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~給与制度のアップデートの詳細についても質す~
公務公共サービス労働組合協議会 公務員連絡会
2024年度 公務労協情報 No. 30

2024人勧の月例給、一時金の配分等で人事院交渉実施-8/2
~給与制度のアップデートの詳細についても質す~

公務員連絡会幹事クラス交渉委員は、2日10時30分から、本年人勧における配分等について、人事院の木村職員団体審議官と交渉を実施した。
この交渉は、7月31日の書記長クラス交渉委員と給与局長の2回目の交渉で、①官民較差はプラスとなる見通し、②特別給は支給月数が引上げとなる見通し等が示されたことから、公務員連絡会の要求を実現するため行ったもの。

冒頭、高柳副事務局長が「一昨日の2回目の給与局長交渉を踏まえて、本年の給与改定について、月例給、一時金の配分の考え方を改めて伺いたい」と求めたのに対し、木村審議官は以下のとおり答えた。

1.改定の基本的な考え方について
民間給与との均衡を図るため、月例給の引上げ改定及び特別給の支給月数の引上げを行う。月例給の改定に当たっては、人材確保の観点等を踏まえ、若年層に重点を置いて、基本的な給与である俸給を引き上げる。
2.行政職俸給表(一)の改定について
初任給については、民間における初任給の動向や、公務において人材確保が喫緊の課題であること等を踏まえ、社会と公務の変化に応じた給与制度の整備に係る措置も前倒しで講じることにより、総合職試験(大卒程度)、一般職試験(大卒程度)及び一般職試験(高卒者)に係る初任給について、それぞれ大幅に引き上げることとし、初任給以外の号俸については、若年層が在職する号俸に特に重点を置くとともに、おおむね30歳台後半までの職員が在職する号俸にも重点を置いた引上げ改定を行う。その他の職員が在職する号俸については、改定率を逓減させつつ、職員団体の極めて強い要求も踏まえて、全ての職員について引上げ改定を行う。
なお、再任用職員の俸給月額(定年前再任用短時間勤務職員の基準俸給月額)についても所要の引上げ改定を行う。
3.行政職俸給表(一)以外の俸給表の改定について
行政職俸給表(一)以外の俸給表についても、行政職俸給表(一)との均衡を基本に所要の引上げ改定を行う。
4.一時金の改定について
支給月数の引上げ分は、期末手当及び勤勉手当に配分する。

回答に対し、高柳副事務局長は、まず月例給及び一時金について、次のとおり審議官の見解を質した。

1.月例給について
(1)まず初任給について、一昨日の給与局長の回答では、「初任給について相応の額の引上げを行う」とのことであったが、ただ今の回答では、総合職、一般職、高卒、大卒ともに「大幅に引き上げる」と、さらに一歩踏み込んだ表現をされた。さらに、給与局長によれば、今年の民調結果として、「地域手当非支給地で比較すると、大卒初任給については 国が1万6,000円程度下回り、高卒初任給では 国が1万1,000円程度下回っている」とのことであった。その上で給与局長からは、今回の勧告による改定によって、「地域手当非支給地においても、民間を上回る水準を確保する」との方針を示された。これらのことを総合的に勘案すれば、
①昨年、大卒初任給=11,000円、高卒初任給=12,000円の引き上げが実施されたわけだが、これらを大きく上回る初任給引上げが勧告される、と理解するがいかがか。
②昨今、国家公務員の高卒初任給が最低賃金を下回る地域がある等の報道がされている中、先ごろ厚労省の審議会において、全国平均でさらに50円を引き上げる合意がなされたところである。今回の改定により、これらは当然にクリアされるものと考えて良いか。
(2)初任給以外の月例給について、ただ今「おおむね30歳台後半までの職員が在職する号俸にも重点を置いた引上げ改定を行う。その他の職員が在職する号俸については、改定率を逓減させつつ、全ての職員について引上げ改定を行う」と、これも一昨日の給与局長の回答をより具体化した回答があった。昨年も基本的には同様の考え方で改定が行われたわけだが、逓減していった場合に、額にして最低どの程度の引上げが行われるかが、組合員、特に中高齢層職員の強い関心事項である。言うまでもなく、昨年は最低1,000円の改定が行われたところである。
その上で、これも一昨日、給与局長から、「『昨年を上回る水準』ということが皆さんからの極めて強い要求であるということを認識しつつ改定を行う」旨の決意もいただいたところであるが、当然これについても、昨年を上回る方向であると受け止めて良いか。
2.一時金について
  引上げが実施され、「支給月数の引上げ分は、期末手当及び勤勉手当に配分する」とのことである。その上で、一時金について、長年人事院は、「引き上げる場合は勤勉手当に、引き下げる場合は期末手当から」としてきたわけだが、昨年の勧告において97年以来の期末手当の引上げが行われており、我々としても、評価をしてきたところである。本年についても、民間との比較を踏まえたものであるとは言え、同様に実施される方向であることについては、改めて評価したい。官民均衡は否定しないが、公務の特性を踏まえた対応を引き続きお願いしておきたい。

 これに対し、木村審議官は次のとおり回答した。

1.月例給
(1)①どの程度の初任給の引上げが勧告されるのかについては、給与局長から回答させていただいたとおり、「地域手当非支給地においても、民間を上回る水準を確保すること」を想定した改定を考えている。具体的な改定の内容については、総裁会見で回答させていただく。
 ②また、最低賃金との関係については、勧告後にご確認いただきたい。
(2)最低どの程度の引上げが行われるかについては、給与局長の発言のとおりであり、現段階でそれ以上のことを確定的に申し上げることはできない。

2.一時金について
公務の特性を踏まえた対応の関係については、ご要望として承る。

さらに、高柳副事務局長は、次のとおり「給与制度のアップデート」その他について、審議官の見解を質した。

(1)まず、アップデートの各項目について、今回の各種見直しに伴い、給与法の改正が必要となる事項はどれかご教示いただきたい。

(2)単身赴任手当・通勤手当
①一昨日の給与局長の回答において、単身赴任手当の見直しについて言及がなかった。単身赴任手当についても、通勤手当同様、「異動直前の住居からの通勤を求める要件」があるが、これも見直しとなると考えて良いか。見直しの概要をご教示願いたい。
②新幹線特例及び単身赴任手当の支給について、専門人材の採用に限らず、要件に合致する採用者全般と考えて良いか。
(3)地域手当
①都道府県単位での大くくり化する前の問題として、現在手当が支給されている地域について、最新10年間の民賃指数を当てはめた場合、引上げになる地域と引下げになる地域とでは、おおよそどのくらいの割合になるか、正確なデータでなくとも良いので、ご教示願いたい。
②一昨日給与局長から示された「支給割合の引下げについて最大でも4ポイントまで、1年に1ポイントとし、4年間で段階的に実施」「支給割合の引上げも、引下げにより生ずる原資の範囲内で段階的に実施」という点については、この間我々が求めてきた激変緩和措置・経過措置の具体策ということで受け止め、評価したい。その上で、これらの措置とともに、激変緩和ということとは少し異なるが、異動保障の延長のみという理解で良いか。
③同じく一昨日給与局長から示された「支給割合が現行より引き上がり、道府県を上回る級地区分となる中核的な市については、道府県よりも1段階上位の級地区分とする」について、「引上げ」ではなく、現在の支給割合と同じ支給割合とするのが妥当と判断された場合は、どうなるのか。例えば、県全体としては4%支給が妥当と判断された場合において、その県内の、現在12%が支給されている中核的な市が引き続き12%が妥当と判断された場合、どのようになるのか。
④これまで検討中とされてきた各種特例、すなわち大規模空港に関する特例、医師に関する特例、特別移転官署等に関する特例などは、どうなるのか。

(4)扶養手当
①配偶者手当について、この間の民調結果では、おおむね漸減傾向にあり、昨年段階では、家族手当を支給していない事業所を含む全事業所の42%程度であったと承知している。本年の民調では、概ねどのような結果となったのかご教示願いたい。
②一方手当の額であるが、民間の家族手当の額について、昨年の民調結果では、配偶者のみの場合平均12,744円、配偶者と子1人の場合、同じく19,272円、配偶者と子2人の場合、同じく25,373円であったと承知しているが、本年の結果はどうであったかご教示いただきたい。

(5)寒冷地手当
①本年の民調では、北海道に限って寒冷地手当に類する手当の支給状況を調査したと思うが、その結果について、前回=2014年(平成26年)との比較においてどうであったか、概要をご教示いただきたい。
②一昨日給与局長が発言された内容について、改めて確認したい。
ア)「気象庁による『メッシュ平年値2020』に基づき、支給地の見直しを行う。非支給となるのは本州=4級地の一部である」との理解で良いか。
イ)一方で、「本年の民調結果を踏まえ、4級地も含めて増額改定を行う。改定は本年4月に遡って適用する」との理解で良いか。
ウ)「非支給になる地域については、額を逓減していき、最終的には2027年4月から非支給」との理解で良いか。
エ)「官署指定における居住地要件を廃止」とは、寒冷地手当支給規則の別表に示された官署指定は存置するが、そこから「おおむね一キロメートル以内の区域の全部又は一部が含まれる区域」に居住していることという要件を廃止する、との理解で良いか。

(6)特地勤務手当
7月24日の交渉において、給与局長から、「特地勤務手当については国勢調査等の結果を踏まえ、必要な検討を行う」との回答があったが、今回の勧告時報告において何らかの記載がなされると考えて良いか。

これに対し、木村審議官は次のとおり回答した。

(1)社会と公務の変化に応じた給与制度の整備に関し給与法の改正が必要となる事項についてであるが、最優秀者のボーナス上限引上げ及び特定任期付職員のボーナス拡充を除き、給与法の改正が必要になる。一方、特定任期付職員のボーナス拡充については、一般職の任期付職員の採用及び給与の特例に関する法律の改正が必要になるものと考えている。

(2)単身赴任手当・通勤手当
①単身赴任手当の見直しに当たり「異動直前の住居からの通勤を求める要件」が見直しの対象となるかについてであるが、単身赴任手当については、新たに「採用」の要件を加えるが、それ以外の支給要件について見直すことは予定していない。
②新幹線等に係る通勤手当及び単身赴任手当の支給範囲の拡大については、ご理解のとおりである。対象は専門人材の採用に限らず、要件に合致する採用者全般と考えてよい。

(3)地域手当
①地域手当の見直しにより引上げ、引下げになる地域についてであるが、地域手当については、前回の見直しの際に級地区分の変動を1段階に抑制している関係上、そもそも本来の級地区分よりも高い級地区分となっている地域があることに留意が必要である。今回の見直しは、最新の賃金指数に基づいて行うことになるが、中核的な市(都道府県庁所在地及び人口20万人以上の市)の状況を見ると、10年前と比較して、賃金指数が低下した地域の方が多い状況である。
②地域手当の見直しに係る激変緩和措置についてであるが、地域手当の見直しについては、「大くくりな調整方法への見直し」に当たり、激変緩和の観点から、支給割合の引下げ幅は最大でも4ポイントとすること、また、職員の生活への影響等を考慮して、支給割合の引下げは1年につき1ポイントとし、4年間で段階的に実施(令和10年4月完成)することとしている。なお、異動保障の延長は、「大くくりな調整方法への見直し」の観点とは別の「広域的異動の円滑化」の観点から実施するものである。
③地域手当の見直しに係る中核的な市の取扱いであるが、中核的な市について、道府県よりも1段階上位の級地区分とするのは、新しいデータに基づく格付けが現行よりも大きく引き上がる場合に限った取扱いである。したがって、挙げられた例の場合は、抑制対象とはならない。
④今回の地域手当の見直しにおいて、大規模空港区域、医師、特別移転官署等についての特例の見直しは、考えていない。

(4)扶養手当
①②民間における配偶者に家族手当を支給する事業所の状況や家族手当の支給額の状況は、これまでと大体似た傾向、つまり漸減傾向にあるようである。

(5)寒冷地手当
①民間における寒冷地手当の支給状況についてであるが、支給する事業所割合は減少しているようであり、支給額(札幌市に所在する事業所における平均支給年額)の傾向は変わらないようである。
②ア)~ウ)「非支給となるのは本州の支給地域である4級地の一部である」との理解、「本年の民調結果を踏まえ、4級地も含めて増額改定を行い、改定は本年4月に遡って適用する」との理解、「非支給となる職員については、3年間で段階的に手当額を減額し、最終的には2027年4月から非支給となる」との理解については、いずれもお示しいただいたとおりである。
エ)「官署指定における居住地要件の廃止」に係る理解についても、お示しいただいたとおりであり、概ね1キロ以内に居住することを求める手当の支給要件を廃止する。なお、官署指定の対象となる官署は今後精査し、寒冷地手当支給規則の勧告を行う予定である。

(6)特地勤務手当
現時点では、記載するものは承知していない。

また、交渉委員からは、次のとおり発言があった。

①寒冷地手当について、支給地域区分の見直しについては令和7年4月か。
②地域手当について、先ほどの回答で「中核的な市について、道府県よりも1段階上位の級地区分とするのは、新しいデータに基づく格付けが現行よりも大きく引き上がる場合」とのことだったが、仮に4%の都市が少し超えたぐらいでは上につけずに、8%を超えるような場合に1段階上に付けるということか。
③通勤手当の見直しについては、歓迎したい。その上で、更なる課題として、交通用具利用者についても、民間の状況も調べた上で、今後見直しをお願いしたい。
④月例給について、若年層から見ても、中高年層の賃金の上がり幅が大きくないことは将来への不安にもつながる。ぜひ中高年層の処遇改善についても引き続き努力願いたい。
⑤新幹線通勤手当における、「30分短縮要件」の廃止について、新規の対象者のみ適用するのか、この要件により現在対象から外れている者も適用になるのか教えてもらいたい。

 これらに対し、木村審議官は次のとおり回答した。

①寒冷地手当の支給地の見直しは、令和7年4月である。
②地域手当の引上げとなる中核的な市について、程度問題ではなく、どの支給区分に当てはまることになるのか変動を見るということである。
③交通用具利用者の問題についてエネルギー関連価格の問題など皆さんからの要求は承知している。民間の状況を見ながら検討していきたい。
④中高齢層の処遇について、繰り返しにはなるが、原資が限られる中でどこかに重点を置かざるを得ないことを理解してほしい。人事院としては組合のみなさんの声を聞いて精一杯取組んでおり、新幹線通勤者や再任用職員などの様々な職員を対象とした施策も進めようとしているし、仕事と介護の両立に関する施策も進めていこうとしている。そういうところも含めてトータルで見ていただきたい。
⑤新幹線通勤手当の見直しに関する適用対象については、勧告後に確認していただきたい。

最後に高柳副事務局長が、「給与勧告について、月例給および一時金がいずれも引上げとなり、さらに月例給については全ての俸給表の改定を行うこと、昨年に引き続き、一時金については勤勉手当のみならず期末手当の改定も行うとしたこと、これらについては、この間の我々の要求を人事院が一定受け止めたものと理解したい。6日の総裁との最終交渉においては、具体的な数字を含めて明らかにされたい。
一方、『アップデート』および寒冷地手当について、一部の手当の見直しによって、明確にマイナスになる部分があることについては、物価高騰が続き実質賃金が前年比マイナスを続ける中、関係する職員にとっては大きな痛手であり、極めて残念な措置であると指摘しておきたい。
その上で、経過措置・激変緩和措置が一定図られることについては、この間の我々の意見を人事院が一定取り入れたものと理解したい。
また、2031年に向けた60歳前後の給与カーブの在り方について、この間人事院は、公務における人事管理の在り方の変化や、民間における高齢期雇用や高齢層従業員の給与水準の状況を注視しつつ、人事管理に係る他の制度と一体で引き続き検討するとしている。言わば、『給与制度の見直し第二弾』と言えるものだと考えているが、9月以降改めて、この課題について、我々と向き合っていくことを求めておきたい。
 勧告まで、あと総裁との最終交渉を残すのみとなったが、先ほど申し上げた通り、具体的な数字を示していただいた上で、一般の公務員の気持ちに届くようなメッセージが示されることを要望しておきたい」と発言し、交渉を終えた。