公務員連絡会北岡・丸山代表委員、山本事務局長は、9日、午前11時30分から首相官邸で福田官房長官と会い、本年の人事院勧告の取り扱いに関わる申入書(内容は、8日付情報bS0掲載の申入書と同じ)を提出した。この日の申入れは、8日の総務大臣、厚生労働大臣への申入れに引き続いて行われたもの。
冒頭、丸山代表委員は、給与関係閣僚会議の主宰者であり、使用者としての政府の責任者である官房長官に申入れるとして、政府が法案をつくるに当たって公務員連絡会と十分交渉協議することなど、申入書の内容を説明した。
これに対して官房長官は、申し入れの趣旨はよくわかった、関係者に伝えて十分協議したいと応じた。また、勧告の取扱いについては臨時国会開会前には決めたいとの意向を示した。
なお、財務大臣への同様の申入れについては、お盆明けに行う予定。
公務員連絡会地方公務員部会は人事院勧告を受けて、8月9日、午前10時から都庁内で、全国人事委員会連合会に対して申入れを行った。この日の申入れには、公務員連絡会北岡代表委員、山本公務員連絡会事務局長ほか地公部会幹事らが出席した。
冒頭、北岡代表委員は全国人事委員会連合会の眞仁田会長に要請書(資料1)を手渡し、「昨日の人事院勧告を受け、人事委員会も勧告作業に入ることとなる。人事院勧告の内容は、初の俸給表の切り下げ、そして4年連続の一時金の削減など、公務員賃金削減の総額を想定すると、日本経済に与える影響が憂慮される。あわせて、実質的に4月に遡る減額調整措置については、不利益不遡及の原則に抵触するものであると考えている。労働基本権が制約されるなかで、人事委員会勧告制度は地方公務員の賃金・労働条件を決定する重要な柱である。今勧告は、地域における公務員給与の在り方、公務員制度改革についても触れられており、今後、人事委員会が果たす機能はますます重要になるものと考えている。今年の人事委員会勧告にあたっては、われわれの要請内容について充分に配慮していただくようお願いする」と、人事委員会勧告にむけて最大限の努力を求めた。
続いて、公務員連絡会側が要請書に即して要請事項を説明しその実現を求めた。
公務員連絡会地公部会の申入れに対し、眞仁田会長より以下の通り回答があった。
回答を受け、北岡代表委員は、実質的に4月に遡る減額調整措置について、「公務員賃金の削減が日本経済に与える影響は大きい。そういう意味においても、地方公務員の生活を守るという基本的な使命を十分認識され、検討していただきたい」と強く要請。眞仁田会長が「さまざまな観点から検討を行いたい」と答え、この日の申入れを終えた。
<地公部会要請に対する全人連会長回答>
平成14年8月9日
ただいまの皆様からの要請につきましては、確かに承りました。
早速、全国の人事委員会にお伝えいたします。
昨日、人事院勧告が出されましたが、皆様ご案内のとおり、民間の厳しい状況を反映し、給与勧告制度の創設以来、初めて官民格差がマイナスになり、全ての俸給表の全ての俸給月額を引き下げるほか、期末勤勉手当の四年連続の引き下げ、扶養手当の引き下げもあり、四年連続の年収減という職員にとって厳しい内容となっております。
勧告の詳細につきましては、これから人事院の説明を受けるところでありますが、月例給の初のマイナス改定のほか、地域における公務員給与の在り方の具体的な検討の開始、三月期の期末手当の廃止、今後の公務員制度改革が向かうべき基本的方向と改革の留意点の表明など、地方自治体にとりましても、人事委員会にとりましても、今後に影響する重要な課題が含まれております。
現在、各人事委員会では、勧告に向けて、鋭意、作業を進めているところであります。
今後、皆様の要請の趣旨を十分考慮しながら検討し、それぞれの自治体の実情を踏まえて、自主性を持って対処していきたいと考えております。
以上でございます。
なお、人事院勧告を受けて、8日、連合および民主党、社民党が資料2〜4の通りこれに対する談話と見解を発表した。
資料1−全人連への地公部会の要請書
2002年8月9日
全国人事委員会連合会
会長 眞仁田 勉 様
公務員労働組合連絡会地方公務員部会
全日本自治団体労働組合
中央執行委員長 北岡勝征
日本教職員組合
中央執行委員長 榊原長一
日本都市交通労働組合
中央執行委員長 松島 稔
全日本水道労働組合
中央執行委員長 足立則安
全国自治団体労働組合連合
中央執行委員長 武田幸男
要 請 書
貴職が、日頃から地方公務員の賃金・労働条件の改善に向け、ご尽力いただいていることに敬意を表します。
人事委員会勧告制度は、労働基本権制約の代償保障措置として、地方公務員の賃金・労働条件決定の重要な柱であり、また、地域の労働者の賃金水準にも大きな影響を与えるものであります。
地方公務員は、すでに3年連続で年間総収入がマイナスになっており、厳しい状況が続いております。
これから人事委員会において本年の勧告に向けた作業に取りかかられることと思いますが、貴職におかれましては、地方公務員の生活を守るという人事委員会の最も基本的な使命を十分認識され、下記事項の実現に向け、加盟組合との協議を尊重しつつ、最大限の努力を払われますよう強く要請します。
記
1.地方公務員の生活を維持・防衛するための給与勧告を行うこと。
2.配分のあり方については、当該職員団体、労働組合との協議に基づくこと。
3.諸手当については、生活補填的手当の支給区分について抜本的な見直しを行うこと。
4.俸給の調整額の経過措置の見直しについては、対象者の生活に激変を来さないように新たな経過措置を設けること。
5.一時金については、地方公務員の生活を維持・防衛する支給水準とすること。
6.国立大学等の独立行政法人化にともない必要とされる新たな施策の設計に当たっては、関係労働組合と協議し進めること。
7.年間総労働時間を早期に1800時間程度に短縮するために引き続き次の事項の実現を図ること。
(1) 所定労働時間の短縮をはかること、特に変則・交替制勤務職場における労働時間短縮を重視して取り組むこと。
(2) 実効ある男女共通の超過勤務規制のための積極的な施策を引き続き進めること。
(3) 年次休暇の取得を積極的に促進すること。
(4) 労働時間短縮のために人員確保などの施策を講ずること。
8.各種休暇制度を新設・拡充すること。特に、夏季休暇日数の拡大、リフレッシュ休暇、有給教育休暇(リカレント休暇)等を実現・充実すること。また公務員としての自己啓発、自己実現のための休業制度の新設を含め、総合的な休業制度を確立すること。
9.自治体における男女共同参画基本計画に基づき、女性公務員の採用、幹部職員への登用、女性の労働権確立や環境整備等に関する数値目標を含めた積極改善措置(ポジティブアクション)を講ずること。また、計画等の策定にあたっては当該労働組合・職員団体との十分な協議を行い合意に基づくこと。
10.育児休業・介護休暇の男性取得促進のための施策を行うこと。
11.高齢者再任用制度が、希望するものすべてが雇用されるなど実効性のある制度として定着するよう積極的な施策を行うこと。
12.国家公務員の進捗状況を踏まえ実効あるセクシャルハラスメントの防止策を引き続き推進すること。
13.公務職場に障害者雇用を促進すること。そのために必要な職場環境の整備を行うこと。
14.刑事事件での起訴に伴う休職や禁錮以上の刑に処せられた場合のうち、公務に関わる事項をはじめ事案の性格によっては任命権者の判断で失職させない措置を行えるよう、分限条例の改正を行うこと。
15.各都道府県・政令指定都市・特別区人事委員会勧告時期をできる限り統一すること。
資料2−連合の談話
2002年8月8日
人事院勧告に対する事務局長談話
日本労働組合総連合会
事務局長 草野 忠義
1.人事院は本日、政府と国会に対して、国家公務員の月例給と一時金などについての勧告を行った。月例給については、現行の俸給表と扶養手当額を合わせて平均7,770円、2.03%引き下げることとし、一時金については、年間0.05ヶ月削減し、4.65ヶ月にするとしている。
2.マイナス勧告が実施されれば、国家公務員の賃金決定に留まらず、これから賃金改定を行う企業を含め社会的に波及し、マクロ経済を冷えこませるだけでなく、デフレに拍車をかけかねない恐れがある。
3.また、勧告では、このマイナス勧告を実質的に4月に遡って実施するとしている。民間においては、労働条件の不利益変更を過去にさかのぼって実施することはおよそ考えられず、「民間準拠」を逸脱した異常な勧告といわざるを得ない。判例からいっても、不利益不遡及の原則が確立しており、認められるものではない。
4.今後、連合は、官公部門・当該産別と連携し、秋の確定闘争にむけた取り組みを強め、政府に対し、水準勧告を無視した改定や不利益変更の遡及実施を行わないことを求めていく。
5.連合は、デフレ経済の打破に向け、政府の政策転換を求める運動に全力をあげるとともに、官公部門の取り組みを支援していく。
以 上
資料3−民主党の談話
2002年8月8日
2002年度人事院勧告に対する談話
民主党ネクスト・キャビネット
総務ネクスト大臣 玄葉 光一郎
1.人事院は本日、内閣と国会に対して、今年度の国家公務員給与を平均2.03%引き下げること、一時金を0.05月削減することなどを中心とする勧告を行った。
本年の人事院勧告は、勧告始まって以来初のベースダウンであり、年間給与も四年連続してマイナスとなるなど、極めて厳しい内容である。
2.しかしながら、給与水準に関わる勧告内容は人事院が専門機関として、適正な官民比較調査の結果に基づいて勧告したものであり、深刻な民間給与実態、経済、雇用状況を反映したものと受けとめ、理解する。
ただし、勧告の具体的な実施方法によっては、人事院勧告制度の趣旨等に照らし法的な議論も生ずることが予想される。慎重な検討と冷静な労使協議を期待したい。
3.上記のような民間給与実態を招いた責任は、自民党を中心とする政府の経済失政にある。民主党は改めて、官民を問わず国民生活を追いつめてきた政府の責任を厳しく問うものである。また、官民格差の是正ということにより、官民相互に勤労者の給与所得を、いたずらに抑制することにつながることは、国民経済の観点からも問題が多い。
4.最後に、公務員の労働基本権が制約されている現行制度下では、その代償措置である人事院勧告を尊重すべきであるとされてきた。しかし、公務員制度改革の中で、この人事院勧告制度自体の見直し、検討も行わざるを得ない情勢に来ていると考える。
民主党としては、公務員制度改革の一環として、よりよき国民に対する行政サービスのあり方、それを担う公務労働者の処遇のあり方を鋭意整理していきたいと考える。
以上
資料4−社民党の見解
2002年8月8日
2002年度人事院勧告についての見解
社会民主党公務員問題対策特別委員会
1.今回の人事院勧告は、勧告史上初のベースダウンとなり、4年連続の一時金引き下げに加え、初めて俸給表の引き下げ改定が行われるなど異例のものとなった。公務労働者の年間給与の4年連続マイナスという勧告は、公務労働者の生活のみならず、政府の社会的給付に依存する多くの国民の消費生活や、地方における中小・未組織労働者に与える影響も大きく、現下の不況をさらに深刻化するものとして断じて容認できるものではない。したがって、政府は本勧告の取り扱いについては、現下の経済情勢を考慮し、慎重を期すべきである。
2.官民逆較差分の差額については、不利益不遡及の原則によって4月実施としないといいながら、12月期の期末手当で調整されることになっており、実質的には不利益遡及の疑いが残るものといわざるをえない。
3.未曽有の不況が深刻化し、春闘結果がきわめて厳しいことに加え、政府・行革推進事務局が公務員制度「改革」を進めている中での勧告であるとはいえ、マイナス勧告は、労働基本権制約の代償機能としての人事院勧告の制度上の限界を示すものであり、労働基本権問題の真摯な議論の必要性を浮き彫りにしていると考える。
4.民間及び公務員の相互の給与引き下げの悪循環を断ち切るには、何よりも公務員労働者・民間労働者の運動の強化・再構築が不可欠である。官民労働者の一層の奮起を強く願うものである。
5.勧告と併せて出された人事院の報告において、セクショナリズム、キャリアシステム、天下りに対する国民の批判に留意すべきとの指摘がなされているが、これらの課題が今後の公務員制度改革の実現に活かされることを期待したい。