公務員連絡会地公部会は、1月14日14時から、総務省公務員部福利課長と交渉を行い、地方公務員共済組合事業における総報酬制の導入に関わる実質的な負担増などの問題点について見直すよう要請するとともに、総務省の見解を求めた。
この申入れには、総務省福利課から、長谷川課長、平井理事官、菊池課長補佐らが出席。公務員連絡会からは、岩本事務局次長ほか地公部会幹事らが参加した。
冒頭、岩本事務局次長が要請書(別紙)を手渡し、「今日は、4月から総報酬制が導入されること等について要請したい。その上で総務省の見解を伺いたい」として、要請書の内容について説明した。
その中でも、@寒冷地手当は、期末手当、勤勉手当等の他の手当と性格が異なるため、期末手当等の範囲に含めるのは適切とはいえないと考える。除外してほしい、A「期末手当等の割合」を「0.3」と計算しているが、2003年度の地方公務員の一時金は、4.65ヵ月とされており、この実際の数字に基く割合「0.3875」を使用すべきではないか、B総報酬制を導入する際の考え方として、「負担に変化が生じないようにする」とされているが、実質的には組合員の負担増が見込まれる。地方公務員は、ここ数年年収のマイナスが続いており、このような時期に掛金が増加することは容認できないと、3点について強く要請した。また、今後のスケジュールについて質した。
これに対して、福利課長は、「まず、総括的な点について申し上げたいが、地方公務員共済制度の長期制度は、民間の厚生年金を考慮し、同じような制度設計になっている。そのため、独自性については限界があることについて、ご理解をお願いしたい」としながら、以下の様に見解を述べた。
1.総報酬制の導入について
@寒冷地手当については、臨時的・季節的な手当であっても、3ヵ月を超えるものとして一時金の範囲と考えている。この考え方は、現在の特別掛金の対象と同様であり、これまでの考え方を変えないということである。ただ、現在の特別掛金は、給付に反映しないが、今回の改正からは給付に反映する。その意味で、前進といえるのではないか。
A「手当率」は、これまで一貫して、「1.25」を使用している。昨年の総務省の調査では、地方公務員の基本給に対する手当率の平均は、「1.238」であり、概ね実質に沿っていると思う。また、「期末手当等の割合」については、「0.3」という数字を使いたい。給付と掛金はリンクしているが、厚生年金では期末手当等の割合を「0.3」で計算しており、また、国共済においても同様である。したがって、これら制度間の整合性という観点に配慮して、「0.3」を使用させていただきたい。
B負担増については、給付にも反映するということについてご理解をお願いしたい。今回は再計算を行わず、従来の掛金を変えないことが基本である。ただし、基礎数値の関係で負担増が生じるが、負担は給付に反映される。その仕組みについてご理解をお願いしたい。また、平成16年以降は、財政再計算が行われるため、この点については解消されることもお知らせしておきたい。
C市町村連合会の「財政調整事業」及び「特別財政事業」については、総務大臣が定める上限率を下げない限り、実質的に上限があがることになる。しかし、総務省としては、今回、負担を上げようとは思っていないし、その様な観点にも立っていない。ただ、長期制度同様に期末手当等の割合を「0.3」で計算することを想定している。
2.長期給付事業について
国共済との財政単位一元化については、昨年の11月末の研究会で「たたき台」が策定されたところである。国共済と地共済がともに公務員という職域に適用される年金制度であることから支えあう制度についてご検討をいただいているところである。ご存知の通り、委員として、自治労の北岡委員長、国公連合の丸山委員長に参加をいただいており、今後も、ご要請の通り、合意形成を図っていきたいし、職員団体の皆さんにもご協力をお願いしたい。
3.短期給付事業について
@医療保険制度の再編・見直しについて、厚生労働省の「試案」では、「自主性を尊重しつつ、対応をはかる」とされているが、総務省としては、共済制度は、地方公務員制度の一環であるので、地方公務員という職域に適用される制度として堅持していきたいと考えている。
A一部負担金払戻金及び家族療養費賦課金等に係る基礎控除額の取扱いについては、各単位共済が財政状況をもとに適切に判断されることと考えている。ただ、国共済や政管健保との均衡も配慮しつつ、適正な対処をお願いしたいと思っている。
4.福祉事業等について
@メンタルヘルス対策については、重要な課題と考えている。職員の健康保持は、任命権者、地方公共団体の役割とされていることから、総務省は、疾病予防、健康の保持増進に取り組むよう地方公共団体に要請を行い、現に取り組みが進められているところである。例年、福利課は1月に翌年度の共済組合の事業、運営方針について通知を発出し、その中で、健康増進事業にも取り組むよう要請しているが、今年はメンタルへルスについても要請をさせていただきたいと考えている。
A育児休業期間は、公務員だけが3年に法改正されたところである。民間の休業期間が1年であることを考えると3年間の全休業期間をただちに掛金免除とすることは難しい。なお、先般、厚生労働省が年金制度改革にむけた骨子等を提起したが、その中で少子化、次世代対策について関連する内容が指摘されている。民間の動向をふまえ、適切に対処していきたい。
5.今後のスケジュールについて
長期給付事業の総報酬制については、地方公務員共済組合連合会の定款変更が必要である。そのため、近々に福利課から地共済連合会に定款変更についての通知を出し、地共済連合会が運営審議会で定款変更について審議し確認されればそのようになる。
また、短期給付事業の総報酬制については、各単位共済ごとの定款変更が必要である。この前提として、地方公務員等共済組合法施行令等の一部を政令で改正する必要があるが、それについても今週末か来週末の閣議には間に合わせたいと考えている。
以上のような福利課長の見解に対して、公務員連絡会は、「現在のように公務員の年収が下がっているときに負担が増えるということはいかがなものか。組合員にしてみれば、今年の春に負担が増え、次回の財政再計算で負担が増えるのでは、納得できないのではないか。また、自治体も財政難で苦慮しているところである。弾力的な取扱いができないのか再検討を願いたい」とあらためて要請を行った。
これに対して、福利課長は、「地方公務員の給与や地方財政については、充分に認識している。しかし、制度全体がそのような仕組みになっており、その前提、限界のもとでの対応として、ご理解をお願いしたいとしかいうことはできない」と答え、議論は平行線となった。
そのため、公務員連絡会は、「組合員の給与が減っているときに、負担が増えることは納得できない。最後まで検討をお願いしたい」と要請し、この日の申入れを終了した。
<別紙>
2003年1月14日
総務大臣
片山 虎之助 様
公務員労働組合連絡会地方公務員部会
全日本自治団体労働組合
中央執行委員長 北岡勝征
日本教職員組合
中央執行委員長 榊原長一
日本都市交通労働組合
中央執行委員長 松島 稔
全日本水道労働組合
中央執行委員長 足立則安
全国自治団体労働組合連合
中央執行委員長 武田幸男
地方公務員共済組合事業における総報酬制の導入等に関する要請書
日頃の地方自治発展に向けた貴職のご努力に敬意を表します。
さて、地方公務員の福利厚生制度の根幹をなしている共済組合制度・事業は、組合員数の減少と高齢化、成熟度の増加、深刻な社会経済情勢のもと、制度・事業の堅持と将来において安心・安定した運営をはかるための施策の充実が必要となっています。
また、2003年4月から導入される総報酬制は、負担の公正・公平を確保する一方で、組合員負担の増加など、多くの問題を含むものとなっています。
つきましては、地方公務員共済組合制度・事業における総報酬制の導入に係る関係政令の整備等に関して、下記の事項を措置されるよう要請します。
記
1.総報酬制の導入について
@ 地方公務員等共済組合法第2条第1項第6号の規定に基づき、政令で定めるものについては、寒冷地手当を除外すること。
A 掛金・負担金率の算定要素となる「手当率」及び「期末手当等の割合」については、現在の地方公務員の支給実態に基づく実質的な率と割合を用いること。
B 総報酬制の導入に際して、組合員の実質的負担の増加を行わないこと。
C 市町村連合会の行う財政調整事業及び特別財政調整事業に関する基準の変更においては、組合員の実質的な負担が増加することのないようにすること。
2.長期給付事業について
国家公務員共済組合との財政単位一元化については、公務員共済制度の堅持と将来において安定した制度の構築をはかる視点から対応すること。また、検討における関係職員団体・労働組合との合意形成に努めること。
3.短期給付事業について
@ 医療保険制度改革における保険者の再編・見直しについては、共済組合制度を堅持する立場からの対応をはかること。
A 一部負担金払戻金及び家族療養費附加金等に係る基礎控除額の取扱いについては、各共済組合の自主的判断に委ねること。
4.福祉事業等について
@ 深刻な実態にあるメンタルヘルス対策のため、具体的・制度的な措置を講じること。
A 育児休業については、休業全期間に係る掛金が免除されるように措置すること。
以上