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公務公共サービス労働組合協議会 公務員連絡会
2025年度 公務労協情報 No. 22

人事院、政府から春の段階の回答引き出す-公務員連絡会は回答を確認し、人勧期闘争への決意固める「声明」を発出-

 公務員連絡会は、3月18日に川本人事院総裁と、3月24日に平国家公務員制度担当大臣と、それぞれ2025年春季要求に関する交渉を実施し、春の段階における最終的な回答を引き出した。

 公務員連絡会は、代表者会議を開催し、「これらの回答はいずれも、春季における課題認識を共有するとともに公務員連絡会の意見を聞きながら検討を進めていく姿勢を確認したものの、要求に対して明確には応えておらず、決して十分とは言えない内容である。しかし、人事院勧告を基本とする賃金・労働条件決定制度のもとで、交渉過程において、各課題の現段階における関係当局の考え方や進捗状況を明らかにさせることができたことを踏まえ、春の段階における交渉の到達点と受け止める。今後、人事院勧告期に向け闘争態勢を堅持・強化していく」との声明を確認した。また、3月25日を基本に全国統一行動を実施し、今後の取組に対する決意を固める観点から、各構成組織は、その実情に応じた行動を実施することを確認した。

 人事院総裁および国家公務員制度担当大臣との交渉経過は次のとおり。

<人事院総裁交渉の経過>

 川本総裁との交渉は、3月18日10時30分から行われた。冒頭、渡邉議長は、「2月19日に、2025年の春季要求書を提出して以降、交渉・協議を積み重ねてきた。本日は、この間の交渉経過を踏まえ、総裁から春の段階の最終回答をいただきたい」として、2025春季段階の最終回答を求めた。

-人事院総裁回答-

 まず始めに、全国各地の各職場で勤務している国家公務員の皆さんが、日夜を問わず日々職務に精励していることに対し、心より感謝と敬意を表する。それでは、2月19日に公務員連絡会から提出のあった要求に対する、現段階における人事院の考え方や取組について回答する。本年の民間の春闘は、今月12日の大手企業の集中回答日以降、順次明らかになっている。ここまでの状況をみると、高水準の回答がなされている例も見られる。人事院は、今後、大手企業の妥結・回答状況に加えて、中小企業を含めた民間の動向を注視していく考えである。

1.賃金の改善について

 人事院は、労働基本権制約の代償措置としての勧告制度の意義や役割を踏まえ、情勢適応の原則に基づき、必要な勧告を行うことを基本に臨むこととしている。

 俸給や一時金は、国家公務員の給与と民間企業の給与の実態を精緻に調査した上で、適切に対処する。

 諸手当は、民間の状況、官民較差の状況等を踏まえ、必要となる検討を行っていく。

 賃金の改善については、このほかにも様々な要求をいただいている。

 特地勤務手当等については、令和7年度に支給官署の見直しの成案が得られるよう、必要な検討を行っていく。

 自動車等を使用して通勤する職員の通勤手当については、今後とも、ガソリン価格の動向にも留意しつつ、定期的に民間企業の支給状況を把握し、必要な検討を行っていく。

 職務ベースの報酬設定、能力・実績主義の徹底に必要となる施策の実装に向けては、人事行政諮問会議の議論も踏まえつつ、職員団体を含む関係者の意見も伺いながら、必要な検討を行っていく。

 定年の引上げに伴う給与カーブの在り方については、公務における人事管理の変化や、民間における高齢層従業員の給与水準の状況等を注視しつつ、職員団体の意見も伺いながら、職員の役割・貢献に応じた処遇の観点から、他の制度と一体で引き続き検討を行っていく。

2.労働時間の短縮、休暇等について

 超過勤務の縮減については、勤務時間調査・指導室において、超過勤務時間の適正な管理について指導を行うとともに、他律部署と特例業務の範囲が必要最小限のものとなるよう指導を行ってきている。令和6年度には調査・指導を更に充実させており、引き続き適切に各府省に対する指導を行っていく。

 両立支援、職員の休暇、休業等については、これまでも民間の普及状況等を見ながら改善を行ってきた。引き続き、職員団体の意見も伺いながら必要な検討を行っていく。

 勤務間のインターバル確保については、制度の内容の各職場への浸透が重要である。調査・研究事業の結果も踏まえながら、引き続き周知・取組の強化を図っていく。

3.非常勤職員の処遇改善について

 非常勤職員の任用、勤務条件等については、その適切な処遇等を確保するため、法律や人事院規則等で規定しており、これまでも民間の状況等も考慮しつつ改善を行ってきた。引き続き、職員団体の意見も伺いながら必要な検討を行っていく。

 非常勤職員の給与については、指針に基づく各府省の取組が進んでいる。指針に基づく各府省の取組状況については、定期的にフォローアップし、必要な指導を行うなど、引き続き、常勤職員の給与とのバランスをより確保しうるよう取り組んでいく。

4.高齢者雇用について

 定年の引上げについては、定年の段階的引上げに係る各種制度が各府省において円滑に運用されるよう、引き続き、制度の周知や理解促進を図るとともに、運用状況の把握に努め、適切に対応していく。

5.障害者雇用について

 人事院は、公務の職場における障害者雇用に関する理解を促進し、障害を有する職員が必要な配慮を受けられるよう平成30年12月に指針を発出し、各府省に対して、当該指針に沿って適切に対応することを求めている。

 このほかにも、厚生労働省と連携して、各府省における合理的配慮の事例共有などの支援を行っており、今後とも、必要に応じて適切に対応していく。

6.女性参画の推進及び多様性の確保について

 女性参画の推進については、これまで柔軟な働き方に対応した勤務時間制度等の整備、超過勤務の縮減、仕事と生活の両立支援策の拡充やハラスメント防止対策など、男女ともに働きやすい勤務環境の整備を積極的に進めてきた。引き続き、各府省の具体的な取組が進むよう支援していく。

 性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性の確保については、性的指向や性自認に関する偏見に基づく行動がセクシュアル・ハラスメントに含まれることを制度上明確にし、典型的な言動を示すとともに、研修等による周知・啓発や相談体制の整備などの施策を講じている。今後も、LGBT理解増進法に基づく基本計画や指針等の策定に向けた政府全体での検討を踏まえながら、適切に取り組んでいく。

7.健康・安全確保等について

 ハラスメントの防止については、今後も、各府省のハラスメント防止対策の実施状況を把握するほか、セミナーの開催や研修用教材の改訂など、各府省に対する支援・指導を行っていく。

 カスタマー・ハラスメント対策については、研修等を通じて、各府省に対し、カスタマー・ハラスメントから職員を守る責務があることについて認識を広げていくとともに、更なる対応について研究するなどして、各府省を支援していく。

8.その他

 人事行政諮問会議において最終提言の取りまとめに向けた議論が重ねられてきた。今後、人事行政諮問会議における議論や最終提言も踏まえ、取組を進めていくこととなるが、その際には、職員団体の意見も伺いながら検討を行っていく。

 この回答に対し、渡邉議長は、勧告期を視野に入れて次のとおり見解を示した。

1.連合の2025春季生活闘争についてであるが、報道にある通り、3月14日時点で、平均賃金方式の組合の加重平均は17,828円・5.46%となり、昨年同時期を0.18ポイント上回った。また、賃上げ分が明確にわかる組合の賃上げ分は12,571円・3.84%となり、同じく0.14ポイント増となり、集計を開始した2015闘争以降で最も高い数値となっている。一方、物価高騰は今なお収まっておらず、公務員を含む勤労者の実質賃金はマイナスのままとなっている。このような情勢を踏まえ、要求書にも示した通り、「若年層~中堅層~高齢層のバランスの取れた賃金体系の確立」が極めて重要であり、このことを改めて求めておきたいと思う。そのため、人事院においては、本年の勧告に向けて、職種別民間給与実態調査、官民比較を適切に行い、全職員の十分な賃金・労働条件を確保するという人事院の責務を果たすことを強く求めておく。

2.「中期的な賃金課題」である、「職務ベースの報酬設定、能力・実績主義の徹底に必要となる施策の実装」あるいは「65歳定年の完成を視野に入れた60歳前も含めた給与カーブの在り方」についてである。これらについて、人事院は、まだ具体的な方向性を示していないが、いずれも全ての職員に多大な影響を与えるものであることは確実である。また、本日時点までに、人事行政諮問会議の「最終提言」は明らかになっていないが、これも具体的な方向性によっては、大きな議論を生むものと承知している。そのため、これらの検討に当たっては、拙速に過ぎることなく、公務員連絡会との十分な交渉・協議、合意に基づく対応を強く求めておく。

3.心の健康の問題による長期病休者や、パワハラを始めとするハラスメントの問題についてである。残念ながら、人事院の調査でも、私どもの調査でも、これらは増加傾向にあり、深刻化している実態にあると考えられる。個々の職員が、明日への活力をもって業務にいそしむためには、まずは働きやすい職場、風通しの良い職場であることが大前提である。私どもも、現場に近い立場で様々努力して参るが、人事院におかれてもより一層の努力をお願いしておく。

4.非常勤職員の処遇改善と雇用の安定、再任用職員の賃金水準、「柔軟な働き方」に関する適切な運用など、引き続き、人事院の役割を十分に発揮していただくことを求めておきたいと思う。

 最後に渡邉議長は、「本日の回答は、人事院の春の段階の最終回答として受け止め、組織に持ち帰って確認したい」と述べ、春季要求をめぐる交渉を締めくくった。


<国家公務員制度担当大臣交渉の経過>

 平国家公務員制度担当大臣との交渉は、3月24日11時30分から行われた。

 冒頭、渡邉議長は、「2月17日に要求書を提出して以降、事務当局と交渉・協議を積み重ねてきた。本日は、この間の交渉経過を踏まえ、大臣から春の段階の最終回答をいただきたい」と述べ、2025春季段階の最終回答を求めた。

-国家公務員制度担当大臣回答-

 優秀な人材を確保し、国家公務員の職員の皆様が働きがいを持って生き生きと働けるよう、私の立場からも国家公務員の処遇改善に向けて取り組んでいきたい。

 引き続き、現場の実情を含め、皆様からもご提案をいただきながら、前に進めますので、皆様方のご協力をお願いする。

 令和7年度の給与については、人事院勧告を踏まえ、国政全般の観点から検討を行い、方針を決定したいと考えている。その際には、皆様とも十分に意見交換を行う。

 非常勤職員については、引き続き、適正な処遇が確保されるよう、関係機関とも連携して、必要な取組を進めてまいる。

 自律的労使関係制度については、多岐にわたる課題があることから、引き続き皆様と誠実に意見交換しつつ、慎重に検討してまいる。

 最後になるが、今後とも皆様とは誠意を持った話合いによる一層の意思疎通に努めてまいる。

 この回答を踏まえ、渡邉議長は次の3点について要請した。

1. 連合の2025春季生活闘争についてであるが、報道にある通り、3月19日時点で、平均賃金方式の組合の加重平均は17,486円・5.40%と、昨年同時期を0.15ポイント上回った。また、賃上げ分が明確にわかる組合の賃上げ分は12,312円・3.79%と、同じく0.15ポイント増となり、集計を開始した2015闘争以降で最も高い数値となっている。一方、物価高騰は今なお収まっておらず、公務員を含む勤労者の実質賃金はマイナスのままとなっている。このような情勢を踏まえ、要求書提出時にも申し上げた通り、「真に生活改善に繋がる賃金引上げ」が必要であることを改めて強調しておきたい。予期せぬパンデミックや激甚・頻発化する自然災害への対応などに現場で奮闘するすべての職員の労苦に報いるべく、政府におかれては、人事院勧告制度の尊重を基本に、適切な賃金・労働条件を確保することを強く求めておく。

2. 要員確保の課題についてである。指摘されている通り、少子高齢化、人口減少が急速に進む中で、労働市場は単一であるから、公務だけが十分な人員を確保するということは困難だと承知している。そのため、AIを活用した業務の効率化なども重要であることは私どもも十分認識しているところである。一方で、地方の出先機関など、多くの現場を抱えた立場からすると、デジタル化できない業務も大変多いのが実態である。この点について、引き続きご認識いただき、十分な予算と人員の確保に向けご努力いただきたいと思う。

3. 最後に、その意味でも重要なのが、働きやすい職場作りであると考えている。残念ながら、公務職場における、心の健康の問題による長期病休者や、パワハラを始めとするハラスメントの問題は、増加・深刻化しているものと認識している。新規採用者をいかに確保するか、ということも大切であるが、今いる職員の離職防止、モチベーションの維持・向上という点を重視していただき、人事行政を推進していただきたいと思う。引き続き、われわれも現場から取組を強化していく。

 そのうえで渡邉議長は、「本日は、春季の最終回答において、大臣から、我々との間で、『誠意を持った 話合いによる一層の意思疎通に努める』との決意が示されたことを確認し、ただ今の回答を、春の段階の政府からの最終回答として受け止め、組織に持ち帰って確認したい」と述べ、交渉を終えた。

以 上


【2025春季生活闘争に関わる公務員連絡会の声明】

声  明

1.公務員連絡会は、18日に人事院総裁と、そして本日国家公務員制度担当大臣と、それぞれ交渉を持ち、2025年春季要求に対する回答を引き出した。

2.2025春季生活闘争において、連合各構成組織・各組合は、連合の「賃上げ分3%以上、定昇相当分を含め5%以上」「中小労組などは格差是正分1%以上を加えた18,000円以上・6%以上の賃上げ」を目安とする方針のもと、昨年を上回る要求をもって労使交渉に臨んだ。

3月14日時点の連合の集計では、平均賃金方式の760組合の加重平均は17,828円・5.46%となり、昨年同時期比0.18ポイント増となった。賃上げ分が明確に分かる649組合の賃上げ分は12,571円・3.84%(同0.14ポイント増)となった。また、300人未満の中小組合(351組合)は、14,320円・5.09%で、昨年同時期比0.67ポイント増となった。中小組合の賃上げ率が5%以上となるのは、1992闘争(5.10%)以来33年ぶりである。

さらに、有期・短時間・契約等労働者の賃上げ額は、時給75.39円(同4.29円増)と、昨年同時期を上回るとともに、時給の引上げ率は6.50%(同0.03 ポイント増)と、一般組合員(平均賃金方式)をも上回っている。

3.このような中、公務員連絡会は連合に結集し、「真に生活改善につながる賃金の引上げ」を掲げ、公務・公共部門で働くすべての労働者の待遇改善をめざし、2025春季生活闘争を闘ってきた。2月17、19日の要求書提出以降、3月3、5日の幹事クラス交渉、12、13日の書記長クラス交渉を精力的に積み上げてきたところである。また、3月13日には、全国からの参加者を得て、中央行動を実施してきている。交渉過程において、公務員連絡会は、賃金引上げのほか、「60歳前後の給与カーブの連続性確保」や人事行政諮問会議「最終提言」に向けた検討状況、非常勤職員の処遇改善、超過勤務の縮減と要員の確保等の課題を中心に、現段階の考え方を質してきた。

4.委員長クラス交渉委員による最終交渉で、人事院総裁からは、①俸給や一時金は、国家公務員の給与と民間企業の給与の実態を精緻に調査しその精確な比較を行い、適切に対処する、②特地勤務手当等や交通用具使用者の通勤手当について、必要な検討を行う、③定年の引上げに伴う、給与カーブの在り方については、他の制度と一体で検討を行う、④超過勤務の縮減について、適切に各府省に対する指導を行う、⑤非常勤職員の給与について、常勤職員の給与とのバランスをより確保しうるよう取り組んでいく、等の回答があった。

また、国家公務員制度担当大臣からは、①優秀な人材を確保し、国家公務員が働きがいを持って生き生きと働けるよう、国家公務員の処遇改善に向けて取り組む、②令和7年度の給与については、人事院勧告を踏まえ、国政全般の観点から検討を行い、方針を決定する、③非常勤職員については、適正な処遇が確保されるよう関係機関とも連携して必要な取組を進める、④今後とも連絡会とは誠意を持った話合いによる一層の意思疎通に努める、等との回答があった。

5.これらの回答はいずれも、春季における課題認識を共有するとともに公務員連絡会の意見を聞きながら検討を進めていく姿勢を確認したものの、要求に対して明確には応えておらず、決して十分とは言えない内容である。しかし、人事院勧告を基本とする賃金・労働条件決定制度のもとで、交渉過程において、各課題の現段階における関係当局の考え方や進捗状況を明らかにさせることができたことを踏まえ、春の段階における交渉の到達点と受け止める。今後、人事院勧告期に向け闘争態勢を堅持・強化していく。

6.実質賃金のマイナスが続く中、中高齢層を中心に、組合員の不満感が増している。そのため、2025年度賃金については、好調な民間春闘の妥結状況を踏まえつつ、「若年層~中堅層~高齢層のバランスの取れた賃金体系の確立」を求めていく。2024勧告において人事院が示した、人事行政諮問会議「中間報告」等を踏まえた各種取組課題については、いずれも重要な内容が含まれることから、人事院に情報開示を求めつつ、我々との誠実な交渉・協議を求める。

  長時間労働の是正については、改めて、政府、人事院の果たすべき役割を追求するとともに、労使間での協議を強化し、実質的な改善を図る。

 臨時・非常勤職員については、我々の要求もあり、月例給や一時金の改善、任用のあり方の見直し、両立支援や休暇制度の改善などが図られてきているが、さらなる処遇改善と雇用安定を求め取組を強化する。

  大規模災害が引き続き発生し、国民生活が脅かされる状況が続く中、公務・公共サービスの重要性がますます増大していることを踏まえ、中央・地方ともに、人員の維持・確保のために必要な施策を強力に推進することを求める。

7.公務員連絡会は、国民の安心・安全の確保に向け、公務・公共サービス従事者として十分な役割と責任を果たしていく。また今後の、中小・地域民間労組、独立行政法人等関係組合の交渉強化に連帯し、すべての労働者の賃金引上げを実現するため、連合、公務労協に結集し、全力をあげる。

2025年3月24日

公務員労働組合連絡会