2002年度公務員連絡会情報 36 2002年7月30日

公務員労働組合連絡会

人勧期第2次中央行動実施して勤務条件局長と交渉−7/30
「マイナス較差必至、一時金厳しい、勧告は来週」との見解表明

 公務員連絡会は、2002年人勧期の取り組みの大きな山場に当たる30日午後、日比谷大音楽堂での中央集会を皮切りに、デモ行進、人事院交渉や支援行動などの第2次中央行動を実施した。この日の人事院交渉で勤務条件局長は、@官民較差はマイナスとなることA一時金も厳しい情勢であることB配分については公務員連絡会の要求に配慮した内容を検討していることC勧告日は来週となる見通しであること、などの見解を示した。また、給与改定の実施時期については遡及せず、施行日から適用としたものの、情勢適用の原則を踏まえて必要な調整を行うとの考え方を示した。
 この日の見解を受けて公務員連絡会は、なお生活防衛の観点からぎりぎり努力することを求めるとともに、大きな課題として浮上してきた官民較差の「調整」方法等をめぐって交渉・折衝等を続け、5日の第3次中央行動で再度勤務条件局長交渉を実施し、その後予定される人事院総裁交渉で最終的に要求実現を目指すこととしている。

 午後1時30分から日比谷大音楽堂で行われた中央集会は、猛暑のなか、全国から4千人の仲間が結集、松島副代表委員(都市交委員長)を議長に選出して始められた。
 冒頭主催者挨拶にたった丸山代表委員は、公務員制度改革をめぐる取り組みの現状に触れた後、「われわれは人勧制度のもとで決定過程に参加できない仕組みにおかれているが、使用者が一方的にわれわれの賃金を引き下げることは許されない。民間準拠の下で引き下げがやむを得ないとしても実質的に交渉で合意することが条件だ。不利益不遡及も大きな問題として浮上してきている。勧告日も間近に迫っている。最後まで、われわれが納得のいく勧告の実現を目指してがんばろう」と訴えた。
 続く激励挨拶には笹森連合会長が駆けつけ、「皆さんが厳しい闘いを余儀なくされていることに連合を代表して心からお詫びしたい。不利益を遡及することなど民間では考えられない。人事院が政治的判断でそうした勧告を行うなら、労働界全体として断固とした姿勢で臨む必要がある。民間の組合が署名運動に協力している気持ちを重く受け止め、1千万署名を成功させよう」と、連合としても人勧闘争や公務員制度改革に全力で取り組むとの決意を表明した。また国営企業部会を代表して石川全逓委員長は、同時並行して進められてる調停・仲裁の取り組みの現状に触れながら、連合官公部門連絡会全体として大同団結が必要だと訴えた。
 集会はその後、山本事務局長がこれまでの取り組みの経過を報告するとともに、本日の人事院交渉、5日の第3次中央行動で要求実現を迫り、来週中に予定される総裁交渉で最終的に勧告内容を確定していく、との取り組み方針を提起した。
 構成組織決意表明では、国公総連・真鍋中央執行委員、国交職組・嶋倉中央執行委員長、自治労・植本副委員長、都市交・田川副委員長が登壇し、最後まで闘う決意を表明、最後に丸山代表委員の音頭で団結がんばろうを三唱して中央集会を終えた。

 集会を終えた参加者は、霞ヶ関一周のデモ行進と、2時30分から行われた人事院交渉を支援する行動に移り、「生活防衛できる賃金水準を確保せよ」「納得できる勧告を行え」と、シュプレヒコールを繰り返した。参加者は、その後再び日比谷大音楽堂に戻り、交渉報告を受けてこの日の行動を締めくくった。
 この日行われた勤務条件局長交渉の経過は次の通り。

<人事院勤務条件局長交渉の経過>
 公務員連絡会書記長クラス交渉委員は、7月30日午後2時30分から、第2次中央行動に連動して3回目の勤務条件局長交渉を実施した。
 冒頭、山本事務局長が「7月24日に勤務条件局長交渉を実施したが、本日はその後の検討状況を踏まえ、勧告に向けてより具体的な回答をもらいたい」と回答を求めたのに対し、大村勤務条件局長は、以下のとおり本年の勧告内容の概要を示した。
(1) 官民較差については、勧告で明らかになるものであり、その点についてはご理解いただきたい。ただ、数値は極めて厳しく、マイナスになると思われる。特別給についても皆さんの関心が極めて高いことは承知しているが、厳しい状況にあると見ている。
(2) 配分については、今回は引き下げを前提としての対応であり苦慮しながら検討を進めているが、これらの改定にあたっては現行の俸給と諸手当の配分割合を踏まえ、皆さんの要求にも配慮して対応したい。
 なお、俸給表については、従来の経緯を踏まえた対応が必要であるが、皆さんの要求にも配慮し検討を進めている。
 また、諸手当については生活給的手当を中心に検討しているとしたところであるが、このうち扶養手当の配偶者の引き下げを中心に検討を進めている。
(3) 特別給については、民間における支給実態を踏まえ、一律支給と考課査定分の比率を全体として合わせる形で、3月期の期末手当を期末・勤勉手当に分け、6月期、12月期に前倒し支給することとしたい。
(4) 勧告日については、勧告の受け手との関係もあり確定的なことは言えないが、来週ということになるよう期待している。
(5) 平成8年の俸給の調整額の経過措置の廃止に伴う新たな経過措置については、できるだけ早期に解消したいと考えているが、具体的には、皆さんの要求を踏まえて対応したい。
(6) 改定の実施時期については、本年の給与改定内容に鑑み、改正法の規定は、遡及することなく施行日からの適用とする必要がある。しかしながら、給与等の勤務条件に関する基礎事項については、情勢に適用しなければならず、また、人事院はその変更について勧告を怠ってはならないとする原則を踏まえ、必要な調整をせざるを得ないと考えている。官民の給与については、毎年4月時点で合致させるということが基本であることをご理解いただきたい。
(7) 昨年の報告で言及した地域における公務員給与の在り方の見直しについては、給与配分の適正化の観点から、給与制度全体との関係を念頭に置きつつ、俸給制度や地域関連手当の在り方の基本的な見直しを行いたいと考えている。
 なお、この検討にあたっては、皆さんと意見交換をしながら早急に結論を得たいと考えている。
(8) 育児休業の男性取得促進について引き続き検討していくほか、給与以外の事項についても問題意識を持って引き続き皆さんと議論していきたい。

 こうした回答に対し、公務員連絡会側は、以下のとおり局長の見解を質した。
(1) 官民較差は極めて厳しく、マイナス勧告を想定して作業を進めているということだが、人事院として生活防衛に向けてぎりぎりまで努力してもらいたい。
(2) 一時金の水準についても厳しいということであるが、月例給とのダブルパンチはなんとしても避けるべきである。組合員が高い関心をもっていることについて充分配慮し、最大限努力してほしい。
(3) 配分について、前回(24日)は「メリハリある配分」としていたが、今回は「従来の経緯を踏まえた対応」とし、われわれの「要求にも配慮」したいとの考えが示されたことは、一歩前進として受け止めたい。他の俸給表との関係や初任給は下がっていない点について一定の理解はするものの、我々が求めている組合層については一率配分とし、少なくとも俸給の平均引き下げ率を上回らないように措置することを重ねて要求する。
(4) 3月期末手当を前倒しし、6、12月の2回にすることについては理解するが、本年度はすでに6月期が支給されていることもあり、期末・勤勉手当の割振り変更を行うべきではない。また、来年度から実施する場合も本年勧告する必要があるとのことだが、その勧告で勤勉手当の割合を大きく変更すべきではない。さらに、これにともなって成績率の比率を変更したり、運用を強化することはわれわれとして受け入れられない。
(5) 俸給の調整額の経過措置の見直しについては、勧告までに決着しなければならない問題ではない。充分協議のうえ、われわれの要求に沿って新た経過措置を設定するよう要請する。
(6) 給与制度見直しについては、われわれとの交渉・協議を重視する観点から、本年の報告で具体的なメニュー、勧告時期等を盛り込まないよう強く要請する。
(7) 本年の官民較差の「調整」方法については、不利益不遡及を堅持すべきであるというのが我々の要求だ。今日の笹森連合会長のあいさつでも「遡及して精算することは民間では考えられない」とされたところであり、公務でこのようなことを許容することは民間への影響も大きく、この原則は曲げられない。「調整」という方法を取ったとしても不利益不遡及の原則に抵触することになると考えており、法的な解釈を明確にすべきだ。

 これらの質問に対し、局長は再度次のとおり考え方を示した。
(1) 官民比較の方法については、たとえば国営企業では春闘ベアを参考にするというベア方式を採用しているが、人事院は4月に支給された給与を官民で比較するという較差方式を採用している。
 民間の給与の状況は、昨年までは春闘でベアが確定した後も、1年間かけて少しずつ上昇していたが、本年4月時点ではむしろ水準が下がっており、年度途中にマイナス改定が行われていた。一方、公務は本年においても1%弱の制度上昇がある。また、今年の春闘はベアを実施した企業は極めて限られるばかりか、民間企業ではベアと定昇を区分しないで給与改定を行うところが多いが、そういったところでも給与改定が行われたところは少ない。さらに、4月給与から賃金カットを行ったところでは、係員クラス4%、課長クラスではそれ以上という結果がでているところである。
 このような状況下で官民比較するわけで、春闘結果に現れるベアだけでは判断できないものである。
(2) 一時金については、民間調査で出てきた数字をそのまま勧告する以外にない。その民間の動向が厳しいということだ。
(3) 俸給の引き下げについては、ある程度の差は必要だが、公務員連絡会の要求については充分考慮したいと考えている。
(4) 期末・勤勉手当の割合について、3月期を6月期、12月期に前倒しして支給することとなれば、当然、民間の実勢に合わせる形で割合変更をせざるを得ない。
 ただし本年度については、6月期がすでに支給されていることもあり割合の変更をやりようがないので、3月期末手当の一部を12月分に前倒しし、3月期末手当も一部残さざるを得ないと考えている。期末・勤勉手当の割合変更については来年度において実施できるよう本年勧告したいと考えている。
(5) 俸給の調整額の経過措置の要求の趣旨については頭に入れて人事院規則事項として対応するが、できるだけ早期に解消したいと考えていることについてご理解いただきたい。
(6) 給与制度の見直しについて公務員連絡会との話し合いは重視するが、あまり時間をかけられない問題である。勧告後すぐにでも話し合いの場を持ちたい。
(7) 官民較差の「調整」については、われわれとしては、不利益不遡及の原則とは、適法に支給されたものについて取り返すことはできないということだと考えている。将来に向けた調整(減額)までも縛っているとは理解していない。公務員給与が4月時点で官民給与を合わせることを原則とするならば、どこかで調整せねばならないと考えている。

 公務員連絡会側は、これらの見解のうち官民較差の調整方法について「新法を作って削減するにしてもその計算根拠が4月時点にさかのぼるのでは結局のところ不利益の遡及ではないか。こうした事態は民間にも前例がなく、公務員でも初めてということになれば、不利益不遡及の新解釈を人事院がするということになる。われわれは、今の局長の見解は不利益不遡及の原則に抵触する疑いが極めて強いと考えており、そうした調整措置は是非考え直してもらいたい」と、強く再考を求めたが、議論は平行線をたどった。
 そのため連絡会側は、8月5日の交渉ではより具体的な見解を示すことを強く求め、この日の交渉を打ち切った。

以上