公務員連絡会幹事クラス交渉委員は、10月22日、人事院・総務省・財務省に対して2002年度賃金・労働条件に関わる基本要求事項の申入書(資料1〜3)を提出し、交渉を実施した。この基本要求は、来年度の予算編成時期に合わせて、政府、人事院に対して2002年度の公務員の賃金・労働条件に関わる基本的な考え方や政策をまとめて提出したもの。本年の場合は、公務員制度改革をめぐる行革推進事務局の動向もあり、中央人事行政機関との間で新たな制度改革をめぐる議論を行うことは事実上不可能な状況にあるが、既存の枠組みのもとで改善可能な事項も多数あることを踏まえ、本日の基本要求提出を期に交渉・協議などを強め、総務省、人事院については12月段階で回答を引き出すこととしている。
<財務省との交渉の経過>
公務員連絡会の幹事クラス交渉委員は、10月22日午前11時から、財務省への要求書を提出し、交渉を行った。財務省からは関係課である主計局給与共済課の藤田参事官(共済担当)、大東給与調査官らが対応した。
冒頭、岩本事務局次長が申入れ書(資料1)を手交し、@2002年度予算編成にあたって公務員給与改定財源を確保するとともに、独立行政法人については給与体系維持財源(定昇分等)の財源を確保すること、A育児休業中の経済的保障について、取得期間延長にともない、基本的に休業全期間にわたり保障すること。介護休暇中の経済的保障についても同様の措置とすること。あわせて育児休業・介護休暇中の掛け金を免除すること、B国共済と地共済の財政単位の一元化にあたっては、労働組合と十分協議をおこない成案を得ること等の重点課題を説明し、財務省側の見解を求めた。
これに対し財務省側は、概要、以下の通り応じた。
@ 来年度の公務員給与改定財源については、現在まさに平成14年度の予算編成中であるが、例年どおり適切に対処したいと考えている。公務員給与改定財源の取り扱いは、予算規模や財政事情等を勘案して措置されるものであるが、これまでの経過からも明らかなように、仮に計上されていなくても、給与改定を行わないということではない。
独立行政法人については、人件費と物件費から構成される交付金制度に一本化されているが、積算根拠としては定昇分も含め給与項目が入っていると承知している。財務省としては必要な財源は計上しなければならないという考え方である。
A 育児・介護期間中の給付金に関しては、これは民間の雇用保険における措置との並び、また掛け金免除も厚生年金制度や健康保険制度における同様の措置との並びということで行われてきている。今回、民間においても関連法の改正案が国会に上程されているものの、給付の延長等の措置は取られていない。このため公務員の休業期間が延長されたとしても、公務員だけ給付期間を延長するような措置を行うことは難しいと考える。民間の動向、共済組合員の取得状況や負担の度合いを考慮して今後とも検討していきたい。
B 10月3日に財政一元化に向けての研究会が発足したが、同研究会には、組合の代表者も参加しているところである。こうした研究会での意見を十分に聞きながら、成案を得ていきたいと考えている。
こうした財務省側の回答に対し、組合側は、@給与改定財源の有無に関わりなく改定に対処するということは、財務省として人勧を尊重すると理解してよいか、A各省庁の国家公務員については定昇分を盛り込んで予算策定が行われている。各省庁の独立行政法人への交付金についても国家公務員と並びで算定するよう財務省としても指導するべきではないか、B育児休業給付金については、民間の動向もあるだろうが、両立支援という社会的要請の観点から公務が先行して行っていくことも必要ではないか、C子一人につき1回、1歳未満という制度的制約を、たとえば休業給付を支給される期間を1年間とし、その期間であれば数回に分けて、かつ、両親とも給付されるというように緩和すべきではないのか、D育児休業給付金も重要な労働条件の一部であり、厳密な官民比較調査を実施し、民間の動向を把握すべきではないのか、などとさらに財務省の考え方を質したのに対し、財務省側は、@人勧尊重の考え方に変わりはない、A当然、必要なものは計上しなければならないというのが財政当局の考えである、B休暇関連については先行したこともあるが、給付の方は民間と歩調を合わせてきたという経緯を尊重したい、CD個別の企業での措置内容もあろうが、休業給付については民間法は満1歳未満となっており、これに合わせるべきものと考えている、と答えるにとどまった。
最後に、今後とも意見交換をしていくことを約し、財務省交渉を終えた。
<人事院との交渉の経過>
公務員連絡会の幹事クラス交渉委員は、財務省交渉に引き続き、10月22日午後1時30分から、人事院に「2002年度賃金・労働条件に関わる基本要求事項」(資料2)について申し入れを行った。人事院からは、佐久間職員団体審議官らが対応した。
冒頭、公務員連絡会の小林賃金労働条件専門委員長が基本要求事項の重点ポイントを説明、12月にはあらためて回答を示すよう要請するとともに、今日段階の人事院の考え方を質した。
これに対し職員団体審議官は、概要、次のように応じた。
(1) 公務員給与水準の在り方の検討
@公務員給与水準の在り方の検討については、今日段階においては、官民給与調査の在り方について問題意識をもっている。
A我々の民間給与調査は地方人事委員会との共同調査であるが、民調の基本である企業の抽出方法について再検討が必要と考えている。特に、抽出企業について特定企業に偏っていないか、という問題もある。調査の効率上やむをえないところもあるが、民間調査は正確性が必要である。見直しにあたっては、地方の人事委員会とも協議を進めていかなければならないと考えている。
B今後の進め方については、次回の民間給与調査において、これを見直すという方向で持っていきたいと考えているが、具体案はなお検討中である。また、見直しの結果が公務員賃金の水準問題につながるかどうかは結果を見てからでないと判断できない。今後とも皆さんと議論をしていきたい。
(2) 給与制度・給与決定制度
公務員の給与制度に関わる事項については、行革推進事務局でも検討されているところであるが、基本的には、こうした公務員制度改革の動向を見定めながら対応していきたいと考えている。
(3) 職業生活と家庭生活の両立支援策
@育児休業・介護休暇の改正については、現在、総務省で法案を作成中であり、給与改正法案と一緒に11月上旬には国会で審議される方向と聞いている。育児休業・介護休暇の改正関連法は、今月中に閣議に図られる予定と聞いている。
A改正案の内容は、これまで示してきたとおり民間法の改正案や民間の動向を踏まえたもの。民間育児介護休業法の審議もこれから始まるが、人事院としてもそれらの審議内容を踏まえつつ必要な対応を行っていきたい。また、関連規則については、新制度に円滑に移行できるよう、法施行日までに整備したい。
B子どもの看護休暇については、民間の実施状況については厳しいものがあるが、公務においてはできるだけ前向きに検討していきたい。また、家族的責任を有する者の超勤規制については、民間の法改正に合わせ、できるだけ早期に措置したい。
これらの考え方に対し、公務員連絡会は、@公務員給与水準の在り方の検討については我々との協議・合意に基づき行われるべき。来年の民調で見直すということであれば時間がない。少なくとも見直しに向けた基本的な考え方やスケジュールを早く示すべき、A地域間の公務員給与水準の見直しは、直接、地方で働く公務員に影響するが、その点についてどのように考えているのか、B公務内の配分見直しの検討はまだ先のことと考えていいか、C育児休業の男性取得策について厚生労働省で指針づくりを進めている。人事院としてもプロジェクトをつくり取得促進策を策定すべきではないか、と重ねて人事院側の見解を質した。
これに対して人事院側は、@まだ都道府県・政令市の各人事委員会との協議も行っていない。どの程度の規模でどの程度のことを行うかについてはいま少し検討が必要である。皆さんとは十分協議していきたい、A地方によっては民調方法の見直しの結果、水準が下がるところも、高くなるところもある。どの程度のことをやるかに関わっており、今の段階では何ともいえない、B公務部内の配分の話は、民調の見直しをやったからといってすぐやれる性格のものではない。もう少し先の話となる、C申し入れの趣旨は承る、とし、今後なお院内で検討し、見解を示したいとの考え方を示した。
最後に、公務員連絡会から基本要求に対する人事院の最終的な考えを12月中に示すことを要請し、本日の交渉を終えた。
<総務省との交渉の経過>
公務員連絡会の幹事クラス交渉委員は、10月22日午後3時から、総務省へ要求書を提出し、交渉を行った。総務省からは関係局である人事・恩給局の戸谷審議官らが対応した。
冒頭、連絡会の岩岬事務局次長が「2002年度賃金・労働条件に関わる基本要求」(資料3)の重点事項について申し入れを行い、12月には改めて回答を示すよう求めた。
これに対し総務省側は、次の通り応じた。
@退職手当制度の見直しについては、公務員制度改革の課題として位置づけられ、12月大綱にむけて行革推進事務局が検討を進めているところである。退職手当の民間実態調査については、郵送調査は終了したが、現在その点検をすすめつつ、職種によってサンプルが少ないところがあるので補足調査を行っているところである。
A超過勤務の縮減については、重点的に取り組んでいく。今後とも関係機関との協議に努めていく。
B福利厚生施策等については、2002年度の予算編成に当たって健康診断関係での予算増額(一人あたり215円)を要求している。
C高齢者再任用制度については、制度の定着と円滑な運用に向けて、関係機関と連携していきたい。まず年末の査定で再任用の定数枠を決定し、実際にどれくらいの要望があるのかを見極めながら適切に対応していきたい。
D職業生活と家庭生活の両立支援に関わる人事院の意見の申出や勧告に基づき、「育児休業等に関する法律」や「勤務時間、休暇等に関する法律」の改正案をできるだけ早期に国会に提出できるよう、現在努力しているところ。
E人事管理システムの見直し及び新たな人事評価システムについては、内閣官房を中心に検討を進めていることころであり、総務省としても協力して取り組んでいる。公務員制度改革の大きな柱の一つとして検討されるべき課題と考えている。
こうした総務省側の回答に対して公務員連絡会側は、なお@民間企業の退職金実態調査の結果については、事前に組合に提示することを要請する、A高齢者再任用制度については希望者と実際の定数とのギャップが生じて採用されない職員が出ないよう、政府の責任として対応してもらいたい、B「育児休業等に関する法律」や「勤務時間、休暇等に関する法律」の改正は、是非とも臨時国会で成立するよう努力すべきだ。給付に関わる改正は、どのように措置するのか、C新たな評価システムについては、試行といえども重要事項であるため、組合との事前協議を行うよう要求する。行革推進事務局に対しても、人事評価研究会での成果の実現にむけた対応をすべきである、と総務省の考え方を質した。
これに対して総務省側は、@現在、作業途中だが、結果報告のあり方については、申入れとして承る、A高齢者再任用制度については、制度の円滑な実施に向け適切に対応を図りたい、Bわれわれとしても、11月末をデッドラインに国会対応を進めている。給付に関しては、共済組合法単独の改正ではなく、総務省としては育児休業法の附則で対応していくことを考えている、C人事管理システムの見直し及び人事評価システムの検討にあたっては、総務省としても努力していきたい、との考え方を示した。
最後に公務員連絡会が、「今日申し入れた事項について検討を進め、12月には明確な回答を示してもらいたい」と改めて要請し、交渉を締めくくった。
資料1.財務省への申入書
2001年10月22日
財務大臣 塩川正十郎 殿
公務員労働組合連絡会
代表委員 大原義行
代表委員 丸山建藏
2002年度賃金・労働条件に関わる基本要求事項の申入れ
日本経済は、デフレスパイラルの危機も叫ばれる深刻な状態にあり、雇用確保と内需拡大はまさに緊急課題となっています。また、公務員を取り巻く厳しい情勢が継続する中で、3年連続の年収マイナスとなる給与法改正が行われようとしており、公務員労働者の実質生活への影響も深刻なものがあります。
現在、政府の行政改革推進本部によって、現行制度の枠組みを超えた「公務員制度改革」の検討が進められている過渡的な段階にありますが、われわれは、人事院勧告制度が現行の賃金・労働条件決定制度である限り、政府全体としてそれを完全に機能させ、共済や福利厚生を含め総合的な観点で公務員の処遇を確保すること、及びそのための財政的裏付けをおこなうことが極めて重要であると考えます。
そうした観点から、当面の重要課題である職業生活と家庭生活の両立支援に向けた課題や2002年度の予算編成に関わる事項を含め、貴職が所管する賃金・労働条件に関わる基本的な要求事項を下記の通り申し入れますので、誠意を持って協議に応じ、諸課題の解決に全力であたられるよう要請します。
記
一、給与に関わる事項
(1)2002年度予算編成に当たっては、公務員給与改定財源を確保すること。また、独立行政法人の給与体系維持財源を確保すること。
(2)通勤手当については全額非課税とすること。
(3)超過勤務等に対する予算を増額するとともに、実態に見合った支給を行うこと。
(4)級区分による旅費支給基準を抜本的に改めるとともに、実態にあった旅費(宿泊費、日当の増額など)が支給できるよう給付額を引き上げること。また、赴任旅費を含む移転料については、直ちに改善すること。
二、育児休業及び介護休暇の延長に関わる事項
(1)育児休業給付金については、休業全期間を対象とし、支給水準を引き上げること。
(2)介護休暇期間の延長にともない、休暇全期間について介護休業給付金の対象とし、支給水準を引き上げること。
(3)共済組合掛け金の免除については、育児休業全期間について対象とするとともに、介護休暇期間についても適用すること。
三、福利厚生施策等に関わる事項
(1)公務員の福利厚生を勤務条件の重要事項と位置付け、職員のニーズ及び民間の福利厚生の正確な実態把握を行い、その抜本的な改善・充実を図ること。
(2)昨年改定された「国家公務員福利厚生基本計画」の着実な実施を図ることとし、@健康・安全管理対策の充実A男女共同参画の促進のための育児・介護支援策の充実B持ち家支援策の拡充C公務員宿舎制度の改善D余暇活動への支援の強化、などを重点に具体化を図ること。
(3)2002年度の予算編成に当たっては、職員厚生経費をはじめ、職員の福利厚生施策の改善に必要な予算を増額すること。
四、年金・医療制度に関わる事項
(1)年金制度の一元化については、公務員制度の一環としての共済年金制度の基本的役割、機能を維持すること。また、国共済と地共済の財政単位の一元化の成案を得るに当たっては関係労働組合と十分協議すること。
(2)公的年金制度への信頼を回復するために、当面、基礎年金の税法式への転換を射程におき国庫負担割合を直ちに2分の1に引き上げること。また、第3号被保険者の扱いなど女性と年金の課題については、厚生労働省の「女性と年金検討会」の検討状況を踏まえ、共済年金制度としても早急に改革を具体化すること。
(3)医療制度等については、医療提供体制の見直し、薬価差益の解消・診療報酬制度の改革、医療情報の公開の制度化等をはじめ高齢社会に対応した制度確立に向け抜本的な改革を進めること。
資料2.人事院への申入書
2001年10月22日
人事院総裁 中島忠能 殿
公務員労働組合連絡会
代表委員 大原義行
代表委員 丸山建藏
2002年度賃金・労働条件に関わる基本要求事項の申入れ
日本経済は、デフレスパイラルの危機も叫ばれる深刻な状態にあり、雇用確保と内需拡大はまさに緊急課題となっています。また、公務員を取り巻く厳しい情勢が継続する中で、3年連続の年収マイナスとなる給与法改正が行われようとしており、公務員労働者の実質生活への影響も深刻なものがあります。
現在、政府の行政改革推進本部によって、現行制度の枠組みを超えた「公務員制度改革」の検討が進められている過渡的な段階にありますが、われわれは、人事院勧告制度が現行の賃金・労働条件決定制度である限り、それを完全に機能させ、公務員の処遇を確保するのが貴院の最も重要な使命であると考えます。
そうした観点から、当面の重要課題である職業生活と家庭生活の両立支援に向けた残された課題を含め、2002年度の賃金・労働条件改善に関わる基本的な要求事項を下記の通り申し入れますので、誠意を持って協議に応じ、諸課題の解決に全力であたられるよう要請します。
記
T.給与に関わる事項
一、「公務員給与水準の在り方の検討」について
本年、「報告」された「公務員給与水準の在り方の検討」に当たっては、公務員連絡会との十分な交渉・協議を行い、合意を得たうえで作業を進めること。そのため、早急に貴院の検討作業の考え方を示すこと。
二、給与制度・給与決定基準の改善について
1.俸給表の改善等
(1)教育(二)(三)、医療(二)(三)などその他俸給表についてはその水準を確保するため必要な措置を講じること。
(2)職務内容や労働実態の変化に対応した俸給の調整額の支給対象職種の拡大や調整数の改善を行うこと。
2.諸手当制度の改善
諸手当については、生活給的手当、仕事給的手当、地域給的手当のそれぞれのあり方などについて、総合的な検討に着手すること。当面、別記−1のとおり現行制度のもとでの改善を行うこと。
3.期末・勤勉手当
(1)調査・比較方法を抜本的に改め、民間の実勢を正確に反映した支給月数を確保すること。(2)期末・勤勉手当の支給方法や支給割合を変更する場合には、あらかじめ公務員連絡会と十分協議すること。
4.標準職務表並びに級別定数の改善
代表的な職務について民間実態調査を行い、複雑・高度化し困難性が増大する職務の実態に見合うような公正な職務評価と格付けを行うこと。また、それに対応して級別定数制度の抜本的な改定を行うこと。当面、別記−2のとおり現行制度のもとでの改善を行うこと。
5.級別資格基準の改善
級別資格基準表の抜本的見直しを検討すること。当面、試験別、学歴別の格差をなくすこと。
6.初任給決定基準の改善
(1)中途採用者の初任給決定基準については、経験年数換算方式並びに経験年数による俸給月額の調整方法を抜本的に改善し、賃金差を解消すること。また、あわせて休職期間等換算表を抜本的に改善すること。
(2)初任給格付けの改善を検討すること。
7.昇格制度の改善
昇任・昇格に当たっては、T種試験採用者が特権的に優遇される現行の運用のあり方を抜本的に改め、公正で透明、客観的で納得性のある明確な昇格基準を設けること。また、UV種、女性職員などの幹部職員への登用を積極的に促進すること。
三、給与水準及び体系等について
1.給与水準の確保
(1)ゆとり・豊かな生活が確保でき、その職務の責任や仕事の内容にふさわしい社会的に公正な給与水準を確保すること。
(2)これらを実現するため、勧告作業並びに官民比較方法を別記−3の通り抜本的に改めること。「公務部内の給与配分の在り方」に関わる「民間給与実態把握」の在り方の見直しに当たっては、公務員連絡会と十分協議し、合意の上で検討作業を進めること。
2.公正・公平な配分
配分については、別途人事院勧告期に提出する要求に基づき、公務員連絡会と十分交渉し、合意すること。
四、その他
(1)級区分による旅費支給基準を抜本的に改めるとともに、実態にあった旅費(宿泊費、日当の増額など)を支給すること。また、赴任旅費を含む移転料については、直ちに改善すること。
(2)男女共同参画促進のための処遇上の改善措置について総合的に検討すること。
U.労働時間並びに休暇、休業に関わる事項
一、労働時間の短縮並びに休暇制度の改善について
公務員の年間総労働時間を速やかに1800時間程度に短縮するとともに、ゆとり・豊かな時代にふさわしい休暇制度を確立するため、別記−4の事項の計画的かつ速やかな実現を図ること。
二、総合的な休業制度の確立について
少子・高齢社会への対応、公務員としての自己啓発・自己実現や社会貢献を促進するための総合的な休業制度をできるだけ早期に確立すること。
三、勤務時間制度について
勤務時間制度に関わっては、当面、次の事項を改善すること。
(1)勤務時間の弾力化に当たっては、当局の恣意的な判断で効率面や管理面だけを優先して進めるのではなく、個々人の生活や働き方を優先した労働時間の編成とすること。
(2)休暇の取得手続きについては、公務員の休暇権をより明確にする形で抜本的に改善すること。
(3)官庁執務時間と勤務時間の関係については、「閣令6号」に基づく一律・画一的な官庁執務時間体制を改め、官庁執務時間と勤務時間を切り離して、実態に則した官庁執務時間に改めること。
(4)勤務時間の「割振り」の変更に当たっては、重要な勤務条件事項として必ず事前に労働組合と協議すること。
V.福利厚生施策等に関わる事項
1.公務員の福利厚生を勤務条件の重要事項と位置付け、職員のニーズ及び民間の福利厚生の正確な実態把握を行い、その抜本的な改善・充実を図ること。
2.当面、2000年に改定された「国家公務員福利厚生基本計画」の着実な実施を図るため、使用者としての責任を明確にしたうえで政府全体としての実施体制を確立し、必要な予算確保など積極的に対応すること。
W.男女平等社会の実現、女性の労働権確立に関わる事項
一、男女平等社会の実現、女性の労働権の確立
1.公務の男女平等の実現を人事行政の重要事項と位置づけ、女性公務員の採用、登用の実態を正確に把握・公表し、採用や幹部職員への登用、女性の労働権確立や環境整備などを積極的に推進すること。
2.「女性国家公務員の採用・登用拡大に関する指針」に基づいて各府省ごとに策定される「女性職員の採用、登用拡大計画」の具体化に当たっては、採用・登用拡大が着実に実現するよう各府省を指導すること。
3.女性の労働権確立にむけ、次の事項を実現すること。
(1)職場環境の整備を進めること。また、女性の職務範囲を拡大すること。
(2)産前休暇を8週間、多胎妊娠の場合の産後休暇を10週間に延長すること。また、妊娠障害休暇を新設すること。
二、職業生活と家庭生活の両立支援策について
1.育児休業制度の改善
(1)育児休業期間の3歳未満への延長にともない、休業全期間を育児休業給付金の支給対象とするよう関係機関に働きかけること。
(2)育児休業・部分休業の延長、再度の延長及び再取得要件を緩和すること。
(3)男性の育児休業取得促進のため指針を策定するなど、実効ある対策を早急に講じること。
(4)育児休業中の代替要員を確保するための新たな任期付任用制度の導入に当たっては、公務員連絡会との協議と合意に基づいて作業を進めること。
(5)3歳から小学校就学前までの子の育児のための支援策を引き続き検討すること。
2.介護休暇制度の改善
介護休暇期間の6ヶ月への延長に当たっては、取得要件の緩和や介護休業給付金の支給月数を延長するなど、より一層実効性ある制度とすること。
3.子どもの看護休暇の新設
(1)子どもの看護休暇については、次の内容で早急に実現すること
@子どもが病気等の場合の看護のための有給の特別休暇として新設すること。
A休暇の期間は、子一人につき年10日とすること。
(2)子以外の配偶者や親族等の家族看護休暇についても引き続き検討すること。
4.育児・看護を行う職員の超過勤務の制限
育児・介護を行う職員の超過勤務については、民間に遅れることなく「年150時間、月24時間」等の制限を設けること。
X.人事管理システムの見直し及び新たな評価システムの整備について
1.人事管理システムの見直しに当たっては、公務員の仕事のやり方や労働条件の変更につながる重要な事項であるので、公務員連絡会との十分な協議を行うこと。
2.新たな評価システムを具体化する場合には、4原則(公平・公正性、透明性、客観性、納得性)2要件(苦情処理制度と労使協議制)を基本とし、公務員連絡会との十分な協議と合意に基づくこと。また、新たな評価システムの試行を行う場合には、事前に公務員連絡会と協議すること。
Y.その他
1.高齢者再任用制度の定着と円滑な運用のため、必要な施策を引き続き推進し、雇用と年金の接続を確保すること。
2.公務における外国人の採用、障害者雇用を拡大すること。そのための職場環境の整備を進めること。
また、非常勤職員及びパート職員等の処遇については、「均等待遇」の原則に基づき改善すること。
別記−1
諸手当に関わる当面の改善事項
(1)扶養手当
扶養手当については、現行の属性区分を見直すこと。当面、「子」等の支給額や教育加算額を引き上げること。
(2)住居手当
現行の住居手当の支給要件を見直すこと。
(3)通勤手当
@交通機関等利用者については、早急に全額支給制を実施すること。また、新幹線等利用者の加算額の支給対象を拡大すること。
A交通用具使用者については、遠距離の距離区分を増設し、支給額を引き上げること。
B支給除外距離を「1km未満」に是正すること。
C非課税とし、勧告作業に当たっては比較給与から除外すること。
(4)超過勤務手当、休日給、夜勤手当
@超過勤務手当については100分の150、深夜勤務・週休日等については100分の200とすること。また、超過勤務の実態に見合った支給を行うこと。
A休日給については100分の200とすること。
B夜勤手当については100分の50とすること。
C以上についての1時間当たりの給与額の算出方法を労働基準法並に改善すること。
(5)交替制・変則勤務者に対する手当の新設
交替制・変則勤務者に対する手当を新設すること。
(6)特殊勤務手当
業務や労働の実態に応じて支給範囲の拡大、手当の新設を行うとともに、単価を引き上げること。
別記−2
標準職務表並びに級別定数に関わる当面の改善事項
(1)標準職務表の改善
@行政職(一)表については、管区機関課長補佐8級、出先機関課長7級・係長6級、主任5級等の格付けを行うこと。
A行政職(二)表については、部下数制限を廃止するとともに、だれもが4級昇格が可能となる格付けを行うこと。
B医療職(三)表については、看護婦・准看護婦の格付けを改善すること。
Cその他の俸給表についても行政職に準じて改善すること。
(2)級別定数の改定
有資格者全員が上位級に昇格できる定数確保を基本とし、行政(一)については4〜8級に最重点をおいて定数の拡大をはかるとともに、複数級別定数など弾力的運用を行うこと。その他の俸給表についても、これに準じて定数の拡大をはかること。
別記−3
勧告作業に関わる要求事項
1.調査対象
(1)民間給与実態調査に当っては、団体交渉によって賃金・労働時間、その他の労働条件を決定している事業所を対象とすること。
(2)調査対象企業規模1,000人以上、事業所規模500人以上とすること。当面、速やかに企業規模500人以上、事業所規模50人以上とすること。
2.事業所抽出率
統計上必要な最低限度にとどめること。
3.調査対象職種
国および地方自治体の基幹職種である行政(一)表関係職種とすること。
4.比較給与の範囲
(1)原則として、公務の基本給に相当する給与とすること。
(2)通勤手当については、全額支給制を採用したうえで、比較給与からは直ちに除外すること。
5.職種の対応級の設定
(1)人事院規則に定める「級別標準職務」の分類基準によること。
(2)比較に当っては、年齢だけでなく経験年数を加味すること。
6.追加較差
(1)春季賃金改定状況を正確に把握するため、積み残し事業所を追跡調査し、追加較差に算入すること。
(2)現行方式の追加較差算出方式については、定期昇給率調整をやめ、事業所比率を従業員比率に改めること。
7.特別給比較
(1)特別給については、調査・比較方法を次の通り抜本的に改めること。
@事業所単位の調査ではなく、より精緻な従業員単位の調査を行い、ラスパイレス比較方法を採用すること。
A比較に当たっては、月例給与に対応した対象企業規模とすること。
(2)民間における賞与および臨時給与の支給実態をより正確に把握すること。
8.調査時期および集計作業
早期勧告に向けて、調査および集計作業を速やかに行うこと。
9.その他
(1)民間企業における福利厚生の各種制度、各種施設・支給などの実態を調査すること。
(2)出向者に対する給与の補填等、複数の企業から給与などを支給されているケース等についても、これらの実態を正確に調査すること。
(3)民間における時間外、休日および深夜の割増賃金の実態を正確に調査すること。
(4)民間における交替制・変則勤務者の所定内労働時間等について調査すること。
別記−4
労働時間の短縮並びに休暇制度の改善に関わる事項
1.労働時間の短縮について
公務員の年間総労働時間を1800時間程度に短縮すること。そのため、次の事項の計画的かつ速やかな実現を図ること。
(1)所定内労働時間の短縮
公務員の労働時間を1日7時間30分、1週間37時間30分に短縮すること。当面、厳しい勤務実態にある交替制・不規則勤務職場の労働時間短縮を最重視して進めること。
(2)超過勤務の縮減
「超過勤務の縮減に関する指針」の上限目安時間を超えて超過勤務を行っている省庁や職場については、その公表なども含め特別の指導を行うことについて検討すること。
(3)年次休暇の完全取得
職員の要求に基づく計画的・連続的取得を一層促進し、年次休暇の完全取得を達成すること。
2.休暇制度の改善について
(1)夏期休暇日数の増
夏季休暇の日数を、当面、5日に増やし、連続取得に努めること。
(2)休暇制度の新設等
@ゆとりある生活スタイルへの転換をめざし、公務員にふさわしい人間形成を実現する機会として「リフレッシュ休暇」を新設すること。
休暇日数は、勤続10年目に5日、20年目に10日、30年目に15日とし、有給の特別休暇とすること。
A「リカレント休暇」を新設すること。
B非常勤職員の休暇制度を改善すること。
資料3.総務省への申入書
2001年10月22日
総務大臣 片山虎之助 殿
公務員労働組合連絡会
代表委員 大原義行
代表委員 丸山建藏
2002年度賃金・労働条件に関わる基本要求事項の申入れ
日本経済は、デフレスパイラルの危機も叫ばれる深刻な状態にあり、雇用確保と内需拡大はまさに緊急課題となっています。また、公務員を取り巻く厳しい情勢が継続する中で、3年連続の年収マイナスとなる給与法改正が行われようとしており、公務員労働者の実質生活への影響も深刻なものがあります。
現在、政府の行政改革推進本部によって、現行制度の枠組みを超えた「公務員制度改革」の検討が進められている過渡的な段階にありますが、われわれは、人事院勧告制度が現行の賃金・労働条件決定制度である限り、それを完全に機能させ、公務員の処遇を確保するのが貴職の最も重要な使命であると考えます。
そうした観点から、当面の重要課題である職業生活と家庭生活の両立支援に向けた課題を含め、2002年度の賃金・労働条件改善に関わる基本的な要求事項を下記の通り申し入れますので、誠意を持って協議に応じ、諸課題の解決に全力であたられるよう要請します。
記
一、給与に関わる事項
(1)ゆとり・豊かな生活が確保でき、その職務の責任や仕事の内容にふさわしい社会的に公正な給与水準を確保すること。
(2)人事院勧告早期完全実施のルール確立に向けて賃金・労働条件決定手続き(法制度を含む)を改善すること。
(3)退職手当制度の見直しに当たっては、公務員連絡会と十分交渉・協議を行い、その合意に基づいて作業を進めること。
(4)超過勤務等に対する予算を増額し、実態に見合った支給を行うこと。
(5)2002年度予算編成に当たっては、独立行政法人を含め公務員給与改定財源を確保すること。
二、労働時間並びに休暇に関わる事項
公務員の年間総労働時間を速やかに1800時間程度に短縮すること。そのため、年次休暇の完全取得の施策を一層促進するほか、1999年に改定された「国家公務員の労働時間短縮対策」の実施状況を直ちに点検し、結果を公表するとともに、改善が必要な事項については早急に縮減方策を講じること。
三、福利厚生施策等に関わる事項
(1)公務員の福利厚生を勤務条件の重要事項と位置付け、職員のニーズ及び民間の福利厚生の正確な実態把握を行い、その抜本的な改善・充実を図ること。
(2)昨年改定された「国家公務員福利厚生基本計画」の着実な実施を図るため、政府全体としての実施体制を確立し使用者としての責任を明確にし、積極的に対応すること。
(3)当面、@健康・安全管理対策の充実A男女共同参画の促進のための育児・介護支援策の充実B持ち家支援策の拡充C公務員宿舎制度の改善D余暇活動への支援の強化、などを重点に具体化を図ること。また、2002年度の予算編成に当たっては、職員厚生経費をはじめ、職員の福利厚生施策の改善に必要な予算を増額すること。
四、高齢者再任用制度に関して
高齢者再任用制度の定着と円滑な運用のため、必要な施策を引き続き推進し、雇用と年金の接続を確保すること。
五、女性の労働権確立、男女平等社会の実現に関わる事項
(1)公務の男女平等参画の促進を人事行政の重要事項と位置づけ、女性公務員の採用、登用の実態を正確に把握・公表し、採用や幹部職員への登用、女性の労働権確立や環境整備などを積極的に推進すること。
(2)職業生活と家庭生活の両立支援に関わる人事院の意見の申出や勧告に基づき、「育児休業等に関する法律」や「勤務時間、休暇等に関する法律」の改正案を直ちに国会提出し、今臨時国会での成立をはかること。
六、人事管理システムの見直し及び新たな人事評価システムについて
(1)人事管理システムの見直しに当たっては、公務員の仕事のやり方や労働条件の変更につながる重要な事項であるので、公務員連絡会との十分な協議を行うこと。
(2)新たな人事評価システムを具体化する場合には、4原則(公平・公正性、透明性、客観性、納得性)2要件(苦情処理制度と労使協議制)を基本とし、公務員連絡会との十分な協議と合意に基づくこと。また、新たな評価システムの試行を行う場合には、事前に公務員連絡会と協議すること。
七、その他の事項
(1)公務における外国人の採用、障害者雇用を拡大すること。そのための職場環境の整備を進めること。
(2)総務省に設置された「政策評価・独立行政法人評価委員会」及び各府省に設置された「独立行政法人評価委員会」の運営については、公正・公平・透明な審議が確保されたものとするとともに、労働条件に大きな影響を及ぼす意見の表明や勧告等を行う場合には、事前に関係労働組合等の意見を聴取すること。
以上