委員長クラスが人事院総裁と交渉し回答を引き出す-8/3
-月例給は、全ての職員の改定を行うと回答-
公務員連絡会委員長クラス交渉委員は、8月3日、川本人事院総裁と交渉し、6月21日に提出した本年の人勧期要求に関する最終回答を引き出した。
交渉の冒頭、武藤議長が「6月21日に本年の人勧期の要求書を提出し、今日まで、交渉を積み上げてきた。本年の勧告に向けた最終回答を総裁からいただきたい」と求めたのに対し、川本総裁は次のとおり回答を示した。
1.給与改定について
〇 勧告日は、8月7日(月)となる予定である。
〇 民間給与との比較について、月例給の民間給与との較差は、0.9%台後半となる見込みである。
〇 特別給は、0.10月分の引上げとなる見込みである。引上げ分は、今年度については、12月期の期末手当及び勤勉手当に配分することとする。
来年度以降については、6月期及び12月期が均等になるよう配分することとする。
〇 俸給表の改定については、行政職俸給表(一)について、民間企業における初任給の動向や、公務において人材確保が喫緊の課題であること等を踏まえ、総合職試験及び一般職試験(大卒程度)に係る初任給を11,000円、一般職試験(高卒者)に係る初任給を12,000円引き上げることとする。初任給以外の号俸については、若年層に重点を置き、そこから改定率を逓減させる形で全ての職員の改定を行う。
〇 その他の俸給表については、行政職俸給表(一)との均衡を基本に改定する。
定年前再任用短時間勤務職員の基準俸給月額については、各級の改定額を踏まえ、所要の改定を行う。
○ なお、常勤職員の給与が改定された場合には、非常勤職員の給与についても、非常勤職員の給与に関する指針に沿った給与支給が行われるよう、各府省を指導する。
○ 在宅勤務等を中心とした働き方をする職員については、在宅勤務等に伴う光熱・水道費等の費用負担が特に大きいことを考慮し、その費用負担を軽減するため、在宅勤務等手当を新設する。手当額は民間の同種手当の支給状況等を踏まえて月額3,000円とする。なお、在宅勤務等手当の新設に伴う通勤手当の取扱いについてあわせて措置する。
○ 社会と公務の変化に応じた給与制度の整備については、職員団体をはじめ幅広く関係者の意見を伺ってきたところであり、本年の報告で令和6年に向けて措置を検討する事項の骨格をお示しする。この骨格は、①人材確保への対応、②組織パフォーマンスの向上、③働き方やライフスタイルの多様化への対応の3つの課題に沿って整理している。これらの課題に関連する俸給や諸手当等の見直しについて、令和6年に向けて必要な措置を検討していく。
2.公務員人事管理に関する報告について
報告では、社会経済情勢や国政情勢が激変する中で、行政には、国民の利益を守り、世界最高水準の行政サービスを提供し、活力ある社会を築く重要な役割を担うことが求められる中で、行政の経営管理力、更には国家を運営する力を高め、行政を担う公務組織の各層において有為な人材を誘致し、育成することの重要性について述べた上で、公務職場が直面する課題への対応を推進するため、次のことについて言及することとしている。
○ 長時間労働の是正に向けて
・昨年4月に新設した勤務時間調査・指導室において、本年度も勤務時間の 管理等の調査を進め、超過勤務時間の適正管理等の指導を行っていく。
・国会対応業務による超過勤務の縮減に向けて、各府省に国会答弁作成業務の改善を求めるとともに、行政部内を超えた取組が必要なものについては、引き続き国会を始めとする関係各方面の御理解と御協力をお願いする。
・業務量に応じた定員の確保についても定員管理を担当する部局に御協力をお願いする。
○ 多様なワークスタイル・ライフスタイルを可能とするため、より柔軟な働き方を実装するための制度改革を推進について
・「テレワーク等の柔軟な働き方に対応した勤務時間制度等の在り方に関する研究会」の最終報告の提言を基本として、勤務時間法を改正し、一般の職員についてもフレックスタイム制を活用した「ゼロ割振り日」を導入する。 また、各職場において勤務間のインターバル確保が図られるよう検討を進めるほか、テレワークガイドラインの策定も進めていく。
・夏季休暇については、業務上現行の期間での使用が困難な職員について、使用できる期間を前後各1月拡大し、年次休暇については、交替制等勤務職員を対象に、15分単位での使用を可能にする。
・非常勤職員である期間業務職員についても、常勤職員のフレックスタイム制と同様の勤務時間を定めることを可能にする。
○ 民間企業において「健康経営」の重要性が認識されているが、公務においても、職員のWell-beingを実現させるためには、職員各自の健康増進が極めて重要である。民間における健康経営の取組状況の調査を進め、各官署における健康管理体制の充実や効果的な健康管理施策の推進に向けて検討していく。
○ 近年、官民を問わず人材獲得競争がし烈になる中、非常勤職員の人材確保が厳しさを増している。こうした状況において、行政サービスの提供を支える有為な人材を安定的に確保することができる環境を整備することが重要と考えている。今後、各府省の実態を把握し、非常勤職員制度の適切な運用の在り方の検討を行っていく。
○ このほか、公務員人事管理に関する報告においては、人材の確保及び育成、能力・実績に基づく人事管理の推進、仕事と家庭の両立支援、ゼロ・ハラスメントに向けた取組についても言及する。
と回答し、最後に「国家公務員のみなさまが日々職務に精励されていることに心よりの感謝と敬意を表したい」と述べた。
これを受け、武藤議長は、以下のとおり公務員連絡会としての見解を述べ、交渉を締めくくった。
(1) 本年の月例給については、初任給を始め若手を中心とした引上げをした上で、そこから改定率を逓減させる形で、全ての俸給表の改定を行うとの回答があった。
初任給の官民格差の解消を図るために、相応の額を引き上げることは、喫緊の課題である人材確保という面に寄与するものと考える。
なお、「働き方改革」という観点での課題である非常勤職員の待遇改善について、人事院として一層の努力を求めておきたい。勧告を踏まえた給与法改正によって常勤職員の給与を4月に遡及して改定することになった場合には、いま総裁からお話があった通り、遡及改定について各省をしっかり指導していただきたい。
さらに、俸給表全体の改定となることは、「全職員の月例給の引上げ」を求めてきた私どもの立場からすれば、課題は残るところではあるが、この間の交渉の到達点として受け止めたい。特に、全職員のモチベーションの維持・向上という点からすれば、今後は、配分に関して一層十分な交渉・協議、合意に基づく対応を強く求めておきたい。
(2) 一時金について、0.10月引き上げるとの回答であった。
2年連続の支給月数増となること、さらに、その内訳について、勤勉手当のみならず期末手当の引上げも行うことについては、組合員の期待に一定程度応えたものとして受け止めたい。
(3) 「社会と公務の変化に応じた給与制度の整備」については、三つの大きな柱のもとで様々な見直し検討を行うとのことであった。検討の方向性によっては、大きな影響を受ける職員が出る可能性があることに留意していただき、検討にあたっては、その必要性や合理的な理由を明らかにした上で、職員の理解と納得が得られる内容となるよう、引き続き、公務員連絡会との交渉・協議、合意に基づく対応を求めておきたい。
(4) 柔軟な働き方に関連して、「研究会」最終報告を踏まえつつ、「ゼロ割振り日の追加」や「勤務間インターバル」などの先進的な内容を含めて、様々な改革メニューが示された。私どもがこの間求めてきた課題も含まれており、基本的に評価するが、職場の絶対的な要員不足など課題も存在しており、その点十分に留意していただきたい。いずれにしても、それぞれの課題の具体化に向けては、私どもとの十分な協議を求めておく。
(5) その他、長時間労働の是正、女性が働きやすい職場づくり、ハラスメントの根絶、非常勤職員の処遇改善など、課題は山積しており、引き続き私どもと十分に協議しながら、改善を進めていくことを求めておきたい。私どもも、職場段階で、改善に向けてさらに努力していきたい。
(6) 終わりに、感染症や大規模自然災害が頻発する状況の中で、職員は、国民の安心・安全のため、高い使命感と責任感をもって懸命の奮闘を続けていること、一方で昨年を上回る物価高騰のもと実質賃金がマイナスを続け、職員の生活を圧迫していること、人事院におかれては、これらのことを深く認識していただき、職員の給与や勤務条件の改善に向けて、より一層の努力をお願いする。
(7) 今日の回答については、機関に持ち帰って報告し、私どもとしての最終的な態度を決定することとしたい。