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公務公共サービス労働組合協議会 公務員連絡会
2025年度 公務労協情報 No. 13

政府に2025春季要求書を提出-2/17

 公務員連絡会は2月17日、委員長クラス交渉委員が平国家公務員制度担当大臣に要求書を提出した(別紙)。要求書では、真に生活改善につながる賃金の引上げ、非常勤職員等の雇用・労働条件の改善、必要な定員の確保等を求めている。
 今後、幹事クラス交渉、書記長クラス交渉等を配置し、回答指定日(3月24日)に向け交渉を重ねていくこととしている。
 交渉の経過は次のとおり。

 平国家公務員制度担当大臣との交渉は、13時20分から行われた。
 要求提出にあたって渡邉議長は次のように述べ、今後十分交渉・協議を重ね、誠意ある回答を示すよう強く求めた。

「昨年の人事院勧告は、32年ぶりに月例給の官民較差が2%超えとなった。連合春闘を始め多くの企業で、労使ともに人への投資を重視し交渉を行った結果により、大幅な賃上げを実現したことによるものである。本年の2025春闘において、各単組・構成組織は、昨年までの流れを定着させるべく、それを上回る賃上げをめざし、既に集中的な交渉を開始したところである。
 一方で、先ごろ厚生労働省が公表した昨年1年間の実質賃金は、物価の上昇率が3.2%と高水準であったことから、前年比マイナス0.2%、3年連続でマイナスとなっている。そのため、生活が向上したと実感している勤労者は、私どもの組合員への実態調査でも少数にとどまっているのが現状である。
 このような状況のもと、政府におかれては、国民の生活向上と経済の好循環につなげるためにも、30万人に及ぶ国家公務員について、『真に生活改善につながる賃金の引上げ』が重要であるとの認識を持ってご対応いただくよう最初にお願いしておく。さらに、物価の高騰は全ての職員の生活を直撃しており、人材の定着やモチベーションの維持・向上の観点なども含め、若年層~中堅層~高齢層の、バランスの取れた賃金体系が必要であることをご認識いただくようお願いしておく。
 また、この間私どもが強く訴えてきた国家公務員における要員不足の問題については、昨年6月28日の『国の行政機関の機構・定員管理に関する方針』の見直しが行われた。そのことに改めて感謝申し上げる。
 その上で、引き続き、大規模災害やパンデミックなども念頭に置きながら、平時より必要な人員を確保し、どのような状況にも対応できる体制を構築しておくことが必要であること、これは長時間労働の解消や働きやすい職場づくりなどにも寄与するものであり、人材の確保が最大の課題となっている国家公務員の職場においては、とりわけ重要であるということも申し上げておきたいと思う。
 最後に、これから、事務レベルでの交渉を積み重ね、3月24日の最終回答の際には、平大臣から、直接、春の段階の誠意ある回答を求め、要求提出にあたっての発言とする」

 これに対して平大臣は、「まず、職員の皆様が国民全体のために献身的に職務に当たられていることに対し、敬意を表する。ただいま、要求書を受け取り、要旨は承った。要求事項については、検討の上、しかるべき時期に回答させていただく。優秀な人材を確保し、国家公務員の皆様が生き生きと働けるよう、私の立場からも国家公務員の処遇改善に向けて取り組んでいきたいと思う。引き続き、現場の実情を含め、皆様からもご提案をいただきながら、前に進めますのでご協力をお願いする」と応え、今後公務員連絡会と交渉・協議していく姿勢を示した。


(別紙)
                                2025年2月17日

内閣総理大臣
 石 破 茂  様

                                                        公務員労働組合連絡会
                                                        議 長  渡 邉  由 一
                                                         (公 印 省 略)

                            

          要 求 書

 貴職におかれましては、公務員人事行政にご尽力されていることに、深く敬意を表します。
さて、能登半島地震から1年が経過し、現場では公務・公共サービスに従事する職員が、現在も復旧・復興に向け、高い使命感と責任感を持ち、懸命に職務に取り組んでいます。こうした職員の奮闘に応えるためにも、安心して働ける環境の整備や人員確保、適切な賃金・労働条件の実現が急務です。
 現在、日本の経済情勢は依然として厳しく、長期化する物価高騰が国民生活を圧迫しています。特に、食料品やエネルギー価格の上昇が家計に大きな影響を与え、円安による輸入コストの増加も企業活動に影響を及ぼしています。実質賃金の減少が長期にわたって続く中、国民の生活水準は一層厳しい状況に置かれています。
このような状況のもと、公務・公共サービスを含むすべての労働者が、真に生活改善を実感できる賃上げが求められています。
 公務員連絡会は、こうした認識に基づき、連合2025春季生活闘争に結集し、「底上げ」「底支え」「格差是正」をめざして取組みを進めていきます。貴職におかれましては、下記事項の実現に向け、最大限努力を尽くされるよう要求します。

                                  記

1.働き方改革の推進及び賃金・労働条件の確保等について
(1) 公共サービス基本法に基づいて良質な公共サービスが適正かつ確実に実施されるよう、公務員等公共サービス従事者の社会的に公正な賃金・労働条件を確保することとし、環境整備をはかること。
(2) 働き方改革について、長時間労働の是正、働きやすい職場づくり、高齢職員の一層の活用等を進めること。

2.2025年度賃金について
(1) 長期化する物価高騰や実質賃金の減少が勤労者の生活に深刻な影響を及ぼしているため、賃金改善は最大の政策課題となっていることを踏まえ、職員に対して、真に生活改善につながる賃金の引上げを実施すること。
(2) 超過勤務手当の全額支給を前提に、独立行政法人等を含めた公務員給与の改定に必要な財源を確保すること。

3.非常勤職員等の雇用、労働条件の改善について
(1) 全ての非常勤職員について、「時給1,250円以上」を確保すること。
(2) 常勤職員と同等の勤務を行う期間業務職員には、均等待遇の原則に基づき、給与改善を図ること。また、常勤職員の給与改定が行われた場合の非常勤職員の給与改定については、改定時期など常勤職員と同様とするよう、引き続き各府省を指導すること。
(3)「期間業務職員の再採用における公募3年要件の見直し」を踏まえ、各府省においては、制度を適切に運用し、非常勤職員の雇用安定と待遇改善を図るため、周知徹底と必要な措置を講じること。
(4) 両立支援制度については、出生サポート休暇、配偶者出産休暇・育児参加のための休暇の新設および、産前・産後休暇の有給化、育児休業等の取得要件の緩和等について周知し、取得しやすい職場環境の整備を行うこと。
(5) 非常勤職員制度の抜本的改善をめざし、公務員連絡会が参加する検討の場を設置し、政府全体として解決に向けた取組を推進すること。当面、国家公務員の非常勤職員制度について、その実態を把握すること。その上で、法律上明確に位置付け、勤務条件等について、常勤職員との均等待遇の原則に基づいて、関係法令、規則を適用すること。

4.労働時間、休暇及び休業等について
(1) ワーク・ライフ・バランスを確保するため、公務における年間総労働時間1,800時間体制の確立と、ライフステージに応じ、社会的要請に応える休暇・休業制度の改善・拡充などを実現すること。
(2) 勤務時間管理システムの各府省における導入の状況および運用の実態を情報提供するとともに、それを踏まえた実効性ある超勤縮減策を各府省に求めること。また、「デジタル社会の実現に向けた重点計画」に基づく人事管理システムについても、適宜進捗状況等を情報提供すること。
(3) 定員管理について、人事院の調査によると長時間労働の要因として「恒常的な人員不足」が指摘されていることから、大規模自然災害等の緊急事態にも即時対応できる人員を平時から確保すること。また、ワーク・ライフ・バランス推進のための定員や超過勤務縮減のための定員についても継続すること。
(4) テレワークを始めとする「柔軟な働き方」の推進に当たっては、国家公務員の職場環境や職務内容が極めて多岐に亘っていることを踏まえ、機械的な数値目標や無理な計画を課すことなく、柔軟に対応すること。
(5) 2024年4月より実施されている「11時間を目安とする勤務間インターバルの確保」について、各職場において適切に実施できるよう、各府省を指導すること。

5.障害者雇用について
 公務職場における障害者雇用については、2024年4月以降、法定雇用率が段階的に引き上げられていくことを踏まえ、その達成を遵守するとともに、雇用される障害者が無理なく、かつ安定的に働き続けることができるよう、政府としての役割を適切に果たすこと。

6.女性参画の推進及び多様性の確保について
(1) 公務における女性の登用について、「第5次男女共同参画基本計画」を踏まえ、一層の女性の採用・登用と職域拡大に積極的に取り組むこと。
(2)「国家公務員の女性活躍とワークライフバランス推進のための取組指針」に基づく各府省の取組計画の着実な実施に向け、積極的な役割を果たすこと。
(3) LGBT理解増進法等を踏まえ、職場における性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する理解の増進に取り組むこと。

7.定年の段階的引上げに伴う各種施策について
(1) 高齢職員の増加に伴い、中堅・若手職員の昇格が抑制されることを避けるため、各府省における実態を踏まえつつ、来年度についても、柔軟な定員管理を措置すること。
(2) 再任用を希望する職員について、2013年の閣議決定等に基づき、フルタイムを基本とし、職員の希望に応じた再任用を実現すること。

8.福利厚生施策の充実と働きやすい職場づくりについて
(1) 公務員の福利厚生を勤務条件の重要事項と位置付け、職員のニーズ及び民間の福利厚生の正確な実態把握に基づき、その抜本的な改善・充実をはかること。
(2)「国家公務員健康増進等基本計画」等に基づき、職員の心身の健康の保持増進の推進をはかるため、政府全体としての実施体制を確立し、使用者としての責任を明確にして積極的に対応すること。
(3)「心の健康づくり」対策については、人事院の調査等によれば、精神疾患による長期病休者は大幅に増加し、深刻化していることから、管理職員の意識改革はもとより勤務条件や職場環境の改善など総合的に取り組むこととし、カウンセリングや「試し出勤」など復職支援施策を着実に実施すること。
(4) 今後の予算編成に当たっては、健康診断の充実など、職員の福利厚生施策の改善に必要な予算を確保すること。
(5) 福利厚生の重要施策であるレクリエーションについて、事業が休止されている実態を重く受け止め、その理念の再構築と予算確保や事業の復活に努めること。
(6) ハラスメントの防止について、一層有効な対策を着実に推進すること。とくに、パワー・ハラスメントについては、人事院の調査で苦情相談の3割以上を占めるなど増加傾向にあることから、防止対策については、人事院規則10-16に基づき政府全体で取り組むこと。

9.公務員制度改革について
 国家公務員制度改革基本法第12条に基づく自律的労使関係制度を確立するため、国家公務員法等改正法案の附帯決議(2014年3月12日衆議院内閣委員会及び同年4月10日参議院内閣委員会)や、この間のILOからの指摘に基づき、公務員連絡会との合意により実現すること。

10.その他の事項について
国が民間事業者等に業務委託や入札等により、事務事業の実施を委ねる場合においては、公正労働基準の遵守を必要条件とすること。

                                              以 上