公務公共サービス労働組合協議会運動方針

一 はじめに

 長く深い不況に苦悩している日本には社会的病理現象が蔓延し、経済、社会、政治という社会全体を構成する全ての領域で崩壊現象が生じている。市場主義という経済システムの原理を社会全体に持ち込み徹底することが時代閉塞状況を打破するための唯一の道であるかのように主張し構造改革が実行されている。賃金不払いが増加し労働基本権や労働基準法の軽視も甚だしく、これまで合意されてきた最低限のルールさえも崩され、公務・公共セクターの縮小・解体こそ社会の活力をもたらすと喧伝されて社会的セーフティネットが破壊されようとしている。
 「歴史の峠」にある日本の構造改革は必要である。しかし、人間が共同生活を営む社会に不可欠な「協力や連帯」が黙殺され、効率の前提であるべき公正と平等が忘れ去られることは許されない。連合が掲げる労働を中心とする活力ある福祉型社会を構築することは全ての勤労者の要求であり、その実現に献身することは労働運動の社会的使命である。労働運動は今、その真価が問われている。
 良質で安定した公務・公共サービスの提供のために現場で携わっている労働組合である私たちはこれまで培ってきた統一行動等をさらに発展・強化させ、労働生活条件の維持改善に止まることなく積極的な政策提言や代案戦略の提起、開かれた研究・交流集会の開催、また、中央省庁をはじめとした公務公共サービスに従事する労働者の組織化・組織建設など幅広い運動を展開し、社会的、政治的役割を果たすために組織の確立強化を図ることとした。そのため、今までの公務員共闘・公労協・全官公を解散し、単一組織事務局を設置し「公務公共サービス労働組合協議会」「略称:公務労協」を結成、発足することする。

二 運動を進めるに当たっての基本的考え方

1.政府は2005年度末までを集中改革期間とする新行政改革大綱に基づき、「内閣機能の強化、総合性、機動性を備えた行政の実現」「国民の主体性と自己責任を尊重する観点から、民間能力の活用、事後監視・救済型社会への移行等により簡素且つ効率的な行政の実現」などを基本的考え方として、(1)特殊法人等の改革、公務員制度改革、行政評価システムの導入、公会計の見直し・改善、公益法人に対する行政関与のあり方の改革、(2)国と地方の関係を見直し更なる地方分権の推進、(3)行政と民間の新たな関係を構築する観点からの規制改革、(4)電子政府の実現、省庁再編に伴う運営施策の融合化、行政組織・事務の減量・効率化、(5)上記課題に併せ司法制度改革の推進、を重点課題に位置づけ新保守主義の立場から市場原理主義的改革を強行している。
 まったなしで進められている公務員制度改革、三位一体の税財源・分権改革、規制改革、国営企業の印刷、造幣事業の独立行政法人化、郵政事業の公社化、来年4月の国立大学の法人への移行、政府関係法人改革、自治体への独立行政法人制度の導入など一連の行政改革に対応し、労働を中心とした活力ある福祉経済社会において「必要な公共サービスとは何か、そしてそれはいかに確保されるべきか」を社会的に問い直す取り組みを進める必要がある。公務・公共サービス部門の政・労・使が、社会的なパートナーとして、責任ある交渉・協議・対話を進め、安心・公正な「労働を中心とする福祉社会」をめざした積極的な政策提言とその実現のための活動を進めることとする。

2.日本経団連は「もはや賃金の社会的相場形成を意図する『春闘』は終焉した」と宣言し、「日本経済は長期に渡って低迷を続けており、グローバル化や市場経済の拡大、情報通信革命、少子化・高齢化の進展、資源エネルギー・環境問題の高まり、中国経済の急速な伸張といった内外の新たな構造的変化への対応が迫られており、我が国経済の再生の正念場の最中で、国際競争力を見据えて賃金を決める確固たる姿勢が求められている」とし、そこでの課題は、「賃金水準や賃金の引き上げ幅のいかんでなく、自社の生き残りをかけ、雇用の維持に最大限の努力を払いつつ、いかに付加価値の高い働き方を引き出す人事・賃金制度を構築するかにある」としている。さらに「名目賃金水準のこれ以上の引き上げは困難であり、ベースアップは論外である。賃金制度の改革による定期昇給の凍結・見直しも労使の話し合いの対象になりうる」としている。
 経営側の主張は誤解の余地無く明瞭である。問われているのはこれに対する労働側の断固たる姿勢と取り組みである。
 賃金の社会的相場を形成するシステムと運動の再構築が求められているとの認識に立ち公務公共サービス労働組合協議会は公務員労働者の賃金決定システムが民間準拠を基本としている現実と他方、確定した賃金が中小・地場民賃に多大な影響を与えている現実を踏まえつつ、要求の組み立て方、要求方法、運動の進め方についての議論を深め、引き続き賃金闘争再構築に向けて取り組む必要がある。

3.2004年度年金財政再計算に向けて、社会保障審議会年金部会は「制度改革の骨格的事項に関する方向性と論点整理」に基づいて9月12日、「年金制度改正に関する意見」をとりまとめた。今次再計算は既存制度の枠内での手直しにとどまらず、給付と負担のあり方、基礎年金の国庫負担財源をどうするか、雇用と年金の接続問題など抜本的な制度改革論議が不可避であり、信頼と安定の公的年金制度のあり方、医療、介護を含めた社会保障に関する制度横断的な改革「連合21世紀社会保障ビジョン」の実現を目指した取り組みが必要である。
 国共済・地共済の財政単位一元化への対応は、急速に進められる全体的な年金制度改革、社会保障制度改革の動向に大きく規定されることから、情勢認識を共有し、共済組合制度の進歩的諸特徴を堅持することを基本として短期の課題と中長期の課題とを整理し取り組みを強化する必要がある。

4.要求がいかに正当であってもそれを実現するためには職場を基礎とした運動展開力、社会的・政治的影響力が必要である。連合が掲げる「第2次アクションプラン21」の目標達成に向け、中央、地方において公務・公共サービス関連労働者の組織化と産別結集、部門連絡会の強化・確立のための活動はいつにもまして切実な課題となっている。
 中央省庁における組織の建設、独立行政法人の組織化は本組織がその役割を果たしうるのか否かの試金石である。
 公務公共サービス労働組合協議会は、これまでの組織拡大センターを中心とした取り組みの成果を踏まえて新たに組織建設対策委員会を立ち上げ、個別構成組織の取り組みを基礎に共同の事業として精力的に進めることとする。

三 当面の取り組み方針

(1)04春の労働・生活条件の維持改善の取り組み
 連合方針を踏まえ専門委員会、各部会での検討を経て取り組み方針を確立することとする。
 具体的には来春の代表者会議で確定する。

(2)良質で安定した公共サービス確立に向けた政策要求の取り組み
 各構成組織の持つ制度政策要求や職場からの取り組みの経験と教訓を持ち寄り、公務公共セクターの役割、当面する政策要求などの確立を目指し、開かれた研究・交流・学習のためにシンポジュームを開催する。
 時期、規模、テーマ設定、実行委員会の確立などについては運営委員会において具体化する。

(3)国際労働基準を満たした透明で民主的な公務員制度改革の実現
 連合対策本部と連携し、ILO勧告を受け容れた透明で民主的な公務員制度実現のために引き続き取り組みを進める。
 なお、連合官公部門公務員制度改革対策本部については名称を公務労協公務員制度改革対策本部と変更するが組織構成等は継続することとする。

(4)公的年金改革と財政基盤統合への対応
 雇用と年金の接続を確保し、安心・安定の公的年金制度の実現に向けて連合の提起する諸行動に積極的に参加する。
 専門家の育成に努め、厚生労働省案・坂口大臣私案、財務省案、経団連案などの問題点、医療・介護制度との連関、税財源のあり方など課題と論点を整理しつつ、組織内での学習を積極的に進める。
 少子高齢社会と労働の変化を踏まえワークシェアとパート労働など多様な勤務のあり方について対応を進める。

(5)退職手当、給与制度見直しへの対応
 退職手当制度の見直し、地域給与の見直し、給与制度の抜本見直し等の動きを的確に把握し、情勢に立ち遅れることなく的確な対応に努める。

(6)中央省庁等における組織化と組織拡大
 組織建設対策委員会を立ち上げ、非常勤職員の組織化を含む組織建設の具体的目標、実現に向けた行動計画、組織的体制の整備・確立を進める。

以上