公務員連絡会書記長クラス交渉委員は、政府が本年の人事院勧告を勧告通り実施する閣議決定したのを受け、減額調整措置を含む給与法案の改正作業の状況を質すため、10月9日午前10時から、総務省久山人事・恩給局長との交渉を実施した。
冒頭、公務員連絡会側は、「9月17日の交渉の席上、人事・恩給局長から減額調整措置に関わる中間段階の見解が示されたが、その後、我々との合意のないまま、9月27日に人勧の取り扱いについて閣議決定が行われた。その前日の9月26日に公務員連絡会委員長クラス交渉委員が総務大臣との交渉を行ったが、減額調整措置の問題について、大臣は『内閣法制局と人事院とも相談して、明確な見解を出す』と回答している。本日の交渉では、こうした経緯を踏まえ、減額調整措置に関わる、統一した見解を示してもらいたい」と迫った。
これに対し、人事・恩給局長は、「9月27日に第2回給与関係閣僚会議が開催され、本年の人事院勧告を完全実施することを了解し、同日開催された閣議でも同様の取り扱いとするよう閣議決定された。これを受け総務省では給与法案の改正作業に着手しているところである。9月26日の皆さんと総務大臣との会見において、内閣法制局と人事院との間で最終見解を示すようとの話があったことは承知しているが、結論から言えば、17日に皆さんにお示しした中間段階の見解が、総務省人事・恩給局と内閣法制局と間で調整を経た現段階の政府としての見解である」として、次の通り、17日と同様の見解を繰り返した。
(1) 人事院勧告は、国家公務員の給与を社会一般の情勢に適応させるとの原則(国家公務員法28条)の下、専門・第三者機関である人事院が、毎年4月における官民の給与実態の客観的調査に基づき、国家公務員の給与と民間企業における給与との均衡を確保すべく行っているものと認識している。
(2) 給与の改定方式については、情勢適応の原則に基づき、調査時点である4月に遡及して改定する方式が昭和47年(1972年)以来長期間にわたり定着しており、このことにより、4月からの年間給与において官民の均衡が図られてきているところである。
(3) 本年においては、俸給について引き下げが必要となるところ、既に適法に支給された給与を遡って不利益に変更することは、法的安定性や既得権尊重の観点から慎重であるべきものと考える。この考え方を踏まえつつ、従来どおり4月からの官民の年間給与の均衡を図るとの観点から、今回の措置は、法施行日以降の給与、具体的には期末手当の額の調整を行うこととしており、このことは情勢適応の原則に照らして十分合理性があると考える。
(4) なお、12月期の期末手当による調整措置は、期末手当の生活補給金的な性格、調整措置を早期に終了させることができること等を勘案すると、最も適当な手段であり、また、これをもって、期末手当の一時金としての性格を何ら変更するものではないと考える。
こうした見解に対し公務員連絡会側は、@大臣は、人事院も含めて相談し、明解な見解を示すとしているが、人事院との協議は済んでおらず、したがって大臣が約束した三者の統一見解ではないと理解してよいのか、A今回示された政府としての見解では、年収ベースで官民給与を均衡させることが、情勢適応の原則に合致しているとしている。しかし、前回(9月17日)にも指摘したところであるが、月例給は月例給で官民比較し4月に遡及して改定するという方法が取られ、期末・勤勉手当は、1年遅れであるが、それ自身で官民の均衡を図ってきた。ところが、今回はじめて官民の年収による均衡という考え方になっており、これは従来のルールを大幅に変更することになるのではないか、Bさらに、期末手当から調整すれば勧告に盛られた一時金の月数による金額と実際の支給額が異なるばかりか、一時金の民間との均衡が図られないことになり、期末手当の性格が変更されることとなるのではないか、とさらに考え方を質したのに対し、人事・恩給局側は、@本日示した見解については、大枠で人事院も了解しているが、細かな点でつめきっておらず、人事院も含めた統一の見解とはなっていない。大臣が皆さんにお話したこともあるので、早急に人事院との協議を進め、別途、皆さんにお示ししたい、A月例給を4月に遡及し、特別給を含めて、年間の給与を民間と均衡させてきたのであり、民間と均衡させるのは年間の総給与である、B特別給の性格が変わるとのご指摘であるが、それは調査手法の問題ではないのか。今回の調整措置は、本年限りの止むを得ない措置であり、特別給の性格を変更するというものではない、と前回の見解を繰り返した。
こうした説明に対し公務員連絡側は、@大臣は、人事院とも調整すると我々に約している。その点で、本日の見解は最終見解とはなっていない。給与法の閣議決定前に再度交渉を持ち最終見解を示すべきである、A年間総収入で民間と均衡させてきたというなら、プラス改定の時には、自動的に4月遡及改定になっていなければならなかったはずだ。しかし実際は、「国政全般を考慮」して、政府が人勧の取り扱いを決めてきたのであり、実施時期を遅らせたり、凍結、不完全実施ということも行われてきた。政府見解は従来の経過からも明らかに矛盾している、B年間総収入による均衡という考え方であれば、月例給と特別給の割合は、年間総収入をそれぞれにどのように配分するのかという問題になる。しかし、人事院勧告は、月例給はいくら、特別給は何月分と別々に勧告しているではないか、C仮に特別給で調整するというなら、特別給が調整弁的な性格をもつという根拠を示すべきである。昨年は、特例一時金(暫定一時金)が新たに措置され、官民較差分を支給した。今回においてもこのような措置(マイナス特例一時金)という方法も考えられたはずだ。なぜ、期末手当で調整するのか。調整するとすれば、性格を変更するということではないのか、と主張し、次回の交渉までにこれらについて、明解な回答を示していただきたいと強く要請した。
最後に公務員連絡会側が「給与法案の閣議決定はいつになるのか」と質したのに対し、局長は「18日に臨時国会が開会するが、総務省としては、開会国会での冒頭処理をお願いしている」とし、臨時国会冒頭に改正案を提案できるよう作業を進めていることを明らかにした。これに対して連絡会側は「本日の見解では全く納得できない。人事院と調整したものも含め、われわれが十分納得するような取扱いとすべきである。したがって、われわれが納得するまで閣議決定を行うべきではない」と、減額調整措置に対する合意が得られるまで閣議決定を行わないよう強く求めて交渉を終えた。
以上