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-月例給・一時金等の具体的な回答は示されず、給与局長と再交渉へ-
公務公共サービス労働組合協議会 公務員連絡会
2023年度 公務労協情報 No. 25

2023人事院勧告へ向け職員福祉局長、給与局長と交渉
-月例給・一時金等の具体的な回答は示されず、給与局長と再交渉へ-

 公務員連絡会書記長クラス交渉委員は、2023年人勧期要求に関わり7月26日14時30分から荻野人事院職員福祉局長と、15時から佐々木給与局長と交渉を行った。
 
<人事院職員福祉局長との交渉経過>
 荻野職員福祉局長との交渉は、14時30分から行われた。森永事務局長が現時点での検討状況について回答を求めたのに対し、荻野局長は以下のとおり答えた。

○労働諸条件の改善について
1 柔軟な働き方を実現するための制度改革の推進
ご承知のとおり、昨年1月から本年3月にかけて、「テレワーク等の柔軟な働き方に対応した勤務時間制度等の在り方に関する研究会」において、今後の国家公務員の目指すべき働き方、より柔軟なフレックスタイム制等による働き方、テレワーク、勤務間インターバルの在り方といった検討事項について議論が行われ、本年3月に、最終報告が取りまとめられた。
この最終報告に基づく勤務時間制度等に関する見直しに関して、これまでも様々な機会に職員団体の意見を聞いてきたところではあるが、人事院としては、今年の勧告のタイミングでその具体的内容を表明できるよう①フレックスタイム制の見直し、②勤務間のインターバル確保、③夏季休暇の使用可能期間及び年次休暇の使用単位の見直し、④テレワークガイドラインの策定などの諸施策について引き続き検討してまいりたい。

2 長時間労働の是正等
超過勤務の縮減に向けた指導を徹底するため、昨年4月に新設した勤務時間調査・指導室において、各府省を直接訪問して勤務時間の管理等に関する調査を実施している。同調査では、対象となる職員ごとに客観的な記録(在庁時間)と超過勤務時間を突合し、大きなかい離があればその理由を確認するなどして、客観的な記録を基礎とした超過勤務時間の適正な管理等について指導を行っている。昨年度の同調査では、超過勤務手当の追給等がなされた事例があったほか、他律部署・特例業務の範囲が必要最小限のものとなるよう指導したところである。
本年度においても、引き続きこれらの取組を進めていくこととし、新たに、同室が地方の官署を直接訪問する形式の調査を実施するなど、勤務時間の管理等に関する調査・指導を更に充実させてまいりたい。

3 仕事と生活の両立支援
人事院としては、「こども・子育て支援加速化プラン」などの政府における取組や民間企業の状況等を踏まえつつ、引き続き、職員団体の意見も聞きながら、仕事と生活の両立支援に必要な方策を検討し、両立支援制度の整備・周知等に取り組んでまいりたい。

4 ハラスメント防止対策
ハラスメント防止対策については、本年度から新たに本府省及び地方機関の課長級以上の職員等を対象に実施する研修において、管理者としての役割やあるべき行動等に関する講義を行うとともに、参加型グループワークを導入し、管理者に対してハラスメント防止対策に関する自身の役割の重要性の理解促進を図ってまいりたい。
また、ハラスメント事案の迅速・適切な解決に向けて、各府省における事案の解決や相談体制に係る実情・課題を把握するため、昨年12月から本年1月にかけて、ハラスメントに関する相談に対応する担当者を対象にアンケート調査を実施したところである。調査結果によれば、相談担当者の多くが官職指定で任命されており、約6割は在任期間が2年未満、相談担当者の約8割は相談を受けていない状況にあり、実際に相談を受けた相談担当者は、相談対応での判断に悩みや精神的負担を抱えているなどの状況がみられた。人事院としては、これらを踏まえ、相談担当者のニーズに応じた研修の充実に加え、相談担当者をサポートするための体制整備等について、有識者への意見聴取も行いながら検討を進めてまいりたい。

5 職員の健康づくり対策等
職員の健康づくりについては、今後、高齢層職員や女性職員の割合が増加していくことも念頭に置きつつ、これまで以上に職員の健康管理施策を推進する必要があり、これを担う健康管理体制の充実が重要となってくる。こうした状況を踏まえ、現在、各府省における健康管理体制の充実のための調査を実施しているところである。今後、公務の健康管理体制の状況の分析を行うとともに、民間における健康経営の取組状況の調査を進め、各官署における健康管理体制の充実や効果的な健康管理施策の推進に向けて検討を進めてまいりたい。
心の健康づくりについては、第1次予防に関して、ストレスチェック制度の更なる活用、職場環境改善の一層の取組を推進しており、2次予防に関して設けている「こころの健康相談室」についても、今月(本年7月)までに全ての窓口にオンライン相談を拡充したところであり、引き続き、オンライン相談の活用を周知するなど取組を一層推進してまいりたい。3次予防に関して、療養のため長期間職場を離れた職員の職場復帰や再発防止に関する方針を示しているところではあるが、円滑な職場復帰等のためにはより実践的な観点からの取組も必要と考えられることから、今後、職場復帰支援等の更なる充実に向けて検討を進めてまいりたい。

○非常勤職員制度等について
非常勤職員の休暇制度等については、業務の必要に応じて、その都度、任期や勤務時間が設定されて任用されるという非常勤職員の性格を考慮しつつ、民間の状況等を考慮し、必要な措置を行っている。近年の措置を挙げれば、結婚休暇の新設及び忌引休暇の対象職員の要件の削除(平成31年1月施行)、夏季休暇の新設(令和2年1月施行)、出生サポート休暇、配偶者出産休暇及び育児参加のための休暇の新設並びに産前休暇・産後休暇の有給化(令和4年1月施行)、育児休業、介護休暇等の取得要件の緩和(令和4年4月施行)、子が1歳以降の育児休業の取得の柔軟化(令和4年10月施行)などがある。
今後も、引き続き民間の状況等について注視し、必要に応じて検討を行ってまいりたい。

 回答に対し、森永事務局長は、「冒頭の回答にあった3月に取りまとめられた有識者によるテレワーク等研究会の最終報告を踏まえ、今年の勧告時報告において示す予定の施策について具体的な措置内容を明らかにすること」を求めたのに対し、局長は「先ほど申し上げたとおり、研究会からの最終報告を踏まえて検討しているということが全てである」との回答にとどまった。
 その上で、森永事務局長は、4点の課題について見解を質した。
(1)本年の勧告の際に、勤務時間法改正の勧告を視野に入れているのか。具体的な措置内容如何。
(2)夏季休暇の使用期間の拡大については、この間、われわれとしても人事院との交渉の際には現場の強い要望がある旨を主張してきたところであり、人事院の積極的な対応を評価するが、具体的な措置内容如何。
(3)フレックスタイム制の単位期間の延長については、この間の議論では検討中とされていたが、各省における業務管理や勤務時間管理など、現場に負荷がかかるなどのマイナスの側面もあるもとで、果たしてどこまで実効性が担保されるのか。また、地方公務員は、国家公務員の勤務時間制度との権衡を考慮しながら、必要な限りにおいて労働基準法の適用を除外する法制となっていることなど、地公職場に与える影響も極めて大きい。拙速に措置すべきではないと考えるが、現時点での検討状況如何。
(4)働き方改革の観点から、全般的に柔軟な働き方を進めることは否定しないが、この間、公務員連絡会としては、研究会でのヒアリングや意見などにおいても、超過勤務の縮減などの取組を徹底した上で、無理のない制度の導入、拡大をはかることが必要であると指摘をしてきたが、人事院の認識如何。

 これに対し、局長は次のとおり回答した。
(1)今の段階で勤務時間法の改正の有無については言及できないが、先ほど申し上げたものの中で、法改正が必要なものがあれば対応していく。
(2)研究会の報告を踏まえてではあるが、夏季休暇の取得期間の拡大については、従前より強い要望があるということは私どもも真摯に受け止めている。具体の内容に関わって結論めいたことを申し上げることはできないが、夏季休暇創設されたのは平成3年で、その後30年経過している。気温上昇の変化など夏という時期の考え方というようなこともあり、民間における昨今の状況も踏まえながら必要な検討を進めていく。なお、夏季休暇の取得期間を拡大することについては法改正の必要はなく、人事院規則で対応できる。
(3)ご指摘の点に関わっては、研究会の最終報告においても、メリットもあれば課題もあるとされ、引き続き検討を進めていくことが適当であるとされている。いただいたご意見は受け止めたい。
(4)働き方改革あるいは柔軟な働き方を進めることは、一人一人の職員の方々に活力を与え魅力ある職場にもつながるというふうに考えている。一方で無理やり急ぎすぎて導入をすることによって歪みが生じることも懸念されることから、できるだけ無理なく円滑に進めていきたい。

 次に、森永事務局長は以下3点について見解を質した。
(1)この間、それぞれの立場で超過勤務の縮減に向けて取り組んできてはいるが、実際の超過勤務時間数は大きく変わっていないのが現状であり、いかに結果を出すかという段階にきていると考える。人事院として現在の状況をどのように認識しているか。また、より実効性を確保する意味で最低限の規制をすべきと考えるが人事院としての具体的な対応如何。
(2)パワハラ対策については、職場からパワハラを根絶するという大目標に向かって、お互いに努力をしていかなければならないが、人事院として現在の状況をどのように認識しているか。
(3)非常勤職員の無給休暇の有給化などについては、民間における働き方改革の進捗状況の実態を把握するとともに適切な措置を実施すべきであると考えるが、人事院の認識如何。

 これに対し、局長は次のとおり回答した。
(1)超過勤務は様々な発生要因があるので、規制をかけることについては難しい部分があると認識しているが、勤務時間調査・指導室での取組も着実に成果を出していると考えており、引き続き超過勤務縮減に向けて着実に各種施策を進めていく。
(2)職員のハラスメントに対する認識が高まっており、人事院としては引き続きハラスメント防止対策を徹底していく。ハラスメントを無くす、ゼロにするという強い意志をもって取り組んでいく。
(3)非常勤職員の特殊性や民間の状況等を考慮して必要な措置をしてきている。引き続き、民間の状況を注視して対応していきたい。

 最後に森永事務局長から「柔軟な働き方を含めた『働き方改革』等を進め、公務職場におけるワーク・ライフ・バランスを実現するという大目標に対する認識については、今日の局長との交渉でも共有できたと考えるが、長時間労働の是正やパワハラ対策などの課題も継続している。われわれも各職場段階で努力していくが、人事院としての役割を今まで以上に積極的に果たすことを強く求めるとともに、引き続き、この間議論してきた課題等について、時期を捉えて情報共有と協議を行うことを求める」と要請し、職員福祉局長交渉を締めくくった。

<人事院職員福祉局長との交渉経過>
 佐々木給与局長との交渉は15時から行われた。
 森永事務局長が、現時点での検討状況について回答を求めたのに対し、佐々木局長は以下のとおり答えた。

1 勧告について
人事院は、公務員の給与等の適正な水準を確保するため国会と内閣に必要な勧告を行うという国家公務員法に定められた責務を着実に果たすこととしている。
本年の勧告については、例年とおおむね同様の日程を念頭に置いて、鋭意作業を進めているところである。

2 官民較差について
行(一)職員の平均年齢は、本年の国公実態調査によると昨年と比べて若干低下している。(42.4歳。昨年比△0.3歳)
本年の民間企業における春季賃金改定状況を見ると、賃上げの水準は業種によって様々ではあるが、定昇分を含む賃上げ率は約30年ぶりの高水準となっている。
また、民間の一時金の状況を見ると、一昨年冬から大幅に増加し、昨年夏と同程度の伸びとなっているものがある一方で、昨年夏から伸びが鈍化しているものもある。
このように、個々の産業や企業によって区々な状況にある中、官民較差及び一時金については、現在集計を行っているところであり、最終的にどのような結果となるか注視しているところである。

3 諸手当について
在宅勤務等を行う場合に支給する新たな手当については、昨年の勧告時の報告において、具体的な枠組みの検討を進めていく旨言及し、また、令和5年3月にとりまとめられた「テレワーク等の柔軟な働き方に対応した勤務時間制度等の在り方に関する研究会」の最終報告でも、テレワークに係る費用について基本的に使用者である国が負担することが望ましい旨の見解が示されており、これまでも様々な機会に職員団体の皆さんのご意見等を聞いてきたところである。
今後、職員の在宅勤務等に伴う光熱・水道費等の費用負担や、民間の同種手当の支給状況及び手当支給に伴う各府省の事務負担等についても考慮しつつ、本年の人事院勧告に向けて、新たな手当の具体的な措置内容やこれに伴う通勤手当の取扱いについてさらに検討を進めてまいりたい。

4 「社会と公務の変化に応じた給与制度の整備」について
社会と公務の変化に応じた給与制度の整備については、昨年の職員の給与に関する報告において給与上対応すべき課題や取組事項及びスケジュールを示し、本年の人事院勧告のタイミングで具体的な措置についての骨格案を示すべく、職員団体の皆さんをはじめ、様々な機会に幅広く関係者のご意見等を伺ってきたところである。
人事院としては、国家公務員の給与を社会と公務の変化により応じたものにしていくことが極めて重要であると考えており、①人材の確保への対応や、②組織パフォーマンスの向上、③働き方やライフスタイルの多様化への対応などの諸課題に対応すべく、これらに関連する俸給や諸手当の見直しについて、来年(令和6年)に向けて措置を検討する事項の骨格案として、本年夏の勧告の機会に改めて表明することとしたい。また、来年に向けて措置の成案を検討していく過程においても、引き続き職員団体のご意見等を聞かせていただきたい。
なお、個別の諸手当や、再任用職員の給与などについてもご意見やご要望をいただいているが、総じて社会と公務の変化を背景とする給与の制度や運用についての改善要望という側面もあると考えており、引き続き「社会と公務の変化に応じた給与制度の整備」という一体的な枠組みの中で、職員団体の意見も聞きながら必要となる検討を行ってまいりたい。

5 定年の段階的引上げに伴う諸施策について
再任用職員の給与については、昨年の職員の給与に関する報告において、社会と公務の変化に応じた給与制度の整備の一環として、定年前再任用短時間勤務職員等をめぐる状況を踏まえた再任用職員の給与について取組が必要と述べているところである。近年、公務上の必要性により転居を伴う異動を余儀なくされる再任用職員もいることなど、今後の各府省における人事管理の状況等を踏まえつつ、職員団体の意見も聞きながら、引き続き再任用職員の給与の在り方についても必要な検討を行ってまいりたい。
定年の段階的引上げに係る各種制度については、各府省において円滑に運用されるよう、引き続き、制度の周知や理解促進を図るとともに、運用状況の把握に努め、必要に応じて適切に対応してまいりたい。
なお、国家公務員法改正法附則で設けられた検討条項について、人事院としては、社会と公務の変化に応じた給与制度の整備を進める中で、民間企業における状況や公務の人事管理の状況等を踏まえ、60歳前の給与カーブを含めた給与カーブの在り方や初任給、中堅層、ベテラン・管理職層などキャリアの各段階における職員の能力・実績の給与への的確な反映について検討を行っていくこととしている。

6 非常勤職員等の処遇改善について
非常勤職員の給与については、平成20年8月に非常勤職員の給与に関する指針を発出し、各府省において適正な給与の支給が行われるよう、必要な指導を行ってきている。この指針については、非常勤職員の処遇を確保する観点から累次改定を行ってきており、期末手当及び勤勉手当に相当する給与の支給に関して取り組むべき事項を追加するなどの見直しを行ったほか、本年4月からは、給与法等の改正により常勤職員の給与が改定された場合には、非常勤職員の給与についても、常勤職員に準じて遡及改定するよう努める旨を追加したところ。
各府省においては、この指針に基づく取組が進んでいるところであり、引き続き、常勤職員の給与との権衡をより確保し得るよう取り組んでまいりたい。

 回答に対し、森永事務局長は給与改定勧告について次のとおり局長の見解を質した。
(1) 勧告日については、例年とおおむね同様の日程を念頭に置いて作業しているとのことだが、8月7日の週でよいか。
(2) 月例給の官民較差の状況について、局長の回答にあったとおり、今年の民間企業における定期昇給分を含む賃上げ率は、30年ぶりともいわれる高水準となっているもとで、冒頭の「現在集計中、最終的にどのような結果となるか注視している」との回答は極めて不満であり、この場で再回答を求める。さらに、本年の月例給の給与改定勧告にあたって、現時点における人事院のスタンスを明確にすべきだ。

 これに対して給与局長は次のとおり答えた。
(1) 現在作業中であり、現段階では、確定的なことは申し上げられない。
(2) 先ほども申し上げたとおり、個々の産業や企業によって区々な状況にある中、決して楽観できないと認識している。最終的にどのような結果になるかという点については厳しい認識を持って臨んでいるところ。そのような状況のもと、仮に改定を行う場合は、人材確保の観点から、初任給にかなりの重点を置く必要があるのではないかと現時点では考えている。

 これを受け、森永事務局長は更に次のとおり局長の見解を質した。
(1) 初任給の官民格差の現状について、われわれも認識していることは、この間の要求提出時の交渉含めて明らかにしてきたところであるが、物価上昇に伴い実質賃金が低下している現状や今年の民間の賃上げ状況を踏まえたときに、今年、全世代にわたる引上げ勧告を行わない理由はないではないか、人事院の姿勢に大きな不信感を抱かざるを得ない。改めて、我々の要求に対して明確な回答をすべきである。

 これに対して給与局長は次のとおり答えた。
(1) 大前提として我々の責務として国家公務員の給与と民間の給与の精緻な調査に基づいて精確な比較を行い、その結果に基づいて必要な対応を行う。昨年も初任給等について引上げを行ったところであるが、それでも民間に追いついていない。更に本年も民間企業における初任給の引上げの動きが伝えられているところ。人材確保が喫緊の課題となっている中で、較差にもよるが、仮に改定を行う場合は初任給にかなりの重点を置いて考える必要があるのではないか。

 森永事務局長は重ねて次のとおり局長の見解を質した。
(1) 初任給の官民較差の現状については承知をしているが、公務員連絡会の要求は、「全職員に対する月例給の引上げ勧告を行うこと」であり、春季交渉の段階から一貫している。官民較差の状況に対する明確な回答がなされないなかでは、議論を進めることができないが、今年の取り巻く環境を踏まえて、われわれの要求は人事院にとって法外な要求と考えているのか、人事院の認識如何。

 これに対して給与局長は次のとおり答えた。
(1) 切実な要求であることは理解するが、官民比較に基づいて限られた原資の中で考える場合に、現下の状況においてどこに重点を置くべきなのか、という中で判断をしていきたい。

 交渉委員からは「現時点での『較差が見えない中で、初任給に重点を置かざるをえない』という答弁は納得できない」「労働基本権の代償機関として我々の意見を受け止めるだけでなく、我々に向き合う姿勢をみせるべきだ」「組合員は30年ぶりの民間の賃上げ水準を踏まえて、大変期待をしている。全職員の賃上げが無ければ中高齢層のモチベーションは上がらない」「若年層の引上げが重要なことは理解するが、高齢層が辞めており公共サービスの維持ができない状況がある」と発言があったことに対し、給与局長は「官民較差の数字は出ていないが、作業は進めている中で、現時点の認識を申し上げた。あくまで仮に改定があるとした場合に初任給に重点を置かざるを得ないという考え方を説明させていただいた。春闘の結果が出てきている中で皆さんの期待が高く、全職員の賃上げの要望が強いということは受け止めており、これからの具体の検討においては、それを踏まえて検討させていただくということが、私に求められているというふうには思っている」と答えた。

 次に森永事務局長は、一時金について次のとおり給与局長の見解を質した。
(1) 昨年冬は総じて大幅増、本年夏はやや増加しているという傾向のもと、要求のとおり、引上げ勧告を強く求めるが、人事院の認識如何。

 これに対して給与局長は次のとおり答えた。
(1) 要望として受け止め、どのような結果が出てくるかということを踏まえて判断をさせていただきたい。

 次に森永事務局長は「社会と公務の変化に応じた給与制度の整備」について「冒頭の局長回答で、人事院の基本的なスタンスは理解したが、来年に向けて措置を検討する事項の骨格案の具体的な内容を明らかにされたい」として人事院における具体的な検討内容を質した。
 これに対して給与局長は「先ほどの回答で3点について述べさせていただいたが、それぞれの観点に対応した検討事項をお答えさせていただく」としたうえで次のとおり答えた。
(1) 人材の確保への対応については、新卒者、若手・中堅とミッドキャリア人材への対応がある。新卒者、若手・中堅については初任給近辺の俸給月額引上げを検討課題としており、係長から上席補佐層の俸給の最低水準を引上げを考えている。また、勤勉手当の「特に優秀」区分の成績率の上限を引き上げるということを考えている。ミッドキャリア人材については、係長から上席補佐層の俸給の最低水準を引上げ、特定任期付職員のボーナス拡充、採用時からの新幹線通勤、単身赴任に対する手当支給を検討している。
(2) 組織パフォーマンスの向上については、役割や活躍に応じた処遇、円滑な配置等への対応の2点である。役割や活躍に応じた処遇については、係長から上席補佐層の俸給の最低水準を引上げ、本省課室長級の俸給体系の見直し、管理職員特別勤務手当の支給拡大、勤勉手当の成績率上限の引上げについて検討をしている。また、円滑な配置等への対応については、地域手当の大括り化、新幹線通勤に係る手当額の見直し、再任用職員に支給する手当の拡大の3点である。
(3) 働き方やライフスタイルの多様化への対応については、一つに扶養手当の見直しであり、配偶者等にかかる手当を見直して生じる原資を用いて子にかかる手当を増額する。他にはテレワーク関連手当の新設、採用時からの新幹線通勤、単身赴任に対する手当支給、新幹線通勤に係る手当額の見直しである。

 森永事務局長は「この間の前広な議論については、人事院の姿勢を評価する。その上で現段階での人事院の見解・認識を問う」として次の点について局長の見解を質した。
(1) 地域手当について、大括りな調整方法とのことだが、都道府県単位で考えているのか、経済圏で考えているのか。大括り化する理由如何。
(2) 地域手当の見直しにあたって、不均衡との指摘を是正するということだけで見直しの方向性として合理性があるのか認識如何。
(3) 扶養手当について、配偶者等の手当を見直して子どもにかかる手当を増額するとのことだが、配偶者等にかかる手当を全てなしにするのか。
(4) 再任用職員の生活関連手当の支給について、われわれのみならず各省からの要望等も多いと思うが、例えば住居手当など人材確保のためには不可欠な手当となっていることからすれば、早急に対応すべきではないか。
(5) 65歳定年を見据えた60歳前後の給与カーブの在り方について、冒頭回答において、定年の段階的引上げに伴う諸施策のところで言及はあったが、来年に向けて措置を検討する事項として回答が無かったが、引き続き検討を行っていく課題ということでよいか。
(6) 勤勉手当の「特に優秀」区分の成績率上限の引き上げについて、勤勉手当にかかる原資は変わらないという理解でよいか。他方で、昨年の勧告時における各期0.01月分の勤勉手当の配分見直しの理由の一つとして、配偶者手当の見直しの影響などにより、一部の省庁で上位の成績区分に係る原資不足する事態となったことも背景にあると承知しているところであるが、今回検討する事項となっている、扶養手当の見直しとの関係をどのように考えているのか認識如何。

 これに対して給与局長は次のとおり答えた。
(1) 地域手当の大括り化については、具体的にどのように行うかについてこれから検討を行ってまいりたい。地域手当については、地方における公務員給与が高い状況にあったことから、できるだけきめ細かく地域の民間給与水準を公務員給与に反映させるという観点から市町村単位で設定することとしていた。この間2度にわたって地域差を拡大する方向で見直しを行ってきたが、今回「社会と公務の変化に応じた給与制度の整備」において各制度を見直す中で、地域手当の現状について、大括りの調整方法に見直すことによって不均衡を是正して円滑な配置を行えるように対応していくというのが今回の見直しの趣旨である。
(2) 今後、地域手当の中身を具体的に検討するにあたっては、支給地域の単位、支給割合の刻み、区分、数の是非についても検討をしていく中で、その趣旨等についてあわせて整理をしながら提示させていただきたいと考えている。
(3) 扶養手当についての具体的な見直しの中身については、今後民間の同種手当の状況を見ながら検討を行ってまいりたい。
(4) 再任用職員の給与については、具体的にどの手当まで拡大するかについては今後の検討になるが、一つだけではなく様々な手当が検討対象になり得るものであり「社会と公務の変化に応じた給与制度の整備」の中で具体的に検討していくことになる。
(5) 65歳定年を見据えた60歳前後の給与カーブのあり方については、公務における人事管理の状況と民間の状況をあわせて考えていく必要があり、そのためには一定の期間を要するため、令和6年までに措置を講ずる事項(骨格案)には含めていない。
(6) 勤勉手当のベースとなる扶養手当については、配偶者に対する扶養手当のみならず全体の扶養手当が入っており、今回の扶養手当の見直しにおいては扶養手当内での見直しであるため、勤勉手当の算定上の原資においては影響はないと考えている。「特に優秀」区分の成績率の上限の引上げを具体的にどのように行うかについてはこれから検討を行うため、現時点で確たることは申し上げられない。

 局長の見解を受けて、森永事務局長は「今日の議論も踏まえて、次回の交渉で、勧告時に表明する骨格案を明らかにするとともに、少なくとも若手・中堅職員のみならず全世代の職員のモチベーションの維持・向上がはかられるものとなるよう、骨格案の表明に当たっては、人事院としての明確なメッセージを発することを強く求めておく」と重ねて要請をした。

 なお交渉は、再三にわたって月例給の官民較差の状況について明らかにするよう求めたものの、給与局長がこれに応じなかったことから、森永事務局長から「今までとは違う民間春闘の状況で、われわれが求めている要求内容から照らすと、本日の回答を受け容れることはできない。次回の交渉で、月例給の較差、一時金の状況については明らかにされたい。今年の要求は、あくまで『全職員に対する月例給の引上げ勧告』であることを改めて強調し、われわれが納得できる回答を行うことを強く求めておく」と強く要請し、給与局長も了としたことから、この日の交渉を締めくくった。