人勧期要求をめぐり連絡会幹事クラスが人事院交渉-7/10
公務員連絡会幹事クラス交渉委員は7月10日10時30分から、2024年人勧期要求に関わり、木村人事院職員団体審議官との交渉を実施した。交渉冒頭、高柳副事務局長が「6月19日に本年の人事院勧告に関わる要求書を人事院総裁に提出した。要求に対する現時点での回答を伺いたい」と求めたのに対し、木村審議官は「令和6年勧告期要求について、現段階における検討状況についてお答えする」として次の通り回答した。
1.勧告等について
(1) 勧告作業について
今年の職種別民間給与実態調査は、4月22日から6月14日までの期間で実施したところであり、現在集計中である。
本年も労働基本権制約の代償機関として、人事院としての責務を着実に果たすよう、国家公務員の給与と民間企業の給与の精緻な調査に基づき、その精確な比較を行い、必要な勧告、報告を行いたいと考えている。
(2) 賃金の改善について
月例給与・一時金については、現在、民調結果を集計中であり、今の段階では何とも申し上げられない状況である。
本年においても民調の結果に基づき、適切に対処したいと考えている。
(3) 諸手当について
諸手当については、民間の状況、公務の実態等を踏まえ、職員団体の御意見もお聴きしながら、必要となる検討を行っていくこととしたい。
なお、寒冷地手当については、令和4年4月に気象庁が公表した「メッシュ平年値2020」の内容等について分析を進めるとともに、本年の職種別民間給与実態調査において、民間における同種の手当の支給状況を調査しているところであり、これらの結果を踏まえ、本年、見直しの勧告を行うことを予定している。
特地勤務手当等については、国勢調査や全国道路・街路交通情勢調査の最新の調査結果等の分析を進め、必要な検討を行ってまいりたい。
2.「社会と公務の変化に応じた給与制度の整備」について
社会と公務の変化に応じた給与制度の整備については、まずは、現下の人事管理上の重点課題に対応するため、①人材の確保への対応、②組織パフォーマンスの向上、③働き方やライフスタイルの多様化への対応のために必要な制度整備に取り組むこととしている。
地方機関への配属も多い一般職試験(大卒・高卒)の初任給水準については、地域手当非支給地における民間並みの水準を確保するとしている。具体的な水準については、本年の「職種別民間給与実態調査」の結果を踏まえながら検討してまいりたい。
勤勉手当については、職員の能力・実績をより給与に反映する措置内容の一つとして、特に高い業績を挙げた者に、より高水準の勤勉手当を支給することを可能とするため、「特に優秀」区分の成績率の上限引上げを検討している。職員の能力・実績に基づく給与という観点から、職員の勤務実績が人事評価により的確に反映されることが重要であると認識している。
通勤手当については、新幹線通勤による通勤手当額を見直し、広域的な異動の円滑化を図ることとしている。通勤手当は、職員の通勤に要する経費を補助することを目的とするものではあるものの、官民比較の対象外給与であり、特に遠距離の通勤者に対し、より高額の手当を支給することについては、民間企業における通勤手当の支給状況を踏まえ、各方面の理解を得ながら合理性や納得性のある内容となるよう必要な検討を進める必要がある。具体的な見直しの内容については、民間企業における通勤手当の支給状況も踏まえて必要な検討を進めていきたい。
新幹線通勤に係る通勤手当や単身赴任手当の適用範囲については、「採用」の場合にも拡大し、より人材確保に資する方向で検討を行っている。なお、在職者の取扱いについては、引き続き検討を行っていくこととしている。
地域手当については、最新の民間賃金の反映と併せ、現在、市町村を単位としている級地区分の設定について、広域化するなど大くくりな調整方法に見直す方向で検討を進めている。
扶養手当については、共働きの増加等を受けて、近年、公務において配偶者に係る扶養手当を受給する職員の割合、民間において配偶者に対し家族手当を支給する事業所の割合がいずれも減少傾向にあることを踏まえ、配偶者等に係る手当を見直す一方、子に係る手当を増額することとしている。その具体化に当たっては、本年の「職種別民間給与実態調査」及び「国家公務員給与等実態調査」の結果を踏まえて検討することとしている。
再任用職員の手当については、再任用職員の多様な人事配置を可能とし、その活躍を支援するため、再任用職員に支給される手当の範囲の拡大について検討を行っているところである。その具体化に向けては、各府省における人事管理の状況等を踏まえつつ検討を行ってまいりたい。
社会と公務の変化に応じた給与制度の整備の措置内容について多くのご要望をいただいているところであるが、措置内容の具体化に向けては、関係者の意見を伺いながら検討を進めているところであり、いずれについても引き続き職員団体のご意見を伺ってまいりたい。
(60歳前後の給与カーブに関する課題の検討)
65歳定年の完成を視野に入れた60歳前・60歳超の各職員層の給与水準(給与カーブ)の在り方については、今後、令和6年の勧告以降も見据え、社会と公務の変化に応じた給与制度の整備の一環として取り組むこととしている。昨年度から段階的に定年が引き上げられる中での公務における人事管理の在り方の変化や、民間における高齢期雇用や高齢層従業員の給与水準の状況を注視しつつ、職員団体の意見も聴きながら、人事管理に係る他の制度と一体で引き続き検討を行ってまいりたい。
なお、定年が段階的に引き上げられることに伴い、給与法附則第8項により俸給月額が決定される職員は、当分の間の措置として、民間企業における再雇用を含む60歳台前半の従業員の給与水準等を踏まえて給与水準が7割に設定されていること等から、当面は官民比較の対象としないことが適当と考えているが、当該職員の比較上の取扱いについては、給与カーブの在り方の検討と一体的に研究していきたいと考えている。
3.長時間労働の是正と休暇・休業制度の拡充等について
(1) 長時間労働の是正について
人事院では、勤務時間調査・指導室において、各府省を直接訪問して勤務時間の管理等に関する調査を令和4年度から実施しており、客観的に記録された在庁時間を基礎とした超過勤務時間の適正な管理について指導を行っているほか、他律部署・特例業務の範囲が必要最小限のものとなるよう指導するなどしている。令和6年度以降、調査対象を増加させるなど、勤務時間の管理等に関する調査・指導を更に充実させていくこととしており、引き続き、適切に各府省に対する指導を行ってまいりたい。
業務量に応じた要員の確保について、令和6年度から国家公務員の超過勤務の縮減のための定員が措置されていると承知しているが、今後も、各府省における状況を踏まえ、必要に応じ定員管理を担当する部局に対して協力を依頼していくこととしている。
(2) 勤務間のインターバル確保について
各省各庁の長の勤務間のインターバル確保に努める責務を法令上明確にするため、本年4月より、人事院規則に努力義務規定を導入した。
あわせて発出した職員福祉局長通知において、各府省における取組を支援する観点から、勤務間のインターバルの目安となる時間(11時間)を示すとともに、具体的な取組の例として、業務合理化や業務体制の見直し、フレックスタイム制の積極的な活用、幹部や管理職の率先した行動などを示したほか、日々確保することが困難である場合であっても、職員が睡眠時間を含む生活時間を少しでも長く確保できるよう努めること等を求めている。
また、現在、国家公務員の勤務間のインターバル確保状況の実態や課題を把握するための調査・研究事業を実施しており、この結果も踏まえつつ、各職場で勤務間のインターバル確保が図られるよう引き続き取り組んでまいりたい。
(3) 休暇・休業制度等の拡充について
両立支援制度を含む職員の休暇、休業等については、従来より情勢適応の原則の下、民間における普及状況に合わせることを基本に、適宜見直しを行ってきたところである。
両立支援制度については、本年5月に成立した「民間育児・介護休業法等の一部を改正する法律」において、「子の年齢に応じた柔軟な働き方を実現するための措置の拡充」や「介護離職防止のための仕事と介護の両立支援制度の強化等」の内容が含まれており、人事院としては、同法の内容も踏まえて、国家公務員の両立支援制度の見直しについて検討を行ってまいりたい。
4.労働条件の改善について
(1) 障害者雇用について
障害を有する職員が自らの希望や障害等の特性に応じて、無理なく、かつ、安定的に働くことができるよう、平成30年12月にフレックスタイム制の柔軟化等を実現するための人事院規則等の改正(平成31年1月施行)を行うとともに、公務の職場における障害者雇用に関する理解を促進し、障害を有する職員が必要な配慮を受けられるよう、「職員の募集及び採用時並びに採用後において障害者に対して各省各庁の長が講ずべき措置に関する指針」を平成30年12月に発出し、各府省に対して、当該指針に沿って適切に対応することを求めている。
さらに、職員の希望や事情に応じた時間や場所での勤務が可能となるよう、フレックスタイム制に関し、柔軟化を進めている(令和5年4月及び令和7年4月施行)ほか、テレワークに関して、適正かつ公平に運用されるよう、テレワークガイドラインを作成した。
このほか、厚生労働省と連携して、各府省における合理的配慮事例の情報共有などの支援を行っている。今後とも、必要に応じて各府省への支援を行ってまいりたい。
(2) 女性参画の推進及び多様性の確保について
(女性の採用・登用の拡大)
女性の採用拡大については、女性の国家公務員志望者の拡大に向けた広報活動を強化し、海外経験を含めた多様なキャリアパス、働き方改革の取組やワークライフバランスの実践例、職業生活への多様な支援等に関する効果的な情報提供を行うことで、より多くの有為の女子学生等の進路選択につなげていくこととしている。
女性の積極的な登用については、各府省の具体的な取組が進むよう女性職員を対象に、マネジメント能力開発の機会やキャリアアップも含めた自身のキャリアについて考える機会を付与するキャリア研修や、管理職員に対し、女性職員も含めた多様な人材が活躍できる環境を整備するための意識啓発を図るオンラインセミナーを実施するなどの取組を行っている。
人事院としては、今後とも、各府省の具体的な取組が進むよう支援してまいりたい。
(性的指向等の多様性に関する理解の増進)
人事院は、人事院規則10-10(セクシュアル・ハラスメントの防止等)により、職員はセクシュアル・ハラスメントをしてはならないとしているところ、性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関しては、同規則運用通知において、偏見に基づく言動について、セクシュアル・ハラスメントに含まれることを制度上明確にしており、令和2年4月には、「性的指向・性自認を本人の承諾なしに第三者に漏らしたりすること」(いわゆるアウティング)をセクシュアル・ハラスメントになり得る言動として例示するなどの施策を講じている。また、研修等により各府省への周知・啓発を行ってきている。
今後も、「性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律」(LGBT理解増進法)に基づく基本計画や指針等の策定に向けた政府全体での検討を踏まえながら、人事院としての役割を適切に果たしてまいりたい。
(3) 福利厚生施策について
(心の健康づくり対策)
心の健康づくり対策については、「職員の心の健康づくりのための指針」を基本として、管理監督者をはじめとする職員に対する研修の充実・強化、職員の意識啓発のためのガイドブックの作成、心の不調を未然に防止するためのストレスチェックの導入、心の不調への早期対応のための「こころの健康相談室」の運営、円滑な職場復帰の促進、再発防止のための「こころの健康にかかる職場復帰相談室」の運営や「試し出勤」の活用に取り組んでいる。
なお、「こころの健康相談室」については、より相談しやすい環境の整備に資するため、オンラインによる相談を令和4年度から一部の窓口で開始し、令和5年7月には、全ての窓口でオンライン相談に対応できる体制としている。引き続き、オンライン相談の活用を周知するなど、取組を一層推進してまいりたい。
(ハラスメントの防止)
人事院は、ハラスメント防止等の措置を講じるための人事院規則等に基づき、これまで、研修教材の作成・提供や、各府省のハラスメント相談員を対象としたセミナーの開催など、各府省に対する支援を行ってきている。
また、令和5年度から「幹部・管理職員ハラスメント防止研修」について、組織マネジメントの観点も反映したより実効性のあるものとなるよう見直して実施するほか、ハラスメント相談員向けの専門家の相談窓口の設置の試行等の取組を行っている。
今後も、各府省のハラスメント相談員を対象としたセミナーの開催、研修用教材の改訂等を外部の専門家と連携しつつ行うなど、各府省においてハラスメント防止対策が適切に実施されるよう、必要な支援・指導を行ってまいりたい。また、人事院の苦情相談体制については、例年、高度な知識と豊かな経験を有するカウンセリングの専門家から助言を受け、業務の適切な遂行に取り組んでいるところ。今後も、苦情相談体制強化について努めてまいりたい。
5.定年の段階的引上げに伴う各種施策への対応について
定年引上げに伴う級別定数措置については、今後とも、役降り後の職務や異動先、ポスト数のほか、定年引上げ後の昇格ペースを含む人事運用などに関する各府省・人事グループの検討を踏まえた上で、必要な措置を講ずることとしている。
原則定年年齢を60歳から65歳に段階的に引き上げる改正国家公務員法が令和5年4月1日から施行されており、令和13年度以降の定年年齢は原則65歳となるが、定年の段階的な引上げ期間中の暫定再任用制度においても、できるだけ職員の希望が叶い活躍していただけるよう、人事院としても、引き続き状況の把握に努め、必要な取組を進めてまいりたい。
6.非常勤職員制度等について
(1) 非常勤職員の給与について
非常勤職員の給与については、非常勤職員の給与に関する指針において、基本となる給与については、非常勤職員の職務と類似する職務に従事する常勤職員の属する職務の級の初号俸の俸給月額を基礎として、職務内容及び職務経験等を考慮して決定することとしている。
また、指針においては、給与法等の改正により常勤職員の給与が改定された場合には、非常勤職員の給与についても、常勤職員に準じて改定するよう努めることとしている。
指針に基づく各府省の取組状況等については、定期的にフォローアップを行っているほか、機会を捉えて各府省から状況を聴取し、必要な指導を行ってきている。今後とも、各府省において指針の内容に沿った適切な処遇が図られるよう取り組んでまいりたい。
(2) 非常勤職員制度の運用の在り方の検討について
令和5年の勧告時報告において記載した「非常勤職員制度の運用の在り方の検討」については、各府省の実態等を把握しつつ検討を行い、今回、期間業務職員の公募要件の在り方の見直しを行ったところ。他の非常勤職員を今後の検討対象から一切省くという意図ではないが、多種多様な非常勤職員が存在する中で、まずは、法令上その定義や任期の設定、再採用に関するルールが定められている期間業務職員から検討していくこととした。行政サービスの提供に必要な人材を確保できるよう、今後も職員団体の意見も聴きながら、適切に対処してまいりたい。
(3) 非常勤職員の休暇等について
非常勤職員の休暇制度等については、業務の必要に応じて、その都度任期や勤務時間が設定されて任用されるという非常勤職員の性格を考慮しつつ、民間の状況等を考慮し、必要な措置を行っているところである。なお、近年の措置を挙げれば、結婚休暇の新設及び忌引休暇の対象職員の要件の削除(平成31年1月施行)、夏季休暇の新設(令和2年1月施行)、出生サポート休暇、配偶者出産休暇及び育児参加のための休暇の新設並びに産前休暇・産後休暇の有給化(令和4年1月施行)などがある。
今後も、引き続き民間の状況等について注視し、必要に応じて検討を行ってまいりたい。
(4) 非常勤職員制度について
非常勤職員の任用、勤務条件等については、その適切な処遇等を確保するため、法律や人事院規則等で規定しており、期間業務職員制度、育児休業制度、休暇制度などについて、これまでも職員団体の意見も聴きながら見直しを行ってきている。今後とも職員団体の意見も聴きながら、民間の状況等を考慮し、適切に対処してまいりたい。
高柳副事務局長は回答を踏まえ、以下の課題についてさらに人事院の見解を求めた。
私どもの要求書に対する、現時点での人事院のお考えは承った。その上で、まず私の方から、大きく8点ほど人事院の見解を質させていただきたい。
1.本年の職種別民間給与実態調査について、回収率等含めて、特に問題なく、いずれの項目も必要なデータを得られたと理解して良いか。
さらに現時点で、勧告の時期について、おおむね通常通りのスケジュール感であると想定しておいて良いか。
2.月例給の改善について、6月19日の要求書提出以来申し上げている通り、本年の春闘では、連合、経団連等の各種調査結果から見て、おおむね3%以上のベースアップがあったものと考えられる。ご案内の通り、国立印刷局・造幣局においても、3.18%の賃金引上げの調停案を労使が受諾したところである。そのため、民調に基づく官民較差についても、当然にそれらが反映された結果が導き出されるものと理解している。
一方で、消費者物価指数が前年同月比で2~3%の上昇が続いている通り、物価高騰が収まらず、実質賃金が前年比マイナスの状況が既に2年を超えて続いている状態である。そのもとで、私どもの最新の組合員意識調査でも、2022年以降、生活悪化感が急速に拡大しており、昨年と比べた生活程度感について、半数近い組合員が「苦しくなった」と回答しているのが実態である。
そのため、民間との乖離が大きい初任・若手層の給与改善自体は理解するものであるが、官民較差に基づく月例給の引上げについては、全世代に効力が及ぶよう強く求めておきたい。
3.「給与制度のアップデート」については、引き続き、①地方公務員や独立行政法人はもちろんのこと、介護労働者など地域の公共サービス従事者にも大きな影響を与えるものであることを留意しながら作業を進めること、②特定の職員層のみが恩恵を被ることなく、職員全体のバランスを図った見直しを行うこと、③マイナスが生ずる手当等について、十分な配慮と経過措置等を講ずること、を求めておきたい。また、勧告まで連絡会と緊密な意思疎通を図り、我々の意見を適宜聴くことを求めておきたい。
一方、「アップデート」外の項目であるが、寒冷地手当や特地勤務手当の見直しについては、この後、関係する地方の組合員からの訴えも聴いていただく運びとなっているが、燃料費の高騰や地域の様々な事情などを考慮すべきことを改めて求めておきたい。
また、60歳前後の給与カーブに関する課題の検討について、「人事管理に係る他の制度と一体で引き続き検討を行う」とのことであった。本年秋以降の作業になるものと考えているが、極めて重要な課題であるので、我々との前広な協議を求めておきたい。
4.長時間労働の是正について、要求書に記載の通り、昨年の人事院の調査においても、多くの府省の人事担当者が「恒常的な人員不足」が大きな要因であると指摘していること等を踏まえ、引き続き、定員管理担当部局に対して、人員の確保に向けた対応を求めていただきたい。ご回答にあった通り、この間人事院や我々の働きかけもあり、本年度から国家公務員の超過勤務の縮減のための定員が措置され、さらに6月28日に決定された来年度以降の新たな定員 合理化目標では、一定の見直しも行われているが、一層の働きかけを求めておきたい。
5.柔軟な働き方に関わって、現在実施されている「国家公務員の勤務時間の実態に関する調査・研究」について、「調査対象期間は、5月後半・9月前半のそれぞれ2週間」「令和7年3月に調査・研究事業完了」とのスケジュール感であったと思うが、概ね、計画通り進んでいると考えて良いか。
いずれにしても、要求書にもある通り、調査結果・研究成果については、適切な時期に共有をお願いしたい。
6.休暇・休業制度の拡充に関わって、ただ今ご発言があった通り、先の通常国会において、育介法等改正法案が成立した。所定外労働の制限(残業免除) の対象となる労働者の範囲の拡大や、子の看護休暇の対象となる子の範囲など重要な内容が含まれている。その内容も踏まえて、国家公務員の両立支援制度の見直しについて検討を行うとのことであるが、本年の勧告において、「意見の申出」が行われる方向で検討されていると理解して良いか。
7.ハラスメントの防止について、先週人事院が公表した昨年度における苦情相談の状況を見ると、苦情相談は増加傾向にあり、相談事案数、相談件数ともに過去最多となったとされている。また、引き続き「パワー・ハラスメント、いじめ・嫌がらせ」が1/3を占めているとのことである。
その上で、各府省のハラスメント相談担当者の8割が相談を受けていない実態があると思うが、訴える側からすれば、自らの府省の関係者には、相談しづらいのも当然だろうと考える。そのため、要求書にもある通り、外部の専門家との連携強化など、第三者機関としての人事院における体制強化を図ることが必要だと考えるが、いかがか。
また質問であるが、苦情相談の対応方法として、「事情を聴取し、アドバイスした」が8割を超えていると思うが、その後解決に至った否か等はフォローアップしていないのか。
8.非常勤職員について、2点指摘したい。
まず、6月28日付で発出された人材局長通知および企画課長通知について、「公募3年要件の撤廃」については、了とするものであるが、この間指摘している通り、疑問点・懸念される点が何点かあると考える。そのため、今後の課題として、単に「3年」を撤廃するに終わらず、内閣人事局等とも連携しつつ、これらの疑問点・懸念点に応え得る方向で検討を進めるよう求めておきたい。特に、公務における非常勤職員の問題は、社会的な注目度も高く、以降、内外で様々な反応も想定されることから、適切な対応をするよう強く要請しておきたい。また今後のガイドラインあるいはQ&Aの作成に当たっては、適宜我々と意見交換しながら作成していくことを求めたい。
第二に、昨年の勧告時報告に基づく、来年度からの期間業務職員へのフレックスタイム制の適用については、歓迎したい。その上で、なお常勤職員と扱いが異なっている休暇等があると考えるので、引き続き権衡原則のもと、改善を求めておきたい。
これに対し、木村審議官は以下の通り回答した。
1.職種別民間給与実態調査については、予定どおり調査が終了したところ。
現在、集計等を行っている状況であるので、勧告の時期等について、現時点でお答えすることは困難である。
2.月例給の改善に関してご意見・ご要望をいただいた。我々も民間の春闘や物価の状況については報道等で承知しているところである。現在民調の集計等を行っているところであり、その結果に基づき、適切に対応してまいりたい。
3.「社会と公務の変化に応じた給与制度の整備」、寒冷地手当や特地勤務手当の見直しについてであるが、先ほどお話があった点やこの後お伺いするお話を含め、引き続き皆さんの意見も聞きながら検討を進めてまいりたい。
また、60歳前後の給与カーブに関する課題の検討についても、今後とも皆さんの意見も聞きながら検討を進めてまいりたい。
4.長時間労働の是正に関し、定員の関係のご意見をいただいた。昨年の勧告時報告において、業務量に応じた定員・人員の確保について言及をしているところであるが、引き続き適切に対応してまいりたい。
5.国家公務員の勤務時間の実態に関する調査・研究についてであるが、5月13日(月)から26日(日)までの期間を調査対象として行った「第1回勤務間のインターバル等Web調査」が、当初予定どおり6月16日(日)に完了した。今後も、計画どおり進むよう鋭意取り組んでまいりたい。情報共有についてのご要望については、担当部局にお伝えする。
6.国家公務員の両立支援制度の見直しについてであるが、本年5月に成立した「民間育児・介護休業法等の一部を改正する法律」において、「子の年齢に応じた柔軟な働き方を実現するための措置の拡充」として、所定外労働の制限(残業免除)の対象となる労働者の範囲の拡大や、子の看護休暇の対象となる子の範囲などの内容が含まれていることは承知している。人事院としては、同法の内容も踏まえて、国家公務員の両立支援制度の見直しについて検討を行ってまいりたい。
7.人事院における苦情相談関係のご意見をいただいた。人事院においては、カウンセリングの専門家から事案に即した助言等を聴取したり、面談についてロールプレイによる指導を受けたりするなど、外部の専門家からの助言・指導を受けつつ、各府省の職員からの苦情相談に適切に対応できる体制を整えているところ。
また、苦情相談に係るフォローアップについては、相談者に対する連絡がかえって苦情相談に対する敷居を高めかねないといった懸念があることなどから、積極的には行っていない。
8.非常勤職員について、6月28日付けで発出した人材局長通知及び企画課長通知の関連、また、常勤職員と扱いが異なっている休暇等の関連でご意見・ご要望をいただいた。いただいたご意見等については、担当部局にお伝えする。
また、各交渉委員からは、「重ねて、全職員・全世代の月例給の賃金の改善を強く要望する。交渉の早い段階から全世代の賃金改善を行うという方針を発信すべきだ」「アップデートの関係で不利益な変更点がある場合は早い段階で示すべきだ。その上で、しっかり協議を行って合意に基づいて進めてもらいたい」「勤務間インターバルの調査結果については府省庁別に情報を共有してもらいたい」「通勤手当の改善について独法職員などからも期待と注目が集まっている。抜本的な改善をお願いしたい」「賃金改善は中高年層のモチベーションを上げるような配分を求めたい」との発言があった。
これを受け木村審議官は「いただいたご意見については担当部局に伝える。賃金改善については、民調の結果を踏まえながら検討していきたい」と回答した。
最後に、高柳副事務局長が「以上を持って、本日の交渉は終了とするが、24日には給与局長、職員福祉局長との交渉が行われる予定である。勧告も間近に迫った時期であり、その際には、さらに具体的かつ突っ込んだご回答をいただくことを最後に要望しておきたい」と述べ、本日の交渉を締めくくった。