2025春季生活闘争中央行動を実施-3/13
公務員連絡会は13日、2025春季要求の実現をめざし、中央行動を実施した。
日比谷公園大音楽堂で開かれた中央集会には、全国から約850人が参加。真に生活改善につながる賃金の引上げ、非常勤職員の待遇改善、超過勤務の縮減施策の具体化等を求め、回答指定日に向けて闘う決意を固めた。

中央集会では、冒頭、主催者を代表して渡邉議長が「まず、2月26日に発生した岩手県大船渡市の山林火災により被災された方々にお見舞いを申し上げるとともに、昼夜を問わず災害対応に尽力する公務・公共の皆さんに敬意を表する。公務員連絡会として、被災地支援に取り組んでいく。
ロシアのウクライナ侵略から3年が経過し、多くの命が失われている。国連安保理では紛争終結を求める決議が採択されたが、ロシア非難の表現はなく、2月28日のゼレンスキー・トランプ会談も決裂した。侵略を許さず、公正な和平が求められる。イスラエル・ハマス間の停戦も含め、戦争終結への努力が必要である。
国内では、3月4日に2025年度予算案が可決されたが、施策の必要性や財源確保の議論は深まらなかった。高校授業料無償化拡充などによる財政への影響を注視し、必要に応じ国会対策を講じる。7月の参院選では与党過半数割れを目指し、推薦候補の必勝に向けた取り組みを強化する。
1月の消費者物価指数は前年同月比3.2%上昇し、41カ月連続の上昇となった。一方、2024年の実質賃金は0.3%減で3年連続マイナスとなり、大幅な賃上げが不可欠である。
連合は、定昇込み5%以上、中小企業では18,000円・6%以上の賃上げを目安とし、3月11日~13日(本日)を回答のヤマ場におき、労使交渉に全力を挙げている。3月3日時点の連合集計による要求平均は19,244円・6.09%と昨年を上回るが、中小企業の対応は厳しく、価格転嫁と適正取引の推進が課題である。
公務員連絡会は2月に平国家公務員制度担当大臣、川本人事院総裁に要求書を提出し、賃上げや労働条件の改善に向け交渉を進めている。本日の書記長クラス交渉を支援し、3月18日の川本総裁交渉、24日の平大臣交渉に向け闘争態勢を強化する。
なお、日比谷野音での集会は今回が最後となる。新たな手法での集会開催へ移行し、全国の仲間とともに要求実現へ取り組んでいく。公務員連絡会は民間春闘と連帯し、本日の行動を貫徹する。共に頑張ろう」と強く訴えた。
続いて、基調提起を行った森永事務局長は、佳境を迎える連合の民間春闘情勢を報告。さらに、公務における春闘課題に触れつつ、この後行われる人事院との書記長クラス交渉における重要ポイントを提起した。
構成組織の決意表明では、石川沙也香(全財務中央本部書記次長)、亀瀧真人(自治労本部総合労働局・労働条件局長)、山崎卓也(日教組中央執行委員)が、それぞれの取組課題を報告し、全力で闘い抜く決意を表明した。
その後参加者は、人事院前交渉支援行動を実施し、「公務員の賃金を引き上げろ」「長時間労働を是正しろ」「非常勤職員の待遇を改善しろ」などと力強くシュプレヒコールを繰り返した。行動を終えた参加者は日比谷大音楽堂に再参集し、総括集会で人事院局長交渉の報告を受けた。
森永事務局長は交渉の概要を報告した上で、本年の人事院勧告・人事委員会勧告に向け、連合民間春闘にそれぞれの立場で最大限結集することを呼びかけた。
そして最後に、渡邉議長の発声による「団結がんばろう」で集会を締めくくった。
この日実施された、人事院職員福祉局長および給与局長との交渉経過は次のとおり。
<職員福祉局長交渉の経過>
荻野職員福祉局長との交渉は、14時00分から行われた。
森永事務局長が、現時点での回答を求めたのに対し、荻野職員福祉局長は次のとおり答えた。
1.労働時間の短縮、休暇等について
○ 超過勤務の縮減等については、勤務時間調査・指導室において、各府省を直接訪問して勤務時間の管理等に関する調査を令和4年度から実施しており、他律部署・特例業務の範囲が必要最小限のものとなるよう指導するなどしている。令和6年度は、調査・指導を更に充実させる観点から、対象となる職員数を増やして実施しており、引き続き、適切に各府省に対する指導を行ってまいりたい。
○ 両立支援制度を含む職員の休暇、休業等については、従来より情勢適応の原則の下、民間における普及状況に合わせることを基本に、適宜見直しを行ってきたところである。今後も社会情勢等を踏まえつつ、制度の改善や環境整備に努めていきたい。また、民間法制における両立支援制度の拡充等の内容も踏まえた制度の改正については、改正内容が着実に実施されるよう、各種資料の更新・充実や各府省等への周知・徹底を図ってまいりたい。
○ 勤務間のインターバル確保については、人事院規則や局長通知の内容を各職場へ浸透させることが重要と考えており、職員向けの分かりやすい周知資料を作成・公表しているほか、各府省に対しても、現在実施している勤務間のインターバル確保に係る調査・研究事業などの機会を通じ、随時周知依頼を行っているところである。同調査・研究事業の結果も踏まえながら、引き続き、周知・取組の強化を図っていきたい。
2.非常勤職員の休暇等について
○ 非常勤職員の任用、勤務条件等については、その適切な処遇等を確保するため、法律や人事院規則等で規定しており、これまでも職員団体の意見も聴きながら民間の状況等も考慮しつつ見直しを行ってきているところである。
○ 非常勤職員の休暇制度等については、業務の必要に応じてその都度任期や勤務時間が設定されて任用されるという非常勤職員の性格を考慮しつつ、民間の状況等を考慮し、必要な措置を行っている。近年の措置を挙げれば、夏季休暇の新設、出生サポート休暇、配偶者出産休暇及び育児参加のための休暇の新設並びに産前休暇・産後休暇の有給化などがある。また、令和6年12月には、病気休暇(私傷病)について有給の休暇へ見直すとともに、子の看護休暇等及び短期介護休暇の取得要件の緩和などの見直し(令和7年4月施行)を行ったところである。
今後も、引き続き民間の状況等について注視し、必要に応じて検討を行ってまいりたい。
3.障害者雇用について
○ 令和6年6月1日現在において、国の機関全体の実雇用率は3.07%で、おおむね全ての機関において法定雇用率(2.8%)を達成している。なお、国の法定雇用率は令和8年7月より3.0%に引き上げられることとなっている。
人事院としては、公務の職場における障害者雇用に関する理解を促進し、障害を有する職員が必要な配慮を受けられるよう、「職員の募集及び採用時並びに採用後において障害者に対して各省各庁の長が講ずべき措置に関する指針」を平成30年12月に発出し、各府省に対して、当該指針に沿って適切に対応することを求めている。
このほか、厚生労働省と連携して、各府省における合理的配慮事例の情報共有などの支援を行っており、今後とも、必要に応じて各府省への支援を行ってまいりたい。
4.女性参画の推進及び多様性の確保について
○ 女性参画の推進については、人事院としても、これまで柔軟な働き方に対応した勤務時間制度等の整備、超過勤務の縮減、仕事と生活の両立支援策の拡充やハラスメント防止対策など、男女ともに働きやすい勤務環境の整備を積極的に進めており、女性の採用・登用の拡大に向けた様々な施策を行ってきているところである。引き続き、各府省の具体的な取組が進むよう支援してまいりたい。
○ 性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性については、人事院規則において職員はセクシュアル・ハラスメントをしてはならないと規定するとともに、運用通知において偏見に基づく言動がセクシュアル・ハラスメントに含まれることを制度上明確にするなどの施策を講じている。また、研修等により各府省への周知・啓発を行うとともに、相談体制も整備している。これらの施策や取組に基づき、各府省において適切な措置が講じられることにより、性的指向・性自認に関する差別やハラスメントのない職場環境を実現していくことが重要と認識している。
今後も、LGBT理解増進法に基づく基本計画や指針等の策定に向けた政府全体での検討を踏まえながら、適切に取り組んでまいりたい。
5.健康・安全の確保等について
○ 心の健康づくり対策については、「職員の心の健康づくりのための指針」を基本として、管理監督者をはじめとする職員に対する研修の充実・強化、職員の意識啓発のためのガイドブックの作成、心の不調を未然に防止するためのストレスチェックの導入、心の不調への早期対応のための「こころの健康相談室」の運営、円滑な職場復帰の促進や再発防止のための「こころの健康にかかる職場復帰相談室」の運営等に取り組んでいる。
また、ストレスチェック制度については、同制度の更なる活用や、職場環境改善の取組がより効果的に行われるよう、各府省への普及啓発を行い、一層の取組を促進している。
さらに、「こころの健康相談室」については、より相談しやすいよう、全ての窓口でオンライン相談に対応できる体制としている。引き続き、オンライン相談の活用を周知するなど、取組を一層推進してまいりたい。
○ このほか、公務における心の健康の問題による長期病休者数は増加傾向にあり、未然防止や早期発見・早期対処の取組の必要性はもとより、円滑に職場に復帰させ、再発を防止するための取組も極めて重要と認識している。このため、これらのために、健康管理担当、人事管理担当、管理職等が取り組むべき内容等を取りまとめた物を令和7年度中に各府省へ提供することとしており、職員団体に対しても提供をさせていただく予定である。
○ ハラスメント防止対策については、ハラスメント防止等の措置を講じるための人事院規則等に基づき、これまで、研修教材の作成・提供や、各府省のハラスメント相談員を対象としたセミナーの開催など、各府省に対する支援を行ってきている。
また、昨年度から「幹部・管理職員ハラスメント防止研修」について、組織マネジメントの観点も反映したより実効性のあるものとなるよう見直して実施する等の取組を行っている。
今後も、各府省のハラスメント防止対策の実施状況を把握するほか、各府省のハラスメント相談員を対象としたセミナーの開催、研修用教材の改訂等を外部の専門家と連携しつつ行うなど、各府省においてハラスメント防止対策が適切に実施されるよう、必要な支援・指導を行ってまいりたい。
○ カスタマー・ハラスメント対策については、昨年12月のハラスメント防止週間において、カスタマー・ハラスメントへの対応に特化したポスターを作成し各府省に提供したところ。今後、これらに加え、幹部・管理職員等を対象とした研修等を通じて、各府省には、カスタマー・ハラスメントから職員を守る責務等について認識を広げていくとともに、民間における取組や各府省の対処事例を収集しつつ、更なる対応について研究し提供するなどして、各府省を支援してまいりたい。
これらの回答に対し、森永事務局長は以下の課題について、荻野職員福祉局長の見解を質した。
1.長時間労働の是正について
① 公務における働き方改革について、とりわけ、長時間労働の是正に向けては、公務員連絡会としても人事院及び政府との間で共通認識を持ち、超過勤務削減の取組を進めてきたが、残念ながら目に見える形での成果(削減)に結びついていない。人事院におかれては、川本総裁が自ら先頭に立ち、職員が働きやすい職場環境づくり、超過勤務の縮減に向けて精力的に取り組んでいること、また、「勤務時間調査・指導室」による様々な取組を行っていることは一定評価するが、大きな変化が起こっていないと認識しているところ。改めて現状についての人事院の認識如何。
② とくに、特例業務として、「国会対応業務」のみならず、その他の要因として「予算・会計関係業務」や「人事・給与関係業務」という経常事務が一定の事由となっていることは、大きな問題だと認識しているところ。要員不足なのか、業務の効率化を図ることができない構造的な問題があるのか。人事院としての認識如何。
また、2019年4月1日に超過勤務命令を行うことのできる上限の時間を人事院規則等で定める等の措置が講じられてから6年が経過するところ、「他律的業務の比重が高い部署の指定」や「特例業務」の判断等を含む実際の運用が正しく行われているのか否か、措置内容の見直しを含めて検証する段階に入っているのではないか。これまでの「勤務時間調査・指導室」の取組において、制度面で改善が必要な課題等は浮き彫りになっていないのか状況如何。
③ 毎年同じ内容を繰り返し指摘しているが、勤務時間の「見える化」が極めて重要である。「勤務時間管理システム」を含む「人事管理業務に係るシステム化」の早期構築により、業務の効率化をはかることが求められると認識しているが、検討段階から遅々として進んでいない印象を持たざるを得ない。人事院としての具体の対応等如何。
2.非常勤職員関係について
公務労協が組合員を対象に昨年10月から11月に実施した「仕事と生活に関する調査」では、非常勤職員がいなければ通常業務が立ちゆかないとの回答が52.3%と過半を超えており、非常勤職員の存在が不可欠なものであることが改めて明らかになっている。人事院においては、内閣人事局とも連携をはかりながら、非常勤職員の待遇改善に向けて様々に取組を進めていることは一定評価するが、引き続き、雇用安定に向けた対応をはかることはもとより、任用制度のあり方も重要な課題となると公務員連絡会としては捉えているが、人事院の見解如何。
3.その他の課題について
国家公務員の兼業に関するアンケート調査を人事院と内閣人事局で実施し、先月末にその結果(概要)が公表された。今回、調査を実施した背景及び目的如何。
また、報道によれば、貴院の担当者が、「兼業を柔軟に認めることが、人材確保や離職防止につながる可能性もある。ニーズを踏まえ、見直しを進めたい」と述べているが、人事院として、アンケート結果に対する受け止めも含めて認識如何。
これに対し、荻野職員福祉局長は次のとおり回答した。
1.長時間労働の是正について
① 現在、平均超過勤務時間数や上限超過のケースが増加しており、令和6年1月の能登半島地震や豪雨の影響も大きいと考えられる。一方で、本府省ではわずかに減少の兆しも見られる。調査指導室の体制強化も図っており、今後も、各府省への注意喚起を継続し、対策を進める。職員団体の意見も踏まえ、新たな施策を検討しながら、粘り強く取り組んでいく。
② 特例業務は、大規模災害など特に緊急を要する業務を示すが、会計業務や人事業務が全く該当しないわけではない。一方で、経常的な業務の整理も必要であり、各府省の意見を伺いたいと考えている。各府省には、人事院規則や通知を通じて、特例業務や他律部署の指定を必要最小限にするよう求めており、調査時にも指導を行っている。また、業務の重複や簡素化の可能性についても意見を伺い、必要に応じて検証・対応を進める。アンケートやヒアリングを活用し、課題を把握した上で、解決可能なものについては適切に対応していく。
超勤縮減の成果は十分に表れていないため、引き続き粘り強く取り組む必要がある。制度施行から6年が経過し、全体の縮減を進めつつ、重点的な取り組みも検討すべきと考えている。超勤の上限規制には6種類の基準があるが、特に月100時間や複数月80時間といった、いわゆる過労死ラインに該当する点に着目し、重点を置いた対策を進めることが重要だと考える。
③ 勤務時間の「見える化」は非常に重要であり、各府省とも意見交換を重ねている。勤務時間管理システムについては、外からは進捗が見えにくいかもしれないが、デジタル庁、内閣人事局、人事院が協力し、着実に進めている。
2.非常勤職員関係について
非常勤職員の休暇については適宜対応している。任用面については、ご指摘のあった52.3%という数値や職員団体の皆様の認識も踏まえ、担当へ伝えておく。
3.その他の課題について
昨年の勧告時に兼業制度の見直しを検討すると打ち出し、その一環として職員アンケートや民間企業へのヒアリングを実施した。結果として、実際に兼業経験のある職員は数%だったが、約3分の1が兼業希望と回答し、特に20〜30代や経験者採用の職員に高い傾向が見られた。理由としては、新たな知見・スキルの習得や趣味・特技の活用が挙げられている。今後、この結果を踏まえ、各府省や職員団体と意見交換を進めていきたいと考える。
また、交渉委員からは、「政府も超過勤務問題を重視し、本年度から超勤縮減のための5年間の時限措置として100人の要員を措置している。これに関する分析や、要員の増員提言などについて、何か考えはあるか」との意見があり、これに対し、荻野職員福祉局長は「各省へのヒアリングの際に確認しているが、現段階では『足りない』といった要望は聞いていない」と回答した。
最後に、森永事務局長から「この間も、長時間労働の是正をはじめとする働き方改革は、職場における最重要の課題として、人事院とも認識を共有しながら改善に向けて取組を進めてきた。公務員連絡会は、引き続き、全ての職員が働きやすい環境の整備に向けて、人事院との協議を通じた改善を追求していくので、改めて積極的な対応を図るとともに、本日の議論も踏まえて、18日には、要求に沿った前向きな総裁回答がなされるよう求めておく」と要請し、職員福祉局長との交渉を締めくくった。
<給与局長交渉の経過>
佐々木給与局長との交渉は、14時30分から行われた。
森永事務局長が、現時点での回答を求めたのに対し、佐々木給与局長は以下のとおり答えた。
1.賃金要求について
○ 最近の経済情勢についてみると、2月の月例経済報告は、景気は「一部に足踏みが残るものの、緩やかに回復している」との基調判断を維持しており、先行きについては、「雇用・所得環境が改善する下で、各種政策の効果もあって、緩やかな回復が続くことが期待される。ただし、欧米における高い金利水準の継続や中国における不動産市場の停滞の継続に伴う影響など、海外景気の下振れが我が国の景気を下押しするリスクとなっている。また、物価上昇、通商政策などアメリカの政策動向、中東地域をめぐる情勢、金融資本市場の変動等の影響に十分注意する必要がある」等としているところである。また、1月の景気動向指数の速報においては、「下げ止まりを示している」との基調判断を示しており、今後の景気の動向を注視している。
○ 次に雇用情勢についてみると、本年1月の有効求人倍率は1.26倍と昨年同月比で0.01ポイント低下し、また、完全失業率は2.5%と昨年同月比で変わりはなかった。
○ 今年の春闘では、連合は、賃上げ要求について「経済社会の新たなステージを定着させるべく、全力で賃上げに取り組み、社会全体への波及をめざす。すべての働く人の生活を持続的に向上させるマクロの観点と各産業の『底上げ』『底支え』『格差是正』の取り組み強化を促す観点から、全体の賃上げの目安は、賃上げ分3%以上、定昇相当分(賃金カーブ維持相当分)を含め5%以上とし、その実現をめざす」との目標を掲げ、その実現に向けて取組を進めることとしているものと承知している。
経団連は、「ここ2年間で醸成されてきた賃金引上げの力強いモメンタムを社会全体に『定着』させ、『分厚い中間層』の形成と『構造的な賃金引上げ』の実現に貢献することが、経団連・企業の社会的責務といえる。その達成の鍵は、働き手の7割近くを雇用する中小企業と、雇用者数全体の4割近くを占める有期雇用等労働者の賃金引上げが握っている。とりわけ、中小企業における賃金引上げには、適正な価格転嫁と販売価格アップが不可欠である。こうした認識の下、各企業には、これまでの『賃金決定の大原則』を深化させた『賃金・処遇決定の大原則』に則った積極的な検討と実行を求めたい」とした上で、「月例賃金(基本給)の引上げにあたっては、『賃金・処遇決定の大原則』に基づき、制度昇給の実施はもとより、ベースアップを念頭に置いた検討が望まれる」としているところである。
今後順次行われる経営側からの回答の動向を注視していくこととしている。
○ いずれにしても国家公務員の給与について、人事院としては例年と同様、情勢適応の原則に基づき、国家公務員の給与と民間企業の給与の実態を精緻に調査した上で精確な比較を行い、必要な勧告を行うことを基本に臨むこととしている。
2.中長期的な賃金関連課題について
○ 特地勤務手当等については、国勢調査や全国道路・街路交通情勢調査の最新の結果等の分析を現在進めており、令和7年度に支給官署の見直しの成案が得られるよう、必要な検討を行ってまいりたい。
交通用具使用者の通勤手当については、民間企業における通勤手当の支給状況について定期的に調査を行い、その結果を踏まえて手当額を改定している。今後とも、ガソリン価格の動向にも留意しつつ、定期的に民間企業の支給状況を把握し、ガソリン価格の大きな変動が相当期間継続することが見込まれ、民間企業の距離段階別定額制の支給月額との格差が一定程度引き続く場合には、民間企業の距離段階別定額制の支給状況を踏まえて、必要な検討を行ってまいりたい。
職務ベースの報酬設定、能力・実績主義の徹底に必要となる施策の実装に向けては、人事行政諮問会議の議論も踏まえつつ、職員団体を含む関係者の意見も聴きながら、必要な検討を行ってまいりたい。
65歳定年の完成を視野に入れた60歳前も含めた給与カーブの在り方については、段階的に定年が引き上げられる中での公務における人事管理の在り方の変化や、民間における高齢期雇用や高齢層従業員の給与水準の状況を注視しつつ、職員団体の意見も聴きながら、職員の役割・貢献に応じた処遇の観点から、人事管理に係る他の制度と一体で引き続き検討を行ってまいりたい。
3.非常勤職員の給与について
〇 非常勤職員の給与については、平成20年8月に非常勤職員の給与に関する指針を発出し、各府省において適正な給与の支給が行われるよう、必要な指導を行ってきている。この指針については、非常勤職員の処遇を確保する観点から累次改定を行ってきており、期末手当及び勤勉手当に相当する給与の支給に関して取り組むべき事項を追加するなどの見直しを行ったほか、令和5年4月からは、給与法等の改正により常勤職員の給与が改定された場合には、非常勤職員の給与についても、常勤職員に準じて遡及改定するよう努める旨を追加したところである。各府省においては、この指針に基づく取組が進んでいるところであり、引き続き、常勤職員の給与との権衡をより確保し得るよう取り組んでまいりたい。
4.高齢者雇用施策について
〇 定年年齢の引上げ等について
定年の段階的引上げに係る各種制度が各府省において円滑に運用されるよう、引き続き、制度の周知や理解促進を図るとともに、運用状況の把握に努め、必要に応じて適切に対応してまいりたい。
定年の段階的引上げに伴う級別定数措置については、今後とも、役降り後の職務や異動先、ポスト数のほか、定年引上げ後の昇格ペースを含む人事運用などに関する各府省・人事グループの検討を踏まえた上で、必要な級別定数を措置することとしている。
また、再任用を希望する職員については、定年の段階的引上げ期間中の暫定再任用制度においても、できるだけ職員の希望が叶い活躍していただけるよう、人事院としても引き続き状況の把握に努め、必要な取組を進めてまいりたい。
これらの回答に対し、森永事務局長は以下の課題について、佐々木給与局長の見解を質した。
1.賃金要求について
① 2025春季生活闘争を始めとする取り巻く情勢についての認識及び人事院勧告に向けた基本的なスタンスは例年同様であることは受け止める。
公務員連絡会としては、本年の給与改定に向けては、総理自ら、「人財尊重社会における経済政策にとって、最重視すべきは賃上げ」だと施政方針演説でも触れられており、政労使が一致して「賃上げをする」という認識は、昨年以上に、確固たるものとなっていると感じている。今年の官民較差については、民間春闘の動向を注視するほかないが、春の段階では、人事院に対しても「真に生活改善につながる賃金の引上げ」を強く求めておくが人事院の認識如何。
本年も給与改定勧告に向けて大きな焦点となると認識している、初任給の引上げに関わっては、今次春闘にかかる報道を見る限り、ここ数年の傾向から大きな変化は見られず、さらに加速しているとの印象を持っているところ。その意味では、本年も、初任給及び若年層のより一層の処遇改善をイメージしてしまうが、現行制度においては、民間準拠という前提のもと、世代間にどのような処遇を行うのかは、あくまで配分の問題である。
春の段階で官民較差がどの程度になるか見通せない状況ではあるが、必要不可欠なのは、若年層の処遇改善に対する中堅・高齢層の納得と理解であり、そのことを軽視した対応は、率直に言ってモチベーションの低下を始め組織全体への悪影響として作用しかねないということを強く認識するよう人事院には改めて求めておくが、局長の見解如何。
② 一時金の期末・勤勉手当の割合については、ここ数年で民間の考課査定割合とほぼ均衡していると認識している。引き続き、民間賞与の状況を注視する必要はあるが、能力・実績主義徹底という名の下に、過度な対応を行うことがあってはならないということを春の段階では強く主張しておくが見解如何。
③ 例年通りの日程感であれば、夏の勧告に向け4月下旬頃から本年の職種別民間給与実態調査が行われる。これまで、公務員給与を巡っては、時々の社会経済情勢を背景に厳しい批判にさらされてきたことを決して忘れてはならない。また、国会での給与法等の審議においても様々に指摘がなされており、決して、取り巻く情勢を含めて安定的ではないと認識をする必要があると考えている。その上で、昨年の勧告時報告で「官民給与の比較を行う際の企業規模の検討」について言及をしているが、人事院における問題意識及び検討状況等如何。
2.その他の賃金課題について
①「社会と公務の変化に応じた給与制度の整備」については、昨年の勧告において、様々な課題で、私たちとの交渉・協議を経て具体的な措置が図られ、その多くは本年4月から施行される。この間、給与局の担当者には、丁寧にわれわれとの協議へ対応いただいたことはその努力を多とするところ。その上で、とくに地域手当をめぐっては、段階的に実施されること、今後の見直しは10年からより短期間で行われること、最大20%の支給割合の差の在り方なども今後検討するとされているが、現段階において、これからのスケジュール感含めて検討状況如何。
② また、定年年齢が65歳の完成型を見据えた60歳前後の給与カーブの連続性確保という極めて重たい課題も残っている。人事管理に関する他の制度と一体で引き続き検討を行うとの回答であったが、現段階で、検討に向けたイメージを共有しておくべきと考えるが如何。
③ 定年の段階的引上げ期間中の暫定再任用制度における給与等の改善については、昨年の勧告において公務員連絡会や各府省からの強い要望も踏まえて一定程度の改善がはかられたことは評価する。一方で、賃金が仕事に見合わないという強い不満が、われわれの組合員の意識調査からも明らかになっているところ、とくに一時金の支給月数について、定年前職員と同様とするよう求める声が非常に強くある。定年前再任用短時間勤務職員の処遇が現行の再任用制度を前提としていることからも、改善を図るべきと考えるが認識如何。
④ 人事院の令和7年度予算に関わって、「時代の変化に応じた適正な給与の実現」をはかるため、「職務に応じた報酬水準の在り方等に係る調査研究」を行うとし、令和6年補正予算でその経費として1,400万円が、また、組織・定員において、給与局に給与調査研究室長、官民給与調査研究官が設けられることとされているが、これらの具体について明らかにすること。
これに対し、佐々木給与局長は次のとおり回答した。
1.賃金要求について
① 今春闘の状況については、中小企業を含む民間企業の実態をしっかり把握し、対応していくことが重要である。配分問題については、昨年の給与法改正時にも議論され、公務の人材確保が厳しい中で若年層に重点を置いた改定を行った。その結果、中高齢層の改定率は相対的に低くなったが、全職員への給与引き上げや期末・勤勉手当の支給月数引き上げ、給与制度の包括的見直しを行った。
公務の給与制度については、民間動向や人事管理上の課題を踏まえ、引き続き適切に対応し、若年層以外の職員にも職務に応じた給与を確保するための改善を進めていく。民間初任給や官民較差を考慮しながら、対応策を検討していく必要がある。
② 期末・勤勉手当の配分は、民間賞与の考果査定分の割合を考慮して決定しており、最近の改定で一般職員の勤勉手当と民間賞与の考果査定分の割合が均衡している。昨年の特別給引き上げ分は、期末・勤勉手当に均等に配分している。今後も民間賞与の状況を踏まえて検討していく。
③ 昨年の勧告時報告で官民給与の比較対象企業規模に言及し、給与法改正法案の質疑で人材確保の危機的状況について問題意識を示した。人事行政諮問会議や参与会、公務員問題懇話会等における有識者の指摘も踏まえ、人材確保の要請も考慮した適切な報酬水準の設定に向けて具体的な検討を進める。
2.その他の賃金課題について
① 地域手当については、完成形に到達するまでに4年を要する見込みである。現時点で明確なスケジュールはないが、4年後を見据えて次の段階に向けた検討を進めていく考えである。
② 給与のあり方については、60歳前も含めた議論が必要と認識している。ただ、現時点では、まだ具体的なイメージはなく、検討を進め、示せる段階になったら議論したいと考えている。
③ 定年前再任用短時間勤務職員の給与については、再任用制度を基にして現行制度が作られた。再任用制度の給与は、民間の再雇用者の給与水準を参考に設定した経緯があり、現在も毎年民間の給与水準を確認しているが、大きな変化は見られない。再任用職員に関しては、転居を伴う異動などの勤務環境の変化を踏まえ住居手当を支給するなど、随時の見直しを行っている。問題意識は理解しているが、直ちに常勤職員と同じ一時金の支給水準にするのは難易度が高い問題だと考えている。
④ 職務に応じた報酬水準の設定に関する調査研究については、採用年次や年齢にとらわれず、職務ベースでの人事制度や、民間の報酬水準データを活用し、ポジションごとの役割に基づいて給与水準を管理・比較する方法などを考えているが、具体的な内容については、現在検討中である。
給与調査研究室については、職務に応じた俸給水準や民間の職務給の動向に関する調査研究を行うため、法人調査室を廃止して新たに設置するものである。
また、交渉委員からは、
「最近の賃上げに対し、中堅層・高齢層から不満の声が上がっており、特に高齢層は賃上げ基調の中でも置き去りにされていると感じている。一方、若年層も将来の賃金制度に不安を抱えている。賃金配分は公務と民間共通の課題であり、各世代間のバランスを取ることが重要で、中高齢層にも光を当てた制度作りが必要である」
「現場の再任用職員から、これまでと業務がほとんど変わらないにも関わらず、処遇だけが下がることへの不満の声が上がっている。制度創設時の対応については理解するが、現場では業務内容が変わらない中で処遇が低下する状況に不満が強い」
「再任用職員については、特に一時金に関して常勤職員と同等を求める声が圧倒的に多いため、その点を強調しておきたい」
「交通用具使用者の通勤手当について、2014年の引き上げ以降、ガソリン価格の高騰や消費税率の引上げがあったにもかかわらず、見直しが行われていない。特に地方では、駐車場負担も含めマイカー通勤者の負担が大きいとの声もあり、通勤手当の増額について積極的な対応を求める」との発言があった。
最後に、森永事務局長から「公務員連絡会としてその動向を注視している人事行政諮問会議について、直近では3月10日に会議が開催され、最終提言に向けて有識者5名による精力的な議論が行われていると承知しているが、昨年11月以降の状況がまったく明らかにされていない。『職務ベースの報酬設定、能力・実績主義の徹底』などを始めとして、公務における様々な課題が取り上げられており、われわれの賃金・労働条件に直結する議論も行われている。今後、人事院が最終提言も踏まえた個別課題の検討にあたっては、結論ありきで拙速に進めることなく、初期段階から、公務員連絡会との十分かつ丁寧な交渉・協議、合意に基づく対応を強く求めておく。
最後に、改めて、春季段階では、全ての職員の『真に生活改善につながる賃金の引上げ』と『若年層、中堅層、高齢層のバランスの取れた賃金体系の確立』を求め、18日には、要求に沿った前向きな総裁回答がなされるよう求めておく」と要請し、佐々木給与局長との交渉を締めくくった。