公務員連絡会幹事クラス交渉委員は13日午後、11月8日に提出した「2003年度賃金・労働条件に関わる基本要求事項の申入れ」に対する回答を求めて、人事院佐久間職員団体審議官、総務省花角人事・恩給局次長と交渉を行った。
その交渉概要は次のとおり。
<総務省交渉の概要>
総務省人事・恩給局花角次長との交渉は、午後1時30分から行われた。
冒頭公務員連絡会側が、「11月8日に提出した基本要求事項について、この間の議論を踏まえた現時点での考え方を示していただきたい」と求めたのに対し、花角次長は「要求をいただいて以降、皆さんとも議論してきたが現段階での検討状況をお答えしたい」として、次の通り答えた。
(1) 退職手当制度の見直しについては、支給水準について官民較差に基づき所要の法改正案を次期通常国会に提出する旨の閣議決定が行われており、それに向け鋭意作業を進め、その内容は、過日、すでにお示ししたとおりであるが、来週前半にも改正方針を固めたいと考えているので、ご理解いただきたい。
退職手当は、職員の皆さんの重要な関心事項であると理解しており、職員団体のご意見を十分聞きながら進めてまいりたい。
(2) 多様就業型のワークシェアリングを公務部門に導入することについては、公務員の給与、勤務時間などの勤務条件はもとより、社会保障制度などを含めた幅広い検討が必要である。したがって、今後、仮に導入することとした場合の影響や人事管理上の問題などについて、民間における動向等も踏まえ、引き続き検討して参りたい。
(3) 高齢者再任用制度については、その円滑な運用と定着に向けて、昨年6月に人事管理運営協議会で決定した「国家公務員高齢者雇用推進に関する方針」にしたがって、関係機関と緊密な連携を取りつつ、政府全体として高齢国家公務員の雇用を推進してまいりたい。
(4) 早期退職慣行見直し・在職期間の長期化は、本年7月の総理の指示に基づき、各府省から提出された計画素案について、内閣官房と共同でヒアリングを行ったところであり、その結果も踏まえ、取りまとめに向けた作業を進めている。公務員ができるだけ長期間、公務に従事できるようにすることが重要であり、長年の慣行を見直すことは大変なことであるが、総理の指示に基づいて積極的に進めて参りたい。
回答に対し公務員連絡会側は、次の通り見解等を質した。
(1) 退職手当の見直し内容については承知しているところだが、その内容には問題が残っているので、来週にでも連合官公部門連絡会として総務大臣と交渉して代表委員からわれわれの見解を示したい。
(2) ワークシェアリングについてはすぐに導入すべきということにはならないことは承知しているが、「引き続き検討していく」ということであるのなら、われわれとしては検討に着手するものとして受け止めたいし、今後も問題意識をぶつけ合いながら進めていただきたい。なお、春には連合官公部門として官邸に要求していくのでよろしくお願いしたい。(3) 再任用については、どのくらいの退職者がいて、希望者が何人で、何人がどういう仕事に再任用されたかなどを調査していただいて、一層の円滑な運用と定着に向けた努力をお願いしたい。
(4) 男女平等参画に関わって、われわれは男性の育児休業取得を運動として進めているが、取得が極めて少ない状況であり、当局としても積極的な対応をお願いしたい。
(5) 来年度予算の福利厚生経費の査定状況はどうなっているか。これまで少ないものの毎年改善されてきているので、それが中断することがないよう努めてほしい。
これらに対し、総務省側は@提案されているワークシェアリングにはいろいろな措置があるし、予算の問題もあるので実現可能なものから考えていきたいし、皆さんと意見交換を継続しながら検討してまいりたい、A再任用は、1年目の本年は想像していたよりも少ない数と思っているが、今後も続く話であるし、増やしていかなければならないと考えているので、データなど要望を踏まえて対応したい、B育児休業の男性取得については管理職からの指導をお願いしているがなかなか取得してもらえない。当局としても努力していくが、皆さんにも青年部・女性部などの運動をお願いしたいと思っている、C福利厚生費の査定がどうなるかはこれからであるが、5年間で17%増えた実績があるので引き続き増額確保できるよう努力したい、などの考えを示した。
最後に公務員連絡会側から、「春には改めて要求を提出するので、今回の来年度基本要求に関わる論議を踏まえて、引き続き積極的な対応をお願いしたい」と要望し、本日の交渉を終えた。
<人事院交渉の概要>
人事院佐久間職員団体審議官との交渉は、15時から行われた。
冒頭、連絡会側が「11月8日に来年度にむけ、賃金・労働条件に関わる基本要求事項の申入れを行ったところだが、今日までの検討状況を踏まえ、明確に回答していただきたい」とし、重点事項についての人事院の現段階における考え方を示すよう求めたのに対し、審議官は「要求をいただいてから短い期間であったが、様々な検討をしてきた」とした上で、重点事項について次の通り見解を示した。
(1) 本年のマイナス改定により、職員の皆さんに不満がたまっており、来年にむけても懸念していることは重々承知している。来年のことは年が明けてみないとわからないが、厳しい状況が続くのではないかと、人事院としても懸念している。
右肩上がりの経済成長を前提としてきた状況が変わり、給与のあり方や勧告に至る手続きについて、今までのままとはならないのではないかと、関心をもたれていることについても理解している。給与制度については、昨年の報告で触れた地域に勤務する職員の給与のあり方について研究会を設置し、多方面からの議論を進めているところであり、研究会では各府省や民間に続き、12日には公務員連絡会からヒアリングを実施し、その場で連絡会としての現時点における立場を述べられたと聞いている。今後は各委員の中での議論が行われていくことになるだろうが、人事院としては節目節目で皆さんとの議論が必要となってくると考えている。
公務員制度改革との関連については、その帰趨を見極めながら適切に対処したい。
自宅に関わる住居手当については、来年の民間の給与水準がどのようになるかという要素も併せて考えていかねばならないが、整理すべき手当等については、整理するというのが基本的な考え方である。
(2) ワークシェアリングの実現について、皆さんが強い要望を持っていることは理解している。雇用状況が悪化し、雇用創出が喫緊の課題となっており、本年春にはワークシェアリングについての政労使合意が結ばれるなど、状況が大きく変わってきていると認識もしている。本年の人事院勧告の折、報告の中で短時間公務員制度や非常勤制度の問題について触れたのは、ワークシェアリングの観点というよりも民間企業における勤務形態が多様化してきているという観点から触れたものだが、今日段階では、両者がオーバーラップしてきているといえるだろう。しかし、人事院内では今後の検討体制が明確になっておらず、具体的な検討を進めている段階ではない。今後どのように対応していくか、社会全体の流れを見極めながら検討して、調査が必要となれば民調等を実施していきたい。
(3) 男女共同参画の実現については、女性の採用・登用の促進にむけ「指針」を定め、各府省に「計画」を策定するよう求めてきた。各府省でも計画を策定し、人事院として取りまとめたものを公表し、政府全体としての推進状況を明らかにした。少なくとも各府省における取り組みは前進しており、人事院としてはこの流れを途絶えさせることなく、更に促進させていきたいと考えている。また、育児休業の男性取得策については、担当課で、鋭意、方策を検討しているところであるが、所得保障の問題など単に勤務条件だけで片付くものではない。今後とも検討を進めてまいりたい。
(4) 公務員制度改革については、国民の期待と信頼に応え、職員の納得性が得られるものとすべきものと考えている。今後とも人事院として適切に対処したい。
以上の見解に対し、連絡会側は、@来年の情勢も厳しいという認識に立っているということだが、公務員労働者の総収入は確実に目減りし、生活にも影響が出てきている。公務員の生活の維持・防衛という視点を重視し、人事院の使命を果たすべきである。本年の給与法の国会審議において、「マイナス改定を行うべきでない」という趣旨の附帯決議が出され、「職員組合と充分に話しあっていく」という人事院総裁の回答があった。こういった経緯を忘れてもらっては困る。充分な協議と合意に基づく勧告を行うべきであり、これを担保する制度的な枠組みが大事だということだ。お互いに見解の相違を残したまま、合意も納得もなく勧告することが許される状況でもない、A地域の給与の課題については、地方公務員への影響も大きいことから、地方公務員の組合からもヒアリングを実施すべきである、B自宅に関わる住居手当については、そのウェイトは国家公務員より地方公務員の方が大きい。地公の状況も考慮し、慎重に検討すべきである、Cワークシェアリングについての申入れの中味は、政府に対しては、我々との協議の枠組みを創るべきだということで、人事院には制度的な側面から検討するよう研究会等の設置を求めたい。春闘時は官邸に対し、公務におけるワークシェアリングの実現に向けた申入れを行う予定だ。人事院としても我々の要求に応え、前向きに検討してもらいたい、D男女平等参画にむけては採用・登用にとどまらず、女性の力量の向上(エンパワーメント)が必要だ。これについてどう考えているのか、とさらに人事院の考え方を質した。
これに対し、審議官は、@ ワークシェアリングについては、公務の中で何ができるのか、十分検討する必要がある。本年の報告で触れた短時間職員や非常勤職員の課題については、実態上相当数働いている中で、非常勤職員とはいえ一般職の国家公務員であるにもかかわらず、制度的には整備されていないという問題意識を明らかにしたもの。当該の職員の中には常勤より非常勤を好むという意識もあるようだから、多様な働き方を整備することも必要で、こうした観点からは短時間職員制度ということも視野に入れたほうがいいかもしれない。いずれにせよ様々な課題があり、現在、具体的な検討を進めている段階ではない、A地方公務員に関わる課題も承知しているが、あくまでも国家公務員内部の配分の問題であると考えている、B男女共同参画の課題は、「採用・登用」でとどまるとは考えていない。そういった観点からも取組みを進めていきたい、Cその他の課題についても、今日のところは要望として受け止めておきたい」と回答した。
最後に連絡会側は「基本要求は、春の要求につながっていくものであり、解決に向けて引き続きの検討をお願いしたい」と重ねて要望し、本日の回答交渉を終えた。
以上