2002年度公務員連絡会情報 26 2002年4月5日

公務員労働組合連絡会

地公部会が全人連に申入れ−4/5

 公務員連絡会地公部会は、5日10時40分から、本年勧告にむけた全国人事委員会連合会(全人連)への要請を行った。
 公務員連絡会側は、地公部会の松島世話役委員長(都市交)、中村世話役書記長(日教組)、山本公務員連絡会事務局長、岩本次長(地公部会事務局長)と地公部会幹事が出席、全人連側は、眞仁田会長(東京都人事委員会委員長)はじめ、都道府県人事委員会のブロック代表及び政令市の代表者が対応した。

 冒頭、松島地公部会世話役委員長は、別紙要請書を手交し、「民間主要労組の春闘は収束したが、厳しい状況と認識している。公務員連絡会は、2月19日に政府・人事院に要求書を提出し、3月19日の回答をもって春のたたかいに区切りをつけたが、人事院からは厳しい状況認識が示されたところである。連休明けから、本格的に民間調査が行われるだろうが、厳しい中にあっても、なんとしても地方公務員の生活の維持・防衛につながるような勧告が必要だと考えている。また、財政事情から人事委員会勧告の不完全実施などの事態が頻発しているが、人事委員会の立場からこうした事態に対し、勧告が守られるように対処すべきである」と要請、続いて、岩本地公部会事務局長が、別紙要請書のうち、以下の重点5項目について全人連の考え方を質した。
1、春闘相場が厳しい中にあっても、地方公務員の生活の維持・防衛のための賃金水準を確保するため、特段の努力をお願いしたい。
2、民調方法の見直しによる勧告作業においては、従来の調査結果と大きな差が出るようでは、民調方法の信頼性を損なうこととなるので、公民較差に影響が出ないように行っていただきたい。
3、男女共同参画社会の実現に資するよう、必要な対策を行うこと。とりわけ、国で4月から施行されている子どもの看護休暇については、人事委員会規則の改定を行うとともに、条例で措置することを要する自治体においても遺漏なきよう処置すること。
4、職員の時間外手当を原資として、自治体で取り組まれている若年者を中心とした緊急雇用対策、いわゆる「ワークシェアリング」については、使用者側の一方的な導入ではなく十分な労使協議を行うとともに、不払い労働の発生とならないよう人事委員会として、必要な助言・指導を行うこと。なお、ワークシェアリングについては、3月29日に政労使合意がなったところであり、われわれとしても公務におけるワークシェアのあり方について、総務省との間で協議を進めようとしているところである。全人連としても特段の理解をお願いしたい。
5、人事委員会勧告にあたっては、マイナス勧告が予想される厳しい中だからこそ、労働組合と十分交渉・協議を行うべきである。

 こうした地公部会側の要請に対し、眞仁田会長は、以下の通り回答した。

地公部会要請に対する全人連会長回答

平成14年4月5日

 ただいまの皆様からの要請につきましては、確かに承りました。
 早速、全国の人事委員会にお伝えいたします。
 最近の経済情勢を見ますと、内閣府は3月の月例経済報告で景気判断を「依然厳しい状況にあるが、一部に下げ止まりの兆しがみられる」とし、日銀短観においては、「大企業、特に製造業では景況感の悪化に歯止めがかかってきたものの、中小企業では悪化が続いている」とされ、回復にはなお時間を要する模様とされております。
 こうした状況の下、今春闘においては、雇用確保が重点として取り組まれるとともに、企業業績についてはボーナスに反映させる傾向が一層強くなりつつあり、ベアゼロの回答もあいつぐなど、給与改定については、かつてない極めて厳しい状況が見られております。 今後の動向をより一層注視してまいりたいと考えております。
 一方、民間では、より能力・実績等を反映するなど人事給与制度の再構築の動きが急速に進んでおり、国、地方自治体においても、様々な角度から、従来の制度の妥当性が問われるに至っております。
 国においては、昨年末に公務員制度改革大綱が閣議決定されるなど、平成15年の国家公務員法改正に向けて動き出しております。地方公務員制度への影響も大きいものと考えられるところであり、今後の動きに注目していく必要があるものと考えております。
 申すまでもありませんが、公共のため尽力している公務員について給与等の勤務条件を適正に確保することは、人事委員会の重要な使命であると認識しているところであります。
 今後、各人事委員会におきましては、勧告に向けて民間給与実態調査を予定しております。本年は層化や抽出方法について見直しを行っておりますが、地域の民間給与実態の的確な把握という観点から適切に対処してまいります。
 ただいまの皆様の要請の内容につきましては、その調査結果や国の状況等を踏まえて具体的に検討してまいりたいと考えております。
 以上でございます。

 こうした回答を受け、勧告にむけ、今後とも時宜に応じて話し合いを行うことを約束し、本日の申入れを終えた。



2002年4月5日

全国人事委員会連合会 
  会 長 眞仁田 勉 様

公務員労働組合連絡会地方公務員部会
全日本自治団体労働組合
中央執行委員長 北岡勝征
日本教職員組合
中央執行委員長 榊原長一
日本都市交通労働組合
中央執行委員長 松島 稔
全日本水道労働組合
中央執行委員長 足立則安
全国自治団体労働組合連合
中央執行委員長 武田幸男


要 請 書

 貴職が、日頃から地方公務員の賃金・労働条件の改善に向け、ご尽力いただいていることに敬意を表します。
 日本経済はデフレスパイラルの危険性が指摘される局面から抜け出せず、先行きに対する不安は一向に解消されていません。
 公務員労働者をめぐる情勢も、3年連続で年間総収入がマイナスとなり生活水準の維持が困難となっています。加えて、自治体において、地方財政が危機であるとして職員の給与をカットする動きが後を絶ちませんが、これは現行法制下において人事委員会勧告制度を空洞化させるものであり、許されることではありません。
 地方財政に関し、自治体の歳入を中央が決定する中央集権的システムの問題性が歴然としており、税財源のあり方を抜本的に改革し地方財政を確立することは焦眉の課題となっています。
 これから人事委員会において本年の勧告に向けた作業に取りかかられることと思いますが、貴職におかれましては、地方公務員の生活を守るという人事委員会の最も基本的な使命を十分認識され、下記事項の実現に向け、加盟組合との協議を尊重しつつ、最大限の努力を払われますよう強く要請します。



1.地方公務員の生活の維持・防衛のための賃金水準を確保すること。
2.民調の見直しによる勧告作業においては公民較差に影響が出ないようにすること。
3.年間総労働時間を早期に1800時間程度に短縮するために引き続き次の事項の実現を図ること。
(1) 所定労働時間の短縮をはかること、特に変則・交替制勤務職場における労働時間短縮を重視して取り組むこと。
(2) 実効ある男女共通の超過勤務規制のための積極的な施策を引き続き進めること。
(3) 年次休暇の取得を積極的に促進すること。
(4) 労働時間短縮のために人員確保などの施策を講ずること。
4.各種休暇制度を新設・拡充すること。特に、夏季休暇日数の拡大、リフレッシュ休暇有給教育休暇(リカレント休暇)等を実現・充実すること。また公務員としての自己啓発、自己実現のための休業制度の新設を含め、総合的な休業制度を確立すること。
5.自治体における男女共同参画基本計画に基づき、女性公務員の採用、幹部職員への登用、女性の労働権確立や環境整備等に関する数値目標を含めた積極改善措置(ポジティブアクション)を講ずること。また、計画等の策定にあたっては当該労働組合との十分な協議を行い合意に基づくこと。
6.育児休業・介護休暇の男性取得促進のための施策を行うこと。
7.高齢者再任用制度が、希望するものすべてが雇用されるなど実効性のある制度として定着するよう積極的な施策を行うこと。
8.国家公務員の進捗状況を踏まえ実効あるセクシャルハラスメントの防止策を引き続き推進すること。
9.公務職場に障害者雇用を促進すること。そのために必要な職場環境の整備を行うこと。
10.刑事事件での起訴に伴う休職や禁錮以上の刑に処せられた場合のうち、公務に関わる事項をはじめ事案の性格によっては任命権者の判断で失職させない措置を行えるよう、分限条例の改正を行うこと。
11.自治体で取り組まれている緊急雇用対策としての自治体雇用に当たっては、職員に対する未払い超勤の発生や賃金水準の低下を招くことのないようにするとともに、当該労働組合と協議すること。
12.各都道府県・政令指定都市・特別区人事委員会の勧告に当たっては、当該労働組合と十分交渉・協議すること。

以上