2002年度公務員連絡会情報 22 |
2002年3月15日
公務員労働組合連絡会 |
人事院勤務条件局長、総務省人事・恩給局長と交渉−3/15
公務員連絡会は15日午後、1日に行った春季要求事項に関わる幹事クラス交渉を受けて、人事院勤務条件局長、総務省人事・恩給局長と事務レベルの最後の交渉となる書記長クラス交渉を行い、現段階での総務省・人事院の見解を引き出した。公務員連絡会としては、19日の回答指定日に向けてさらに政府・人事院と折衝を重ね、総務大臣、人事院総裁から春の段階の誠意ある回答を引き出すこととしている。
この日の交渉経過は次の通り。
<人事院勤務条件局長交渉の経過>
公務員連絡会書記長クラス交渉委員は、15日午後1時30分から、人事院大村勤務条件局長との交渉を行った。
冒頭、公務員連絡会山本事務局長から、春闘期のこれまでの交渉経過を踏まえ、@賃金については、率・額を明示しない公務員連絡会の要求を重く受け止め、公務員労働者の生活の維持・防衛に向けて努力すること。そのため、従前の例にとらわれず、公務員連絡会との十分な交渉・協議を行うこと、A民調の見直しについては、本年の官民較差や給与水準に影響を与えないよう最大限努力すること、B両立支援策のうち残された課題である子どもの看護休暇については、われわれの要求(特別休暇として年間10日)を十分踏まえ、新年度から実施すること。また、育児休業の男性取得促進策の具体化に向けて検討すること、C高齢者再任用の実態を正確に調査し、各府省によって制度の根幹にかかわるような任用・処遇上の差が生じないよう指導すること、等の重点課題について今日段階の回答を示すよう求めた。
これに対し勤務条件局長は次のとおり、今日時点の見解を示した。
@ 賃金要求について、率・額を明示しないという公務員連絡会の要求については、今般の情勢に鑑み、組織内での十分な議論を通じてなされたものであろうし、人事院としても最大限、要求の趣旨には応えていきたいと考えている。公務員の給与は民間準拠であり、この点は変更できない。今年の春闘は、13日に主要産業であるJCに回答があったが、収益をあげている企業でもベアなしで決着するなど、ある意味で想像以上に状況はよくない。民間では定昇制度を持っているところも半分ぐらいで、賃金改定は定昇を含めて行われているわけだが、ここが改定額0ということになると大変厳しい。公務員給与は、1号上位昇格等の影響で毎年約1%上昇しており、こうした状況下で官民比較することを深刻に受け止めている。こういう時期だからこそ、民間をよく調べて対応していきたい。
A 民間調査方法の見直しに関しては、これまでも意見を聞きながら進めてきたところである。これまでの調査方法は、調査効率を重視し、このため一定の企業が毎年対象となるようなこともあった。こういった状況が引き続くことは、情報公開の折、説明責任が果たせなくなる。このため民調方法の見直しをおこなうこととしたが、これは技術的な問題であり、ニュートラルなものだと認識している。今後とも、具体的に民調を実施していく過程でも、皆さんの意見を聞いていきたい。ただ、社会経済情勢の変化により、事業所の従業員規模はだんだん小さくなってきており、職員構成も変化してきている。これらの変化も踏まえ、民調方法の見直しについては、今後とも検討を進めていきたい。
B 昨年、育児休業制度、介護休暇制度の見直しについての意見の申出を行い、4月1日から実施される。また、家族的責任を有する職員の超過勤務規制についても制度化を行った。残された課題は看護休暇制度であるが、これもできるだけ早期に導入できるよう、鋭意、検討しているところである。看護休暇については民間育児休業法では事業主の努力義務規定とされ3年後に見直すとしている。公務での制度化については、昨年の国会審議で民間に合せるべきではないかと議論された経過もあるが、男女共同参画を実現していく諸施策については、本来、セットで実施していくのが筋であると考えている。
ただし、育児や介護につづき、看護についても女性に負担がかかるのではないかという懸念も出されており、男女が共同して仕事と家庭の両立にあたっていくよう男性の意識変革が必要である。このため、男性の育児休業等の取得にむけ勤務条件局長通知をだして各府省に要請し、諸会議でも啓発に努めているところである。
C 高齢者再任用制度については、実施状況を把握し、制度の定着にむけ検討を進めていきたい。
これらの局長見解を受けて公務員連絡会側は、@こういう厳しい経済状況に加え、公務員制度改革の乱暴な議論もあり、人事院が代償機関として機能するのかどうか、組合員レベルにおいても注目し、心配もしている。したがって、従前の例にとらわれず、連絡会との協議を尽くしていくべきではないのか、A民間調査方法の見直しにより、調査結果がこれまでの調査方法によるものと大きく変化するようでは、調査の信憑性が問われかねない。われわれは人事院が調査の見直しを進めることについては了解したが、見直しの賛否については留保しており、官民較差や賃金水準に影響を与えないことが重要だ。その点を十分配慮すべきであり、そうでなければわれわれとしては受け止められない。また、調査方法についても単純に金額だけを比較するのではなく、公務員定数が削減されているのに仕事の量は減っていない中にあっては、労働の密度も同時に調査するよう改めるべきではないか、B看護休暇については、4月からの実施となるよう、19日の総裁交渉では満額回答していただきたい、とさらに人事院の見解を質した。これに対し勤務条件局長は、@従前の例にとらわれず、連絡会との話し合いを尽くすということについては、その通りと認識している。調査結果が出るのはギリギリとなるだろうが、良い場合も、悪い場合も、節々で前広に皆さん方と話し合っていきたいし、皆さんも逃げないでいただきたい、A見直し後の民間調査方法に基づき、これまでのデータを活用してシュミレーションを行っているが、結果はやってみないとわからない。データについてはしっかり精査していきたい、B子どもの看護休暇については、鋭意努力していく、と回答した。
これらの回答を得て、連絡会側は、19日の総裁回答ではより明確な回答を示すように要請し、本日の交渉を終えた。
<総務省人事・恩給局長との交渉経過>
総務省久山人事・恩給局長との交渉は、午後3時から、山本公務員連絡会事務局長ほか書記長クラス交渉委員が出席して行われた。公務員連絡会側は、冒頭、次の重点課題について、今日段階での局長の見解を求めた。
[重点課題]
(1) 賃金については、要求額・率を明示しない要求を行ったが、その重みを受け止めていただいて、公務員労働者の生活の維持・防衛に向けて努力していただきたい。また、そのため、使用者としての政府と公務員連絡会が十分交渉・協議を行い、労使の意思疎通を深めていただきたい。
(2) 退職手当制度の見直しについては、公務員制度改革にも関わってきているが、行革推進事務局の検討結果を待って正確な民間実態の把握など慎重な作業を進めて、われわれとの十分な交渉・協議に基づいて進めていただきたい。
(3) 連合及び連合官公部門連絡会のILO結社の自由委員会への提訴については、ILO事務局から政府に対し報告を求められていると承知しているが、政府として誠実かつ迅速な対応をお願いしたい。
(4) 公務員制度調査会・労使関係の在り方検討グループでは意味のある審議もあったのでそれを踏まえて、労使の意思疎通システムのあり方について、公務員連絡会と総務省との間で、別途検討する場を設置していただきたい。また、公制調の設置期限が切れるのを待って、別途総務省に意志疎通の在り方について申入れ、協議していきたい。
(5) 高齢再任用制度については、雇用と年金に隙間を作らないように設計された仕組みであるが、各府省間で制度の根幹に関わるような相違が散見される。総務省として実態調査を行い、任用や処遇など制度の根幹に関わる差が生じないよう適切な指導をお願いしたい。
これらについて、久山局長は次のとおり見解を示した。
(1) 人事院勧告を受けての取扱いについては、内閣がその責任において、労働基本権制約の代償措置である人事院勧告制度を尊重するという姿勢に立って、国政全般の上に立って判断するということになる。総務省としては、人事院勧告が出されれば、それを尊重するとの姿勢を堅持して適切に対処して参りたい。
(2) 退職手当制度の見直しについては、退職手当を含めた公務員制度改革について昨年決定された「大綱」に基づいた検討が行政改革推進事務局で進められていると承知しており、退職手当を所管する総務省としてはその結果を踏まえて適切に対処して参りたい。
(3) 先般ILO事務局から政府見解を求める書簡が届いたと聞いており、関係部局と相談してきちんと対処したいと考えている。ご迷惑をかけないよう対応したい。
(4) 労使の意思疎通のあり方については、必要に応じ、意見交換を行って参りたいと考えており、皆さんとの間で話し合いのチャンスは開かれているので、そういう場を活用して弾力的に進めていきたい。
(5) 高齢者再任用については、円滑な運用が図られるよう昨年決定した「国家公務員高齢者雇用推進に関する方針」にしたがって、関係機関と緊密な連絡を取って、必要な総合調整を行うなど、政府全体としてその円滑な推進に努めていきたい。次年度の予定と前年度の実績について各府省から報告を受けることになっており、現在作業を進めているところである。結果がまとまれば公表することになる。
以上の見解について、連絡会側は@勧告待ちの姿勢だけではなく十分な意思疎通を深めることが大切であり、一方的な取り扱いとならないよう強く求めたい、AILOへの対応は、是非迅速な対応と関係省庁への働きかけをお願いしたい、B労使の意思疎通は、給与や評価が大きな課題になってくるだけに総務省として前向きな対応を求めたい、C高齢再任用はわれわれの調査ともすりあわせてきめ細かい指導・対応をお願いしたい、などと重ねて要望し、「19日の大臣交渉では春の段階の誠意ある回答を示すようお願いしたい」と要請し、本日の交渉を終えた。
以上