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公務公共サービス労働組合協議会 公務員連絡会
2025年度 公務労協情報 No. 18

2025春季要求で書記長クラスが内閣人事局と交渉-3/12

 公務員連絡会書記長クラス交渉委員は、3月12日15時より内閣人事局人事政策統括官と交渉を行い、2025春季要求に対する現段階での回答を引き出した。
 冒頭、森永事務局長が現段階の回答を求めたのに対し、松本人事政策統括官は「先月17日に提出された要求書について、現時点における回答をさせていただく」と述べ、次のとおり回答した。

1.2025年度賃金について
 国家公務員の給与改定に当たっては、国家公務員の適正な処遇の確保や、国民の理解を得る観点からも、また、労働基本権制約の代償措置といった観点からも、第三者機関としての人事院が専門的見地から行った官民比較に基づく人事院勧告を尊重することが政府としての基本姿勢である。
 今後も、諸情勢を踏まえつつ、対応していく。

2.非常勤職員等の雇用、労働条件の改善について
 給与については、人事院において、常勤職員との均衡をより一層確保することを目的として、一昨年4月に非常勤職員の給与に関する指針を改正し、給与法等の改正により常勤職員の給与が改定された場合には、非常勤職員の給与についても、常勤職員に準じて改定するよう努める旨を追加し、この指針に沿った適切な給与支給が行われるよう、各府省を指導していくものと承知している。
 なお、給与の遡及改定については、昨年12月に、人事院と内閣人事局から改めて周知を図ったところ。
 引き続き、人事院とも連携し、各府省に対して、非常勤職員に関する給与や休暇等の制度の適切な運用を促してまいりたい。
 非常勤職員制度については、非常勤職員には様々な勤務形態や類型があることから、一律に検討することは困難と考えられるが、人事院において、適切な運用の在り方について検討されるものと承知しており、内閣人事局としては、人事院における検討を踏まえ、適切に対応してまいりたい。

3.労働時間、休暇及び休業等について
 超過勤務の縮減のため、各府省等は、「国家公務員の女性活躍とワークライフバランス推進のための取組指針」等に基づき、業務の廃止・効率化、デジタル化、マネジメント改革推進のための取組等を進めている。今後とも、勤務時間などの基準を定めている人事院と連携して超過勤務の縮減に取り組んでまいりたい。
 定員管理については、国民のニーズを踏まえて、新たな行政需要に的確に対応していくためには、既存の業務を不断に見直し、定員の再配置を推進していくことが重要である。
 その上で、新たな行政課題や既存業務の増大に対応するため、各府省官房等から現場の実情を聴取しつつ必要な行政分野に必要な増員を行っているところ。
 引き続き、既存業務の見直しに積極的に取り組みながら、内閣の重要政策に適切に対応できる体制の構築を図ることとしている。

4.女性参画の推進及び多様性の確保について
 女性の採用・登用の推進については、各府省の取組を毎年度フォローアップするとともに、女性の国家公務員志望者拡大に資する戦略的広報の実施、若手からのキャリア形成支援、管理職の意識改革などに取り組んでいるところであり、引き続き、各府省の取組を促進させるようなサポートを行い、女性活躍の動きを更に加速してまいりたい。

5.定年の段階的引上げに伴う各種施策について
 定員管理について、定年引上げ期間中においては、令和6年度から2年に1度、定年退職者が発生しないことによる新規採用への影響を緩和するための措置を行うこととしており、令和6年度は、特例的な定員を1年間の期限付の定員として1,829人措置することとした。
 令和8年度についても、各府省等の状況を踏まえ、必要な対応を行ってまいりたい。

6.公務員制度改革について
 昨年6月のILO総会で採択された議長集約も踏まえ、昨年12月に使用者団体、労働者団体及び政府の三者での意見交換会を開催したところ。
 自律的労使関係制度については、多岐にわたる課題があることから、引き続き皆様と誠実に意見交換しつつ、慎重に検討してまいりたい。  
 これらの回答を受け、森永事務局長は次のとおり、松本人事政策統括官の見解を質した。 

1.本年の給与改定について
 ①人事院勧告を尊重することが政府としての基本姿勢であること、②諸情勢を踏まえつつ対応していく、とのことだが、昨年は、11月29日の人勧の取扱い閣議決定まで、8月の人事院勧告から3ヵ月以上というかなりの時間を要する事態となった。様々に検討する要素があったことだとは思うが、「諸情勢」とは、具体的には何をさすのか。
 その上で、本年の給与改定に向けては、総理自ら、「人財尊重社会における経済政策にとって、最重視すべきは賃上げ」だと施政方針演説でも触れられており、政労使が一致して「賃上げをする」という認識は、昨年以上に、確固たるものとなっていると感じている。今年の官民較差については、民間春闘の動向を注視するほかないが、春の段階では、政府に対しても「真に生活改善につながる賃金の引上げ」を強く求めておくが、政府の認識如何。

2.「人事行政諮問会議」について
 現在、人事院の「人事行政諮問会議」において、「職務ベースの報酬設定、能力・実績主義の徹底」などを始めとして様々な公務における課題について、最終取りまとめに向けた議論が行われているが、昨年11月以降の会議の状況が現時点において一切公表されておらず、公務員連絡会としては、その動向を注視している。政府としても、オブザーバーで同会議に出席をしているが、諮問会議における最終取りまとめに向けて、どのようなスタンスで臨んでいるのか、また、今後、どのように対応していくのか、明らかにされたい。

3.公務における働き方改革について
 とりわけ、長時間労働の是正に向けては、この間も労使で共通認識を持ち、超過勤務削減の取組を進めてきたが、残念ながら目に見える形での成果(削減)に結びついていない。この点に対する、政府としての認識如何。
 特に、「上限を超えて超過勤務を命ぜられた職員の割合」に大きな変化が見られない。特例業務として、「国会対応業務」があげられているが、この点に関わっての政府の取組如何。また、この間、実施していた「国会対応業務に関するデータ集計」についての現状如何。
 その他の要因として「予算・会計関係業務」や「人事・給与関係業務」という経常事務が一定の事由となっていることは、大きな問題だと認識しているところ。要員不足なのか、業務の効率化を図ることができない構造的な問題があるのか。政府としての認識如何。
 一方、先日(4日)、平大臣はデジタル担当としての会見で、AIを活用して業務の効率化を進めていくとしているが、政府における具体の取組如何。
 間もなく、新年度を迎えることになるが、例年3月下旬に内閣総理大臣決定を行っている「令和7年度の人事管理運営方針」についての検討状況及び新規施策等があれば明らかにすること。

4.非常勤職員関係について
 公務労協が組合員を対象に昨年10月から11月に実施した「仕事と生活に関する調査」では、職場において非常勤職員が年間を通して働いていること(国家公務員計で68.8%)、また、常勤職員と同じ業務に従事しているとの回答が48.8%という結果になっている。さらに、非常勤職員がいなければ通常業務が立ちゆかないとの回答も52.3%と過半を超えており、非常勤職員の存在が不可欠なものであることが改めて明らかになっている。内閣人事局においては、人事院とも連携をはかりながら、非常勤職員の待遇改善に向けて様々に取組を進めていることは一定評価するが、引き続き、雇用安定に向けた対応をはかることはもとより、短時間公務員制度の導入に向けた検討など、任用制度のあり方も重要な課題となると公務員連絡会としては捉えているが、政府の見解如何。

5.定員問題について
 公務労協の調査では、「職場の要員状況」に対する不満が、6割(60.6%)を超えている実態にあり、過去の調査結果と比較しても増加傾向にある。一義的には、各省における機構・定員要求と要員の確保に向けた努力が重要だと認識しているが、改めて、業務を遂行する上で必要な人員の確保に向けた対応を政府に対して強く求めるが、現状の認識如何。

 これに対して、松本人事政策統括官は、次のとおり回答した。

1.本年の給与改定について
「諸情勢」とは、経済社会情勢などを勘案するものである。
 国家公務員の給与改定に当たっては、国家公務員の給与を情勢に適応させるとの原則の下、人事院勧告制度を尊重することが基本姿勢であり、この点に変わりはない。
 民間企業からの回答状況に関する報道については、承知している。民間の賃金水準が改善されれば、それを受けて国家公務員の給与水準の改善も期待できると考えている。

2.「人事行政諮問会議」について
 現時点では、最終提言の取りまとめに向けた議論がなされている状況と認識しているが、人事院に設けられた有識者会議からの人事院総裁に対する提言であって、当局としてはコメントする立場にない。
 いずれにせよ、当局としては、最終提言が取りまとめられた後に、まずは人事院において検討がなされるものと承知しているが、人事院から相談があれば、適切に対応してまいりたい。

3.公務における働き方改革について
 現在、各府省においてテレワーク等の柔軟な働き方や業務見直しなどの取組を進めており、国家公務員の働き方改革は着実に進んでいるものと認識している。
 政府としては、「業務効率化・デジタル化の推進」や、「マネジメント改革」などの働き方改革をより一層推進し、引き続き、人事院と連携して長時間労働を是正するとともに、職員が働きがいをもって、その意欲と能力を最大限に発揮し活躍できるよう取り組んでまいりたい。
 国会対応業務については、質問通告の早期化に係る国会のご理解に加え、コミュニケーションツールの活用による答弁作成などの効率化も図られてきたところと認識しており、引き続き、国会対応業務の効率化の取組を進めてまいりたい。
 また、今国会における「国会対応業務に関するデータ集計」に関しては、現在調査中である。
「予算・会計関係業務」や「人事・給与関係業務」といった経常業務は極めて大事な業務であると認識している。一方で、業務の効率化の余地はあると認識しており、今後労働力不足が見込まれる中で、こうした業務について、行政DXも活用しながら安定的に遂行されることが重要と考えている。
 今後、労働力が不足する中で、行政サービスの水準を維持するために、生成AIを活用する場面も出てくると考えられるので、そうした検討も必要ではないかと考える。
 特に、生成AIの活用は業務効率化に資する可能性があると考えており、こうした観点も含め、働き方改革の推進に取り組んでまいりたい。
「令和7年度における人事管理運営方針」については、御指摘の長時間労働の是正を含め、国家公務員のなり手不足、若手職員の就労意識の変化、職員の背景・事情の多様化など国家公務員の人事管理に関して指摘されている様々な課題を踏まえつつ、年度内のとりまとめに向けて現在検討を進めているところである。

4.非常勤職員関係について
 ご指摘の趣旨は理解するところ、繰り返しになるが、内閣人事局としては、非常勤職員制度についての人事院における検討を踏まえ、適切に対応してまいりたい。

5.定員問題について
 定員について、強い申し入れがあったことは担当に伝えておく。

 また、交渉委員からは次のとおり発言があった。
「定年延長が始まっているが、60歳超の職員は、現場で引き続き必要な人材として活躍している。一方、処遇は定年延長者で7割、再任用職員ではフルタイムでも6割や5割にとどまり、モチベーション維持のためにも、処遇改善が課題となっている。また、地方では希望どおりにフルタイム再任用とならないケースも多く、是正に向けて定員管理の面からも対応が必要だ」
「定員が増えても、職場では長期病休者などで実員が少ない中で業務が回らない状況も見られる。現場の実態を踏まえ、省庁ごとの事情も加味した上で、適切な定員の検討をお願いしたい」

 これに対し松本人事政策統括官は「高齢層職員に関しては、労働力が少なくなる中で活躍の場を確保する重要性を認識しており、引き続き民間の動向も注視していきたい。定員については、実員と実員の乖離に加え、実員が確保されていても様々な事情で実務が回らない場合があるとの指摘は担当に伝えておく」と答えた。

 最後に、森永事務局長は「公務員連絡会の要求事項に関わって、春季段階の審議官及び統括官との交渉で、政府とは問題意識を共有することが出来たと認識するところ。
国家公務員をはじめ公務を取り巻く環境・情勢は、大きく変化していく時期にあると認識をしている一方で、国民生活の安心・安全のために行政が果たすべき役割は変わらないことから、これまで以上に、現場で働く職員のために賃金・労働条件の改善はもとより、職場環境の整備に政府として万全を期していただきたい。
 24日に予定している平国家公務員制度担当大臣との最終回答では、これまでの交渉等も踏まえて、要求に沿った前向きな回答がなされるよう求めておく」と強く要請し、交渉を終えた。