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公務公共サービス労働組合協議会 公務員連絡会
2024年度 公務労協情報 No. 4

内閣人事局へ2024年度基本要求を提出-11/30

公務員連絡会は11月30日、内閣人事局に対して「2024年度賃金・労働条件に関わる基本要求」(資料1参照)を提出した。公務員連絡会からは幹事クラス交渉委員が交渉に臨み、誠意ある回答を示すよう求めた。交渉経過は次のとおり。

 内閣人事局への提出交渉では、内閣人事局から平池内閣審議官が対応した。要求提出にあたり、高柳副事務局長は、具体的な要求項目のポイントについて次のとおり説明した。

○賃金・労働条件の確保について
1.今国会でもそうであったが、公務員の賃金の在り方をめぐっては、常に社会的な注目が集まるところであり、政府として、各方面に目配りしつつ、国民的な理解が得られるよう努力していただきたい。
2.公務における人材の確保は喫緊の課題であり、一方で、物価高騰のもと実質賃金が低下し続けている実態は深刻であるとさえ言える。政府として、引き続き職員の賃金水準の引上げに向け、努力していただくよう求めておきたい。

○労働時間、休暇及び休業、人員確保等について
1.(3)に記載の通り、昨年我々が実施した調査では、超過勤務手当の支給状況について、「サービス残業あり」と回答した国家公務員の割合が若干増加している実態がある。改めて、超過勤務手当の全額支給を徹底するよう求めておきたい。
2.(4)に記載の通り、「柔軟な働き方」の推進に当たっては、引き続き、機械的な数値目標や無理な計画を課すことなく、柔軟に対応することを求めておきたい。
3.人事院が来年4月より導入することを打ち出した勤務間インターバルについては、詳細が未定の部分も多いが、いずれにしても、内閣人事局としても、各職場での定着に向けて努力願いたい。
4.(7)に示した定員管理について、人事院の調査で、各府省人事当局が職員の過重労働の主要な要因として要員不足を挙げていること、あるいは私どもの調査などでも引き続き超過勤務の要因として現場の人手不足が挙げられていることを重く受け止めていただきたい。この間指摘している通り、定員合理化目標を見直し、余裕のある要員を平時から確保するよう求めておきたい。行政組織担当にも強い要望としてお伝えいただきたい。

〇女性参画の推進及び多様性の確保について
 女性参画推進については、ここに記載の通り、成果目標の達成や、各種計画の着実な実施を図っていただきたい。
 ジェンダー平等について、国公職場においても既に問題が起きていることなども受け止めて、LGBT理解増進法   に基づき、まずは各府省当局と連携しつつ、職場において理解を深めるような取組を実施すべきと考える。

〇福利厚生施策等について
 レクリエーションの復活・拡充や、メンタルヘルス対策において、内閣人事局として必要な役割を果たすよう求めておきたい。
 ハラスメントについては、相談事案も増加し、職員内部における問題意識が高まっている状況だと考える。国公職場のブラックイメージにもつながる重大な問題であると捉え、使用者機関として踏み込んだ取組をお願いしたい。

〇人事評価制度について
 新たな人事評価制度の実施から1年が経過したが、その実情について検証する必要があるものと考える。その上で、課題があれば、必要に応じて各府省に対する指導、改善措置等を講じていただきたい。

〇定年の段階的引上げに伴う各種施策について
 昨年末に「特例的な定員措置に関する考え方」を各府省に示したと思うが、今年度の状況を検証しつつ、引き続き柔軟な定員管理を行い、各府省における確実な新採者の獲得を支援するようお願いしたい。

〇非常勤職員制度等について
 (2)に記載の通り、給与法改正法案が成立したことを踏まえ、改正された「人事管理運営協議会申合せ」に基づき、改めて各府省に対し「4月遡及」すべきことなどを通知し、指導するようお願いしたい。
 (3)に記載の通り、内閣人事局の資料によれば、昨年7月1日現在、全非常勤職員の75%強が期間業務職員以外の職員となっているが、その処遇や雇用状況が不明であることから、それらの職員の実態について調査・把握するよう求めておきたい。

〇障害者雇用について
 経過措置はあるものの、来年4月1日から法定雇用率が引き上げられることを踏まえ、またかつて国の機関において障害者雇用の実態をめぐって大きな問題が発覚したことなども踏まえて、内閣人事局として、各府省に対し働きかけを強めるなど必要な役割を果たしていただきたい。

 続けて、交渉委員から、定員管理について「合理化も限界に来ている。災害が頻発し、担当部局への応援体制が恒常化している状態。良質な公共サービスのために合理化目標を見直すべき」「人材確保のためには働きやすい職場が必要。デジタル化も進めるが、人手も必要だ」との発言があった。

 これらに対して、平池内閣審議官は「まずは、給与法の成立に関して皆様方からご支援いただいたことに感謝申し上げる。皆様方の要求の趣旨は、しっかりと承った。長時間労働の是正や勤務時間の状況の客観的把握などは引き続き取り組んでいるところであり、本日いただいたお話も含めて引き続き取組を進めてまいりたい。いずれにせよ、本日いただいた要求事項については、検討させていただいた上で、しかるべき時期に回答させていただく」と回答した。
 
 最後に、高柳副事務局長は「回答交渉に向けてしっかりと検討をお願いする」と要請し、この日の交渉を終えた。

資料1.内閣人事局への基本要求書
                                         2023年11月30日

内閣総理大臣
 岸 田 文 雄 様

                                                           公務員労働組合連絡会
                                                           議 長  武 藤  公 明
                                                               (公 印 省 略)
           
                      2024年度賃金・労働条件に関わる基本要求について

貴職におかれましては、公務員人事行政にご尽力されていることに敬意を表します。
さて、新型コロナウイルス感染症の5類移行に伴い社会活動の正常化が進み、日本の経済は緩やかに回復しています。しかし、昨年から続く資源価格の高止まりや円安進行により物価は高騰し続けており、国民の生活を圧迫しております。加えて労働者の実質賃金は減少し続け、国民の家計への影響は極めて深刻な状況です。
そのような中、国民生活の基盤を担う公務・公共サービスの現場では、感染症対策や大規模自然災害への対応などを含めて、職員は高い使命感と責任をもって懸命の奮闘を続けています。一方、職場では、テレワークの推進や働き方改革にも積極的に取り組んでいるものの、長時間労働の蔓延など厳しい勤務環境は改善されておらず、必要な要員と適切な労働条件等の確保が不可欠です。
貴職におかれましては、国家公務員全体の使用者としてこうした点を十分に認識され、下記の基本要求事項の実現に向けて最大限努力されるよう強く申し入れます。
 
                           記

1.賃金・労働条件の確保について
 公共サービス基本法を踏まえ、以下の通りとすること。
(1) 良質な公務・公共サービスの適正かつ確実な実施に向け、公務員の賃金・労働条件について国民的な理解を得られるよう環境整備をはかること。
(2) 公務における人材の確保を重視し、職務の責任や仕事の内容に相応しい社会的に公正な月例給与水準を確保すること。また、物価高騰のもと実質賃金が低下し続けている実態を重視し、全ての職員の賃金水準を引き上げ、豊かな生活を保障すること。
(3) 独立行政法人等を含めた公務員給与の改定に必要な財源を確保すること。

2.感染症等への対応について
 新型コロナを始め感染症の拡大状況等を引き続き注視し、職員の感染防止、健康確保のため、公務員連絡会との交渉・協議を踏まえて、適宜、必要な措置を講じること。

3.労働時間、休暇及び休業、人員確保等について
 職員ひとりひとりのワーク・ライフ・バランスを実現し、パンデミックや大規模災害にも対応できるサービス提供体制を構築するため、以下を推進すること。
(1) 公務における年間総労働時間1,800時間体制の確立と、ライフステージに応じた柔軟な休暇・休業制度の改善・拡充などを実現すること。
(2) 勤務時間管理システムの各府省における導入の状況および運用の実態を情報提供するとともに、それを踏まえた実効性ある超勤縮減策を各府省に求めること。また、「デジタル社会の実現に向けた重点計画」に基づく人事管理システムについても、適宜進捗状況等を情報提供すること。
(3) 昨年我々が実施した調査では、超過勤務手当の支給状況について、「サービス残業あり」と回答した国家公務員の割合が若干増加している(全体の13.5%=2年前より0.7ポイント増/回答者総数4,714人)ことから、改めて超過勤務手当の全額支給を徹底すること。
(4) テレワークを始めとする「柔軟な働き方」の推進に当たっては、国家公務員の職場環境や職務内容が極めて多岐に亘っていることを踏まえ、機械的な数値目標や無理な計画を課すことなく、柔軟に対応すること。
(5) 来年4月より導入するとされている勤務間インターバルについて、各職場において実施できるよう、各府省を指導すること。
(6) 全職員の仕事と生活の両立が図られるよう、フレックスタイム制、育児休業、育児短時間勤務、介護休暇、出生サポート休暇等、各種両立支援制度を利活用できる職場環境の整備を一層推進すること。
(7) 定員管理について、「国の行政機関の機構・定員管理に関する方針(2014年7月25日閣議決定)」に基づく定員合理化目標を見直し、パンデミックや大規模な自然災害にも即時に対応できるための人員を平時から確保すること。

4.女性参画の推進及び多様性の確保について
(1) 女性職員の登用について、各役職段階における女性割合がいずれの役職段階においても着実に増加しているものの、「第5次男女共同参画基本計画」(2020年)に定める成果目標を下回っていることから、女性の採用・登用と職域拡大をより一層進めること。
(2) 次世代育成支援対策推進法、女性活躍推進法及び「国家公務員の女性活躍とワークライフバランス推進のための取組指針」等に基づく各府省の「行動計画」「取組計画」等について、着実な実施を進めること。
(3) 本年6月に公布・施行されたLGBT理解増進法等を踏まえ、各府省当局と連携して、職場における性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する理解の増進に努めること。

5.福利厚生施策等について
(1) 公務員の福利厚生を勤務条件の重要事項と位置付け、職員のニーズ及び民間の福利厚生の正確な実態把握に基づき、その抜本的な改善・充実をはかること。
(2) 「国家公務員健康増進等基本計画」の着実な実施をはかるため、政府全体としての実施体制を確立し、使用者としての責任を明確にして積極的に対応すること。
(3) 心の健康づくりについては、引き続きストレス原因の追究と管理職員の意識改革に努めることとし、カウンセリングや「試し出勤」など復職支援施策を着実に実施すること。
(4) 2024年度の予算編成に当たっては、健康診断の充実など、職員の福利厚生施策の改善に必要な予算を確保すること。
(5) 福利厚生の重要施策であるレクリエーションについて、事業が休止されている実態を重く受け止め、その理念の再構築と予算確保や事業の復活に努めること。
(6) ハラスメントの防止について、一層有効な対策を着実に推進すること。とくにパワー・ハラスメントの防止対策については、人事院規則10-16に基づき政府全体で厳格に取り組むこと。

6.人事評価制度について
昨年10月より実施された新たな評価区分のもとでの人事評価制度について、人事院とも連携し、評価制度の実施状況及び評価結果の活用状況を検証すること。その上で、課題があれば、必要に応じて指導、改善措置等を講じること。

7.定年の段階的引上げに伴う各種施策について
(1) 昨年末に各府省に示した「定年引上げに伴う新規採用のための特例的な定員措置に関する考え方」を踏まえ、各府省における今年度の状況を検証しつつ、来年度以降についても、柔軟な定員管理を行い、各府省における確実な新採者の獲得を支援すること。
(2) 定年の段階的引上げが完成するまでの間、2013年の閣議決定に基づき、フルタイムを基本に職員の希望に応じた再任用を実現すること。

8.非常勤職員制度等について
(1) 非常勤職員制度の抜本的改善をめざし、公務員連絡会が参加する検討の場を設置し、政府全体として解決に向けた取組を推進すること。当面、国家公務員の非常勤職員制度について、法律上明確に位置付けるとともに、同一労働同一賃金及び常勤職員との均等待遇の原則に基づいて、関係法令、規則を適用すること。
(2) 本年4月より適用となった改正「人事管理運営協議会申合せ」を踏まえ、全府省において、非常勤職員の給与改定について常勤職員と同様とするよう、各府省を指導すること。
(3) 内閣人事局の資料によれば、昨年7月1日現在、全非常勤職員158,615人のうち75%強が期間業務職員以外の職員となっているが、その処遇や雇用状況が不明であることから、それらの職員の実態について調査・把握すること。
(4) 「非常勤職員の適切な任用について(2022年7月27日/人事管理官会議幹事会における内閣人事局参事官発言要旨)」を踏まえ、各府省における、期間業務職員及び非常勤職員として採用されている障害者の採用実態を検証するとともに、課題があれば、必要な改善指導等を行うこと。

9.障害者雇用について
 来年4月1日から国及び自治体に係る障害者雇用率が2.6%から3.0%に改められたことを踏まえ、各府省に対し、法定雇用率の達成を遵守するよう働きかけるとともに、障害者が無理なくかつ安定的に働くことができるよう、役割を適切に果たすこと。

10.公務員制度改革について
 国家公務員制度改革基本法第12条に基づく自律的労使関係制度を確立について、国家公務員法等改正法案の附帯決議(2014年3月12日衆議院内閣委員会及び同年4月10日参議院内閣委員会)に基づき、公務員連絡会との合意により実現すること。

11.その他
 国が民間事業者等に業務委託や入札等により事務事業の実施を委ねる場合においては、公正労働基準の遵守を必要条件とすること。

                                                                                                以上