指数という理解でよいか。
(2)中核的な市については、民間賃金の実態を踏まえて必要な補正を行うとのことだったが、都道府県単位では93.0未満で非支給地となる場合で、中核的な市が93.0以上あれば補正の対象となるという理解でよいか。
(3)10年ごととしている見直し期間を削除する理由は何か。また次の見直しの時期はいつ頃か。

2 扶養手当について
減額措置は2年間で段階的に実施するとのことだが、具体はどのようになるのか。子に関する手当について、行(一)8級職員等で3,500円、以外の職員で6,500円の手当を単純に2分の1して、子を1,500円ずつ引き上げるのか。

3 通勤手当
限度額の引き上げ等に伴い島等に通勤するための橋等への加算措置を廃止する理由は何か。

4 実施時期について
 新卒初任給の引上げを含む若年層の給与水準の引上げについて、本年の官民較差に基づく給与改定の中で先行して措置することを検討しているとのことだが、「初任給について相応の額の引上げを行う」との関係は如何か。

これに対し、給与局長は次のとおり回答した。

1 地域手当について
(1)今回の見直しは都道府県単位の見直しなので、賃金指数についても都道府県単位である。
(2)中核的な市で賃金指数が93.0以上あれば補正の対象となる。
(3)そもそも10年単位でデータを取ることについては、「長過ぎる」との意見があった。今回の見直しでは、級地区分の設定を都道府県単位に広域化する。これにより、民間賃金データの安定性が増すため、見直し期間に関する規定を廃止し、より短い期間で見直しを行うこととした。次回の見直し時期については、今回の見直しの完成時期や使用するデータの安定性等を踏まえつつ、今後検討していく。

2 扶養手当について
現在、一般の職員の配偶者に関する手当は6,500円、8級職員は3,500円である。引き下げ幅を前回の見直しを行った平成28年と同程度にするため、2年かけて実施する。具体的には、令和7年度に8級職員の手当額3,500円をなくし、7級以下の職員は令和7年度に手当額が3,000円、令和8年度に非支給とすることを想定している。
 また、子に係る手当額については、1年間で1,500円の引上げを想定している。

3 通勤手当について
島等に所在する官署では、通勤のためにやむを得ず有料の橋等を利用する場合があり、その際に高額な通勤費が発生している。現在、1ヵ月あたりの手当の支給額は普通交通機関で5万5,000円、新幹線で2万円が上限だが、今回、全体の支給額を15万円に引き上げることで、そうした通勤費もこの範囲内で対応できるようになるので、この特例は廃止するということである。

4 実施時期について
給与制度のアップデートでは、地域手当非支給地における初任給について、民間並みの水準を確保することとしている。初任給の改善は官民較差に基づく改定と共通の課題であり、本年の改定で必要な対応ができれば、令和7年4月からのアップデートにおいてさらなる対応は不要になると考える。

その後、参加した委員から、「社会と公務の変化に応じた給与制度の整備」について次のとおり発言があった。

「人事評価制度への不信感もある中で、給与制度のアップデート全体に能力・実績主義強化の印象が強い。中堅層・高齢層の職員のモチベーションを維持・向上させることが必要だ」「新幹線の通勤手当の支給要件である片道30分以上の短縮規定が廃止される場合、車での高速道路利用に関する支給要件も同様になるのか。または、別途改定が検討されるか確認したい」

これに対し、給与局長は次のとおり回答した。

「アップデートに関しては、職責重視や能力・実績に応じた処遇の幅を広げることを念頭に置いているが、偏りはないと認識している。中高齢層全般への直接の対応ではないが、新幹線通勤者や再任用職員など、様々な状況にある職員への施策も含めており、これらを全体として見ていただきたいと考えている」
「自動車の高速道路利用についても、同様に『30分要件』を廃止する」

回答を受け、森永事務局長は、「『社会と公務の変化に応じた給与制度の整備』については、多岐にわたる項目の中で、個々人にとっての影響をトータルで見たときに、プラスになる人、マイナスになる人が結果として生ずることから、実施にあたっては一定の経過措置等を設けることなどを人事院の責任において行うよう強く求めてきたところであり、今般の措置内容は、課題は残るものの、一定の配慮がなされたものと受け止める。しかしながら、賃上げ基調のもとで、来年度以降、給与改定が行われなかった場合には、実質的な賃金引き下げにつながることから、引き続き、給与改定にあたっては、公務員連絡会との間でこれまで以上に真摯に交渉・協議に臨むことを強く求めておく」と述べた。

 最後に森永事務局長が、配分については、職員団体審議官とさらに議論するよう求めたのに対し、給与局長がこれを了としたことから、「本年の最後の局長交渉となった。最終の総裁回答交渉では、われわれの要求を踏まえた前向きな回答を求める」と強く要請し、この日の交渉を締めくくった。