国営企業部会情報
2002年7月30日


当局側 民間賃金は1.59%(大手)1.27%(中小)を主張し、この程度の実質下げの必要性に言及
《29日、調停委員会第2回事情聴取》

 昨日(29日14時30分〜)、中央労働委員会において、2002新賃金事案の調停委員会第2回事情聴取が行われ、国営企業6組合は、6月24日の事情聴取で主張した内容を踏まえ、本年度の民間賃金動向は現行水準が維持されているという認識のもとに、民間賃金準拠の原則に則った速やかな調停作業などを主張した。(詳細は別紙)

 これに対して、国営企業各当局は、以下の主張を行った。
1.本年の民間賃金動向は、日経連調査によると、賃上げ率は大手企業においては、1.59%、中小企業においては1.27%という状況にある。国営企業職員の給与は、民間賃金の動向等を考慮して決定するという原則に鑑みると、民間賃金の改定動向は、国営企業職員の定期昇給率1.93%を下回る状況にあり、本年度の賃金水準については、この程度は実質引き下げる必要がある。しかし、この日経連の調査結果(大手企業)には、一部民間企業における賃金カット等の影響が十分には反映されておらず、この点を加味すれば公表された数値を下回ることが想定される。当局としては、現段階においてこのような民賃動向をどのように評価するかの判断をしかねている。
2.当局としては、従来どおり職員の給与は、民間賃金の動向等を考慮して決定されるべきであるという考え方は変わらない。職員の勤労意欲の向上、これまで同様の良好な労使関係の維持という観点からも、本問題の早期解決が重要であると認識している。

組合側 当局見解に全面反論
民賃準拠の原則での調停作業を主張

 これに対して、国営企業部会各組合は、以下の内容で反論した。
1.当局は、日経連調査の中小企業の賃上げ率に言及しているが、従前の国営企業の賃金紛争の自主交渉・調停作業は民間主要企業の動向をもって判断されてきた。組合側は、あくまでも賃金紛争調整の判断の基礎となる民間賃金動向は従前通り民間主要企業である。
2.調停作業にあたって判断の基礎となる資料は、同一のベースの比較が基本である。本調停事案は、春季賃金紛争に関わるものであり、民間の賃金動向として使用される資料である日経連の調査結果も、春季賃金交渉に関するものが使用されるべきである。春季賃金交渉終了後のごく一部の民間企業の賃金カット等については、本調停事案の調停を求める事項と同一に論ぜられ、扱われる性格のものではない。まして、これらの民間企業は、例外中の例外のごく一部であり、民間賃金は大勢として現行賃金水準が維持されている。

【合同調停委員会が発足】

 この後、調停委員会が中断され、引き続き国営企業等担当全委員懇談会が行われ、各調停委員会の事情聴取の概要報告の後、合同調停委員会の発足を確認するとともに、今後の調停作業の進め方について協議され、調停作業を進めていくことを全委員一致で確認した。

本格的合同調停作業は31日14時から開始

 これを受けて、調停委員会が再開され、調停委員長から「調停作業を進めていく。31日午後2時から合同で調停委員会を開催する」旨の発言があり、2002新賃金事案の本格的な合同調停作業は、31日14時以降本格化する予定。


(別 紙)

第2回事情聴取での組合側主張点


1.本年度の民間賃金動向は、全体として定期昇給分が確実に確保され、現行賃金水準が維持されている!
 本年度の民間賃金動向は、全体として定期昇給分が確保され、現行賃金水準が維持されているとの認識が社会的常識であり、当局回答のいう引き下げの根拠はない。
2.長年にわたり定着している民間賃金準拠の原則に則った速やかな調停作業を!
 民間賃金動向は、現行水準が維持されているという認識のもとに、長年にわたり定着している民間賃金準拠の原則に則った速やかな調停作業を進めること。また、国営企業と民間企業の全体は、今年度の定期昇給が実施されたことにより、均衡している。
3.一般公務員との賃上げ率と国営企業の賃上げ率との間の格差の解消を!
 国営企業労働者の賃金水準依然として社会的に低位にある。国営企業部会の調査でも96年から適用の官民比較手法によっても格差が存在している。また、一般公務員の賃上げ率と国営企業の賃上げ率との間には、年々格差が存在しており、この格差解消が図られるよう改善措置を行うこと。
4.事業の安定的な経営を図る立場からも、紛争の円満な解決を図る調停作業を!
 事業の円滑な運営のためには、組合と組合員の協力が必要であることは労使共通の認識であり、引き続き良好な労使関係を維持し、事業の安定的な経営を図る立場からも、紛争の円満な解決を図る調停作業を行うこと。
5.例年通りの人事院勧告以前の賃金紛争の決着と、決着ルールを尊重した調停委員会の作業を!
 今次国営企業の賃金紛争は、例年より大幅に遅れ、これまで努力してきた早期解決のためのルール確立に逆行する状況にある。事案の早期解決のため、公平・迅速な調停作業が行われ、例年通りの人事院勧告以前の国営企業の賃金紛争決着という歴史的経緯と、決着ルールを尊重した調停委員会の作業を行うこと。

以上