「行政と公務員に何を求めますか」
市民アンケート調査を踏まえて
 
2002年7月 連合・連合官公部門連絡会

 私たちは、「行政と公務員に、国民が何を求めているか」をテーマに、公務員制度改革に関するアンケートを実施しました。これは、公務・公共の現場で働く労働者自らが、国民本位の行政と公共サービスの担い手として自己改革をしていくために、いま何が求められているのか、率直に市民の声を聞こうとしたものです。
 私たちは、この調査結果を踏まえ、国民本位の信頼できる行政と、透明で民主的な公務員制度改革の実現に向け取り組みを進めたいと考えます。
 アンケートでは、@行政の不祥事、対応策の誤りについての国民感情、不祥事等の原因認識、解決策の意見、A「キャリア制度」「天下り」問題に対する意見、B国民が望む公務員制度改革とその決定方法、などをたずねました。
 調査方法等は、@方法=面接と一部留置き郵送回答、A地点=9都府県の主要駅付近街頭、B対象=18歳以上の男女、C回答者=3,220人、D期間=2002年5月22日〜6月6日。

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「信頼できる行政と公務員制度」の実現求める
調査結果の概要と私たちの受け止め方
 

1)行政の不祥事に、ほとんどの市民から厳しい批判

最近の行政の不祥事については、「あまりにひどくて、うんざり」し(52.1%)、「残念で、憤りを感じて」おり(44.0%)、ほとんどの市民が行政に厳しい批判を寄せている。
その理由として、@原因究明が曖昧、責任逃れ、もたれあい蔓延、A事後処理などへの 不要な時間、費用の無駄、B国民無視、消費者不在の行政決定、C倫理観、道徳観の欠落
いう回答が、「そう思う」と「ややそう思う」を合わせると、いずれも90%前後と
 高い数値を示している。「そう思わない」はわずか数%であった。

行政と公務員への不信、重く受け止める
行政の不祥事に対し、過半数が「うんざりしている」ことは、行政と公務員が市民から不信を突きつけられたものといえる。このような率直な市民感情を重く受け止め、当該労働組合として、国民に信頼される行政の確立に向けて全力をあげねばならない。

不祥事の原因




2)自浄努力の欠如、政・官・業ゆ着、エリート意識への批判が上位に

  不祥事がつづく原因(8項目から3つ以内選択)については、上位に「公務員の自浄努力、危機意識の欠落」(52.0%)、「政・官・業のゆ着構造」(46.1%)、「歪んだエリート意識や倫理観喪失」(38.5%)を指摘し、問題視している。次いで、「省益優先や縄張り主義」
 (36.3%)、「公務員としての使命感、目的意識の希薄」(30.5%)をあげている。

  
一般公務員にも厳しい視線
市民の過半数が「公務員の自浄努力、危機意識の欠落」を批判するなど、問題を突きつけられたのは、一部の「エリート」特権官僚だけではない。行政施策の執行過程に関わる現場の一般公務員にも、厳しい批判が向けられている。
 


3)国民に知られていない政府の「公務員制度改革大綱」
90%近くが「キャリア制度」「天下り」の禁止・再検討求める


政府が昨年末閣議決定した「公務員制度改革大綱」について、この決定自体を大半の市民は知らない(
61.9%)。「よく知っている」のは7.1%であった。
この「大綱」で容認されている「キャリア制度」、緩和される「天下り」について、90%近い市民が問題視し、廃止や全面禁止、再検討を求めている。政府の方針を支持しているのは、「キャリア制度」が4.5%、「天下り」が2.1%にすぎなかった。

国民本位の行政へ国民の参加が必要、「キャリア制度」廃止、「天下り」全面禁止を
「大綱」の決定を知っている市民は少数だった。国民本位の行政とそれを支える公務員制度を実現するため、国民の意見が広く反映される必要がある。また、調査結果から明らかなように、制度改革にあたって、「キャリア制度」廃止と「天下り」全面禁止は欠かせない課題である。



4)改革課題の上位に「職業倫理観の確立、意識改革」

「キャリア制度」・「天下り」問題以外で、市民はどのような改革課題、方向を重視しているか。回答(8項目から3つ以内選択)は分かれたが、「1人ひとりの職業倫理観の確立、意識改革」(40.4%)、「能力・実績に基づく人事・給与制度の確立」(40.0%)が上位を占めた。「政・官を主導する政治指導部の力」(36.1%)、「政治家と官僚の接触禁止」(33.8%)が続いている。

求められる公務員の意識改革
  「職業倫理観の確立、意識改革」が上位にきたことは、国民の目線で仕事をする新たな 公務員像に自己改革するためにも、意識改革が求められていることを示している。また、 「能力・実績に基づく人事・給与制度の確立」を求める市民の声を重く受け止めたい。
 


5)75%の市民が「公務員組合、国民が参加した制度改革」求める

公務員制度改革の最良の決定方法をたずねたところ、75.1%が「政府と公務員組合、国民の代表が協議して決める」ことを求めている。「今までどおり、政府が単独で」としたのはわずか4.0%にすぎない。「政府と公務員組合との協議」としたのは、12.1%であった。

広く国民に開かれた議論で公務員制度改革をめざす
この調査結果をうけて、改めて、特定の政治家と一部官僚が密室で「改革案」をつくりあげてしまうという、この国の歪んだ「政・官ゆ着構造」に危機感を持つ。「大綱」を撤回し、国民に開かれた議論のもとで公務員制度改革案をつくるべきである。
 


6)回答者の4割の方から意見寄せられる

  市民の抱く公務員像などを自由に記していただいた。回答者の42%にあたる1,333人から具体的な不満、怒りや問題指摘、提案が寄せられ、関心の強さを伺わせた。信頼できる行政に変えるために、私たちも自己改革を促されていることを改めて認識した。国民本位の透明で民主的な公務員制度改革の取り組みを進める決意である。
 
以 上