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公務公共サービス労働組合協議会 公務員連絡会
2025年度 公務労協情報 No. 14

人事院に2025春季要求書を提出-2/19

 公務員連絡会は2月19日、委員長クラス交渉委員が川本人事院総裁に要求書を提出した(別紙)。
 今後、幹事クラス交渉、書記長クラス交渉等を配置し、回答指定日(3月18日)に向け交渉を重ねていくこととしている。
 交渉の経過は次のとおり。

 川本人事院総裁との交渉は、10時30分から行われた。
要求提出にあたって渡邉議長は次のように述べ、今後十分交渉・協議を重ね、誠意ある回答を示すよう強く求めた。

「本年の2025春闘において、連合傘下の各単組・構成組織は、昨年までの賃上げの流れを定着させるべく、それを上回る結果が出せるよう、既に集中的な交渉を開始したところである。一方で、先ごろ厚生労働省が公表した昨年1年間の実質賃金は、物価の上昇率が3.2%と高水準であったことから、前年比マイナス0.2%、3年連続でマイナスとなっている。そのため、生活が向上したと実感している勤労者は、私どもの組合員への実態調査でも少数にとどまっており、厳しい状況が続いているのが現状である。
 このような状況のもと、人事院におかれては、国民の生活向上と経済の好循環につなげるためにも『真に生活改善につながる賃金の引上げ』が重要であるとの認識を持って、夏の勧告に向け、ご対応いただくようお願いしておく。特に、物価の高騰は全ての職員の生活を直撃しており、人材の定着やモチベーションの維持・向上の観点なども含め、若年層~中堅層~高齢層の、バランスの取れた賃金体系の確立が必要不可欠であることをご認識いただくようお願いしておきたいと思う。さらに、勧告の内容は、地方公務員や独法・政府関係法人等の職員にも大きな影響を及ぼすことにもご留意いただきたいと思う。
 また、人事行政諮問会議については、現在最終取りまとめに向けた議論が行われているものと承知しているが、私どもとしては、多くの課題があるものと考えている。具体的な措置に向けて、公務員連絡会との十分な協議・交渉のもと検討するよう要請する。
最後に、これから事務レベルでの交渉を積み重ね、3月18日の最終回答の際には、総裁から、直接、春の段階の誠意ある回答を求め、要求提出にあたっての発言とする」

 続いて、森永事務局長が要求項目のポイントとして、全職員に対する賃金の引上げの他、60歳前後の給与カーブの連続性確保の課題、昨年の「公務員人事管理に関する報告」で言及されている比較企業規模の検討、非常勤職員等の雇用・労働条件の改善、人事行政諮問会議の情報開示の必要性等について説明した。また、回答指定日に向けて、公務員連絡会との交渉・協議を重ね、要求に対して積極的に対応するよう強く求めた。

 これに対して川本総裁は、「皆さんからの要求は承った。公務を巡る情勢は依然として厳しい状況にある。各要求事項については、今後、誠実に検討し、しかるべき時期に回答する」と応え、今後公務員連絡会と交渉・協議していく姿勢を示した。


(別紙)
                                       2025年2月19日

人事院総裁
 川 本 裕 子 様

公務員労働組合連絡会
議 長  渡 邉 由 一
(公 印 省 略)

                                                       
          要 求 書

 貴職におかれましては、公務員人事行政にご尽力されていることに、深く敬意を表します。
さて、能登半島地震から1年が経過し、現場では公務・公共サービスに従事する職員が、現在も復旧・復興に向け、高い使命感と責任感を持ち、懸命に職務に取り組んでいます。こうした職員の奮闘に応えるためにも、安心して働ける環境の整備や人員確保、適切な賃金・労働条件の実現が急務です。
 現在、日本の経済情勢は依然として厳しく、長期化する物価高騰が国民生活を圧迫しています。特に、食料品やエネルギー価格の上昇が家計に大きな影響を与え、円安による輸入コストの増加も企業活動に影響を及ぼしています。実質賃金の減少が長期にわたって続く中、国民の生活水準は一層厳しい状況に置かれています。
 このような状況のもと、公務・公共サービスを含むすべての労働者が、真に生活改善を実感できる賃上げが求められています。
 公務員連絡会は、こうした認識に基づき、連合2025春季生活闘争に結集し、「底上げ」「底支え」「格差是正」をめざして取組みを進めていきます。貴職におかれましては、下記事項の実現に向け、最大限努力を尽くされるよう要求します。

                                       記

1.賃金要求について
(1) 2025年度の給与勧告に際しては、民間賃金の実態を精確に把握するとともに、長期化する物価高騰や実質賃金の減少を踏まえ、真に生活改善につながる賃金の引上げを実現すること。
(2) 期末・勤勉手当については、支給月数の引き上げを図るとともに、引き続きそのあり方について、公務員連絡会と協議すること。

2.中長期的な賃金関連課題について
(1) 特地勤務手当の見直しについては、公務員連絡会に対し検討状況に関する情報提供を行うとともに、協議を実施すること。
(2) 交通用具使用者の通勤手当に関しては、令和7年職種別民間給与実態調査において、調査を実施した上で必要な見直しを行うこと。
(3) 2024年の「公務員人事管理に関する報告」において示された、人事行政諮問会議「中間報告」を踏まえ取り組む「職務ベースの報酬設定、能力・実績主義の徹底」に関する検討状況について、公務員連絡会と積極的に協議を行うこと。
(4) 2031年の定年引上げ完成を見据え、2021年改正国公法に基づく「60歳前後の給与カーブの連続性確保」の検討状況について、公務員連絡会に対し情報提供を行うとともに、公務員賃金全体のあり方に関する問題意識を明らかにした上で協議を行うこと。

3.非常勤職員等の雇用、労働条件の改善について
(1) 非常勤職員制度の勤務条件等について、同一労働・同一賃金及び常勤職員との均等待遇の原則に基づいて、関係法令、規則を適用すること。
(2) 非常勤職員の給与を1時間当たり「1,250円以上」とすること。
(3) 常勤職員の給与改定が行われた場合の非常勤職員の給与改定については、改定時期など常勤職員と同様とするよう、引き続き各府省を指導すること。
(4)「期間業務職員の再採用時における公募3年要件の見直し」について、人材局長通知、企画課長通知および「Q&A」等を各府省に周知徹底するとともに、各府省での適切な運用状況を検証し、雇用安定に資するよう実態把握と公務員連絡会への情報提供を行うこと。
(5) 全ての非常勤職員の実態について調査・把握すること。その上で法令上の位置づけの明確化も含めて課題の解決を図ること。
(6) 非常勤職員の休暇制度等について、常勤職員との均等待遇を図るとともに、無給休暇の有給化等さらなる改善を図ること。また、事務総長通知(2024年12月2日)に基づき、子の看護等休暇の取得要件拡大や病気休暇(私傷病)の有給化等の改正内容について、各府省へ周知徹底し、利用の促進を図ること。
(7) 非常勤職員制度の改善に関するこれまでの取組を踏まえ、制度の抜本的改善に向け、公務員連絡会と十分協議すること。

4.労働時間の短縮及び休暇、休業等について
ワーク・ライフ・バランスを確保するため、公務における年間総労働時間1,800時間体制を確立することとし、次の事項を実現すること。
(1)「上限を超えて超過勤務を命ぜられた職員の割合等」について、本府省・地方、他律部署・自律部署のいずれにおいても、ほとんど改善が見られないことから、引き続き「特例業務」の範囲や「他律部署」の指定の厳格化や、各府省に対する指導を強化すること。
(2) ライフステージに応じ、社会的要請に応える休暇・休業制度を改善・拡充することとし、休暇・休業制度の利用実態を検証し、制度の改善や環境整備に努めること。とくに、家族介護を理由とした離職を防止するため、仕事と介護の両立支援制度を利用しやすい環境を整備すること。
(3) 仕事と家庭の両立に向けて、各府省に対し、第216臨時国会で法改正された育児・介護に関わる各種休暇・休業制度および人事院規則の改正内容を着実に実施するよう指導すること。その上で、育児に係る両立支援制度の対象となる子の年齢の引上げや、制度を利用できる期間の延長、さらに介護に係る制度の利用期間の拡大等、必要な措置を講じること。
(4) 2024年4月から導入されている「11時間を目安とする勤務間インターバルの確保」について、各府省に対し周知徹底と取組強化を図ること。また、同じく4月に導入された在宅勤務手当の運用状況についても明らかにすること。

5.障害者雇用について
 公務職場における障害者雇用については、2024年4月以降、法定雇用率が段階的に引上げられていくことを踏まえ雇用される障害者が、無理なく、かつ安定的に働き続けることができるよう、人事院としての役割を適切に果たすこと。

6.女性参画の推進及び多様性の確保について
(1) 公務における女性の登用について、「第5次男女共同参画基本計画」を踏まえ、一層の女性の採用・登用と職域拡大に積極的に取り組むこと。
(2)「国家公務員の女性活躍とワークライフバランス推進のための取組指針」に基づく各府省の取組計画の着実な実施を図ること。
(3) LGBT理解増進法等を踏まえ、職場における性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する理解の増進に取り組むこと。

7.定年の段階的引上げに伴う各種施策について
(1) 高齢職員の増加に伴い、中堅・若手職員の昇格が抑制されることを避けるため、各府省における実態を踏まえつつ、来年度についても級別定数に関して柔軟な措置を講じること。
(2) 再任用を希望する職員については、2013年の閣議決定等を踏まえ、フルタイムを基本とし、その希望に応じた再任用が実現できるよう、各府省に対して働きかけを行うこと。

8.福利厚生施策の充実及び働きやすい職場づくりについて
(1) 公務員の福利厚生を勤務条件の重要事項と位置付け、職員のニーズ及び民間の福利厚生の正確な実態把握を行い、その抜本的な改善・充実に向けた提言を行うこと。
(2) 福利厚生の重要施策であるレクリエーションについて、事業が休止されている実態を重く受け止め、その理念の再構築と予算確保や事業の復活に努めること。
(3)「心の健康づくり」対策については、勤務条件や職場環境の改善など総合的に取り組むこととし、ストレスチェックや「職員の心の健康づくりのための指針」等に基づく施策の着実な推進を図ること。
(4) ハラスメントの防止について、問題の重要性を認識し、一層有効な対策を着実に実施すること。とくに、パワー・ハラスメントの防止対策については、人事院規則10-16等に基づいた各府省の取組状況を把握し、必要な指導を行うこと。
(5) 2024年の「公務員人事管理報告」で示されたカスタマーハラスメント対策について、民間や自治体の先進事例を参考にし、対策強化を図ること。
(6) 精神疾患による長期病休者が大幅に増加していることから、人事院が令和7年度に各府省へ提供を予定している「より実践的な職場復帰支援手法」について、公務員連絡会に情報提供を行うとともに、包括的な対策の強化を図ること。

以 上